マリアの圧倒的な力の前に、リーンは敗れた。
手足を失ったリーンに向けて、マリアは愉しそうに語り掛ける。
「では、宴を始めましょう。皆さん、こちらへ来て下さいな。」
マリアがパンパンと手を叩くと、彼女の姉妹達やサキュバス化した女共、それに性欲に支配された男までもがマリアの周りに集まった。
彼らは円の形に並んでいて、その中心には、地面に伏したリーンがいる。
「何をするつもり……?」
息も絶え絶えといった様子のリーンが、マリアに問う。
すると、マリアは肩を竦め、口元から鋭い牙を覗かせた。
「あなたがわたくしのペットになった事を記念して、パーティをするのです。さあ、皆さん! この素晴らしき日に祝福を!」
「おおおっ!」
サキュバス達も男共も、マリアの声に合わせて一斉に勝ち鬨の声を挙げる。
この僅かな時間で、マリアはこいつらを全て掌握し切ってしまったらしい。
全く、とんでもない女だ。
まるでメアリー・スーだな。
「皆さん、祝福のシャワーをかけてあげて下さい!」
「はいっ!」
「リーン様にぶっかけてやるぞぉ!」
サキュバス達は、魔法のキラキラとした光を放ち。
男達は、いきり立つ肉棒から、白濁の液体を噴出した。
それらは空中でミックスされ、リーンの全身に降りかかる。
「うっ、あっ、ぅ……!」
リーンは悲鳴を上げそうになるが、必死に唇を引き結んで声を殺したようだ。
弱みを俺達に見せまいと、声を出すのを我慢しているんだろう。
さっきまでサキュバスの力が全くと言っていいほど効いていなかった彼女が、初めて明確に感じているのだ。
これは、いけそう……おっと、フラグを立ててはいけない。
そんな事をしてしまったら、ここまでの計画が全てパーだ。
慌てない慌てない、一休み一休み。
「マリアよ。今、リーンに何をやったんだ?」
「わたくしの下僕にふさわしい存在になれるよう、多くの人の欲望を己の身で受け止める、聖女の輝きを与えました。」
聖女の輝き、ねぇ。
物は言いようとはこの事だな。
お前が奴隷達にやらせたのって、ただ魔法と精液をリーンにぶっかけさせただけじゃないか。
とはいえ、マリアが奴隷達にさせた行為がどのような結果をもたらすのか、一応は察しがつく。
おそらく、俺がこれまでしてきた事と同じだろう。
女にサキュバスの因子を植え付け、サキュバス化させる。
その第一段階の工程が、今の行為なのだ。
ならば、次はリーンに性的快楽を与え、サキュバス化の進行を促す工程が必要となってくる。
「リーンに次は何をさせるんだ? 必要なら、俺も手伝うぞ。」
むしろ、手伝いと言わずしっかり関わらせてもらいたい。
リーンの捕獲には、相当な労力をかけたのだ。
最後に決めたのは確かにマリアだが、少しくらい、俺にも何かあって然るべきじゃなかろうか。
「でしたら、あなたには彼女のお散歩をして頂きます。レトリバール、小娘にリードをつけなさい。」
「分かったわ、姉さん。」
リードつけて散歩って、完全に犬扱いだな。
だから、マリアは、犬の頭部を持つレトリバールに命令したのか。
そんな事を俺が思っている間に、リーンの首に犬用の首輪が巻かれ、その首輪に繋がる鎖が俺に手渡される。
「散歩させるのは構わんが、魔法で抵抗される心配はないのか?」
「大丈夫ですよ。先程わたくしが使った魔法は、対象の肉体のみならず魔力を喰らう効果もあります。お陰でこの小娘の魔力はほぼ尽きている状態ですから、暫く禄に魔法は使えないでしょう。」
「ならば安心だが、だとしても、今のリーンに散歩は出来ないだろう。引き摺っていけばいいのか?」
「ああ、そういえば、小娘の手足がなくなっていましたね。わたくしとした事が、うっかりしていました♪」
嘘をつけ、この悪女め。
リーンの肘から先と膝から下を食い千切ったのはお前の魔法だろ、マリア。
というか、さっき「肉体と魔力を魔法で喰らった」と自分で言ったばかりだろうに。
本当に、聖女らしく見えるのは服装だけだな。
「では、ホルシュタンのミルクで、腕と足の成長を促して再生させて差し上げましょう。ホルシュタン、やりなさい。」
「相変わらず人遣いが荒いわね、全く……。」
ぼやきながらも、ホルシュタンは自分の立派な乳をリーンの口に宛がう。
だが、当然リーンは抵抗した。
「飲む訳がないでしょう。あなた達の思い通りになるつもりはないわ!」
顔を逸らし、キッパリと言い切るリーン。
どんなに追い詰められた状況でも、600年生きた女のプライドは簡単に折れないようだ。
しかし、俺にとってはむしろ好都合。
あっさり堕ちてしまう女など調教して、何が愉しいというのか。
俺はホルシュタンの肩を叩き、リーンにオリジナル笑顔を向けた。
「ホルシュタン、飲まないと言っている奴に無理に飲ませてもしょうがないぞ。飲めば手足が再生すると言っているのに飲みたがらない奴の事など、放っておけばいい。とはいえ、手足がなければ散歩は出来んから、代わりに町内引き回しの刑を執行する事にしよう。」
「なっ……!」
さしものリーンも、俺の提案には絶句したらしい。
その一方で、俺の傍らから楽しそうな笑い声が響いた。
「ふふふふっ! 随分と面白い事を考えるのですね。仮にもわたくしの妹達と契約しただけの事はあると、少しは認めて差し上げましょう。」
「お前に褒めてもらえるとは光栄だな、マリア。では、俺の提案通りに進めるという事で構わないか?」
「いいでしょう。今回は、あなたにプロデュースを任せます。その間、わたくし達は街の住人達を片っ端から手中に収めるとしましょう。」
「ほう……。」
お前こそ、面白い事を考えるじゃないか。
サキュバス達の大名行列を見せ付けて、女はサキュバスに、男は性欲のままに動く種馬と化す訳だ。
そして、街を挙げての乱交パーティが開催されるのだろう。
「マリア、1つだけお前に頼んでおきたい。俺の奴隷達と、そこの緑色の髪のシャルロッテという女は、決して男と交わらせないでくれ。」
「構いません。何でしたら、彼女達はあなたの方につけましょう。これだけの軍勢を得たのですから、数名程度のサキュバスを外したところで、わたくしの計画に大した支障はありません。ですが、我が妹のモースの力を受け継いだそこの女には、鱗粉撒きの仕事をさせるつもりですので、わたくしに同行してもらいます。」
「分かった。リース、お前はマリアについていけ。俺の奴隷達とシャルロッテは、こちらに続け!」
「はいっ!」
奴隷達の威勢の良い返事に満足した俺は、早速引き回しの刑の執行に取り掛かった。
リーンの首に繋がる鎖を引いて、俺は歩き始める。
「ちょっと! あなた、どういうつもり!?」
無様に引き摺られるリーンが、抗議の声を上げた。
だが、俺はそれを無視し、すぐ先に見える通行人達の方へ近付いていく。
すると、街を歩く通行人達がこちらに気付き、唖然とした表情を浮かべた。
「な、何だ、あれは!?」
「ねえ、あの引き摺られてる子って、確か宮廷の……」
「おい、待て。女の子を引き摺ってる男の後ろにいるのって、サキュバスじゃないのか!?」
「しかも、ユミナ殿下にそっくりなサキュバスもいるわよ!?」
ざわめく人の波の中に、俺は躊躇う事なく入っていく。
そこでようやく足を止めると、俺はリーンの方を見下ろした。
「さっきよりも更に無様な格好になったな、リーン。」
地面をずっと引き摺ってきたために、石ころやアスファルトの凹凸でゴスロリ服が破け、リーンの白い肌が所々見えてしまっている。
また、肌には多数の擦り傷も出来ていた。
とても、王国一の宮廷魔術師様とは思えない姿だ。
「俺の奴隷達よ。この観衆の眼前で、リーンを甚振るぞ。お前達は、もし邪魔立てする輩がいたら速やかに排除しろ。」
「承りました、ご主人様!」
よし、これで全ての準備は整った。
いよいよ、俺は当初の目的であった最後のターゲットの調教を開始する。
リーンにたっぷりと味あわせてやるとしよう。
現代日本風の調教をな!