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「ふぅ……」
「うい、どだった……って聞くまでもないな、その面見れば」
放課後、職員室から出ると、恵美が仁王立ちして待っていてくれた。
担任に義務的な報告を終えたあとだから、疲れた顔を見せてしまったかもしれない。
そんな私を見て、恵美はケタケタと愉快そうな笑い声をあげる。
「うら若き乙女が、なんちゅー顔してんだか」
「……あんただって、一応、乙女じゃないの?」
「アタシは、ほら、ナイスバデーなイケてるいい女だからさぁ」
「……ナイスバデー、ね」
「あ、テメェ、鼻で笑ったな! そりゃ、あんたよりは小さいけどよぉ」
いつもの慣れたやり取りに、少し微笑んでしまう。
だからこそ、彼女に隠し事をしている自分を恥ずかしく思う。
「とりあえず、けーるべ。歩きながら話そう」
「そうね、受験も一区切りついたころだろうし、あなたも自由な時間増えたでしょ?」
「くっそー受験してないからって、勝ち誇った顔しやがって……」
「その分、担任からグチグチ言われる羽目にあうんだから」
学校を出て、帰路につく。
恵美と会話しながら、卒業までもう少ししかないことを自覚する。
本当に、このままでいいんだろうか。
このまま、彼女に伝えないまま、過ごしていくのが良いことなんだろうか。
自問自答を繰り返しては、優人に感情をぶつけてしまっている。
珠里村でのことを思い出して、少し、嫌な気分になった。
「でさぁ……って、なんだ、その顔はぁ」
「別に、なんでもないわよ」
「あからさまな態度だろうが。んだよ、まだ便秘?」
「……言い得て妙ね」
「え、嘘、マジかよ……」
溜まった感情が出せない、もどかしいのは当てはまるかもしれない。
この感じ優人に迷惑をかけたときと同じだ。
あの日、あの事故に逢う日。
情けない思いのまま、飛び出て、私は……。
「……風香」
恵美のトーンが変わったことにビックリし、彼女の顔を見る。
切れ目に撫でられるよう見られ、ドキリとしてしまう。
美しさではなく、自分の心の中を見透かされているような気分になったからだ。
「あそこ、行こうぜ」
「……うん」
なにもかも察したような口調で、恵美は高台へ私を誘う。
断る理由もない。むしろ私から誘いたかった気分だ。
「アタシはさ、なにがあっても風香の友達だよ」
「えっ……?」
「こんなこっぱずかしいこと、一回しか言わないから、よく聞いておけよ」
「なにがあっても、ね。私は風香の友達」
真剣な表情で、事実を繰り返し伝えてくる恵美。
彼女の真剣な眼差しが、私の心に突き刺さる。
「だから……まぁあそこ行くまでに、色々決めてくれや」
きっと、恵美は私の口から秘密を言うのを待っている。
私と優人のこと、なにかあったこと、それらの隠し事を、私自身から話させようとしている。
「そんなの……」
言ってしまいたい、唯一の友達である恵美に、自分の罪を告白したい。
これ以上、隠し事なんて、胸が張り裂けそうだ。
「ほら、行こうよ」
結局、無言のまま、私たちは夕日が沈みかけている街並みを歩いて行った。
なにも言わず、探らず、あの場所を目指して。