ショーの最後を飾ってくれる演者は、もちろん、リーン改め俺の奴隷であるリン。
そして演目は、つい先程他の奴隷達が披露してくれたのと同じ、出産イベントだ。
「リン! 俺の子を産み堕とせ!」
「あっ、うぐっ!」
俺の命令でお腹が疼き始めたらしいリンが、お腹を手で押さえながら蹲ろうとする。
しかし、それは許さない。
観客に出産をきちんと見せなければならないのだから、体を隠すような体勢はNGだ。
「リン、立て! 立つんだ、リン!」
「いやっ、やめ……!」
まるでリングの脇に控える名セコンドの如く俺が叫ぶと、リンの体は彼女の意志に反してがに股の姿勢を維持した。
だが、マンコを抑える彼女の手も邪魔だな。
「両手は頭の後ろで組め。顔を上げて、前を見ろ。」
「くっ……よくも、こんな事を!」
恥辱に震えるリンは、顔を真っ赤にして俺を睨みつけようとするが、俺の命令で前を見続ける事を強制されているために、恨めしそうな彼女の視線は前方にいる観衆達へと向けられる。
そして、必死に辱めに耐える美少女の怒りの眼差しは、観衆達にとって興奮をもたらすものだ。
「うおおっ! たまんねえな!」
「おい、さっさと産めよ!」
「そうだそうだ! 産ーめ、産ーめ、産ーめ!」
愚民共から沸き起こる出産コールの嵐に、リンは更に顔を紅潮させる。
彼女の表情は未だに反抗的な色を残したものであったが、徐々に、変化が現れた。
「ううっ! お、お腹がっ!」
リンのマンコからは、ポタポタと液体が滴っている。
どうやら陣痛が始まったようだな。
「いや! 出てこないで!」
いよいよ反抗的な表情を維持できなくなったリンが、目を見開いて絶叫する。
だが、彼女の叫びも虚しく、マンコから黒いものが僅かに覗いた。
これは、他の奴隷達が産んだのと同じ、真っ黒な赤ん坊の頭部の天辺だろう。
「そろそろ、いい加減に諦めたらどうだ? お前は俺の奴隷。俺の子を孕んだ母なんだと自覚しろ!」
「あなたなんかと、私は……いっ、ひっ! さ、裂けるっ!」
リンのマンコが拡がり、赤ん坊の頭が降りてくる。
10代前半の小柄な少女に相当する華奢な体格では、他の奴隷達よりも出産に伴う苦痛が大きいはずだ。
しかし、彼女のサキュバス化した肉体は、そのような本来無謀である出産を無理なく可能とする。
「心配するな。マンコは別に裂けたりはしない。今のお前はサキュバスなんだぞ? この程度、すぐに慣れる。」
「そんな……! 私は、別にこんなのに、慣れたくないっ!」
「受け入れろ。自分の運命を。自分の仲間である奴隷達を。」
「私、私は、絶対に、ここでやられたりは……」
その言葉を遮るように、赤ん坊の頭が完全に外界へ出てきた。
最初の山場を越えたからか、リンの言葉は途切れ、絶望の表情で固まる。
「リン、お前の赤ん坊の頭が出てきたぞ。我が子の顔をきちんと見てやれ。」
「う、嘘……。」
唇を戦慄かせながら、リンは自分の股間を見る。
そして、彼女の顔から感情が消えた。
「子供……私の、子供……。」
リンはうわ言のようにそう繰り返し、周囲からの反応や陣痛にも一切の反応を示さなくなった。
遂に、リンの心が壊れる瞬間がやって来たのだ。
「さあ、フィナーレだ。一気に出せ!」
「あああああああ……」
正気を失った目のリンが、力のない悲鳴を上げる。
俺の声に応えるかのように、黒い赤ん坊はメリメリと外へ這い出し、上半身がリンのマンコから飛び出た状態となった。
以降も赤ん坊の勢いは止まらず、腰と足も母親の中から脱出して、ボトリと地面に落ちる。
「出たぞ、リン! お前の赤子だ。しっかり抱いてやれ。」
「私の……。」
リンは俺の命令に逆らう素振りも見せず、恐る恐るといった感じで赤ん坊を抱き上げる。
すると、赤ん坊は母親の腕の中で激しく泣き始めた。
「おぎゃああああああああっ! おぎゃああああああ!」
赤子の産声は、人間のものとは違い、何処か禍々しさを感じさせる絶叫のようだと俺は感じた。
しかし、どのような姿であれ、産声であれ、その赤子の母親にとっては、全てが愛おしい存在なのだ。
「うふ、ふふふ……。私の、赤ちゃん……。」
涙も枯れ果てたといった顔で、リンは笑う。
肉体のサキュバス化、仲間の相次ぐ陥落、そして処女喪失と出産を一気に味わされた事で、リンの精神が壊れたのだろう。
本来の人格が崩壊した今、リンの人格はサキュバスにふさわしいものとして再建される。
その証拠に、リンの笑顔には徐々に艶やかさが混じり始め、笑い声も愉しそうなものへと変質した。
「ふふふふ……あははははは……っ! 私の、赤ちゃん。私の子供! 600年生きてきて、ようやく出会えた!」
「嬉しいだろ、リン。俺の奴隷になって良かっただろう?」
「はい……! 私は、今、幸せよ……!」
最後の1人も、やっと堕ちたか。
長かった。
だが、これで俺の当初のターゲットだった女は全て我が物となったのだ。
「観衆達よ! 俺達のショーの演目は終わりだ! ここでショーの感想を聞かせてもらおうか!」
「うおおおおおお! 最高だったぞぉ!」
「こんなショー、初めて見たぜぇっ!」
「もっとやってくれよ!」
「いや、オレらも参加させてくれよ! 見てるばっかりなんて我慢ならねえよ!」
ふむ、観衆達のボルテージは最早限界まで上がり切っている。
俺の制止も効かないだろう。
それに、奴隷達も出産で体力を使ったため、沸き立つ観衆の暴走を完全に抑えられるかどうか疑問だ。
ここは大人しく観衆達の要望も聞くとしよう。
「よし! それでは、これから街を挙げての乱交パーティだ! 俺の奴隷を除き、街の全員はこのパーティに参加しろ!」
「おおおおおおおおおおおおおおおっ!」
俺は、止まる事なく歩き続けた。
俺は、エンタメショーで観衆の心を掴んだ。
そしてここからは、街の(セックス)フレンズ達による、ドッタンバッタン大騒ぎな時間を始める。
この3点こそが、俺の計画を成就させる主柱なのだ。
俺が遺した結果は、世界の歴史に確実に刻まれるであろう。
「俺達は引き上げるか。」
今から始まる乱交パーティには、俺と奴隷達は参加しない。
街のフレンズ達を仕切る監督の役割については、俺は自ら降板させてもらうとしよう。
「転移魔法で帰るのも味気ない。街の光景を眺めながら、歩いて帰るぞ。」
「申し訳ありません、ご主人様。私達は、暫く動けないです。」
奴隷達を代表して、ユミエルがそう答える。
出産直後の体力を使い果たした状態で、赤ん坊を抱えたまま歩くのは彼女達にとって厳しいか。
「仕方ないな。なら、リンの転移の魔法を使って、お前達は家に帰れ。そのくらいは出来るだろう?」
「はい。では、そのようにさせて頂きます。」
「ああ。」
しかし、家に帰ったら奴隷の産んだ赤ん坊共はどう処分すればいいのか。
下手に処分したら、奴隷達から反感を買うだろうしな。
参ったものだ。
「しかし、素晴らしい光景だな。」
建物の玄関の前で、大通りで、路地裏で、男と女が全裸で交わっている。
中には、複数の男で女を囲んでいるところも多く見受けられた。
彼らは皆、性を謳歌し、愉しんでいるみたいだ。
俺は単に自分の欲望を満たしただけではなく、この異世界に幸せをもたらしたと言えよう。
なかなか気分が良いものだ……な……。
「ぐっ! な、何だ……!?」
街道を歩いている最中、唐突に腹部に激痛が走った。
慌てて腹に目をやると、服が真っ赤に濡れている。
これは、血?
いつの間に?
混乱する俺の耳に、後ろから男の声が聞こえてきた。
「あいつだ! あいつを殺して、さっきショーをやってたあいつの女達を奪うぞ!」
「何……!?」
後ろへ振り返った俺の視線の先には、銃らしき物を構えた男達がいる。
奴らの顔には、見覚えがあるな。
確か、リンが連れてきた兵士の男共だったか?
何故、この異世界には存在しないはずの銃を奴らは持っている?
いや、ユミエルから聞いた話だと、望月冬夜は銃をモデリングの魔法で作成し、使用していたんだったか。
望月冬夜が逮捕された事で、その銃が軍に没収され、それを元に新たな銃が幾つか作られて、一部の軍人に支給されているのではないだろうか。
だとしたら、辻褄は合う。
「くそっ、こんなところで……やられて、たまるものか……! 雷よ来た……ぐはっ!」
ドドドドッという銃声と激痛が、俺の魔法の詠唱を妨げてくる。
駄目だ、この、まま、で、は……
「お前の女達はこれからオレらの公共物だ! 死ねえええっ!」
「あがぁっ!」
どうしてだ。
どうして、こうなった?
俺の何が悪かったのだ?
異世界に来てから、俺は緻密な計画を練り、実行し、成功させてきたはずだ。
なのに、何故こうなる?
「そう、か……。俺は、間違えた、の、だな……。」
せめて、俺の奴隷達がここにいたなら、奴らと交戦しつつ、俺の傷を癒してくれただろう。
でも、俺は街の住人達を洗脳し、性に塗れた人間に変える事ばかりを考えていた。
理性が崩壊して性欲しか頭にない人間が女を力尽くで奪いに来る可能性を、俺は考慮していなかったのだ。
俺はただ、自分の計画を成就させるという一点に集中し過ぎていた。
しかし、それでは駄目だったのだ。
――だからこそ。
もし、俺と同じように、この異世界で野望を果たそうとしている者がいるなら。
昔の自分に、何か一言アドバイスできるのならば、俺はこう言いたい。
「ただ進み続けるだけでは、いつか失敗する……。だから……時には、立ち止まるんだぞ……!」
俺の遺した言葉は、果たして誰かに届いただろうか。
これが誰かの希望の華を咲かせる手助けとなっていたなら、我が人生に一片の悔い無し。
さようなら。
俺が愛した異世界よ。