「ゲート!」
俺は転移の魔法を使い、イロハと共にエリーゼを潜り込ませた廃屋へ飛んだ。
俺達の来訪にすぐに気付いたエリーゼは、こちらまで歩いてくると、その場で片膝を着く。
「ご主人様、ようこそいらっしゃいました。仰せの通り、進撃の準備は出来ています。」
「そうか。」
エリーゼの後ろに続いて、複数人の女達も俺に向かって跪いた。
こいつらが、先程エリーゼの話にあった、リーンの部下の宮廷魔術師共のようだな。
どの女も、若く美しい者ばかりだ。
中でも、緑色のロングヘアの女の容姿は、特に俺の目を惹いた。
前髪は真ん中で分けられていて、年相応の落ち着いた顔立ちをしているが、その身に纏う紫色のボンテージ衣装から零れて丸出しの胸は、サキュバス化前の八重やリンゼを超える爆乳だ。
エリーゼのサキュバスの力は、胸を大きくする雌牛の物ではないので、この緑髪の女の胸のサイズは、エリーゼ同様にサキュバス化前と然程変わらないのだろう。
この女、ただの戦力で終わらせるには惜しい美貌だな。
「そこの緑色の髪の女。お前の名前を聞かせてもらおう。」
「お初にお目にかかります、偉大なるご主人様。私は、宮廷魔術師だったシャルロッテと申します。」
「お前がシャルロッテか。お前の名は聞いているぞ。この国では、リーンに次ぐ魔法の使い手だそうだな?」
「恐縮でございます。私の力など微力なものかと思いますが、ご主人様のため、私の全てを捧げます。」
「うむ。」
今回の戦いが終わったら、リーンの調教を進めつつこの女も愉しませてもらうとするか。
さて、ここからの展開だが……
「ご主人様。大変ですわ!」
「どうした、イロハ。」
窓の外に目を向けていたイロハが、焦りを滲ませた表情を浮かべている。
人間時代から目が良かった彼女に、俺とエリーゼが話している間ユミエルの状況を観察するよう頼んでおいたのだが、何かあったのか?
「ユミエルが、リーン殿と交戦しております。ユミエルはサキュバスの力と魔法で必死に応戦していますが、長くは持たないかと。」
「何!? 戦闘はあくまでも最終手段だとユミエルには言っておいたはず。なのに、命令を忠実に守れる賢いユミエルが戦闘に入ったという事は、リーンが仕掛けてきたか!」
王国の第一王女という重要な手札の喪失が避けられない場合のみ、戦闘に入れ。
俺は、ユミエルにそう指示していた。
彼女がそれに従わざるを得なくなったのなら、こちらに手札を温存できる余裕はない。
暢気に罠カードを伏せて相手の攻撃を待つ手は、最早遅いのだ。
「だが、俺の残る奴隷であるリースがこちらに来るまでは、少なくとも俺は動けん。イロハ、エリーゼ! お前達は、そこの
「はい! 直ちに!」
「わたくし達にお任せください!」
エリーゼとイロハは即座に返事をすると、背中の羽を使って、廃屋の窓から外へ飛び立った。
更に、彼女らに続いて、配下のサキュバス達も窓を乗り越え、ユミエルのいる戦場へ向かっていく。
これで、今俺の持ち得る手札は、ほぼ使い切った。
あとは、未だ俺の手にない切り札を、なんとしても召喚しなければならない。
「リース! まだか!」
リース側に敵の監視がついている可能性など、今更考慮している余裕はなかった。
俺は念話の魔法で、リースに直接呼び掛ける。
すると、リースから瞬時に応答があった。
「申し訳ありません、ご主人様! リーンさんの部下らしき者達が、複数人ほど私をつけてきているので、そちらに向かうにはもう少し時間がかかりそうです。」
「構わん。もうこちらではリーンとユミエル達が直接戦闘に入ったんだ。今更奴に隠すべきものなどない。お前は全速力で、俺の元へ来い。」
「し、しかし、それでは追っ手が……」
「お前についてきた追っ手は、俺が軽く捻り潰してやる。もしくは、この廃屋の中なら衆人の目には晒されないのだから、お前がサキュバスの本性を解放して敵を倒しても構わん。」
「分かりました! では、これより全速力でご主人様の元へ向かいます! 数分ほどで着くと思いますので!」
「ああ。待っているぞ。」
念話を打ち切り、俺は窓の外へ視線を向ける。
リースが来るまでの間、戦況を観察し、何かあれば即時の対応を打たなければならんからな。
しかし、ただの人間である俺に、およそ100メートル以上も先で行われている戦闘を細やかに眺める事など出来るはずがない。
そこで、俺は望遠の魔法を使い、一時的に視力をアフリカ人並みに引き上げ、戦況を視察した。
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リーンとユミエルの戦いは、一方的なものであった。
ユミエルが魔法やサキュバスとしての能力を駆使しても、リーンはその強大な魔力と600年の歳月を経て蓄積された知識、更に最高級のマジックアイテムなどで、ユミエルの一手を容易く潰しつつ反撃してくるのだ。
「うきゃああああああああっ!」
ユミエルの背中に生えている、蝙蝠のような小さな羽の膜は既に大部分が破れてしまっており、最早飛行には使えない。
リーンの雷撃魔法を受けたユミエルは、無様に吹き飛ばされ、地面に叩きつけられて悲鳴を上げた。
「厄介な能力を持っているみたいだけど、戦闘力はそれほどでもないわね。どう、偽ユミナ? いい加減、観念する気になったかしら?」
リーンは腕を組み、冷ややかな眼差しを地面に伏せたユミエルに向けている。
両者の部下達の戦いは五分五分であったが、少なくとも大将同士の戦いは、既に雌雄を決した。
あとは、この偽王女を完全に消滅させるか、或いは捕縛するなりしてしまえば良い。
だが、そうする前に、リーンには相手に問い質しておかなければならない事がある。
「ところで、本物のユミナは何処へやったのかしら? まさか、貴方が本物のユミナだ、なんて言わないわよね?」
目の前のユミナによく似たサキュバスは、容姿のみならず、保有している魔力の質すらも本物そっくりだった。
しかし、サキュバスは変身能力に長けた種族。
その中に、外見だけでなく魔力の質までも偽る事の出来るような能力の持ち主がいたとしても、あり得ないとは言えないのではないか。
そもそも、ユミナが人間であるというのは、リーン自身もよく知っている。
だから、このサキュバスがユミナ本人である事など、絶対にないはずなのだ。
ただ1つ、とある可能性を除けば。
「私は、正真正銘、本物ですよ? いえ、今はユミナではなく、ユミエルという名ですけどね。」
ボロボロになりながらも、ユミエルは立ち上がる。
どう考えても、戦える力など残っていないにも関わらず。
その諦めない姿は、リーンに、在りし日のユミナを思い起こさせるものだった。
「あなたが本物のユミナだというのなら、どうやってサキュバスになったのかしら? 人をサキュバスに変えてしまう事の出来る存在なんて、伝説級のサキュバスくらいしかいないんだけど?」
しかし、その伝説のサキュバス達、「サキュバスの姫」と称される者達は、大昔に勇者達と戦い、全て封印されたと言い伝えられている。
もし、永い時を経て封印が解け、彼女らが目覚めたのだとしたら。
「私が、やるしかないわね。封印を。そして、封印が解けた理由に何者かが関わっているのなら、そいつも倒さなくてはね。」
「やらせないわよ!」
「あら……?」
上空の方から、聞き覚えのある声がリーンの耳に届いた。
声の主は、複数の仲間達を伴い、ユミエルとリーンの間に降り立つ。
「あなたは、エルゼ? それにそっちは、もしかして、八重?」
ユミナによく似たサキュバスだけでなく、エルゼや八重そっくりの顔立ちをしたサキュバスが、リーンの眼前に突然姿を現したのだ。
更に、彼女らの後ろには、先程リーンが廃屋へ送り出したはずのシャルロッテ達に似たサキュバスまでもが控えている。
これら全てのサキュバス達が、何者かが変身した姿なのだろうか?
否、それは違う。
彼女達は、おそらく本当にかつてエルゼや八重だった者達なのだ。
その証拠に、リーンの周辺で戦っていた彼女の部下達に、変化が起こっていた。
「あああんっ! 急に、体が火照ってきましたぁ!」
「もう駄目、我慢できないです!」
ユミエルに洗脳された男性の宮廷魔術師達と矛を交えていたはずの女性宮廷魔術師達が、杖を下ろし、その場で自慰を始めたのだ。
そして、彼女達が喘ぐ度、頭部からは角が生え、ローブの背中の布を破って翼が現れ、段々と姿がサキュバスに近付いていく。
「これはどういう事? まさか、あなた達が何かしたの?」
エルゼと八重に似たサキュバス達に、リーンは問い掛ける。
すると、エルゼに似た方のサキュバスが、口元から牙を覗かせながら微笑んだ。
「あたしは、周囲の女達を強制的に発情させて、サキュバスに変える力を持っているわ。この力で、リーンの部下達は頂いたわよ。」
「そんな事、普通のサキュバスには出来ないはず。あなたは、もしかして伝説のサキュバスの力を得たとでもいうの?」
リーンの表情に、最早余裕などはない。
彼女が全力を出せば、この数を全て相手にしても勝てる見込みはあるだろう。
しかし、サキュバス化した人間を元に戻す手段は、リーンも知らなかった。
となれば、周りの人間を問答無用でサキュバス化させる危険な能力の持ち主を殺すしかない。
リーンが思考の狭間に囚われたその瞬間、八重に似たサキュバスが動いた。
「わたくしの能力で、皆さんのサキュバスとしての能力を引き上げて差し上げますわ! 浴びなさい、母性の甘い雨を!」
八重似のサキュバスが、人間の頭を優に超えるサイズを誇る己の魔乳の先端、真っ黒の肥大化乳首から白い液体を勢い良く噴出し、上空へ放った。
宙へ飛んだ液体は、アーチを描いて地面へ落下し、周囲一帯に降り注ぐ。
それはまさに、母乳の雨。
雨を浴びた女達は、サキュバス化を加速させ、あっという間にボンテージ衣装を纏ったサキュバスに変貌した。
男達はまるで赤子のように母乳を求め、天を仰いで口を開ける。
彼らの口の中に母乳が注がれると、股間のモノが肥大化し、ズボンを突き破って雄雄しい姿を現した。
「さあ、反撃開始ですわよ。」
八重によく似たサキュバスが、恍惚とした笑みをリーンに向ける。
それが合図となって、戦闘は第2ラウンドへと突入した。