霊「あ、あんたは・・・・・!」
突如として現れた巨大な敵、ドラゴンの圧倒的な力の前に窮地に陥る幻想郷。どうしたらいいか悩むにとりたちの前に現れた一人の少女。それは、霊夢には見慣れた存在だった。
霊「あんたは・・・・魔理紗!!!」
魔「ふっ・・・・デカブツの相手なら、私に任せな・・・・!」
それは、霊夢と並んで異変解決のスペシャリストと称される、霧雨魔理紗だった。
彼女の得意技は手に持った八卦炉から放たれる魔砲、マスタースパーク。その威力は山をも貫くと称されるほどである。彼女なら、あるいは竜の鱗を破壊することができるかもしれないと霊夢は思った。
に「なるほど、マスタースパークの威力なら、あいつの鱗を壊すことができるかもしれないね・・・・!」
霊「・・・・・なんかあんたに頼むのも癪だけど、仕方ないわね・・・・」
魔「あ、お前たちに言っとくけど、マスパは使わないからな」
だが、次いで放たれた一言は全員を驚愕させた。
に「え!?ま、マスパ使わないの?なんで!!?」
霊「ば、バカじゃないの!!?あんたからマスパ取ったら何が残るっていうのよ!!!」
幽「マスタースパークを使わないのなら、私の方が火力あるんじゃないかしら?」
藍「・・・・確かに。ならば魔理紗よ、お前の出番はないぞ」
魔「お前ら、ひどくないか?」
全員に散々なことを言われ、若干落ち込む魔理紗。
しかし彼女がこう言うのには、れっきとした理由があった。
魔「ふん・・・・・まあ、私がこの魔法を見せるのは初めてだから仕方ないけどさ・・・・見てろよお前ら、絶対見返してやるからな」
藍「ほう、お前にマスタースパーク以外の取り得があったというのか」
魔「・・・・・いいよいいよ、好きに言ってろよ・・・・・こういう相手にはただ力でごり押しするよりいい方法があるっていうのを教えてやるよ。私の・・・・歌でな!!!」
霊「・・・・・・・・・は?」
魔「出ろ!専用マイク、サウンダース30世サーティース!!!」
霊「いや、それただの八卦炉じゃない」
魔「うおおおおおおお!!私の歌を聴けえ!だっぜ!!!」
八卦炉をマイク代わりにして、魔理紗は歌を歌い始めた。その歌は非常にロックな歌だった。
意外な美声を響かせて歌う魔理紗。その周囲で、異変が起き始めた。
会場に残されたパネルなどが、消滅していったのだ。
その様子を見ていた霊夢たちは、驚愕した。
霊「え、なに、何が起きたの?」
魔「どうだ見たか!これが私の新魔法だっぜ!!」
藍「ほう・・・・音波で物質を破砕するのか。しかしこれだけの出力をどうやって出しているんだ?」
魔「私の八卦炉を舐めてもらっちゃ困るぜ。この八卦炉で魔力を増幅して、その魔力で声を拡張する空間を作り出すんだ。口先にな。それであの破壊力を生んでるのさ。」
に「音による破壊か・・・・確かに、魔力をただぶつけるだけより対象へのダメージは大きいね。これがキミの新兵器ってわけか・・・・」
幽「それに今の歌、なんだか心が震えるような感じがしたわ~。魔理紗って、意外に歌が上手なのね~」
魔「そうだろそうだろ!!最近ロックに凝ってるんだけど、お前もわかるのかこの良さが!」
霊「でも待ってよ、あんたの声をバカみたいにでかくしてるんなら、うるさくなるはずでしょ?でもこっちは普通に聞こえたけど?」
魔「ああ、そりゃ簡単だ。こんなのを無差別にぶっ放してたら危なくてしかたないから、声を拡張する範囲を決めてるんだ。その範囲の外なら、私の声は普通に聞こえているさ。」
魔理紗が編み出した新たな魔法。その範囲は魔理紗の語るところによるとそれほど広くはなく、半径10メートル程度であるとのことだった。
魔法によって作り出された音を拡張する空間。その中のみ魔理紗の声は拡張され、音の振動によって対象を破砕する音波兵器となる。
魔「さて、お前らを見返すこともできたし、そろそろ行くとするか。いくぜえええええっっっ!!!」
そして、散々なことを言った面々を見返すことができた魔理紗は意気揚々と戦場に赴こうとしていた。
二本の箒を手に、魔理紗は颯爽と飛び立った。片方の箒をまるでサーフボードのように扱い空を飛び回り、もう片方の箒をギターのように構えていた。
ドラゴンを魔法の範囲に捉え、弱点と思しき部位の辺りを飛び回る。あとは、新たな魔法を叩き込むだけである。
そして、戦場での魔理紗のリサイタルが始まろうとしていた。
ビタァァン!!!
魔「ぐはああぁぁっっっ!!!?」
霊「魔理紗あああああっっっ!!?」
しかし、魔理紗のリサイタルが始まることはなかった。
相手を魔法の範囲に捕らえるべく飛んでいた魔理紗だったが、その際にドラゴンの尻尾に叩き落とされてしまったのだ。
魔「ぐ・・・・・ゴフッ・・・・・!?き、効いた・・・・ぜ・・・・・」
霊「な、なんで避けなかったのよ!?バカじゃないの!?」
魔「い、いや・・・・歌うことだけ考えてたら・・・つい・・・・・」
霊「ああもう・・・・!待ってなさい、今病院に連れて行くから・・・・!!」
魔「な、何言ってんだ・・・・!!私は、歌うぜ・・・・!!」
霊「ば、バカじゃないの!?死ぬわよあんた!!」
魔「フ・・・・・いいか霊夢、覚えておけ・・・・・!」
魔「死ぬのが怖くて、ロックができるかあああああああ!!!」
それは、魂の叫びだった。
ロック極まる魂を皆に見せつけながら、魔理紗は再び戦場の空へと舞い戻った。
魔「ヘイ、ユカリンガー!!私が鱗をブチ壊すから、お前がとどめを刺しな!!」
紫「状況は、通信を介してにとりから聞いているわ・・・・任せたわよ!!」
魔「心臓は・・・・この辺か?よっしゃあドラゴン!!私の歌を聴けだっぜ!!!」
ドラゴンの心臓と思しき部分に陣取って、魔理紗は全てを破砕する魔法を発動する。
魔理紗のロックが大気を震わせ、ドラゴンの強固な甲殻を揺るがす。
そして、ドラゴンの皮膚を護る鱗に大きな穴が空けられた。
魔「今だ、行けえええええええええええええ!!!!」
紫「リンガアアーーーーーーーーーー、ビイイイイイイイイイイイイム!!!!!」
グオオオオオオオオオオオオオオ!!!!
に「や、やった!!効いたよ!!!!」
放たれたレーザーがドラゴンの胸を打ち抜くと、ドラゴンが大地を揺るがすような悲鳴を挙げた。
初めて明確に、ドラゴンへダメージが通った瞬間だった。
それどころか心臓を打ち貫いたため、それは致命傷となるはずだ。
紫「た、倒した・・・・の?」
巨体を揺らがせ、ドラゴンが苦しみのたうつ。ダメージを与えているのは疑いようがなかった。
だが、心臓を貫いているはずなのにドラゴンの動きが止まる気配はなかった。
それが死の手前の足掻きであるなら良いが、そうでなければ・・・・
に「もし相手がまだ動けるなら、厄介だね・・・・・」
今の一撃でユカリンガーの眼部ホログラム投影装置は完全に焼きつき、もはや再度の使用は不可能だった。
そしてまた、紫の妖力を増幅して放つため、パイロットへの負担も大きい。それはユカリンガーの全ての行動に共通していた。これ以上の戦闘行動は紫への負担が大きすぎた。
魔理紗の方も、先ほど叩きつけられたダメージが大きく再度の魔法の使用は困難だった。もしドラゴンがまだ動けるのなら、幽々子や藍が危険を承知で立ち向かう以外ない。
グオオオオオオオオオオオオ!!!!
に「な、なんだい!!?」
そんな時、ドラゴンが突然大きな雄叫びを挙げ、空へ飛び立った。
その瞬間紫たちは攻撃してくると思って身構えたが、ドラゴンは飛んだ後に地面に向かって突撃し、そのまま地中へと潜っていった。
に「ち、地中へ・・・・潜っていった・・・・!?」
霊「た、倒したの・・・・・?」
藍「いや、見た限りではまだ余力があるように見えた・・・・どういうことだ?」
幽「地中に潜った・・・・それに、あの場所・・・・・まさか!?」
幽々子は、ある事に気が付いた。かつて紫に見せてもらった幻想郷を走る地脈の分布と、今ドラゴンが降りていった場所が重なるということに。
幻想郷の大結界を張る際にも用いた超自然的エネルギー、地脈。その中でもとりわけ大きなエネルギーの流れが存在し、それは竜脈と呼ばれている。そのエネルギーの中にドラゴンが潜っていったのであれば、それが示す意味はひとつだった。
そしてその事実には、紫も気づいていた。
紫「まずい!?あいつ・・・・竜脈へ潜るつもりだわ!!」
に「り、竜脈!!?」
藍「竜脈だと・・・・・!?まさかあいつは、あの力を体内に取り込もうとでもいうのか!!?」
幽「考えられるわ・・・・竜脈というのは大地そのものの持つ力の通り道、あらゆる生き物の母たるものなのだから、傷ついたドラゴンの傷を癒し、力を与える・・・・そのぐらいはできると思うわ。」
霊「じゃ、じゃあ止めなきゃだめじゃない!!強くなって戻ってくるんでしょ!?」
藍「・・・・もう、無理だ・・・・・!!」
藍の言うとおり、ドラゴンは既に地中深くへと潜っており、止める術は無かった。
ユカリンガーは傷つき、それ以外の妖怪や人間たちはドラゴンを止めるには余りに小さすぎた。
そして何より、竜脈の中にその身を沈めたドラゴンを無理に刺激して、竜脈のエネルギーが暴走すれば何が起こるかわからなかった。
それ故に、ただ見送るしかなかった。幻想郷に未曾有の危機を齎したものが、その身を休めていくのを。
に「・・・まあ、心臓を貫いたんだ。いくらなんでもそうそうすぐ戻ってくるとは思えないけど・・・」
藍「そうだな。それに、竜脈のような膨大な力を一気に取り入れようとすれば、それは逆に滅びをもたらすだろう。奴もそれなりに時間をかけて竜脈の力を自分の物とするはずだ。」
幽「だから、あれがもう一度戻ってくる前に、色々と対策を立てないといけないわね~」
戦いは、終わった。しかしこれは新たなる大戦争の始まりなのである。
紫「にとり、わかってるわね?当分は眠らせないわよ」
に「いやー、少しは寝かせて欲しいなあ・・・・・まあでも、私もまだ死にたくはないからね。ユカリンガーのバージョンアップ、頑張らせてもらうよ」
藍「我々式神も、紫様のため働かせていただきます」
魔「あの、そろそろ病院に連れてってほしいんだけど・・・・・」
新たなる強大な敵、立ち向かう幻想郷の妖怪たち。新時代の戦いが、いま始まろうとしていた。