街の建物の群れの中を縫って歩きながら、俺は異世界の風景と、道を行き交う人々を観察していた。
この世界の建物は、俺が元いた世界よりもやや文明レベルは低めのようだ。
具体的に言えば、中世ヨーロッパにありそうな街並みといったところか。
人の姿も、髪の色や瞳の色のバリエーションが多い事を除けば、俺が元いた世界の人間と変わらない。
時折獣のような耳や尻尾を持った人間がいる事には、さすがに少し驚いてしまったがな。
さて、スマホに表示されている地図によると、目的の少年は、さっきからこの近くで留まっている。
目標の光点の位置から察するに、方角は……
「うああ~っ! そこ、どいて欲しいでござるっ!」
「ござる?」
奇怪な言葉遣いをした女の声が背後から聞こえたかと思うと、俺は後ろから衝撃を受け、地面に薙ぎ倒されていた。
「ちっ、いきなり何をする!」
何処の誰だが知らんが、いい度胸をしているな!
お前のした事が何なのか、分からせて……
「本当に申し訳ないでござる! 拙者、急いでおったでござるよ!」
「!」
頭を上げた俺の前に立っていたのは、ピンクの着物と紺色の袴を履き、長い黒髪を赤い大きなリボンで結った少女だった。
そして彼女の顔は、思わず目を見張ってしまうほどに整っていた。
「大丈夫でござるか? 手を貸すでござるよ!」
「ああ、頼む。」
俺は手を伸ばし、少女に立たせてもらった。
そしてこの時点で、俺は心に決めている事があった。
「君、名前は?」
「拙者の名前でござるか? 拙者は、
「そうか。九重さんは、この近くに住んでいるのか?」
「そうでござるよ……っと、そろそろ行かなくては! 申し訳ないが、これで失礼するでござる!」
八重は慌てた様子で駆けていき、近くの喫茶店の外にあるテーブルに座った。
そのテーブルには既に先客がおり、彼女を待っていたと思われる白いコートを着た少年が話しかけている様子だ。
「おっと、俺にもやらなければならない事があるんだったな。あの娘を手篭めにするのは後回しだ。」
名前を聞いたから、後でスマホを使って居場所を追跡する事が出来る。
急ぐ必要は一切ないのだ。
「さて、俺の目的の相手は……ん?」
スマホの地図を再び確認してみると、目標の少年を示す光点はさっきから一切動いていない。
そして、俺の現在地と光点の距離、方角を踏まえると、目的の少年がいるのはさっきの喫茶店のテーブル。
「八重の向かいに座っているあの白いコートの少年が、例の転生者なのか?」
俺がそんな事を思っていると、少年はタイミング良く、懐から何かを取り出した。
少年が手にした「それ」は、俺が元いた世界で数え切れないほどに見た事のある物。
紛れもなく、スマートフォンだ。
「これは困った事になったな。」
転生者の少年は、八重と親交がある事が今分かっている。
これでは、八重を手篭めにするのは容易ではない。
あの少年も、俺と同じように身体能力や魔法の資質を最大レベルに引き上げられている事だろう。
それに、中年メタボな俺と異なり、奴は若く、体も細い。
何より、この世界で既に生計を立てている彼は、魔法の扱い等は俺よりも当然長けているはず。
まともに戦っても、俺が勝てる可能性は万に一つもない。
また、奴が他にどんな力を持っているか分からない段階で俺が接近すれば、魔法で悪意を感じ取られるなどという展開だってあり得るかもしれない。
そんな魔法があるのかどうか、まだ調べた事はないがな。
一応の警戒は必要だ。
「予定は変更した方が良さそうか?」
少年に近付くのはリスクが高い。
話を聞くのはよした方がいいか。
少年に教えを請わなければどうしても生きていけない訳でもないだろうしな。
生計を立てる方法を知るだけなら、八重を手篭めにしてから彼女に尋ねれば良い。
俺にとって何よりも優先すべきなのは食欲・性欲・睡眠欲。
即ち、人間の三大欲求だ。
「とはいえ、まずは住居を確保しなければならんか。」
住むところがなければ、自分の生活はおろか、八重を捕らえておく場所にも困る。
しかし、この世界には不動産などというものはあるのか?
第一、金がないと契約も何も出来んぞ。
「困った時にはスマホだな。住居の確保の仕方を教えろ。」
スマホの画面に、この世界で家を確保する方法について幾つかの方法が表示される。
それらの大半は、やはり金がないとどうしようもない物ばかりだったが、1つだけ、金のかからない方法はあった。
「魔法を使って自分で作ればいいのか。」
モデリングという魔法を使う事で、金属や木などを自分のイメージした通りに加工できるらしい。
なら、街の外にある木々を適当に魔法で切り倒し、モデリングで形を整え、魔法でそれらのパーツを組み上げれば家の骨組みは造れる。
あとは、魔法で土壁でも作って骨組みに貼り付けて、屋根も何処かから素材を調達して自作すれば、自力で家を建てれるのだ。
これだけの事を1人でやろうとすると、相当な魔力量と緻密な魔力制御が必要になるとも書いてあるが、そこは神様から貰った魔法の資質があるので問題ない。
「よし、行動あるのみだ。」
ついでに、適当な獣を狩ったり魚を捕まえて、食料も調達するとしよう。
そう決まれば、日が暮れる前にさっさと終わらせるか。
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「疲れた……。」
街の郊外に家を建て終わった頃には、既に日が暮れてしまっていた。
魔法を行使し過ぎたせいか、体の方も疲労が溜まり切っており、暫く動けそうにない。
ただ、木を切り倒す途中で見つけた獣や湖の魚を捕まえられたので、食料には当分困らずに済みそうだ。
あとは、金を稼ぐ手段を得る事と、獲物である八重を捕まえるだけ。
「おっと、なら八重を捕まえた後、あの女に何をするか考えておかなければな。」
モデリングという便利魔法があるんだ、調教用の器具も作れるはず。
そうと決まれば、八重にどんな調教を施せばいいか、今のうちに考えておくか。
「まずは、相手を知る事が重要だな。八重の年齢とスリーサイズについて教えろ。」
普通なら、こんな質問をしてもスマホが答えられるはずはない。
しかしここは異世界だからな。
魔法の存在するこの世界では、何でもアリだったようだ。
「ほうほう、これはこれは。元いた世界では女子高生相当の年齢でこのスリーサイズ、実に素晴らしいな。」
特に目を惹いたのは、胸の大きさだ。
グラビアアイドル並みにデカいこのオッパイ、放置する選択肢などあるはずがない。
胸を重点的に責めるのが一番面白そうだ。
「なら、胸の調教用の器具を作るか。あとは、調教に使えそうな魔法が他にあるかも調べておくとしよう。」
元いた世界で、俺は幾人もの女を犯した性犯罪者だった。
死の直前、警察から追われていたのも、その罪が原因だ。
こうしてせっかく生き返ったのだから、心機一転、罪を悔い改めるという考えもなかった訳ではない……なんてあるはずないだろ、馬鹿か?
この魔法の力とスマホで、俺は気に入った異世界の女を捕まえ、俺のモノにする。
ああ、愉しみだ。
異世界の女は、果たしてどんな興奮を俺に与えてくれるのか。
元の世界に存在しなかった魔法という概念を使った調教が、俺に新しい興奮をもたらしてくれるのか。
八重よ、お前は既に俺のモノだ。
待っていろよ!