機動戦士ガンダム MSV エリオット・レムの記憶 作:翔田美琴
ジオン公国軍での仕事の合間に俺は迂闊に思い出してしまっていた。
あの時の凄く変わったプレイを、しかも休憩時間の時に、同僚の中佐に気付かれた事がきっかけだった。
手首を何気なく見つめていたからだろうとは思うが、多分それ以上に誰かに話したかったのだろうな。
「エリオット。どうした? 何か嬉しそうだな、君の顔」
「オグス中佐、何で判るんです?」
「自分の手首を観て、何か不意に顔が綻んでいたからな。どうしたんだ?」
俺達のいる部屋はグラナダの休憩室だった。
オグス中佐がここにいるのは、新しいモビルスーツの受領の為にいる。
モビルスーツの受け渡しには相応の時間はかかる。ついでに彼はモビルスーツのセッティングの依頼もしているので、彼としては暇な時間だったのだろう。
例のあの木馬と呼ばれる連邦軍の部隊は、ガルマ大佐が駐留するニューヤークの辺りにいるらしい。
しかもなかなか苦戦させられているそうだ。
──だが、正直、宇宙の方はだいぶ暇を持て余しているのが現状という感じだった。
だから、オグス中佐もこうして話し込む事も出来るという訳だな。
「オグス中佐にこんなノロケた話をするのも、恥ずかしいな」
「奥さんと相変わらず愉しんでいるのか?」
「──いいや、今は別の彼女と愉しんでいる」
「へぇ。やるなぁ。どんな事した?」
オグス中佐も意外な物好きかも知れない。
興味津々に聞いてくる。
俺は白い手袋に隠れていた手首を彼に見せる。そこには生々しい手錠の痕が残っていた。
「お前、それは結構、痛いと言うか、生々しい痕だな。何をどうしたらそんな痕が残るんだ?」
「──SMって知ってるか?」
「そういう風俗があるのは耳にした事はある……もしかして行っているのか? 風俗に?」
「──まさか」
そこでちょっとした好奇心で聞いてきた彼にこの痕が出来る話をしてみる事にした。
とある日の事だ。
レム家に宅配便がきた。俺は宅配とかはあまり頼まないので多分、これは水菜がインターネットで頼んだ物であろう事は推察できた。
大きさとしては両手に収まるくらいの箱に入れられて送られてきた。
水菜にそれを届けると彼女は嬉しそうにそれを受け取る。一体、何を頼んだのか?
すると水菜は照れながらも説明してくれた。ほんの触り程度だが。
「これですか? マンネリ防止の為の良い物です」
男女の営みもいわゆるマンネリがくるのはどうしても避けられない。俺とアネットの時も一時的にマンネリになってしまって、そこで二人であれこれ手を打った。
たまには刺激を受けないとマンネリはやがて停滞に繋がる。だからこそ、夜の営みには刺激を与えるのが一番だった。
もちろん、相手を傷付けるようなプレイは避けた。でも、軽いSMは取り入れる事にした。
日によってどちらが上になるとか決めて、相手の言う事を聞かせる。
これがアネットにとっては結構燃えたプレイだったようで、女王様プレイとかしたかな。あの女性にこのような性癖があったのは、なかなかの衝撃で、でも同時に嬉しくもあった。
俺にも多分にMっ気みたいなものもあるのであろう。
この間の水菜の女王様プレイもなかなかの出来だったよ。
そうして、何時もの淫楽の時間が来る──。
「エリオットさん。昼間の届け物が気になりますよね。これを注文したんです。実は」
見せられたのはフワフワなファーがあしらわれた手錠だった。
なかなか衝撃的な品物に、思わず手に取る。
「手錠かい? しかも2つも? これでまさか拘束プレイでもするつもりかい……?」
「ええ。エリオットさんは経験ありますか?」
「流石に手錠は無いな……タオルケットとかネクタイならあるけど」
「私、思ったんです。エリオットさんは拘束プレイをされると異様に色っぽくなるんです。だからアネットさんもエリオットさんにそういうプレイをしてたんじゃないかなって」
「──気付いていたのかい?」
「そうじゃないと説明がつかない……あの時のエリオットさんの色っぽさは」
「今夜はこれを使ってしたいんだね……水菜は」
「はい。良いですか?」
「興味深いね……ちょっとやって見せてくれないかな」
「シャツは脱いでくださいね」
「忘れていたよ……」
灰色のインナーシャツを彼女の前で脱ぐ。
水菜の目は俺の身体をじっくりと堪能していた。
「本当に綺麗な身体です──エリオットさん」
「君も鍛えれば綺麗になるよ……」
「寝転がってください、両手を上にあげる感じで」
「──こうかい?」
クイーンサイズのベッドは俺が両手を目一杯広げれば何とか端に手が届く。
水菜はその両手の手首にファー付きの手錠を填めて、ベッドの端に固定する。
こういう感じなのか──手錠の鉄の冷たさとファーのフワフワした感触を感じる。
あまり拘束はキツめにしないで緩めにしてくれたようだ。まだそんなに制限がキツく感じない。
両の手首を手錠に固定された俺はこれから起きる事について好奇心が湧いた。
水菜はもう全裸になり、俺に覆いかぶさる。
お互いに目を見つめる。
──俺達は少し頷くと激しいキスと共に淫楽の夜が始まった。
「ンッ……ンッ……エリオットさん」
「ンッ……水菜……ンッ」
しばらく口を貪り合って、水菜の唇と舌が次第に熱を帯びて、俺の身体を味わい始める。
首筋に……胸に……おへそに……様々な箇所へキスの雨が降る。
俺もお返ししたいけど、手錠で身動きが取れないのが、何ともじれったい。
動こうと思うと手錠がそれを止めて、痛みとして、それがきた。
「ウウッ!」
「身動き取れないのって、こんなにも不便なものなのか──」
「エリオットさん、今の表情、とても綺麗です」
「……え? 今の
「悔しそうに、歯がゆい感じに、なっているのに、少し感じでいるみたい……」
「もっと喘いで……エリオット……」
「アウッ……」
感触で何をされているのかが判る。
いつもならその光景を観ながら愉しんでいるけど、手錠で起き上がる事も出来ない……。
あっという間に一発目を抜かれた。
「アウッ!」
「一発目、抜いたのに元気ね」
「──はぁっ……はぁっ……み、水菜……」
「ねぇ……生のあなたが欲しいの……」
「……駄目だよ……水菜……君に、子供は作らせない……」
「俺を……欲しがるなら……ゴムを着けてからに……する事……」
喘ぎながら注意した。その欲望は確かに魅惑的だけど、禁断の果実をこれ以上、食べたらいけないんだ。
もう、彼女無しではいられなくなってしまう。
生の感触を覚えたら俺は──。
水菜は俺という悪魔に魅せられて、欲望に呑み込まれ始めている……。
「──入れたい、生のあなたを入れたいのに、こうやって拘束してるのに……何で入れられないの……」
水菜はジレンマに囚われるように吐き出した。
「私は、エリオットに全部、奪われ尽くしたいのに、何故?」
この夜は何か違うと俺は思った。