IS×ライダー・鈴の音は歯車と共に 作:エタ
そのあと、落ち着いた鈴はシャワーを浴び、ISスーツに着替えて戻ってくる。
髪が濡れ、ISスーツによって身体の線が出ており、何処と無く大人な雰囲気を醸し出している。
柔らかく瑞々しい肌は、さらに潤いを増していて、正直エロい。
にこりと俺に微笑んできて、胸の奥が疼く。
鈴はそんな俺に気付くことなく、屈伸を始める。
「……そういえば、あれからすごい時間かかってて、遅刻扱いどころか不戦勝になるんじゃないかーって思ってたけど、時計の秒針すら進んでないのって、どうして?」
ふと、鈴が俺に問うてくる。
……散々ヒントを与えてしまってたし、俺の仕業だと気付くのは仕方ない。まぁ、話しても良いだろう。
「……これは、所謂《結界》によるもの。俺の魔力で結界内と外の時間軸をズラしているんだ。だから俺達二人以外、動けるやつはいない。簡単に言えば、精神と時の部屋の時間が止まったバージョン、って言ったら分かるか?」
「なんとなく、だけど……それより魔力?結界?それって……」
「そっ。俺の秘密その一。鈴に惚れた第二の男性IS操縦者は、魔法使いだったのでしたー。ドレミ的なやつとかマジマジマジーロとかそういうのじゃないゾ」
「ネタが古いわよ、知ってるけど」
そういう鈴の頬はさらに赤くなっている。かわいい。
「っていうかその一、ってことはまだ他にもあるのね?」
「まぁな。ただ全部話してると魔力切れるから、試合終わって、二人きりの時……そうだな、返事を聞いた後に、全部話すよ」
そう言いながら、俺はもう一度指を弾く。
すると周囲の喧騒を耳が大きく広い、またアナウンスが鈴と織斑を呼び掛ける。
「それじゃあ、さっさと一夏をボコボコにして、話を聞かせてもらわなきゃね。アタシの答えも、聞いてもらわなきゃ、だし」
そう言ってえへっ、と照れ気味に笑う鈴が愛しくて、思わず抱きしめる。
ちょっと驚いたように身体を固くするが、すぐに俺に委ねてくる。
「織斑には俺も苛ついてるし、俺の分までボコボコしてくれると助かるな」
「勿論、そのつもりよ。でも……」
「分かってる。だから……」
鈴に顔を近付けて、軽く触れるだけのキスをその柔らかな唇に落とす。
「おまじないは念入り、な。魔法関係はなしだけどな?」
「ケチ……」
なんて言いながら、不満そうにせず蕩けた顔をする。
こつん、とデコを軽く合わせると離れ、鈴もカタパルトに乗りながら瞬く間にIS・甲龍を身に纏う。
「――行ってくる」
「いってらっしゃい」
その言葉と共に、ゴーサイン。カタパルトは動き出し、鈴はアリーナへ羽ばたく。
【――五十嵐、Bピットで観戦するくらいならこっちに来い】
ふと、近くのスクリーンから映像と声を届けてくるのは、管理ピットにいる織斑千冬だ。
篠ノ之とオルコットもいるみたいだが……まぁ、別に嫌いでもないし、良いだろう。
「了解(ヤー)。今いきますよ」
【あぁ。それからな】
「はい?」
【〝そういうこと〟は、部屋でやれ】
「……うぃっす」
千冬さん……織斑先生の横にいる一組の副担任の山田先生が顔を真っ赤にし、篠ノ之とオルコットの顔が意識をどっかやってニヤついてるのをみて、あの一回を見られたのを察した。
***
「…………」
「…………」
甲龍(シェンロン)を纏い、アタシは、一夏と面と向き合い、睨み合う。
いや、今はアタシが一方的に睨んでいて、一夏はなにか聞きたそうにしている。
「なによ、一夏」
「あ、あのさ、鈴。亮……じゃなくて、五十嵐、と仲良いのか?」
「なぬ?あ、いや仲良いけど」
あの一夏が、すぐに名前を呼ぶ一夏が名字で……!?
「ちょっと前に名前で呼んだんだけど、五十嵐って呼べって一点張りでさ。なんか嫌われてるみたいなんだけど、理由を知りたいんだ。それで、せっかく同じ男子なんだから、出来れば仲良くなりたいんだ。だから」
「……よくもまぁ、人を怒らせた後にそういうこと聞けるわねぇ」
「うっ、悪い」
「まっ、良いけど。今のアタシは機嫌がいいのよ」
どうしてかは、恥ずかしいから教えて上げないけど。
「それにしても、仲良く、ねぇ。一夏。アンタ同じ男子だからって皆と仲良くなれるわけじゃないのは分かるわよね?」
「わかる、けど!俺はアイツが悪いやつには見えないし、それに……」
「あーあー、分かってるわよ。まぁ、後で一言言っといてあげる。けどね」
ここで好きだった人に対しての、最後の忠告。
「アンタも、その無神経なところ直した方が良いわよ。一回周りを見て、誰がどういう風に思ってるのか、どう言えばどういう風に思われるのかとか、全部を言葉通りに受け止めずに、よく考えて」
これでもう、ただの幼なじみだ。
「あ、あぁ」
「よし。これでスッキリした!それじゃあ、そろそろ観客もウズウズし始めているみたいだし、始めるわよ」
「お、おう!」
アタシの雰囲気でも変わったからか、動揺しつつ一夏はその手に剣――雪片弐型を持って構える。アタシもダブルブレード型の青竜刀を構え、途端周囲が静止する。
――ハイパーセンサー・フル稼働――
――全武装・確認――
――シールドエネルギー・確認――
――システム・オールグリーン――
――ターゲット確認・白式――
――交戦開始(エンゲージ)――
「バーン」
開始のベルが鳴り、アタシは笑みを浮かべながら、非固定浮遊部位に備わる武装が火を吹いた――。
***
「……なんだ、あれは」
今、織斑を翻弄している武装に、篠ノ之が呟く。
「衝撃砲、ですわね」
「確か、第三世代の兵器だったな」
オルコットの言葉に俺が続くと、彼女はその言葉に頷く。
「えぇ、空間自体に圧力をかけて砲身を生成。余剰で生じる衝撃それ自体を砲弾化して撃ち出すものですわ」
「へぇ、面白いな。不可視の砲弾たぁ、夢のあるものだ。実際に目にするとその凶悪さは見てとれる」
――だが。
「えぇ。一夏さんはどういう勘をしているのか、なんだか慣れ始めているように見えますわ」
スクリーンには、衝撃砲を避け始めている織斑の姿がある。
「実際慣れてるんだろうな。あれは稀にみる生粋の天才だ。これくらいできないと期待外れも良いところだ。
そもそも、俺は勘違いしていたが、織斑が訓練に意欲的じゃないように見えたのは他の原因があったからのようだしな」
鈴の付き添いで、織斑の放課後訓練を見に行った事があったのだが……あれは、酷い。
「アレがなきゃ、織斑はもっと善戦していただろう」
「わ、わたくし達のせいだとでも!?」
「そりゃそうだ。ありゃどう考えても今の織斑にあってない。むしろあんな滅茶苦茶な訓練によく織斑は着いていけてるよ」
まだ知識が素人の域を抜けてない織斑に、押し付けるが如く専門用語をバシバシ使って解説していくオルコットに、擬音ばかりでまるで子供になにか聞いているような篠ノ之。
オルコットのは文字通りエリート仕様だし、篠ノ之は論外だ。あんなのでどうやって強くなれと。
「篠ノ之は知らんが、オルコットは薄々分かってるんだろ?というか、教えるのは良いがその度に気を引こうとして喧嘩し出すのもどうかと思うぞ。
〝訓練、戦闘などに私情を持ち込まない〟。これは暗黙のルールだと思っていたのだがな」
「ぐぬぬ……」
漫画みたいに悔しがるオルコットに苦笑する。篠ノ之はそもそも話を聞いておらず、織斑と鈴との戦闘をまじまじと見ていた。
「そ、そういうあなたはどうなんですの!」
ふと、オルコットがこちらに指を指してくる。
「というと?」
「惚けないでくださいまし!貴方は二人目の男性IS操縦者として、相応の働きを魅せなければいけないはず。なのに一切話題が出てこないのは、やる気が――」
「それは、私が無駄に目立つなと言ってあるだけだ」
そこにスクリーンから目を離さない織斑先生が口を挟んでくる。目線を俺に寄越してくるので、こくりと頷いておく。
「ど、どういうことですの?」
「どうもこうも、そいつの場合、少し……いやかなり特殊でな。五十嵐がIS学園に来る前、そいつの世話を私と……ある馬鹿がしていたくらいだ」
「なっ――」
……ある意味、世話をしていたのは俺だったけどな。力を見込まれて、あれやこれやとこの人とあの人にパシられたりもしたっけ。
「ついでに言えば、専用機も持っている。ただ、それを表に出してしまえば、どういうことになるのか、私には想像もつかんのでな。しばらく雲隠れしてもらおうという話になったのだ」
「そ、そういうことでしたの……事情も知らないのに勝手に言って申し訳ありません」
「良いよ、別に。気にしてない。事情を知らない人からみればそう思われて当然だからな」
それでも、そうしなければならなかった。
俺の――ISコアを組み込んだあの機体は、俺が知る知識(ゲームやアニメ)をここにいない世話になったもう一人――〝博士〟と呼ぶ人と、俺専属のマッドドクターが形にしたもの。
スペックは〝今のところ〟第三世代IS。しかし武装から見ればそれを遥かにこえる、いわばNEXT世代(ドクター命名)。
ファーストシフト、セカンドシフトのようなものとは違う、学習機能を追加した戦う度に成長する機体。
ISの他に、基本となるのはある一つ。
だから俺は、新しい機種の名前をつけるのが面倒で、その基本となったものをそのまま名前にした。
それは――
「「ッ!?」」
突如、爆音がなる。
音の中心であるスクリーンに目を向けると、織斑と鈴が動きを止め、爆煙が上がっている部分をマジマジと見つめている。
ピット内が慌ただしくなる。
俺一人でも冷静に観察しようと、スクリーンを見据える。
(なんだ、〝博士〟辺りが織斑の試験かわりにあの骨董品みたいな……ゴーレム、だったか。あのポイ、って捨ててあったアレでも投入してきたか?……あれ、嫌でもアレは――)
――俺の機体の試運転で木っ端微塵にぶっ壊したはず――
疑問を胸に抱えていると、爆煙が収まっていく。
頭を切り替えた俺は、ひとまずそこにいるアンノウンを見て――
「――――なっ」
その疑問はすぐに解消される。博士のものではないと確信する。
だがそれ以上に、その機体を見て呆然とした。
俺の声を聞いてか、織斑先生、山田先生、オルコットがこちらに注目する。だが、そんなのは気にならなかった。
「あれは――あれは――――!」
「五十嵐……?」
――赤と黒のツートンカラー。肩にグレネードランチャーと二連ミサイルを搭載し、また内部に高性能のジェネレータとブースターを搭載。
手には超強力レーザーブレード―MOONLIGHT―と、超強力レーザーライフル―KARASAWA―を持つ、完全装甲のあの機体。
小説版とゲーム版が混じっているが、そこはどうでもいい。
だが、知るものはそこにある者をみて、恐怖するだろう。
あれは、アーマードコアというゲームに登場するハスラー・ワンと呼ばれる正体不明のレイヴン――つまり、傭兵パイロットのようなもの――が駆る機体。
その名は――
「ナイン、ボール………!?」
みんなのトラウマの一つに上げられる最凶のAC・ナインボールが、ISサイズでそこにいた。
はい、じゃけん後でタグにアーマードコアいれましょうねー