---司波深雪---
お兄様がいらっしゃらない時、お母様から衝撃的なお話を聞いた。
「あなたには血肉を分けた、一卵性双生児の弟がいるの。名前は雪夜…達也の為の完全調整体なの…」
お兄様の為の完全調整体の弟…それって、私も?
「これは、あなたには秘密だったけど…達也も知らないことなんだけど…」
何かを言い澱むお母様。
「あなたは達也の為の完全調整体なの…おかしいと思わなかった?同学年に兄がいるなんて…」
思っていました。年子になるはずだと…なのに、遅生まれのお兄様、年を越して早生まれの私。学年が同じというのは、お兄様が生まれてすぐに受精…でも、それだと母乳が出なくなる…
「深雪と雪夜は試験管で受精した。そして、借り腹で産まれたのよ。達也の成長を阻害しないように」
「どうして…そんなことを?」
人工授精…借り腹…それはショックだった…お母様から、産み出されていないなんて…
「達也は…真夜の復讐の道具…人工魔導師なの。あの子を止める為の存在があなた。そして、深雪に万が一が遭った場合の予備として、作られたのが雪夜なのよ…調整体である深雪と雪夜は、一卵性双生児なので見た目はそっくりだけど、魔法師としての遺伝子は組み込まれた遺伝子に依る物が殆ど。だから、兄妹もしくは姉弟で交わっても、最強の魔法師が産まれるらしいの。近親相姦にならない配慮が為されているんだって…さらに恐ろしいのは、深雪がいなくなった場合、雪夜を女性にして達也と交配を…耐えられないよね…私もだし…」
お母様の顔は涙でぐしゃぐしゃになっていた。誰にも言えずに、一人で悩まれていたのかもしれない。でも、酷い…私達は叔母様の道具だったなんて…しかも、私達の子供まで道具になんて…許せない…
「私はもう長くない…分かるのよ。不思議とね…私の49日の法要が終わったら、あの子に逢いに行ってあげて…」
怒りに包まれていく私。そんな私に、涙を拭いながら、1枚の地図と写真を私に手渡してきたお母様。
「雪夜の成長した姿は、写真だけ…深雪…お願い…あの子をお願いね」
私の手を握り締めるお母様。写真には私に似た少年が写っていた。私の弟…血肉を分けた雪夜…
「後、雪夜の正体は…なるべく、バレないようにね。また、道具に利用されるから…私はただ、子供達と普通に生きたかった。私が四葉家の人間だったばっかりに…ごめんなさい…深雪…」
私に縋り泣いているお母様。
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お母様の言われた通り、告白から程無くして、息を引き取った。長年に渡っての無理が祟ったようだ。
法要が終わり、数日後、渡された地図の場所へ、一人で向かった。そこは、森の中にある大きなお屋敷であった。表札には『神代』と書かれている。インターホンを押すと、大きな門が開き、作務衣姿の方々が招き入れてくれた。大きな間口の玄関…どんな方の家なのだろうか?
「司波深雪さんですね」
作務衣姿の方に訊かれた。
「はい…雪夜に会いにきました」
「どうぞ、こちらへ」
作務衣姿の方の後ろを付いて行く。奥座敷のような場所に通された。
「楽な姿勢でいてください。俺は当主の神代亘です」
私よりも少し歳上くらいの青年が目の前に座っており、名乗ってきた。
「私は…」
「深雪さんですね。お待ちしておりました。深夜様の魂がいらしたので、そろそろかと思っていました」
お母様の魂?
「魂は死後49日は地上を彷徨います。その後、天へと昇華されていくのですが、深夜様は雪夜に会いに来ました。最初で最後の対面をしにね」
最初で最後…会ったことが無かったの?
「四葉家では、雪夜は死んだことになってますから。会いたくても、会いに来れば、存在がバレてしまうのを恐れていたようです」
そうだったんだ…そうだわ。弟がいたなんて話は、聞いたことが無かった。
「雪夜のことを少し話しておきます。アイツの能力は『反射』『透過』『安堵』『癒やし』です。深雪さんを護る為と言っていい完全調整体ですよ。『安堵』はあなたの疲れ切った心を癒やしてくれると思います。『癒やし』はあなたの精神ダメージを減らしてくれると思います」
私の為の道具…
「勘違いされているようですが、雪夜は道具では無いですよ。あなたの身体の一部、血肉を分けた弟です。それを忘れないでください。では、こちらへ」
更に奥へと案内された。井戸があり、その奥には扉がある土間のような場所。
「ここで身を清め、一糸纏わぬ姿で、あの扉を潜って下さい。儀式は雪夜が行います。彼に従って下さい」
儀式?何のだろうか?
「雪夜の能力の解放と、あなたとのリンクをする儀式ですよ」
そういうと、神代亘さんは、去って行った。言われた通り、全裸になり井戸水で身を清めていく。井戸水は冷たい…なのに身体の芯が熱くなっていく。乳首が固く締まり、そそり立っている。股間からは…何を感じているんだろうか…弟と会うだけなのに。私の身体は何かに呼応するように、私の頭の中は悶悶としていく。
清め終わり?逆に汚れた気がするのだけど…洗えば洗うほど、身体が反応していくので、終わりにした。そして、扉を開け、中に入っていく。生暖かい風が通り抜ける洞窟のようだ。一歩一歩確実に進んでいく。これって産道を模しているのかもって、脳裏に浮かんだ。きっと、弟は子宮に当たる場所にいるはずだと直感した。
しばらく進むと、開けた場所に出た。全裸の男性が座禅を組み、瞑想に耽っているようだったけど、私の気配を感じたのか、立ち上がり、私と向き合った。
彼は…私にソックリだった。髪型、体格、胸、腰、そして性器は違うけども…背丈は同じくらいだ。各部のパーツの位置も同じ場所みたい。
「姉さん?深雪姉さんなの?」
彼に声を掛けられた。耳と脳の両方で聞こえる彼の声。
「あなたが…雪夜なの?」
「姉さん…」
雪夜が一歩踏み出すと…身体がふわっと軽くなり、雪夜に引き寄せられていく。第一印象通り、目線の位置、鼻の位置、口の位置…様々なパーツの位置が同じだった。
雪夜と抱き合うと、自然に口に口が重なり、乳首には乳首が重なり、臍に臍が重なり、そして、性器には性器が…
何もしていないのに、性器同士が交わる。そこにいるのが当然という感じで、抵抗感も違和感も無い。私の中にいる雪夜。ただ、いるだけだけど、暖かいオーラが染み出ているようだ。身体の芯から暖かく、心地良くなっていく。
ストレスやイヤな記憶が失せていく。その代わりに高揚感に満ちあふれていき…頭の中が真っ白になっていく。その真っ白となった脳裏に、雪夜の記憶が走馬燈のように映し出されていく。これは、夢なのか?現実なのか?わからない。でも、それは雪夜の記憶だと断言できる私。そして、雪夜の脳裏には、私の記憶が走馬燈のように映し出されているはずだ。
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お互いがお互いの記憶を共有した。そんな感じになる。
「姉さん…胸に触れていい?」
ビクついた雪夜の声…スキンシップをしたことが無いのかな?
「勿論よ。私はあなたの物…あなたは私の物…元々1つだったんだから…」
拒否する理由が見当たらない。身体の総てをこの子に差し出せる気がする。雪夜の手が恐る恐る私の胸に触れる。
「柔らかい…吸い付くようだ…」
何かに誘われるように、雪夜の舌先が乳首に触れる。母乳に憧れているのかな?
「姉さんの香り…好きだよ」
股間に顔を埋め、普段は隠れている小豆を舐めている雪夜、彼の鼻先は体内に入っているようで、彼の鼻息がなんとも言え無い感覚に思える。
「好きにしていいのよ…雪夜…あなたは私だから…」
お兄様にはこんな態度は見せられない。こんな姿は見せたくない。でも雪夜になら…雪夜には見て欲しい、触れて欲しい、感じて欲しい…受け入れて欲しい。弟への願望が渦巻いていく。
体内に何かが注入された。見るまでも、訊くまでも無い、弟の体液…私の膣内は、彼の体液でコーティングされていく。たぶん子宮もだろう。そんな気がする。弟以外と交配しないように…蹂躙や陵辱されても弟以外を受け入れ無いように…弟が私を護ってくれるのだから。
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意識が完全に覚醒すると、ベッドの上で弟と添い寝をしていた。性器同士は交わったまま…
「ここは?」
「儀式は無事に終わったよ。ここは僕の部屋。姉さんの…薄ピンク色で綺麗だった。触れていいか迷っちゃったよ」
私の頬に頬をを擦り寄せている雪夜。甘えん坊なのかな。
「初めてが姉さんで良かった…」
「私も…雪夜、ごめんね。一人にして…」
「母さんの魂と、たくさん会話をした。どうして一人なのかも、教えて貰った。これからは、この身が果てるまで姉さんと一緒だよ」
頬を触れ合わせているので、雪夜の表情はわからない。でも、彼の涙が頬に触れていく。
「一緒に暮らせる?」
雪夜と一緒にいたい…
「ダメだよ。バレちゃうよ。でも、高校は一緒の高校へ通う。神代雪夜として…姉さんの彼氏として…姉さんの隣にいたい」
「そうか…暮らせないんだ…」
今、一緒にいたいんだけど…
「高校を卒業したら…一緒に暮らそうよ。それまでに、僕達に酷い目を合わせた奴らに復讐をしてさぁ。二度と手を出させないようにしようよ」
「出来るなら…」
四葉家を相手に復讐なんか出来るかな?でも、雪夜が掴まれば道具に…
「出来る…出来無いと…姉さんと一緒に居られない。だから、がんばる。もっと、強くなる」
「うん♪待っているわ、雪夜」
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国立魔法大学付属第一高等学校…私達が通おうと思っている高校だ。入学試験は、筆記と実技の2つ行われる。
雪夜とリンクした私は、ルームと呼ばれる精神世界にある雪夜の部屋に行けるようになった。行っている間は意識が疎かになるので、寝ている時だけルームへ向かう。そして、身体がどこにいようと、毎日毎晩、雪夜とルームで添い寝が出来るようになった。
起きている場合は、念話と言われる、私と雪夜だけのテレパシーラインで会話が出来る。魔力を使わないので、便利であり、術式起動をしないので、お兄様にもバレることも無い。
筆記テストは、念話で雪夜に答えを教えた。まるっきり同じではダメなので、多少自力で解いたらしいけど…実技は、私と同じ魔法力を待ち、更に陰陽師としても魔力もある雪夜。難なく終えることが出来たようだ。まぁ、実技は手助けは出来無いけど。
テストの結果、雪夜は同じクラスになれた。1年A組である。これからは、毎日逢える♪
---神代雪夜---
姉ちゃんと同じ学校、同じクラスで通える。毎日逢える。ルームで毎日逢っているけど、実際に逢えるのは嬉しい。呼び方は注意しないと…『姉ちゃん』呼びはマズい。『深雪』とか『深雪さん』にしないとなぁ。
そして、入学式。まっさらな制服に袖を通した。家も引っ越した。学校の近所のアパートに。バス、トイレ、キッチン付きである。当面は問題が無いだろう。セキュリティが甘いのが難点ではあるが、神代流結界を張り、対処している。
「お前、料理出来るのか?」
神代家当主の姉の綾香様に言われた。元々は『姉さん』呼びだったんだけど、姉ちゃんと区別する為に『様』呼びにしていてる。
「綾香様よりは出来ますよ♪」
「カップラーメンは料理で無いぞ。電子レンジでチンも違う。まして、レトルトも違うからな!」
「う~ん…ごめんなさい。出来ません…」
入学式の朝から、綾香様との会話という荒行は凹む…
「学費、家賃、生活費の心配はするな。遊行費もだ!お前くらい養うのは、私の小遣いでも充分だし♪」
いったい、いくら兄さんから、ふんだくっているんだ。
「神代家の次男って立場だ。堂々と振る舞い、売られたケンカは勝て!」
売られたケンカは総て買い取りらしい。武闘派な神代家だからなぁ。
「じゃ、行こうか♪」
父兄枠で入学式に参加らしい姉さん。戸籍上、神代家の実子として登録されている僕の立場、境遇は兄さん、姉さんは知っている。知っている上で実の弟として扱ってくれている。
「勝て無い相手がいたら報告しろよな。私か亘がボコるから♪」
武闘派な兄姉。二人から、身を守る術を学んでいる。拳法、柔術、剣術、魔術など。僕のパッシブスキルは殺傷力が有るので、ヤバい時以外は使用禁止で、そういう術は必要である。
学校へ行くと人、人、人…これが人だかりという物か?産まれてから引っ越すまで、神代家本邸から、ほとんど出たことが無かった僕は目が回りそうだ。
「慣れろよ!こういうのは慣れるしかない」
そうかも知れない。
「あれ?雪夜じゃん♪」
知った声が聞こえた。振り返ると、千刃流本家の千葉家の次女のエリカがいた。他流試合と言って、度々神代家に剣術の鍛錬をしに来ていたので、知っていた。
「綾香様まで…え…雪夜と同じ学校なんだ…」
耳を紅く染めるエリカ。熱でも有るのか?
「ほぉ~千葉家の娘がなぁ。止めておけ、雪夜の彼女には勝て無いぞ!」
姉さんがとんでもない発言をしている。僕の彼女?あっ!姉ちゃんか…
「え!雪夜に彼女?ヒッキーなのに?」
確かに引きこもりである。
「そうだ。ヒッキーでも彼女が出来たんだよ~♪」
自慢げに言う姉さん。
「嘘っぽいなぁ~。今度、会わせて下さいよ」
「この後、新入生代表で演説するはずだ。しっかりと見ろよ♪」
彼女が姉ちゃんって、この時点でバレたら、マズいだろ?売り言葉には買い言葉な武闘派な姉さん。
「何?そんな才女をどこで?妖しいなぁ…担いでいるんでしょ?ねぇ、綾香様♪」
「ふふふ…どこまで余裕でいられるか見ものだな、千葉家の娘よ♪」
基本的に、この二人、相性が良い気がする。売り言葉には買い言葉と言うマシンガントークが、乗りに乗っているし。まぁ、似たような性格だしなぁ。突っ走ったら周囲が見えないと言うか…
遠くの方に、姉ちゃんと見知らぬ男性が、並んで歩いているのが見えた。彼が兄ちゃんの達也だな。次の瞬間、
『似合っているよ、雪夜♪』
って、姉ちゃんから念話が届いた。
『ありがとう、姉ちゃん!』
と、返事をしておく。姉さんとエリカのトークは、留まる処を知らない感じで、時間が過ぎていき、入学式の会場へ入る時間まで続いた。