「ユウ……」
「はぁ、はぁ、いた、いてくれた……」
予想通り、カフビさんは公園のブランコに座ってしょぼくれていた。
額の汗を拭いつつ、カフビさんへ近づいていく。
誰もいない夜の公園でひとり座ってるなんて。
「全速力で走ったから、ちょっと疲れて……」
荒れた呼吸を整え、ようやくカフビさんの隣にたどり着く。
冷たい空気を吸って、吐いて、落ち着きを取り戻すと、カフビさんが静かに喋り出す。
「……ワタシ、国に帰ることになりました」
「うん、知ってる」
「お店も、クビ言われました」
「聞いた」
「ごめんネ、ユウ、優しくしてくれたのに……」
カフビさんが涙を浮かべながら謝罪してくる。
彼の顔を見て、胸の奥が切なくなり、痛くなる。
「違う、そんな、謝らないで」
「ごめん、ごめんなさい、ユウ、ワタシ……」
ポロポロと零れるカフビさんの涙。
真珠みたいに綺麗に見えて、なぜだか尊いものに感じる。
多分、それは、俺も同じだからだ。
彼と同じく、俺も罪人であり、本来は裁かれないといけない側の人間だから。
普通のレールを自ら外れてしまった、外側の人間なんだ。
「違うんだ、カフビさん」
「ユウ……?」
「俺こそ、謝らないといけない」
カフビさんの前に立ち、正面から見つめる。
逃げてしまいたい気持ちに駆られるが、真正面からいかなきゃならない。
なぜなら、カフビさんもそうしてくれたから。
俺に、自分をさらけ出して、打ち明けてくれたから、こっちも逃げちゃいけない。
「俺、カフビさんに嘘ついてたんだ」
「嘘……?」
すぅっと息を吸い、ゆっくりと吐く。
これを伝えたら、もう後戻りできなくなる。
下手すれば、俺と風香の関係も壊れてしまうかもしれない。
それでも、伝えたいと、共有したいと思ってしまう。
初めて出会えた、似たような罪を持つ“仲間”に。
「俺も、同じなんだ」
「カフビさんと同じように、俺もいけないことをしているんだ」
カフビさんは涙をとめ、目をまん丸にする。
虚をつかれたような、予期せぬことが起きてしまったような反応を示す。
そんな彼を真っ直ぐ見据えつつ、言葉を続ける。
「前、カフビさんが教えてくれた夜、実は言おうか迷ってたんだ」
「自分自身、いや、俺たちのことを」
「……あの絵の子ですか?」
「うん、そう」
あのときは言えなかったけど、今ならはっきり伝えられる。
俺たちの関係を。許されない関係を。
誰にも明かしてなかった秘密を口にする。
「カフビさんがいなくなっちゃう前に聞いて欲しい」
「俺とあの子、風香のこと」
「俺たちの罪を」