※この作品はR-18です。

罪ノ光ランデヴー 風香アフター   作:伝野てつ

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3-1.急 優人編
白い雨


「カフビさんをクビにした……?」

「うん、迷惑だったから出ていってもらったんだ。まったく、ろくなやつじゃなかったよ」

 

春の足音が聞こえてきそうな晩冬のころ。

来月のシフトを確認しに来た夜、突然の知らせを聞いてしまう。

昨日まで普通に働いていたはずなのに、あまりにも急すぎて、動揺が隠せなかった。

 

「よくあるんだよね、ああいう人たちってさ。偽装して、ウチにきて、出稼ぎにきて」

「……どうして、ですか」

「変なこと聞くなぁ。そりゃ、ウチの店に迷惑かかるからだよ」

 

店長はまるで腫れ物を扱うように、手をブラブラと振って、嫌な表情を浮かべる。

 

「不法滞在者を雇ってる店、なんて噂が広がったら、商売回らないよ」

「……そうだったとしても、カフビさんは今まで一緒にやってきた仲間じゃないですか」

「仲間ぁ……?」

 

俺の言葉に、店長は苛立ち、さらに表情を歪める。

怒っているのはお互い様で、俺も店長を睨みつけていた。

 

「たしかに彼のやったことは許されないことですけど、それでも、この店で一緒に働いた仲間です」

「……野々村君、あのね」

「カフビさんの言い分も聞かないで、出ていけだなんて……! 昨日はあんなに笑い合ってたのに……」

「野々村君!」

 

閉店中の店内に、店長の怒号がとびかった。

 

「あいつは嘘つきだ、犯罪者だ。俺たちは騙されていたんだ」

「笑顔で、俺たちに偽りの自分を見せていたんだ」

「そんなやつを、お前は許せと言うのか? 認めろというのか?」

 

その一言で、なにかにヒビが入った。

カフビさんに対しての罵倒が、自分にも言われているような気がして。

悔しくて、悲しくて、イラついて、消えてしまいたくなって。

俺たちとは相いれない店長を睨んでしまう。

 

「なんだ、その目は」

「……高校生の身分でありがら、雇っていただいたので、こちらから感謝の念しかありません」

「は……? なに、言って……」

「申し訳ありません、急ですが、僕もやめさせていただきます。今までお世話になりました」

 

書きかけのシフト表を投げ捨て、店を後にする。

後ろからは、店長の怒鳴り声が聞こえてくるが、ものの数秒後には耳に入らなくなっていた。

今月分の給料はもらっていないが、もう知ったことか。

自分が馬鹿なことをしている自覚もある。

どう考えても、俺が悪い。頭がおかしいことをしている。

そんなことよりも、今の俺にとって、一番大切なことは……。

 

「カフビさん……!」

 

なぜか、脳裏には、あのときの、村で事故が起きたときのことが浮かんだ。

あのときも、嫌な感じがして、風香が……。

もうあんな後悔はしたくない。

だから、いち早くカフビさんを見つけ出さないといけない。

白い息と共に焦りの情が口から出ていく。

まだ日本にはいるはずだから、走れば、会えるはず。

 

「どこ、行けば……」

 

そう口に出すと同時に、カフビさんが行きそうなところを思い出す。

いつも仕事でへこだときに、俺と一緒にいたあの場所。

俺に罪の告白をしてくれた、あの場所。

全力疾走で、いつもの公園へと向かっていった。

 

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