ドラゴンが幻想郷にやってきた日から、二週間が経過した。
ドラゴンの襲撃を受けて始まった第二世代型ユカリンガーの開発も軌道に乗り始め、次なる襲撃への備えも着実に進み始めていた。
紫「第二世代型ユカリンガー・・・・開発は順調のようね」
藍「チーフである河城にとりを筆頭に、皆よくやっています。この調子なら来週までには完成できるかと思われます」
紫「・・・・そうね。それまで、何も起きないといいのだけど・・・・」
藍「・・・・紫様、ひとつだけ質問をしてもよろしいでしょうか?」
第二世代型ユカリンガー開発の視察をしにきた紫と藍。新たなユカリンガーの姿を見て期待を膨らませる紫に、藍はある質問をぶつける。
紫「だいたいの見当はついているわ。ドラゴンのような有名な存在がなぜ、幻想入りしたのか・・・・それを聞きたいのよね?」
藍「・・・・はい。私も紫様が外界の視察をなさっているのを見ていましたが、外の世界ではいまだドラゴンは多くの人に覚えられていて、数多くの創作物にその姿を現しています。そのドラゴンがなぜ、幻想郷に来たのか・・・・それが疑問なのです」
紫「そうね。確かにドラゴンは未だに人気があるわ。でもね藍、それは他の妖怪も同じなのよ」
藍「え・・・・・・」
紫「九尾の妖狐も、吸血鬼も、鬼も、外の世界の人間達はまだ覚えているわ。創作の世界において、これらの妖怪は引っ張りだこだものね。けどね藍、”覚えている”という言葉の意味を、もう一度よく考えてみなさい」
紫「人間は妖怪たちを語り継いではいるけれど、その存在を本当に信じているのかしら?本や絵でしか見かけない存在を、本当にいると思っているのかしら?
・・・・・いいえ、思っていないでしょう。だから、私達はここにいるのよ」
紫「人間達にとって妖怪は、本や絵の中でしか見かけない、人間の空想で生み出された存在になってしまった。かつて本当にそこにいたものを、誰も信じなくなってしまった。
誰も本当にいると思っていない。そんなものを、”覚えている”といっていいのかしら?もうそれは、”忘れている”といっても変わりはないのではないかしら?」
紫「だから、みんなここにいるのよ。外の世界で忘れられてしまった者達がたどり着く、この幻想郷に。」
藍「・・・・なるほど・・・・・確かに、いま幻想郷にいる妖怪の中にも、いまだ外の世界では語られ続けている者もおりますね。ドラゴンもまた、私達と同じように信じてくれる者を失ったのだということですか・・・・」
紫「そうね。私たちのような幻想の存在を語る上では、”信じる”ことと”覚えている”ということは同義なのかもしれないわ。信じてくれる者がいなければ、畏れてくれる者がいなければ、妖怪はその存在を保つことができないのだから」
藍「なるほど・・・・・ところで紫様、ドラゴンほどの存在が忘れられてしまったのだとすれば、西洋圏の他の怪物らが幻想入りしてくるということも・・・・」
紫「ええ、ありえるわね。だから、新型ユカリンガーの開発を急がせているのよ。またあのような巨大な怪物が来ないとも限らないものね」
「た、大変ですー!!!人里に、巨大なバケモノが・・・・!!」
紫と藍が外の世界から来た怪物についての話をしていた矢先に、下働きの河童がよからぬ報せを運んできた。
紫「噂をすれば影・・・・・ね。いくわよ藍!」
藍「お、お待ちください紫様!!ユカリンガーはまだ・・・・!」
紫「とはいっても、ここでじっとしているわけにもいかないでしょう?とにかくまずは現場の様子を確かめて、その上で対策を練るのよ!」
藍「かしこまりました、紫様!」
幻想郷を護るため、いつになくやる気を漲らせる紫。その紫に藍も追従する。
ユカリンガーのドックから外に出た紫たちは、幻想郷にやってきた怪物を目の当たりにする。それは、とても大きな人型の怪物だった。
腰布ひとつと巨大な棍棒を身につけた巨人が、人里に足を踏み鳴らしながら接近していた。
に「あ、キミたちも来たのかい?いやー、参ったねこれは・・・・まだユカリンガーも完成してないってのに・・・・」
藍「だが、やるしかあるまい・・・・それで、あの怪物は・・・・」
紫「オーガね・・・・その大きさと怪力、そして凶暴さで知られる怪物・・・その膂力は常軌を逸しているわ。強敵ね・・・・」
藍「それで紫様、いかがなさいますか?あのままでは人里に侵入してしまいますが・・・」
紫「わかっているわ。とはいっても相手はあの巨大さ、うかつに動けば死が待っているわ。慎重に策を練りましょう」
紫と、藍とにとりが作戦会議を行っている頃、博麗神社でも霊夢がオーガの姿を認識していた。
そして霊夢の家に遊びに来ていた幽々子もまた、その姿を目の当たりにしていた。
霊「な、なによあのデカブツは!!緑色だし人間っぽいし、この前のと全然違うじゃない!」
幽「あれは、オーガ・・・・かしら?西洋でいうところの鬼のような存在だけど、すごく大きいわね~」
身長30メートルという巨体のバケモノ相手に、人里の人々はまたも成す術なく逃げ惑うことしかできなかった。
ドラゴンの恐怖冷めやらぬ中での再びの襲撃。しかもこの前と違い、怪物の前に立ちはだかる者も現れない。人々の心に、絶望が渦巻いていた。
しかしそんな時、光明が差し込むのだった。
???「へえ、鬼・・・・ねえ、ちょっとその話、詳しく聞かせておくれよ」
博麗神社の縁側に、唐突に現れた小さな妖怪。彼女がこの状況を打破する鍵となるのである。
小さな身体に不釣合いな、大きな手枷と足枷を軽々と扱い、頭に生えた二本の巨大な角と手に持ったひょうたんが目を惹く少女。彼女の名は・・・・
霊「あ、萃香!またあんたは神社をうろつきまわって・・・・・」
萃「まあまあ、そんなことより・・・・あのでかいのが異国の鬼だって話、本当かい?」
幽「・・・・まあ、伝承ではそういうことになってるわね。それで、そうだとしたらどうするの?」
萃「ふうむ・・・・いやなに、国は違えど同じ鬼同士。ちょっくら腕試しでもしようかとね。鬼の四天王が一人、萃香様の相手をするに相応しいか・・・・見極めてやるよ」
霊「・・・・・やるのはいいけど、周りには一応気をつけなさいよ?巨大化したあんたとあのバケモノに暴れられたらたまったもんじゃないわ」
萃「はいはい、わかってるよ。それじゃ・・・・ミッシングパワー!!」
神社の外に出た萃香が叫ぶと、みるみるうちに身体が巨大化していった。
密と疎を操る力によって成される萃香の本来の力の発動。ミッシングパワー。それはまさしく鬼神の力だった。
小さいままでも強大な膂力を誇る萃香が、その力の質をそのままに巨大化したのである。巨大化したことにより数十、数百倍に跳ね上がった質量とその腕力を以ってすれば、打ち砕けないものなど存在しない。これが萃香の力、ミッシングパワーである。
霊「デカブツにはデカブツ・・・・まあなんだかんだで、いい感じかもしれないわね」
幽「今回はユカリンガーは出ないのかしら~?残念だわ~」
霊「まあ、こっぴどくやられてたからね・・・・それよりほら、始まったわよ」
ユカリンガーが現れないことを残念がる幽々子をよそに、戦いが始まった。
30メートル級の巨人同士が、人里の前で取っ組み合う。そんな神話のような光景を人々は目の当たりにしていた。
互いに怪力自慢で知られた者同士。組み合ったまま互いに一歩も引かなかった。
萃「フン、なかなかやるじゃないか・・・・!」
オーガ「・・・・・・・・・!!!」
互いに互いを好敵手として認め、己の全力をぶつけられる相手にめぐり合えた喜びが二人を満たしていた。
策など一切用いない、ただ単純な力のみによる決着。とてもわかりやすく清々しい戦いを二人はこれから始めるのだ。二人の表情は、どこか満足げだった。
紫「・・・・・・・なんか、盛り上がってるわね・・・・」
そんな闘いの様子を見ていた紫たちは、どことなく呆然としていた。
紫「忘れてたけど、デカブツの相手できるのって私達だけじゃなかったのよね・・・・あの鬼もいたんだったわね・・・・」
藍「あの、紫様・・・・・?」
紫「まあ私達が出ずに済むならそれが一番よね!幻想郷の平和が保たれればそれでいいわけだし!」
藍「確かに我々が出撃するのはリスクが大きいですが・・・・紫様はそれでよろしいのですか?」
紫「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
紫は、答えることができなかった。ユカリンガーの開発を急いでいるのも、生身のままでも闘おうとしているのも、すべては幻想郷を守れるのが自分しかいないと思っていたからである。
巨大な敵を制して勝つには同じく巨大な身体で戦うしかないが、それができるのはユカリンガーしかないと今まで思っていたのが覆されたのだ。戦いのアイデンティティを見失ってしまうのも無理はなかった。
そうした理由から、元より気難しい性格の紫はすっかり拗ねてしまっていた。
紫が拗ねている頃人里では、鬼同士がにらみ合っていた。互いを好敵手として認めた今、うかつな動きはできずにいたのだ。
どちらの攻撃も、当たれば相手に深手を与える一撃である。それゆえに、どちらも間合いに入り込めずにいた。
萃(いいねえ、このひりついた緊張感・・・・喧嘩ってのはこうじゃなくっちゃ・・・・)
互いに殺気をぶつけ合う状況。手を出すに出せない緊張感。その感覚を萃香は愉しんでいた。
そして相手もまた、嬉しんでいた。しかしそれは、萃香と同じ理由ではなかった。
ムク ムク・・・・・
萃香と見合っているオーガの腰布が、徐々に持ち上がり始めていた。
それは、オーガが萃香を認めた何よりの証だった。
霊「・・・・・っ!!?ゆ、幽々子!!!ちょっとこっちへ来なさい!!」
幽「え、どうしたのいきなり・・・・」
霊「いいから来なさい!!!」
それを見た霊夢は、慌てて幽々子を神社の一室へ押し込んだ。
霊「はい、お湯と急須とお茶菓子!!一式置いとくからここで待ってなさい、いいわね!!」
幽「れ、霊夢?いきなりそんなこと言われても・・・・」
霊「・・・・・・・・・いいから、ここにいなさい」
有無を言わさず幽々子を部屋に押し込み、去っていく霊夢。幽々子はどうなっているかわからず呆然とするが、すべては幽々子を守るためなのだ。
霊夢が幽々子を閉じ込める理由は、オーガにあった。
萃「・・・・へえ、お眼鏡にかなったってわけか・・・・」
オーガの股間には、逞しく屹立した男根がそそり立っていた。これは強い雌とめぐり合えたことにより生殖本能が刺激された結果であった。
すなわち萃香は、オーガの好敵手にして繁殖相手として見初められたのである。
こんな男根などは性に疎い幽々子には見せられないものであるため、霊夢は幽々子を閉じ込めたのだ。
幽「もう、なんなのかしら、いったい・・・・」
閉じ込められた部屋の中で幽々子は一人、煎餅を齧るのだった。
外に出ようとふすまに触れてみたものの、ふすまには霊夢の結界が張られていた。この結界を剥がすのは幽々子といえど困難であった。
そういうわけで幽々子は、結界を剥がすのは諦めて待つことにした。どの道戦いがそれほど長く続くことはないだろうし、それまでの時間を過ごすに十分なお茶と茶菓子はあるのだから。
そして霊夢が幽々子を閉じ込めるのと前後して、状況が動き始めた。
萃香を繁殖相手として見初めたオーガは、萃香を打ち倒して生殖をするべく襲い掛かったのだ。
これまで互いに手を出さずに様子を見ていたのから一転して、激しい乱打戦が繰り広げられる。
萃「ふんっ!!!はっ、でああっ!!!」
大気を震わせて、巨人の拳が互いの身体を打ち付けあう。
萃香の放ったボディブローがオーガの腹筋を貫き、オーガの放ったフックが萃香の頬を腫れ上がらせる。
互いに一歩も引かない猛打の押収。痛みも忘れ、無我夢中で拳を打ち出す。
萃「おおおっ!!!!!」
終わらないパンチの押収。その戦いに終止符を打つべく、萃香は渾身の力を込めた一撃を放つ。
オ「・・・・・・・・・!!!!!」
だが、オーガもそれと同時に最大の力で以って右ストレートを放った。
互いの拳が互いの顔にめり込むクロスカウンター。必殺の拳は二人の脳を激しく揺さぶり、二人の身体が大きく揺らぐ。
萃「ぐ、くっ・・・・・・・・!」
たたらを踏んで、どうにか倒れるのだけは堪える萃香。しかしその身体には、もうほとんど余力は残されていなかった。
オ「ウオオオオオオ・・・・・・・・」
だが、オーガもまた追い詰められていた。勃起していた男根も今は萎え、倒れないことに全神経を注いでいた。
どちらも満身創痍であり、次の攻撃が恐らく最後だった。
萃(次が、最後かねえ・・・・・見せてやるよ、日本の鬼の底力ってやつを・・・・・!)
双方が追い詰められ、最後の一撃を決めようとしていた。
その頃幽々子は、閉じ込められた部屋で退屈な時間を過ごしていた。
幽「まだかしら、霊夢・・・・・」
霊夢が来て、結界を解除してくれるのを待っているが、なかなか来てくれる気配がなかった。
待っている間にお茶も茶菓子もほとんど食べつくし、あとはただ時間を無為に過ごすのみだった。
霊夢に早く来てくれるよう願いながら、時間の経つのを待っていた。
ぶるるっ・・・・・
幽「んっ・・・・・・・!」
幽「・・・・・・・ほんとに、早く来てくれないかしら・・・・・」
萃「おおおおおおおおおおおっっ!!!!!」
幽々子が退屈している頃、萃香とオーガとの戦いは最終局面を迎えようとしていた。
震える脚に渇を入れ、一歩一歩大地を踏みしめながら近づいていく。
そして最後の一撃が、今まさに放たれようとしていた。
萃「はああああああああ!!!!」
オ「ウオオオオオオオオオ!!!!」
またしても同時に、二人の拳が互いの顔面を捉えた。二度目のクロスカウンター。
双方共に致命の一撃を受け、同時に倒れこむ。
萃「が、はっ・・・・・・・」
オ「ウオ・・・・・・・・」
双方共に体力の限界を迎え、戦いの決着は引き分けという形でついた。と思われた。
萃「う・・・・おおおおおおおお!!!」
しかし途中で萃香が猛烈な雄叫びをあげて踏みとどまった。そして、無防備な状態となったオーガに本当の最後の一撃を見舞う。
萃「これで・・・・・・最後だああああああ!!!!」
萃香の放った最後の右ストレート。それは綺麗にオーガの顔面を射抜き、完全に彼の意識を奪い去った。
ドズウウンと大地を揺らし、大の字に倒れるオーガ。立っているのは日本の鬼、伊吹萃香。異国の鬼を萃香は見事に打ち破ってみせたのだ。
藍「倒した・・・・・か。やりましたね、紫さ・・・・・」
紫「あらまー!倒しちゃったんだー!すごーい!!私なんかいなくっても幻想郷はこれで安泰ねー!!!」
藍「あの、紫様・・・・」
藍「・・・・・・おい河童、お前もなんとか紫様をなだめ・・・・・」
に「あは、さすが鬼・・・・だね・・・・・・あはは・・・・・これさ、徹夜してまでユカリンガー作る意味あるのかな・・・・・もう全部あの方一人でいいんじゃないかな・・・・・」
藍「なに!?河童、お前もか・・・・!!」
拗ねてしまった紫と、徹夜の疲れがピークに達したにとり。二人は今の戦いを受けて、すっかりやる気をそがれてしまっていた。
そしてその二人をなんとかなだめすかそうと奮闘する藍。彼女もまた、受難体質なのであった。
萃「いやー、終わった・・・・・いい戦いだったよ」
戦いを終えた萃香は元の大きさに戻り、博麗神社へと戻ってきていた。
戦いの疲れと傷を、大好きな酒で癒すために。
萃「よーし霊夢!異国の鬼を倒した記念に呑もうじゃないか!」
霊「あんたは毎日だって呑んでんでしょうよ・・・・・でもま、今日ぐらいはいいわよ。付き合っても」
萃「お!さっすが霊夢!!じゃあ、カンパーイ!!」
勝った記念に祝勝会を挙げようとする萃香に、霊夢も付き合うことにした。曲がりなりにも幻想郷を護った萃香を邪険にはできなかったのだ。
オーガに勝ったことを記念する宴は夕方まで続き、萃香も霊夢もすっかり酔いが回っていた。
萃「うーい、異国の鬼がなんぼのもんじゃい~・・・・!」
霊「ちょっと萃香、飲みすぎじゃない?」
萃「なんの、私はこれくらいがちょーどいい!!もっと酒もってこいー!!」
霊「やれやれ・・・・・・」
神「・・・・・・きさまら、ここをどこじゃと思うとる・・・・・・」
霊「あ、ヘボ神じゃない。いたの?」
神「今来たんじゃ!!しかしなんじゃこれは・・・・神社に鬼がおるわ、神社で酒かっくらうわ・・・・・お前は神社をなんだと思うとるんじゃ!!」
霊「でもあんただって、なんも言わなかったじゃない」
神「いや、だって・・・・そいつすごく強そうじゃし・・・・・注意なんぞして殴られでもしたら今度こそ消滅するかもしれんかったし・・・・」
霊「で、ベロンベロンになってから出てきたってわけ。ビビリねー」
神「や、やかましいわ!!それに、儂が出てきたのはそれだけじゃないわい」
神「霊夢、お主・・・・・なんだって神社の部屋に結界なんぞ張っとるんじゃ?この二つ隣の狭い部屋じゃったか、なんぞ封印でもしとるのかの?」
霊「え、結界?そんなの張ってたっけ?」
霊「・・・・・・・・・・・・・・あ」
ここで霊夢は、とても重大なことを思い出した。
霊「あああああ!!!忘れてた!!!!」
霊夢はその結界の張ってある部屋に飛んでいき、慌てて結界を解いた。そこは、幽々子を閉じ込めていた部屋だった。
萃香がオーガを倒したら出してやろうと思っていたのを、飲み会が始まったので忘れてしまっていたのだ。
霊「ご、ごめん幽々子!!ちょっとわけあって来れなくて・・・・・」
幽「・・・・・・・・っっ!!!!!」
霊「え・・・・・・・」
霊夢が結界を解除するなり、霊夢の謝る声も聞かずに幽々子が凄まじい勢いで飛び出してきたのだ。
その様子は尋常でなく、額に汗を浮かべて顔をしかめていた。
地団駄を踏むように何度も足で床をとんとんと叩き、苦悶の表情で腰をくねらせる。その様子は一目で幽々子が何を我慢しているのかを伝えていた。
幽「れっ、霊夢・・・・!お、お手洗い、どこっ・・・・・!?」
霊「え?あ、お、お手洗いはあっちよ!離れの小屋!!急いで行ってきなさい!!」
幽「あ、ありが・・・・・とっ・・・・・!!」
手洗いの場所を聞くなり、風のように飛んでいく幽々子。もはや一刻の猶予もなかった。
霊夢に閉じ込められていた間に飲んだお茶が分解されて尿になり、幽々子の膀胱に溜まっているのだ。やかん一杯分のお茶を飲んだ幽々子の尿意はかなりのものだった。
その上今に至るまで外に出してもらえなかったのだ。とうの昔に限界を向かえていてもおかしくはなかった。
だがそれを幽々子は精神力でねじ伏せ、今幽々子は手洗いへとたどり着いた。
しかし、手洗いの扉が開くことはなかった。どんなに引いても、扉は開かなかった。
それもその筈。手洗いには、先客がいたのだ。
神「ん?なんじゃ騒々しい・・・・もっと静かにできんのか」
幽「あ、貴女は・・・・!?お、お願いはやくっ!!はやくしてえええ!!!!もうっ、もう私っ・・・・・限界なのお!!!」
神「え!?ちょ、ちょっと待っとくれ!いま入ったばっかりで・・・・・ふおお、まだぶらさがっとるんじゃ!」
幽「はやくっ、はやく・・・・・!!!い、いそいでぇ・・・・・!」
霊「ゆ、幽々子、大丈夫!?」
幽々子の尋常でない様子に心配してついてきた霊夢が、幽々子の傍に駆け寄る。
しかし、入れると思っていたトイレに入れなかった今、幽々子の我慢は限界に達しようとしていた。
そのうえ中に入っている神は大きいほうをしているのだ。かかる時間はそれなりに長いだろう。それもまた幽々子に絶望感を与えていた。
幽「はあっ、はあっ・・・・・・うう、ぅ~・・・・・・!!!」
霊(このままじゃ、たぶん幽々子は・・・・・だったら!)
幽々子が恐らく我慢できそうにないことを察した霊夢は、賭けにでることにした。
霊「幽々子、ちょっとお股を出しなさい!!」
幽「え、お、お股、って・・・・・・」
霊「いいから早くする!!漏らしたいの!!?」
幽「ぅ・・・・・・・」
最初は恥ずかしがっていた幽々子も、霊夢の真剣な表情に決意を固めた。しっとりと小水に濡れた股間を霊夢の前に曝け出す。
何をするかはわからないが、霊夢が何らかの漏らさないための策を施してくれると信じたのだ。
霊「よし!じゃあこのお札を・・・・っと」
幽「んひっ・・・・・!?な、なにをしたの・・・・・?」
霊「幽々子のアソコに、お札を貼ったのよ。お札に触れたもの全ての動きを止めるお札。本気で念を込めたら全身の動きを封じることもできるものだけど、今回はそこまでいってないわ。お札そのものに触れている範囲のものを止める程度にしたの。これなら、外に出ようとするおしっこの動きを止められるはずよ」
幽「あ、ほ、本当だわ・・・・・止まってる・・・・」
外にあふれ出ようとする小水の動きを、出口のところで留めるために霊夢はお札を幽々子の秘所に貼り付けたのだ。
賭けに近いものであったが、その結果はしっかりと出ていた。これまで気を張っていてもチョロチョロと漏れ出していた幽々子の小水が、今は止まっているのだ。
無論尿意が消えたわけではないが、漏らすリスクが消えたことは幽々子にとってとても大きなことだった。
幽「ふぅ、う・・・・・こ、これなら、我慢できそう・・・・・・」
霊「あ、でもこのお札、私にしか剥がせないのよ。だから、そのー・・・・・お手洗いには私も一緒に入ることになるし、剥がした瞬間にまあ、出ちゃうだろうから・・・・・み、見ないようにはするわよ?けど、音とかは・・・・聞いちゃうかも・・・・・」
幽「え、そう、なの・・・・・?」
霊「うん・・・・・・」
幽「わ、わかったわ・・・・頑張って、我慢する・・・・・・」
霊「・・・・・・・・・・・・」
幽「・・・・・・・・・・・・・」
恥ずかしさから、二人の間に沈黙が流れる。
神「ふう・・・・・おーい、出たぞー!」
その沈黙を切るように、神がトイレから出てきた。次は幽々子の番である。
トイレの中に一緒に入り、下半身を露わにして便器に跨る。その幽々子の股間に、霊夢が手を伸ばす。
霊「いい?剥がすわよ・・・・・」
幽「え、ええ・・・・・おねが、いぃっ・・・・・!!」
札が剥がされた瞬間、猛烈な勢いで小水が出口に向かって殺到する。
その勢いをどうにかして押し留めようとする。だが、うまくいかない。
幽「あっ、だめ、だめぇっ・・・・・!!!」
ぷしゅう、ぷしゅしゅしゅうううううううううううう!!!!
幽「あ、はぅ・・・・・・・・」
霊「う、わあ・・・・・すごい勢い・・・・・」
放たれた幽々子の小水の余りの勢いに、霊夢は思わず見入ってしまう。
放物線どころが直線状に放たれる幽々子の小便。その勢いによって発生する音もまた凄まじく、たとえ霊夢が耳をふさいでいたとしても間違いなく聞こえていたであろうほどだった。
ふだん穏やかな幽々子から放たれる凄まじい音と勢いのギャップ。それが霊夢を引きつけて離さなかった。
そして幽々子も、そんな霊夢をとがめることができずにいた。
我慢を重ねた小水を開放できる快感、開放感に包まれ、まともな思考をすることができなかった。
そんな放尿は一分以上にもわたって続き、幽々子はその間たっぷりと放尿の快感に浸るのだった。
幽「はふぅ・・・・・・・・」
そして、長く続いた放尿が終わる頃、幽々子はやっと我に返った。
幽「あ・・・・・・・・・・」
放尿の間ずっと同じトイレにいた霊夢と、視線が合う。
幽「あ、あ・・・・・・!!!!」
みるみるうちに赤くなっていく幽々子。そんな幽々子を見て霊夢もまた我に返る。
霊「あ、ゆ、ゆゆ・・・・!!!ご、ご・・・・・・・ごめんっ!!!」
次の瞬間、幽々子の恥じらいの悲鳴が挙がるのだった。
かくして幻想郷にふたたび現れた脅威との戦いは幕を閉じた。だがこれからもまた巨大な怪物は幻想郷にやってくるだろう。その時立ち上がるのは鬼か、それとも・・・・・・
幻想郷に生きる人々と妖を護るための戦いは、今後も続いていく。