幻想郷の人里に、賑やかな音楽と歓声が響きわたる。
大勢の男達が一斉に一人の女性の名前を叫び、女性がその声に答えるように派手なパフォーマンスを行う。
(罪)「ゆっかーりん!!ゆっかーりん!!!」
今日は今幻想郷で話題沸騰、新たな文化の火付け役と名高い超時空妖精スキマフェアリーゆかりんのライブが行われる日だった。
そして観客の中に、紫と付き合いの深い少女二人の姿があった。
霊「あいかわらず、無理してるわねー・・・」
幽「でも、賑やかで楽しくて、私は好きよ?こういうの」
人里を歩いていたときに貰ったパンフレットがきっかけとなり、霊夢は幽々子にひきずられてこの場へとやってきていた。紫がアイドルをしていることへの思いの差から二人の反応は極めて対照的であった。
しかし霊夢も、幽々子とこうして二人でいること自体はそう嫌とも思っていないため、さほど不快感は示していなかった。ライブ自体には非常に冷ややかであるが。
幽「でも、とびっきりのサプライズってなんなのかしらねえ?この前のすごく大きいのもいないし、何をするつもりなのかしら?」
ライブが盛り上がっていく中で、幽々子は招待状にあった「とびっきりのサプライズ」に思いを巡らせていた。
サプライズとして最もありえるものはこの前登場したメガゆかりんに何らかの新装備を施すことだが、今回メガゆかりんの姿はなく、紫の後ろにはきらびやかなパネルがあるのみである。
霊「ちょっとした花火とか、そんなもんじゃないの?でなきゃ、この前のバカでかいのをいきなりスキマで呼び出して脅かすとか、どうせそんなもんでしょ。ま、この前のやつを見たら、もう何が来たって驚かないわよ」
幽「そうかしらねえ・・・・」
普通に考えれば、前回のライブから一週間しか経過していない今の状態で紫ができるサプライズのネタはそう多くはない。しかし幽々子の、親友としての勘が警鐘を鳴らしていた。紫がなんの根拠もなしにとびきりのサプライズなどという言葉を使うだろうかと。
紫という妖怪をよく知る彼女は、紫が一筋縄ではいかない存在であることを知っていた。
紫「さあーて、今日はみんなにとびっきりのサプライズを用意してきたの!これから見せるから、注目しててね!!」
幽「あら、もう来るみたいね~。どんなのかしら?」
霊「どーせたいしたもんでもないでしょ。身構えるだけ無駄ってもんよ」
紫のサプライズ宣言を聞いて期待を膨らませる幽々子と、それとは対照的に紫のサプライズにこれといった期待をしていない霊夢。前回のメガゆかりんの衝撃が凄まじくこれを上回るものなどないと思っていたことと、前回見たメガゆかりんからそう時間が経っていないことから、そう大したものは出てこないだろうと高をくくっていたのだ。
しかしそんな霊夢の見通しは、呆気なく打ち砕かれるのであった。
紫「藍、頼むわね!」
紫が小型の無線機に合図を送ると、その信号は少し離れた小屋にいる彼女の式たちの下へと送られる。
藍「かしこまりました、紫様・・・!」
橙「藍さま、紫さまから最終合身の要請シグナルが届きました!」
藍「よし・・・最終合身、承認する!」
橙「了解!最終合身・・・・プログラム・アクティベート!!」
紫「最終(ファイナル)ッッ・・・・・合身(フュージョン)オオオオオオオオオオオオォオォオオオン!!!!!」
ボゴォォォォォォン!!!
橙が防護ガラスを叩き割ってスイッチを押し、合身プログラムを起動すると同時に、紫の背後のパネルを突き破ってメガゆかりんが姿を現した。
原理は不明だがメガゆかりんは空に飛び上がり、さらにそのメガゆかりんの頭上を謎の飛行物体が飛び交う。その飛行物体は3機あり、それぞれ腕、脚、そして紫の帽子の姿を象っていた。
紫がその帽子の形をした飛行物体に乗り込むと、それが飛び上がりメガゆかりんの頭部周辺を飛び回る。
そしてその後、腕と脚がメガゆかりんとドッキングを開始した。元々メガゆかりんについていた腕はパージされ、露わになった連結口に新しい腕が装備される。脚もまた、メガゆかりんのスカート部下側に存在する連結口に接続され、巨大な人の姿を形作っていく。
そして最後に紫の乗り込んだ帽子の形をした飛行機が頭部にドッキングして、合体は完了した。
目の前で繰り広げられるこの世のものと思えぬ合体劇に、罪袋たちは興奮と歓喜に包まれていた。
(罪)「おお・・・・あれはまさしく、ゆかりん!」
(罪)「この神々しい姿・・・!これこそ我らの待ち望んだ女神(ディーヴァ)!!」
(罪)「神々しき、大いなる女神・・・その名は賢者王!」
紫「ユカァ!リンッ!ガァァァッ!!!」
18メートルはあろうかという巨体が、ライブ会場に聳え立つ。
木々を凌駕し、人々を眼下に見据えるその姿は、伝説に謳われる巨大な妖怪「ダイダラボッチ」を彷彿とさせる威容を誇っていた。
常に進化し続けるアイドル、超時空妖精(スキマフェアリー)ゆかりんのために作られた新時代の舞台衣装、ユカリンガーの迫力に会場全てが呑まれていた。
それは、霊夢も例外ではなかった。
前回人々の前に現れたメガゆかりんは到達点などではなく、次なる進化のための通過点にしか過ぎなかったのである。
霊「ぜ、前言撤回・・・・驚いたわ・・・」
幽「まあ・・・・!紫ったらあんなものを作ってたのね。びっくりしたわ~」
?「ふっふっふ・・・・驚いてもらえて何よりだよ。5日連続徹夜した甲斐があったってもんだね」
驚きに呑まれる二人の前に、ある少女が姿を現した。
青いツインテールの髪と、大きなリュックサックが目を引く小柄な少女。彼女はこの巨大な紫の姿をした物体の製作者だった。
霊「あ、あんたは・・・・にとり!?」
にとり「そう、河城にとりさ。久しぶりだね盟友!」
幽「徹夜した甲斐があったっていうことは・・・・あれは貴女が作ったの?」
に「そう!あれこそ依頼を受けて必死に私が作り上げた傑作、重機動スーパー舞台衣装ユカリンガーさ!!すごいもんだろう?」
幽「舞台衣装・・・?とてもそうは見えないけど・・・・」
目の前に聳えるそれは舞台衣装と呼ぶにはあまりに大掛かりであり、紫の体の数十倍に及ぶ巨体である。これは最早衣装と呼べる代物でないことは誰の目にも明らかだった。
に「いや、あれは紫の動きをそのまま反映して紫の意のままに動かすことができるんだ。いわば超でかい着ぐるみみたいなものでね、だから舞台衣装なんだよ。」
霊「あんなのが紫の意のままに動く・・・・?バカ言わないでよ。そんなことありえるわけ・・・」
紫「レェェッツダンシィィィィング!!!!イエエエエエエエアアアアア!!!!」
紫の高らかな掛け声と共に、ユカリンガーがくねくねと腰をくねらせ踊り始めた。
メガゆかりんの時とは比較にならない滑らかさで、ユカリンガーは紫の腰の動きを再現して踊りを踊っていく。
紫の身長の10倍、体積にして数十倍を誇る巨体が軽やかにライブ会場を舞う。その姿は巨人の踊り子とでも言うべき、常識をかなぐり捨てた光景だった。
そして踊りが最大の盛り上がり所に差し掛かったとき、10倍スケールの紫の決めポーズが会場を席巻する。
紫「きらりんっ☆」
霊「うわあー・・・・・すっごいかろやかー・・・・・」
その光景を見た霊夢の目は光を失い、彼女の心は正気を保てなくなりつつあった。
に「ふっ・・・・これが私の最高傑作、ユカリンガーさ」
幽「あらあら、紫ったら楽しそうねえ~。腰が痛いって言ってた割によく動いてるわ~。でも、あのからくりがあそこまで滑らかに動けるとはとても思えないのだけど・・・・」
に「ふっ・・・・その疑問にお答えしよう・・・・」
幽「あら、教えてくれるの?」
に「がその前に!これを着てくれたまえ!!」
そう言ってにとりは、リュックの中から二着の衣装を取り出した。
幽「あら、これは・・・・うさぎさん?」
兎の着ぐるみを渡された幽々子はその着ぐるみをじっと眺め、呟く。
幽「・・・・・かわいい・・・・・・」
に「気に入ってくれたみたいだね。さて霊夢!君にも着てもらうよ!」
霊「ん・・・・?なに?なによこれ?」
に「先生の服さ!二人が着替えたら説明会を始めるよ!」
霊「・・・・・はあ?」
ユカリンガーの踊りによって正気を保っていられなくなって呆けていた霊夢には状況が全く理解できておらず、ただ状況に流されるまま着替えを済ませて配置についた。
幽々子と霊夢が配置につき、セットの準備も整えたことで、にとりが説明をする準備は完了した。
に「じゃ、台本通りに頼むよ。カウントダウン・・・・!」
幽「さん!」
霊「・・・・に」
に「いち!」
どっかーーーーーーーーん!!!
幽・に「わーーーーーーい!!!」
「なぜなにカワシロ」
霊「おーいみんなあつまれー、ユカリンガーについての説明がはじまるよー。」
に「解説役の説明美少女エンジニア、河城にとりと!」
幽「先生にギモンをぶつけるうさぎゆゆこ!」
霊「・・・・・司会進行、博麗霊夢でお送りします。」
に「・・・そこ、台本違うよ!霊夢先生でしょ!」
霊「どーでもいいわよ・・・・つか、なんであんたが先生じゃないのよ?」
に「いやー、ほんとはこれ二人でやるものなんだけど、どうしても霊夢を巻き込みたくってさー」
霊「・・・・・・・・・・・・・」
に「あっ!!だめ、皿はやめて皿は!死んじゃう!!死んじゃ・・・・・・ごめんなさいぃ!!!!」
霊「ったく、謝るぐらいなら最初からやるんじゃないわよ・・・・で、質問は?」
幽「はい、名もなき罪人ギルティブクロさんからの質問!『ユカリンガーはなにで動いているの』これは気になるわよねえ~」
に「ひー・・・・・はー・・・・・うん、答えるよ~・・・・・・ごほん、えーとそれはね、紫の生命エネルギー・・・・いわゆる妖力といわれるものなんだけど、それを抽出して動力にしてるんだ。」
に「幻想郷には石油も何もないから、あれだけの巨体を動かすエネルギーを見つけるのは至難の業でね・・・・んで、妖怪や人間たちが普段術を使ったりするときに使うエネルギーを用いることにしたんだ。このエネルギーを各部に設置した魔力媒体を介して全身に流すことで、ユカリンガーは動くことができるんだよ」
に「で、生命エネルギーというのは生物の活動すべての根幹を成すものなんだ。肉体は、脳を介して全身に行き渡る生命エネルギーの指示で動くんだ。この妖力あるいは霊力を機体に流すということは、機体を自分の身体の一部にするということなんだよ。こうすることでユカリンガーの制御は紫の思うがままにできるというわけさ」
に「ちなみに、ユカリンガーがあの形なのは別にメガゆかりんを再利用したっていうだけじゃなくて、紫の妖力を伝達する事を考えたとき、乗り手の姿を模すのが一番良かったからだよ。評判も上々だしね」
幽「なるほど・・・・それでは次の質問!『ユカリンガーの材質はなに?』これも気になるわねえ」
に「木だよ。木と布。」
霊「木ィ!?木であんなでっかいもの作って・・・・大丈夫なの?」
そう言って霊夢はユカリンガーの方へ視線を移す。そこでは木でできた巨人が元気よくしなやかに踊り狂っている。
霊「・・・・・・・・・・・・」
に「まあ大丈夫さ、鬼のお墨付きも付いてるしね!」
霊「本当に大丈夫かしら・・・・・・」
酒の入ったひょうたんを片手に酔いどれている鬼の姿が脳裏に浮かび、霊夢はそのお墨付きの信憑性に疑問を抱く。
しかしそんな霊夢にお構いなしに、説明会は続いていく。
幽「じゃあ次の質問!え~・・・・・『どうしてユカリンガーを作ったの』確かに謎よねえ・・・これはどうなの?にとりちゃん」
に「これについては私もよくわかんないんだよねえー。メガゆかりんを造ってひと息ついてたらいきなり紫がウチに押しかけてきてさ、『一週間で巨大ロボ造って』っていうんだよ。もう無茶苦茶だよねえ」
に「参考にって事で何かの映像を貰ってさ、これが面白くてハマって見てたんだけど、幻想郷にはあんな映像メディアは無いからどうやってそれを手に入れたのかもわかんないし。まあ紫が滅茶苦茶なのは今に始まったことじゃないけどさ」
?「その詳細は、私が説明しよう」
幽「あら、あなたは・・・・・藍ちゃん~!」
唐突に説明会に割り込んできた声の主は、紫の式である九尾の妖狐、八雲藍だった。
藍「ご無沙汰しております幽々子様。合体が終わった後は暇ですので、橙に呼ばれてやって参りました。
面白いものをやっているとの事でしたが、まさかあれの秘密を聞けるとは・・・・」
藍「それであれを作るきっかけですが、これは紫様のご職務に纏わることであるのです。」
藍は、アイドル「ゆかりん」の誕生の裏側をつらつらと語り始めた。
藍「紫様は幻想郷の結界を維持なさるとともに、日々の仕事の一環として外界の様子を見ておられます。それは神隠しを行い外の世界から人間たちを呼び寄せる際、面倒なことにならないよう外の人間たちの意識調査を行うためでありました」
藍「神隠しで連れてきた人間が妖怪に敵意を抱いていて、その敵意が他に伝播することを避けるべく、紫様は外の世界で人間たちが妖怪にどのような印象を抱いているのか常に調べておられました」
藍「そこで紫様は、外の世界の娯楽商品・・・・本や映像などで描かれている妖怪像を常に見て、外界における妖怪の認識を確認しておりました。しかし・・・・・・」
藍「いつしか紫様は、外の世界の娯楽作品に傾倒なさるようになりました。当初は妖怪が登場するものだけだったのが、いつしか妖怪が出ないものも見るようになり・・・・・そして今では、巨大な機械が戦う物語に異常な執着を見せるようになりました」
藍「紫様が今歌っておられる歌も、そこで得た知識をもとに作られたものです。マ・・・・・なんとかという歌と巨大機動兵器の物語でありました。その物語の中で華々しく活躍する歌手達に紫様は憧れられたのです。紫様の歌手活動の根幹は、外の世界の娯楽作品にあったのです」
に「なるほどねー、だいぶ繋がってきたよ。そんで紫は私にライオンで勇者なロボットアニメを見せて、『こんな感じの巨大ロボ作って!』って言ってきたわけだ。ロボアニメオタクが本物の巨大ロボに憧れるのは当然だもんね」
に「まあ、製作期間やら技術不足やらで合体機構以外は似ても似つかなくなっちゃったけどね。その合体だって、本物とはずいぶん違うけど」
霊「えーとつまり・・・・どういうこと?」
幽「つまり紫が外の世界の創作物に興味を持って、その創作の世界での出来事をなるべく自分で再現しようとしてるってことじゃないかしら?私も経験あるけど、お話の世界にのめり込むとね、自分でそれを真似したくなっちゃうのよ~」
霊「で、やってることがあれ・・・・ねえ。ほんとなに考えてんのかわかんないわ。あいつ・・・・」
紫「In to the護国寺don`t be late!!!!」
幽々子やにとりたちがユカリンガー誕生の秘密について語っている間、紫は楽曲を歌い続けていた。
ライヴはその熱気を増していき、盛り上がりが最高潮に達しようというとき、突然幻想郷の空を暗雲が覆い始めた。
幽「あら、雨でも降るのかしら・・・・」
藍「妙ですね、先ほどまで快晴だったというのに・・・・・」
急に現れた雲に、幽々子や藍は怪訝な表情をする。
だが、その雲が幻想郷に波乱を呼び込む呼び水となるのであった。
霊「えっ・・・・・!?な、なによあれ!!?」
突然、霊夢が空を指差して叫んだのだ。その指差す先には、誰もが目を剥くものがあった。
幻想郷を覆う暗雲のひときわ濃い場所から、何か巨大な鉤爪のようなものが現れたのだ。
そしてそれは徐々に地上へと近づいていき、手以外の部分も徐々に明らかになっていった。明らかになったその姿は、この場にいる全ての者を驚きの渦に叩き込んだ。
それは、全長40メートルはあろうかという大きさの、巨大な爬虫類のような姿をしていた。
二足で立ち、大きな翼を持ち、鋭く巨大な爪と牙を持つ存在。それは伝承に記されたある存在と酷似していた。
に「まさか・・・・・ドラゴン!!!?」
霊「ど、ドラゴンって・・・・・!?」
幽「本で見たことがあるわ。西洋における竜神さまのような存在で、その力は強力無比だって・・・・」
藍「まさか、幻想入りしたとでもいうのか・・・・・!?馬鹿な!!!」
藍が驚くのも無理はなかった。幻想郷に来るのは外の世界で「忘れられた」者であり、外の世界で未だ語り継がれているものは来るはずがないのだ。
だがしかし、ドラゴンは現に目の前にいるのだ。そしてドラゴンは、その巨体でもって幻想郷の地に降り立った。
地面に降り立ったドラゴンは、大きな足で地面を踏みつけながら人里に近づいてきていた。
「お、おい、なんだあれ・・・・・!!」
「うわああああ!!ばけもんだああああああ!!!」
大地を揺らしながら近づく巨体を前に人里の人々は恐怖し、逃げ惑っていた。
ただ歩くだけで大災害となる存在を前に、人々は成す術を持たなかった。
そんな中で、ドラゴンに立ち向かう者が一人、現れるのだった。
紫「来た・・・・!!未知の巨大な敵、立ち向かう巨大ロボ!!これぞロマンよ!!!!」
そう、18メートルの大きさを誇る幻想郷で最もホットな存在、ユカリンガーである。
ユカリンガーはさっそうとドラゴンの前に立ちはだかり、その巨体に殴りかかっていく。
紫「リンガアアアアアアアアナッコオオオオオウ!!!!」
即席の必殺技を叫びながら向かっていくユカリンガーであったが、硬質の鱗の前に呆気なくはじかれてしまう。
霊「ぜんぜん効いてないじゃない!!!」
幽「ただ殴っただけだもの、それじゃあねえ・・・・・」
に「ふっ・・・・・こんなこともあろうかと、趣味でちょっとした武装を仕込んでおいたのが役に立ちそうだね」
霊「え、そんなのあるの!?」
に「巨大ロボに武装は付き物!ないわけないさ。おーい紫ー!!右腕を前に出して、赤いボタンを押すんだ!!」
紫「こう!?こうするとどうなるの!!?」
に「ロボットにお決まりの、あの武装さ!!思いっきりぶっ放すんだ!!」
紫「なるほど、そういうことね・・・・」
にとりに言われたとおり、紫は右腕を前に突き出した。そして、勢いよく赤いボタンを押し込む。
紫「必殺!!リンガーパアアアアアアアアンチ!!!
ぴょいん、ぼてっ・・・・・
威勢よく腕を飛ばしたユカリンガーであったが、それはドラゴンのところまで届くことはなく空しく地面へ放物線を描いて落ちていった。
腕を飛ばした後の部分には、伸びきったばねがだらりと垂れ下がっていた。
霊「・・・・・・・・今の、何・・・・・?」
に「・・・・・・・・ロケット・・・・・パンチ・・・・・・」
霊「・・・・・ねーえにとりー?私こういうの全然詳しくないけどさあ、ロケットって前にパチュリーが作ったの見たときはこういうのじゃ全然なかった気がするんだけどー?」
に「あっ、うん、あのね、製作期間が短すぎて最低限の部分しか作れなかったから武装はホント趣味の域っていうか・・・・・木製なんでロケットで火なんか噴き出したら火だるまになるっていうか・・・・」
霊「ただのポンコツじゃないのよ!!」
に「し、しょうがないだろー!!闘うなんて少しも思ってなかったんだからさー!!!」
残念ながらユカリンガーのロケットパンチはドラゴンに通用しないどころか届きもしなかった。
しかもそれだけではなく、ユカリンガーのパイロットに異変が起きていた。
紫「ギャアアアアア!!!腕が!!腕があああああギャアアアアアアア!!!!」
に「紫落ち着いて!!キミの腕がもげたわけじゃないよ!!」
紫「んーなこと言ったって痛いのよスッタコがァ!!!」
霊「なに、どうなってんの?」
に「ユカリンガーの動作は紫の神経を伝わる妖力の流れを機体に増幅して流すことによって行われてる。つまりユカリンガーには紫の神経が通ってるんだ。だからユカリンガーの腕がもげると、本人の腕はもげていないけどもげていると脳が錯覚しちゃうんだよ。それで痛みを感じてるんだ」
幽「幻肢痛みたいなものかしら?」
藍「それよりは思い込みによって死に至るという実験の方が近いかと」
霊「・・・・・あんたら、割と冷静ね・・・・」
紫「あああ、私の腕があ・・・・・・!!」
に「大丈夫だよ紫!!飛んでった腕を拾ってカチって音がするまで押し込めば元に戻るから!!」
霊「安物のおもちゃか!!」
にとりの言うことに従い、飛んでいった腕を拾って音がするまで押し込む。すると本当に腕は元通りになった。
しかし状況は何ら好転しておらず、ドラゴンに対して有効な武器はこちらにはなかった。
ドラゴンの歩みを止めるべくその身体に体当たりをして押しとどめようとするが、体格差が著しく押し込まれる一方だった。
に「まずいねこれは・・・このままじゃ人里に侵攻してくるのも時間の問題だ。となると・・・・」
そう言ってにとりは、手元に端末を取り出し何やら操作を始めた。
霊「なにやってんの?」
に「ユカリンガーの設計図を見て、何か使える物がないかと思ってね・・・・お、これなんか使えないかな」
藍「これは・・・・眼部のホログラム発生装置か?こんなものをどうしようというんだ?」
に「ホログラム発生装置の動力を妖力増幅ジェネレータと直結して、一時的に出力を増大させるんだ。それで光をある程度絞り込んで、細いレーザーみたいなのを照射するんだよ。これならあいつの硬い鱗も貫けるんじゃないかと思って」
幽「そんな事できるの?」
に「ふっ、このにとりさんを舐めてもらっちゃ困るよ。・・・・よしできた!おーい紫ー!!いま、目からレーザーを発射できるようにしたから、私の言うように動いて!!発射はこっちでやるかr」
紫「なんですって、目からビームを!?よおおし、リンガービイイイイム!!」
に「はいいぃ!?」
紫が叫ぶと同時に、ユカリンガーの目から光線が放たれた。その光線はドラゴンの硬い鱗をも貫き、その身体に傷跡をつけた。
その光景を見たにとりは、ひっくり返らんばかりに驚いていた。
霊「なによ、なに驚いてんのよ」
に「いや、君・・・・目から光線を出すなんてこと、できると思う?」
霊「は?できるわけないでしょそんなこと・・・・なに言ってんのよ」
に「はは、だよねえ・・・・・」
に「ユカリンガーは本当の自分の身体を動かすように操縦できる、けど逆に、自分の身体でできないことはできないんだ。やり方がわからないからね。だから私がこっちでサポートしようと思ったんだけど・・・・まさか普通にぶっ放すとは・・・・」
幽「あら、でも・・・・・ドラゴンさん、まだ元気みたいね~」
藍「傷が浅かったか・・・・・!あれでは、すぐに再生される・・・・!」
事実、ドラゴンの傷は見る見るうちに癒え、鱗も再生していった。ドラゴンを倒すには、一撃で弱点を射抜くほかはなかった。
しかし、それをするのは非常に困難だった。
に「うーん、心臓を一発で貫けばいけるかもしれないけど、レーザーの出力が足りない・・・!鱗を溶かした後じゃ、身体を貫通するだけのエネルギーが残らない・・・・!」
に「それに、今の一発でホログラム発生装置が焼きつきかけてる・・・・・撃てるのはあと一回が限界か・・・・」
幽「そうなると、その一回で仕留めないといけないわね~」
藍「しかしそのためには、鱗が邪魔・・・・そうだな、河童?」
に「まあそうだね。それで二人とも、どこへ行くつもりだい?」
藍「決まっている。あの鱗を破壊しに行くのだ。」
その言葉を聞いたにとりは、驚愕した。藍が発したその言葉は、いかに藍と幽々子が大妖怪であろうとできるとは思えないことだったからだ。
に「そんな、無茶だ!!これだけの体格差があったら、蜂が人間に挑むようなもんだよ!!」
幽「蜂だったら十分だわ~。ぶすっと、思い切り刺してあげましょう?」
藍「それも、猛毒の針です。紫様が築いたこの幻想郷を、破壊させるわけには参りません」
に「ふ、二人とも・・・・!」
に(だめだ、いくらこの二人でもあんなの相手じゃ・・・・・!どうしたらいい、どうしたら・・・・・)
???「なんだ、困ってるみたいじゃないか」
悩むにとりの前に、一人の少女が現れた。この少女の登場を機に、戦局は大きく動き始める。
に「き、キミは・・・・!」
霊「あんたは・・・・・!!」
???「ふ、私に任せな・・・・・!」
新たに加わった少女。窮地に陥る幻想郷。史上空前の強大な敵との戦いは、続く。