※この作品はR-18です。

IS×ライダー・鈴の音は歯車と共に   作:エタ

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06

亮を乗せた担架がアリーナの外へ連れ出されていく。

 

「……織斑、篠ノ之。勝手に動いた事に関しては明日、追及する。今日はもう休め」

「けど……」

「五十嵐を心配するなら、いつも通りにしていろ。それよりもお前はお前の心の整理をする事を優先するべきだ。……安心しろ、数日もすれば元気な姿がみれるはずだ」

「えっ?」

 

困惑した一夏を放って、千冬さんは亮の跡を辿ろうとする。

 

「鳳。お前は着いてこい。お前は知るべきだ」

 

何のことなのかは、分からないけれど、とりあえずそれは亮の事で。

 

千冬さんが亮の事をアタシよりも良く知っていると分かって、少し嫉妬する自分に嫌気が差した。

 

 

***

 

 

千冬さんに従って、二人で亮の跡を追う。そうしてたどり着いたのは病院――ではなく、IS学園の医務室だった。

どうして……あんな傷をこんなところで治療する事なんて出来るはずがない。

 

「まさか、手遅れ――」

「結論を早めるな、馬鹿者。まぁ、論より証拠だな」

 

そう言って、医務室の自動ドアが開く。するとそこには、ベッドで寝そべる亮と……。

 

「やぁやぁ、ちーちゃん」

 

不思議の国のアリスのような、メルヘン衣装を着る妙な女がいた。

 

「束か。何の用で此処に来た?」

 

と言いつつ、千冬さんの声音は平然としていて、まるで彼女がいるのが分かっていたようだ。

――って束?それってまさか……!

 

「予想している通りだよ、鳳鈴音。わたしは篠ノ之束。ISを開発した大天才なのだー!」

 

と、彼女はそうそのくそでかい胸を張って言い放った。

なんでこんな色んな意味で有名な人がここに……。

 

「自己紹介が済んだならさっさと用件を……いや、今は良いか。その前に亮の状態は?無事なのか?」

 

と、束博士に問う千冬さんの顔は、一生徒を心配するもののようには見えなかった。

そう、それはまるで、女の顔。好きな人を想う女の顔。

 

「大丈夫だよ、ちーちゃん。言っちゃ難だけど、〝お腹に穴が空いたくらいで、りっくんが死ぬなんてありえない。死ねない〟そういう身体だって、ちーちゃんは知ってるでしょ?」

「……そうだったな。あぁ、そうだった」

「まっ、気持ちは分からないでもないけどねー」

 

そういう束博士の顔も、千冬さんと似たような顔をしていて、亮は一夏に劣らないくらいモテるのだと察せた。

って、今はそんな事を気にしてる場合じゃない。

 

(――死ねない、ってなに?それに、そういう身体って)

 

まるで、亮が死ぬことを望んでたみたいな言い方。そして、そういう怪我を何度もしてきたみたいな。

 

「さて、鳳鈴音……言いにくいな、りっちゃんで良い?多分これから長い付き合いになるかもだし。そういう予感を束さんは感じてるのでね」

「えっ?あっ、はい。――って、あれ?」

 

そういえば、なんで束博士はこんなにフレンドリーなのだろう。噂では気が難しく、心を開いたもの以外には辛辣だって……

 

「そんなことはどうでもいいんだよ。りっくんとの生活を覗き見……監視してたとか、さっきのオープンチャンネルでの大告白とかはどうでも」

「アッハイ」

 

ありがとうございます理由は分かりました。お眼鏡に叶って良かったです恥ずかしくて死にそう。

 

「……束」

「おっと、ちょっとふざけすぎたね。ごめんごめん」

「い、いえ。こちらこそ脱線させてすいません」

「うむ、苦しゅうないってまってまってちーちゃん本当にちゃんと話すから。……こほん。さて、りっちゃん。りっくんを対面させる前に一つ。――まだ、引き返せるよ」

「えっ?」

「りっくんの隠してる事情は特殊だ。一度全てを聞けば、全てを見てしまえば戻れない。下手すれば血みどろの場に赴く羽目になる。代表候補生だって、やめなくちゃならない」

 

――あぁ、やっぱりそういうものだったのね。

 

「……多分りっくんが全部話す前に問うていただろうけど、代わりに聞くよ。どうする?」

「…………」

 

今ならまだ、束博士の言うとおり引き返せるのだろう。魔法使いだってことすら、きっとまだ話しても問題ない領域だって事には、驚いたけれど。

 

 

帰還不能点《ポイント・オブ・ノーリターン》

 

 

ここがアタシの運命の分かれ道。

本当なら一夏達のいる、ちょっとドタバタした日常にいたままが良いのだろう。

 

「……別に、代表候補生に関してはどうでもいいですが、亮がそういうところにいるって言うのは、前から勘づいてました」

「…………へぇ」

 

だけどもう、アタシは選んだから。

 

「勿論アタシを慰めてくれるくらいの優しさを持ってるけど、それと同じくらい意地悪で、時々自分に対しても冷酷で。

異様に自分に自信がなくて、怖いくらい冷たい目をしてる時があって、恐ろしい程に強い。これだけのヒントがあって、察せない人なんて早々いません」

 

きっと、人だって殺したこともあるんだと思う。それでもアタシは――

 

「それでも、亮の事が好きになっちゃったんだから、しょうがないじゃないですか」

 

その手を取って、寄り添いたいのだ。

 

「……そっか。あーあ、隙をみて一番をかっ拐おうと思ってたのになー。気を付けなよー、りっくんの事を好きな人はまだいるからね。それもとびっきりのが」

「誰が相手でも一番は渡しません。勿論、二人にも」

 

そう言い返すと、有名人二人は揃ってキョトンとして、途端に笑い出す。

 

「ますます気に入ったよ。わたし実は今この学園の地下にいるから、何かあったらちーちゃんに行き方教えてもらって来なよ。相談くらいは乗るから、さ!」

 

と、束博士はアタシに何かを投げ、慌ててキャッチする。

それは、三つ。それぞれ白、青、桃色のハンドルのようなもので……。

危ないと抗議しようと前を向くと、そこには既に博士はいなかった。

 

「相変わらず神出鬼没だな……鳳」

「はい」

 

苦笑しつつ、千冬さんに声をかけられ、応えながら亮の寝そべるベッドへ向かう。

 

そこには、何故か前掛けがなく、シャツもなく包帯すら巻かれていない上半身が剥き出しになっていて――

 

「――――ッ」

 

――傷口は、既に塞がっていた。

塞がっただけで剥き出しになっている肉、臓器、皮、細胞一つ一つが別の生き物のように蠢動し、徐々に傷がなくなっていっている。

 

「これ、は……」

「みての通りだ。亮は人間ではない――有り体に言って、人の姿をした、化け物だ」

「っ……」

 

思った通りの答えが帰ってきて、アタシは予想以上に動揺する。

 

「正確には、化け物になった、らしいがな。その時の詳しい事情は知らんが、何らかの要因でこいつは人を辞めたらしい。見た目としては左目が銀色になった以外は大して変わりないが、こうして見れば、人でない事を実感させてくれる。――これを、一年間散々見せられたよ」

「それっ、て」

「あぁ。こいつは何度も人なら死にかけている怪我を負っている。今もやっている任務……いや、使命でな。まるで、死に場所を求めているようだったよ。今はマシになったがな」

 

それを聞いて、きっとその事を問い詰めれば、亮がアタシと同じような目をしている理由に辿り着けるのだろうと察する。

だけどアタシが一番気になったのはそこじゃなかった。

 

「……一つ、質問いいですか?」

「……なんだ?」

 

 

「人との子供ってちゃんと作れるんですか?」

 

 

聞くと、千冬さんは珍しくずっつけた。

 

「……それは今聞くことじゃないだろう」

「何を言ってるんです、重要な事じゃないですか」

「そうでなくてだな……」

 

ため息を一つ。

千冬さんは眉間を揉み、呆れた様子でアタシをみる。

 

まぁ、言いたいことは良くわかるけど……。

 

「さっきも言ったように、アタシは亮と一緒にいる事を選んだんです。人間じゃないだなんてこと、驚きはしましたけど些細なことです。それ以上の事情は亮自身から聞いて、駄目なことは叱る。それが、今のアタシに出来ることですから」

 

そう言いながら、アタシは亮の頬を撫でる。

つまり、もう亮以外から聞くことはもう殆どないということだ。だったら、〝今後の為〟になることを聞かないとっ。

 

「……まぁ良い。とりあえず質問の答えだが、知らん。亮が言うに、いつも避妊用の魔法を使ってるからデキるかどうか本人にも分からんそうだ」

「そうなんです―――ん?」

 

その言い種、まさか……。

 

「察しの通り、亮はそういうことを何度もしているらしい。きっかけはのっぴきならない理由からのなし崩しに、らしいが、まぁ年齢から考えて別に不思議ではないだろう」

「そういえば、亮はもう二十歳でしたね。一年からなのは男性IS操縦者だから」

 

そう分かっていても、むっとしてしまうのは仕方ないだろう。

しかも「いつも」ということは今でもそういうことをする機会があるということなのだから。

予想だと、博士の言っていたとびっきりのライバルだろうか。

 

「そう、二十歳だからな。うん。そういうことをしたことがあるのは当然。うん………うん………………」

「あっ。あー……」

 

と、ここでどうも触れてはならない部分に触れてしまったようで、千冬さんがその場で崩れ落ちる。

そんな様子の千冬さんに苦笑しながら、さらさらとした亮の髪を撫でる。ちょっと羨ましい。

 

「と、とにかく。そういうことだから、後は亮に聞け。私は仕事に戻る。その怪我からして、大体夕方辺りに目覚めるだろうから、そのつもりでな」

「はい。話してくれてありがとうございます」

 

頭を軽く下げると、精神的ダメージでかフラフラとしながら医務室から出ていく。

静まり返る医務室の中、アタシはベッドに腰かけると前掛けを伸ばし、誰かが入ってきた時のために亮の傷を隠す。

 

いつもなら、何かしら応えて、寂しさを埋めてくれる人の声が聞こえない。それだけで、胸が締め付けられる。

 

「色々聞きたいこと、言いたいこと、したいこと沢山あるんだから。早く目を覚ましなさいよ、この馬鹿……」

 

そう言いながらこれを少しでも埋めたくて、溢れでるこの感情を少しでも消化したくて、眠る亮の唇にキスをした。




ちくしょう、目論見が外れちまったぜ。
というか設定を長々と書きすぎたンゴ。反省反省。
次こそエロシーンに持っていけたらいいなぁ…………。
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