---神代雪夜---
正門前で、姉ちゃんとお客さんを待っていた。
「来ないわね…」
僕に抱きつき、頬を重ねている姉ちゃん。校内ではこれが限界ラインだ。真由美にキスはダメと言われたし。う~ん…
無線からは、討論会の会場周辺の風紀委員達のヤリトリが聞こえている。まぁ、会場内には達也がいるから問題無いだろう。
開始時間が迫ってくると共に、地面が小刻みに振動している。キャタピラ系か?
「姉ちゃん、来たみたい」
『こちら、正門前。お客さんが来た模様です』
無線で報告する姉ちゃん。抱きついているのには、理由がある。僕と抱きついて居る限り、いや、僕と接している限り、僕の防御能力の防御範囲内になるのだ。
「姉ちゃん、11時方向55度」
姉ちゃんが僕の指示した方向へ凍結系魔法を撃ち出す。急にローター音が途絶えて、正門近くに軍用ヘリが墜落してきた。爆風が僕達を襲うが、『透過』して僕達の後方へ流していく。
ドン!
戦車の砲弾らしき物が飛んで来た。フルカウンターで撃ち出した兵器へ返却すると、正門の向こう側で、激しい爆発音と共に火柱が上がった。学校の正門を挟んで、攻防が続く。色々な兵器が僕達を襲うが、総て返却していく。間隙を縫って、工作員が入り込むと、姉ちゃんが凍結していく。彼らは、僕達を消さないかぎり、正門からは入れないのだ。
うん?タンクローリーが突っ込んできそうだ。これは、ダメだ。
『ファイヤーバスーカ』と言う、炎の砲弾を撃ち出して、正門の手前で爆破した。オイルに寄る延焼を防ぐ為、姉ちゃんが火の手の上がっている場所を凍結していく。
『会場にテログループが乱入…』
達也がいるし、レオとかエリカもいるし…どうにかなるだろう。
「雪夜君♪」
援軍の声がした。下僕2号の響子だ。響子の属する部隊を前もって、手配しておいて正解だった。
「たった、二人であんな武装集団を制圧って…私達、要らないでしょ?」
「いるんだよ。テログループが高校の討論会程度を襲うか?他に目的が有るんだろう」
「あぁ…そういうことね。ここは私達にまかせて、雪夜君は行って♪」
「サンキュー、響子」
ご褒美に唇を重ねる。これにより、今夜は好きな時間にお楽しみタイムを迎えられる様に、膣内へ魔法陣を刻んであるのだ。下僕といっても性奴隷では無いから。
姉ちゃんと移動する。
「どこが臭いと思う?」
「データ保管室。魔法大学とのデーターリンク装置が有るんだけど、そこからハッキングすれば、魔法大学のデータは取り放題だよ」
「で、罠は?」
「仕掛けてあるよ」
二人でデータ保管室に向かうと、施錠は解錠されていた。でも、部屋の中で盗人達は、半狂乱である。
「何を仕掛けたんだ?」
後から来た服部先輩に訊かれた。
「データをハッキングすると、百鬼夜行を発動する術式です。この狭さでは、百鬼を召喚するのは困難なので、精神攻撃な幻術系の方を仕掛けました」
「なぁ…実像系も使えるのか?」
「使えます。通常の百鬼夜行は本物の鬼を100匹と魑魅魍魎を召喚します。陵辱系だと、鬼達が違う意味で襲い掛かりますよ♪」
「それは喰らいたくないなぁ…」
苦笑いをしている服部先輩。僕は部屋に入り、術の発動を停止させた。で、忍び込んだ賊達は響子の部隊に引き渡した。引き渡す前に、記憶を読み出したのは内緒だけど。
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無事に学校を護り切ったことで、学内はお祭り騒ぎで有る。正門前は、酷い有様ではあるが、人家は少ないので、被害は見た目ほどでは無いらしい。
僕と深雪、達也でお祭りを抜け出して、ある場所へと向かうと、
「おい、抜け駆けはダメって、言っただろ?」
って…振り返ると、服部先輩、十文字先輩、摩利さん、沢木さんがいた。
「ここは何だ?」
十文字先輩に訊かれた。
「先程の賊達の記憶を読んで、ここが本拠地って、わかったんです」
「うん?精神感応術か?」
「違います。読心術に近い物です。陰陽師の術です」
「なるほどな…」
納得してくれた十文字先輩。
「で、どうする?」
「先輩達は裏口をお願いします。僕達は正面から行きます」
「わかった。無理するな…」
「僕と司波兄妹が居れば、問題無いです」
裏口に回った先輩達。
『これから、建物を潰します。逃げ出したゴキブリを拘束もしくは無力化してください』
無線に向かって、指示を出した僕。
『潰す?何をするんだ?』
質問に答えずに、実演する。『エアスタンプ』という空気の質量、圧力を膨大にして、建物を空気で踏み潰す術を発動した。土煙を上げて、一瞬でガレキとなる建物。土煙から血の香りもする、何人かは死んだかな?重傷かな?
目の前の惨状に、達也、姉ちゃんが息を飲んで固まっている。
「だから言ったでしょ?僕の術は強力過ぎるから、街中でうかつに使えないって♪」
「こ、これほどとは…」
「雪夜…」
「これでも威力は抑えた方だよ。隕石を降らせるって手も有ったけど、ピンポイントでは狙いにくいから…ははは」
その後、響子の部隊がやって来て、事後処理をしてくれたのだが…
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響子、達也の上官である独立魔装大隊隊長の風間って人に呼び出された。
「君の能力は威力が絶大すぎる。なので、我が独立魔装大隊に入隊して貰う。君個人が使い処を決めるのでは無く。これからは軍が管理する。いいな?!」
横柄だな。僕の能力、僕が使い処を決めたい。僕は道具じゃないんだから!
「僕は誰の配下にも道具にもならない。寧ろ、達也を自由にしてもらいますよ」
「何を言っているんだ?」
「いいですか?僕を基地に呼び出したことは、あなた方の敗因です♪」
僕の隣に兄さんと姉さんが転移してきた。
「お前達…何者だ?」
「神代家当主、神代亘」
「亘と雪夜の姉、神代綾香」
「神代家…」
風間さんの顔色が青ざめていく。
「この基地のネットワークは、神代家が支配した。隠し財産で有る核兵器は、総て無力化したよ」
って、兄さん。
「どうやって、ここへ侵入したんだ?」
基地のセキュリティーに自信を持っていたようだ。
「雪夜の元へ参るのに、我々を阻む物は何も無い」
どこまでも冷たい視線で見つめる兄さん。
「この国に反旗を翻すのか?」
風間さんが、兄さんの視線に怯みながら、訊いてきた。
「何をおっしゃっているのかな?この国を護るのは神代家の役目。寧ろ、あなた方、魔法師集団の方が害虫で有る。殺処分対象ですよ」
「そうそう♪雪夜を道具にしようとした行為は、万死に値する。死刑は確定。猶予はどのくらい要ります?」
兄さんと姉さんのプレッシャーで、追い込まれていく風間さん。
「誰が悪いんですか?達也まで道具にしたのは?ねぇ、風間さん」
「うっ…」
プレッシャーに押しつぶされて、意識を飛ばしてしまった風間さん。
「じゃ、この基地のデータはもうらうか。敵対国と敵対組織を完全駆逐した後、この国の大掃除だな。雪夜は帰っていいぞ。ここからは、神代家でやっておく」
兄さんと姉さんに頭を下げて、その場から転移した。
---十文字克人---
七草を呼び出した。
「どうしたの?」
「どう思う?雪夜を」
「どうって?」
「アイツ…どこかの数字落ちで無いのか?あの術の威力、防御能力は異常なレベルだぞ」
頑強な建物を一瞬で粉砕、戦車などからの砲撃が着弾しても無傷な身体。ほぼ無敵な能力者である。
「だったら、どうなの?そんな事、関係無いと思うわ」
「関係無い?お前だって、数字付きだろ?どこかの数字付きが、アイツを保有していたら、パワーバランスは崩れる。そうは思わないか?」
「思わないわ。彼が彼だし♪」
七草の様子がおかしい。このような重大な案件を即答するようなヤツでは無かったはず。
「お前…何か術を掛けられているのか?」
「何かって何?考えすぎよ」
笑って済ませようとする七草。
「それに、戦って勝てるの?数字付き全員で戦ってさぁ♪」
確信した。こいつは、雪夜に洗脳されているようだ。なんの為に?
「何の為?それは、僕が僕である為ですよ。十文字先輩♪」
秘密の連絡場所。七草が教えたのか?アイツに。
「教えてもらってませんよ。こんな場所があったなんて、知りませんからね。真由美が困った時に、直ぐに駆けつけられるようにしただけですよ」
「雪夜君♪」
アイツに抱きつき、頬を合わせて、スキンシップをしている七草。
「お前がお前である為に、何で七草を洗脳したんだ?」
「酷いなぁ。洗脳なんかしていません。敷いて言えば、インプラントみたいな感じですよ」
インプラント?何かを埋め込んだのか?
「師族会議がもうすぐ開かれます。その時に、議題に上ります。あなた方魔法師達が、過去の悪事を悔い改めるのであれば、問題は起きません」
「過去の悪事だと?」
「そうです。悪事…いや、悪行と言った方が良いかな?僕は、その被害者です。実の母親に会うことも叶わず、実の兄と殺し合い。実の姉と運命的な再会…僕はこんな能力は欲しいと願ったことは無かった。ただ、親子、兄妹との日常的な生活が送りたかっただけだ。それなのに、あなた方、魔法師風情と来たら…そんな願いすら、絶対に叶わないようにしちゃうんですから、横暴だと思いませんか?」
アイツの目には涙が…よほど、悔しい思いをしたのだろう。だが、なんで、七草なんだ?
「あぁ、先輩は勘違いをされていますね。真由美だけで無いですよ」
七草以外にもいるのか…
「これからは疑心暗鬼とも戦ってみてください。では♪」
俺の目の前からアイツと七草が消えた。
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翌日、魔法師協会を訪ねた。師族会議が有るかの確認をしに。俺は当主代理という立場なので、そういう情報を手にすることが出来る。
確認した結果、有るらしい。今は日程調整中で有るそうだ。発議をしたのは四葉家だそうだ。議題は、問題の発生と、これからの有り方だそうだ。問題?何が起きたのだ?雪夜が浮かぶが、アイツには四葉家を追い込むほどの力は無いはずだ。
「おぉ、十文字克人君では無いか…」
老師と呼ばれている九島烈先生だ、
「ここへはどうして?」
ここに来たいきさつ話した。
「なるほど…生きていたのか…」
生きていた?どういうことだ?
「どうことですか?」
「ここだけの話にしてくれるかな?師族会議では公になるがな」
頷く俺。
「昔、教え子に相談されたんだが、自分の知らぬ間に子供が作られているってな」
知らぬ間に?人工授精か?
「で、それが1度で済まなかったらしい。一人では安定しないので、保険で再度作られたらしい。その際、色々と弄られたそうだ」
弄られた?調整体ってことか…まさか、アイツ…
「問題なのは、作れと命じた本人の知らぬ間に、教え子が反旗を翻し、作品は消えたと思わせて、隠してしまったそうだ」
アイツは死んだことにされて、神代家へ…
「隠された場所で、再度調整されて、更に凶悪になったらしい」
神代家で改造されたのか…アイツは人間では無い…まさか…
「だけどな、そんな弄ばれた本人は、人間として生きたいらしいが、そんな凶悪な物を人間として、活かしておいて良いのか…そんな話だよ」
アイツはアイツでありたいから、人間のように扱ってくれるように七草を…
「彼には気の毒だが、道具は道具として使われるのが普通だ。道具が変な意志を持てば、破棄対象になるだろ?」
師族会は、アイツを消すつもりなのか?あんな化け物をどうやって…
「問題は神の代理人が関わったことだ。アイツらは敵にしてはいけない。人間で有る限り、アイツらには勝て無いからな」
それって…神代家は人間では無いのか…
「まぁ、老人の戯言じゃ。流してくれ」
流せって…この話をか?老師の考えていることは、凡人である俺には、わからない。