※この作品はR-18です。

亡霊お嬢様の受難   作:フォカヌポウ

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賢者王ユカリンガー第四話~完成!新型ユカリンガー~

遥か異国の地より幻想入りしてきた怪物たちとの戦いが始まってから三週間、オーガ襲来から一週間が経過した。

この日、幻想郷はそれらの脅威に対抗する力をついに獲得するのである。

 

紫「とうとう完成したわね・・・・新しいユカリンガー」

藍「状況に応じて装備を換装し、あらゆる敵に対応する・・・まさに万能機ですね。まだ装備のほとんどは未完成ですが・・・・」

紫「でも、ひとつは完成したわ。このひとつがこれほど早く完成しただけでも凄いことよ」

藍「はい。本当に河童たちはよくやってくれました・・・・では紫様、稼働試験を始めましょう」

紫「そうね。じゃあ藍、管制をお願いね」

藍「お任せください、紫様」

 

待ち望まれていた幻想郷の新たな力、ユカリンガーがついに完成し、今日はその稼働試験が行われる日だった。

完成した新しいユカリンガーの姿に、紫たちは確かな感動を感じていた。

 

藍「メガゆかりん2、発進!!」

 

藍の声と共に、新しい姿となったメガゆかりんが発進する。

それは以前のメガゆかりんと比較して大型化しており、これ単独で20メートルの大きさがあった。

そして前のものには無かった自走能力も獲得しており、キャタピラによる無限軌道を可能としている。これにより装甲車のような運用が可能となり、戦場へ迅速に駆けつけることができる。

さらに新しいメガゆかりんの本懐はこれからだった。

 

藍「では紫様、合身をお願いします!」

紫「合身(フュージョン)オオオオオオオオオン!!!!」

 

メガゆかりん2に紫が合身することにより、メガゆかりんが変形を開始した。

帽子型飛行機リンガーハットに紫が乗り込み、メガゆかりんと合体。そうすることによりメガゆかりんに紫の妖力が行き渡ると変形が可能となるのだ。

紫の妖力を全身に効率よく行き渡らせるため、人の上半身が生えた戦車といった趣のメガゆかりんを完全な人型に変形させるのである。

キャタピラ部分が展開し、そこから折りたたまれていた脚部が現れ、キャタピラを膝裏に配置する形で変形する。

そうして人型のロボットが完成する。その機体の名は・・・・

 

紫「リンッガアアアアアアアアア!!!!」

 

この機体の名は、「リンガー」ユカリンガーの素体であることからこの名が付けられた。

これに武装ユニットである「ゆかりんアーマー」を装備することで、本機は完全な対モンスター用重機動決戦兵器ユカリンガーとなるのである。

そのゆかりんアーマーはいくつかの種類を建造する予定であるが、現在完成しているのはひとつだけである。その唯一完成しているゆかりんアーマーとの合体試験が、リンガーへの変形が完了した後行われようとしていた。

 

藍「リンガーへの変形、問題なく完了!!続いて最終合身の試験へと移行する!」

橙「了解!最終合身・・・・・プログラム・アクティベート!!」

紫「最終っっっ・・・・・・・合身オオオオオオオオオオオン!!!!」

 

橙が合身プログラムを起動すると、ドックから数機のゆかりんアーマーが飛び立った。そしてそれはリンガーの周囲を飛び交い、リンガーと合体を開始した。

胸部には赤いチェストアーマー、腕部には手首から先を覆うようにグローブ状の装甲が合体する。さらに脚部へ相手の甲殻を削り取るための穿孔装置が取り付けられる。

ユカリンガーへの戦闘能力の付加は問題なく執り行われた、と思われた。

しかし合体が完全に終了する前に、橙と藍が操作しているコンソールに赤い警告が現れた。

 

橙「だ、だめです!!リンガーにとてつもない負荷がかかってます!!!このままだと、機体がバラバラになります!」

藍「くっ・・・・・やむをえん、合身中止だ!!急げ!」

 

リンガーに高い戦闘能力を付加する最終合身、だがそれには絶大な欠点があった。

それは、合身の成功率だった。実験開始前の試算では、その成功率は5%にも満たなかったのだ。

ユカリンガーは巨大機動兵器としては異常な速さで開発、建造が行われた。それ故に合身プログラムの精度などにまだ未熟な点が多く、リンガーへの変形はともかく最終合身の成功率は非常に低かったのだ。

短期間であらゆる敵に対応する兵器を作るという他に類を見ない研究は、やはり困難なものだった。

 

藍「・・・・やはり、まだ無理か・・・・」

橙「残念です・・・・せっかく完成したと思ったのに・・・・・」

藍「落ち込んではいけない、橙。元々この実験は合身プログラムの不完全な点を洗い出すためのものでもあったのだ。今回の失敗を糧に、次こそ成功させるのだ。橙、にとりへデータの送信はしたか?」

橙「はい。機体の動きや角度の違いに微妙についていけてなかったので、そのあたりを微調整するシステムを組み込んでもらうように言っておきました」

藍「うむ、よくやった。あとはにとりがプログラムを改善してくれるのを待つとしよう」

 

橙が送ったデータは、ドックの奥にあるラボへと送られていた。

そこでは開発チーフであるにとりが、無心でコンソールと向かい合っていた。

 

に「やっぱり失敗か・・・・機体の動きや角度を認識して追尾するプログラムにまだ粗があるね。だから装備の位置が微妙にずれたりする・・・・・これが積もり積もって、機体に過負荷をかけてるのか・・・・」

に「うん、まあ原因さえわかっちゃえば後の修正はそう難しくないね。やっぱり実際に実験はしてみるもんだよ」

紫「そう、それはよかったわ。なるべく早くお願いね、にとり」

 

通信機越しに紫と会話しながら、にとりはプログラムを組みなおしていく。

 

紫「・・・・・しかしあなた、ひどい顔ね・・・・・」

に「・・・・・睡眠時間の9割を剥奪されれば、こうもなるよ・・・・・あえて言うけど、17徹だよ私・・・・・寝かせてよ少しは・・・・」

 

17日に及ぶ連続の徹夜。それはにとりの顔に特大の隈を作っていた。

それを茶化した紫に、にとりは不満をぶつける。

 

紫「全ての河童の中で一番能力があるのはあなたよ。そのあなたに休まれたら、ユカリンガーの完成はかなり遠のいてしまうわ」

に「まあ、私も怪物なんかに殺されたくないからがんばるけどさ・・・・もし私が人間だったら死んでるよこれ。過労死してるよきっと・・・・とんでもないブラックぶりだよね」

紫「人間じゃないんだから、大丈夫よ。これが終わったら休んでいいから頑張りなさいな」

に「はいはい・・・・・ん?外にいる仲間から通信だ。なんだろ・・・・」

「た、大変ですにとりさん!!また怪物が現れました!」

に「な、なんだって!!」

 

外で作業をしていた河童たちから送られてきた通信が、よくない報せを告げる。

またしても現れた異国からの怪物。それとの戦いは、紫たちに課せられた使命である。

だが、その戦うための力はまだ未完成なのだ。そんな状況で、紫たちは戦わねばならなかった。

 

紫「どうやら、やるしかなさそうね・・・・・」

 

やむなく紫は、リンガーのままで戦闘を開始した。

その紫を支援するべく、藍たちもまた管制による支援を行おうとしていた。

 

藍「仕方がない・・・・か。紫様、どうか無茶はなさいませんように」

橙「あの、藍さま・・・・・あの怪物はなんていうんですか?でっかい斧持ってますけど」

藍「ああ、あれはミノタウロスという牛と人間を合わせたような怪物だ。オーガに匹敵するとも言われるその怪力でもって振るう斧の威力は絶大だ。決して攻撃を食らうことのないよう立ち回らなければならない」

 

藍の言うとおり、屈強な肉体で以って振るう大斧は触れもせずに大木を揺るがすほどの力を持っていた。

一撃でも食らえば致命傷となるその攻撃が、リンガーに襲い掛かる。

 

ブオンッ!ブオンッ!

 

紫「くっ・・・・・!」

藍「紫様、どうかお気をつけください!もしもリンガーが破壊されるようなことがあれば・・・」

紫「わかっているわ!藍たちはナビをお願い!」

藍「はっ!!」

 

ユカリンガーになる前にそのコアユニットであるリンガーが撃墜される、それは特に避けるべき事態である。それゆえ、紫は慎重な戦いを余儀なくされていた。

振るう斧が、その巨体が、幻想郷の土地を荒らしていく。だがそれを止める力は、今の紫にはない。

そしてミノタウロスが、人里をその視界に捉えた。それはリンガーが撃墜されるよりも尚、最悪の事態だった。

 

紫「・・・!まずいっ!!」

 

紫が人里とミノタウロスとの間に割り込み、ケンタウロスと取っ組み合う。

細身のリンガーと筋骨隆々たるミノタウロス、どちらが勝つかは明白だった。

 

橙「り、リンガーの腕と脚の耐久値が危険域です!!このままだと、機体が保ちません!」

藍「まだか河童!!まだ終わらないのか!?」

に「あ、あと少し!!このプログラムさえ終われば・・・・・!!五秒待って!!」

に「・・・・・・・よし、終わったよ!!そっちにもうデータは送ったから!」

橙「藍さま!!!」

藍「ああ・・・・!!橙、最終合身を承認する!!!」

橙「了解!!最終合身・・・・・プログラム・アクティベート!!!!」

 

紫「やっと、終わったのね・・・・!!」

 

最終調整が終わったことを通信で聞いた紫は、組み合った腕を支えにして飛び上がり、両足でケンタウロスを蹴りつけた。

予想外の攻撃を受け、後ろに押し出されるケンタウロス。この隙に、紫は空中に飛び上がり合身を開始した。

 

紫「よおおし!!最終ッッッッ・・・・・合身オオオオオオオォォォォオオン!!!!」

 

機体を包むようにスキマによる空間湾曲フィールドを張り巡らせ、その内部でゆかりんアーマーと合身する。

外部からは一切中をうかがうことはできず、触れることも通信を行うこともできない。一度失敗している故に、にとりや藍たちは固唾を飲んで見守っていた。

だが、それは杞憂だった。機体を包む湾曲フィールドが消えると共に、高らかな声が響き渡る。

その声と共に姿を現したもの。それは幻想郷を守るために更なる力を得た、新たなる賢者王・・・・

 

紫「ユカリンガァァーーー・・・・乙おおおおおおつっっっ!!!」

 

その名は、ユカリンガー乙。かつて幻想郷を護ったユカリンガーの名を継ぐ者。二代目のユカリンガーという意味の名である。

妖力を増幅するための魔力媒体と金属を合わせて溶かし込んだ合金によって作られた増加装甲、ゆかりんアーマーを装着することにより飛躍的な出力の上昇を果たし、かつ多彩な近接格闘武装を機体に付与する。これこそが幻想郷を守るための力、最終合身である。

 

紫「いくわよ!!はああああぁぁああああっ!!!!」

 

雄々しい掛け声と共に、ユカリンガーはミノタウロスに向かっていく。

相手を人里から遠ざけるために、相撲のようにミノタウロスと組み合う。

怪力を旨とする相手と力で勝負をする。常識で考えれば無謀極まりない行いである。事実、先程までは力負けして押し込まれていた。

だが、今のユカリンガーは先程までとは違う。真の力を発揮したユカリンガーは、怪力自慢の怪物と組み合ってなお少しも力負けしてはいなかった。

 

紫「であああああああああ!!!」

 

そしてユカリンガーはミノタウロスを押し切り、人里から遠ざけた。

予想外に強い力で押し返され、後ずさるミノタウロス。だが彼には、まだ武器が残されている。

そう、その怪力で持って振るう巨大な斧である。

触れたものすべてを破壊する大斧が、ユカリンガーに襲いかかる。

 

藍「まずいっ!?回避してください紫様!!」

 

出力は飛躍的に増大しているが、装甲そのものの強度はリンガーの構造材とさして変わるものではない。増加装甲はどちらかと言えば出力向上のためのものであるため、防御力そのものはそれほど変わっていないのである。それゆえ、藍は斧による攻撃には非常に危機感を抱いていた。

ユカリンガーに振り下ろされる大斧を前に、藍は回避するよう紫に叫ぶ。だが、その瞬間に藍は信じられない光景を目の当たりにする。

なんと、振り下ろされた斧がユカリンガーに触れる直前で止まっているのだ。当然、ミノタウロスが寸止めしたというわけではない。管制室に、動揺が広がる。

 

藍「どういうことだ?なぜ斧が止まっている・・・・おい河童、なにかわからないか?」

に「ち、ちょっと待って、今調べてるから・・・・こ、これは・・・・!」

藍「どうだ、なにかわかったか?」

に「わかっちゃえば、単純だね・・・・ユカリンガーが合身する時に攻撃を喰らわないように張ってた空間湾曲フィールドを、小規模かつピンポイントに張ってるっていうだけだね。こんなことをするのは高度な計算が必要だから無理だと思ってたけど・・・・さすがは妖怪の賢者さまだよ」

 

機体周囲の空間を捻じ曲げることにより、ユカリンガーは自身に降りかかる攻撃を防御していた。

振り下ろされる斧を受け止め、ユカリンガーは反撃の拳をミノタウロスに見舞う。

強化された出力によって放たれる拳の威力は絶大で、ミノタウロスを一撃でよろめかせる。

しかしその時、ユカリンガーに異変が起きた。殴りつけた拳が軋み、悲鳴を上げ始めたのだ。

 

橙「ゆ、ユカリンガーの右腕、中破!!機体が大きすぎるパワーについていけてません!!」

藍「想像以上に出力が大きい・・・・!これ以上の戦闘は機体に負荷がかかるか・・・・紫様、なるべく早期に決着をつけてください!」

紫「なら・・・・あれの出番ね!!」

 

紫は戦いを早く終わらせるための一撃を放つべく、よろめいたミノタウロスから距離をとる。

距離が十分になったところで、紫は腕を高らかに振り上げ、胸の前で交差させ、機体全体でYの字を象ったポーズをとり、技名を大きな声で叫ぶ。

 

紫「はああああああ!!!!殲滅せよ!アルティメットです☆ビイイイイイィィィィィィイイイイイム!!!!!」

に「あれ、リンガービームじゃ・・・・!?」

 

高らかな掛け声と共に眼から放たれたレーザーはミノタウロスの胸を貫いた。

ドラゴンのような硬い甲殻を持たないミノタウロスに、これを防ぐ術はなかった。

心臓を貫かれ、行動不能となったミノタウロス。そのミノタウロスに、紫は最後の止めを刺そうとする。

 

紫「再生されると困るから・・・・ね。少し気は引けるけど・・・・・」

に「この前のドラゴンのこともあるし、心臓を貫いたってだけじゃ不安だからね・・・・とどめはきっちり刺さないと、こっちが滅ぼされかねないもんね・・・・」

藍「致し方ありません。これは、彼らと我々との生存競争なのですから・・・・」

 

倒れ伏したミノタウロスの首を、ユカリンガーはその手で捻じり折った。さしもの巨大モンスターも、頭を破壊されれば完全に死に至る。

生きるために紫は、ミノタウロスの生命を完全に奪い去った。

滅ぼさねば滅ぼされる。ユカリンガーの戦いは、残酷な生存競争なのだ。

 

に「さて、なんとか今回は勝ったけど・・・・課題はまだまだたくさんあるね。機体が途中で中破したり、押し合いの時に壊れかけたりしたのはそもそものフレーム強度が足りないせいだ・・・・これは急いで改良するべきことだね」

紫「残念ねにとり、寝るのが当分先延ばしになって」

に「えっ!?いや、一日ぐらい寝てから作業に取り掛かっても・・・・」

紫「駄目ね。敵は明日にでもやってくるかもしれないのだもの」

藍「というわけだ。頼んだぞ河童」

橙「おねがいしまーす!」

に「あは、あはは・・・・・・・」

 

幻想郷を脅かす脅威に立ち向かう力、ユカリンガーはついに完成した。これから訪れる数々の怪物に、ユカリンガーはその力と知恵で立ち向かっていくのである。

ユカリンガーの戦いは、始まったばかりだ。

 

 

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