全てを恵美に伝え終えるころには、空は曇天になっていた。
夕焼けは影に落ち、今にも雪が降りだしそうな寒さ。
そんな中でも、恵美はジっと黙って私の話だけを聞いてくれていた。
なにも言わず、ただ咎人の懺悔を耳にして。
「ごめん、こんな醜い私で、本当にごめん」
「醜い……?」
「友達に嘘ついて、ずっと黙って、それに弟の、大切な人の人生まで狂わせた」
「怖くて言えなかったんだ、ずっと……」
恵美に怒られると思いつつ、本音を吐露する。
でも、恵美はニッコリと気持ちいいくらいの笑顔になり。
「いいじゃん、人間らしくてさ。アタシは好きだぜ?」
「えっ……?」
「そんな気にすることないだろ。だいたいな、弟さんだって後悔してないと思うぜ?」
「後悔してるなら、お前と一緒にこの街に来ないだろうし、もうとっくに覚悟決めてる証拠じゃん」
「ぁ……」
「あのな、アタシのときもそうだけど、風香って人に対して絶望し過ぎだろ」
「もうちょい、楽観的に見ようぜ、なぁ、おい」
恵美の笑う顔を見て、少し心が晴れる。
思いつめていた自分が間抜けだったということなんだろうか。
「それにさ、美しいものばかりじゃ、息苦しいだろ」
「人間、美しさも醜さも兼ね合わせるから、不安定だから、魅力的だと思うけど?」
「……なに、それ言い訳?」
「お、いいね。クヨクヨしない、気持ちがいい風香に戻ったじゃん」
「……ふふ、今はそれでも気分がいいわね」
「うへぇ、んだよ、けなされて喜ぶとか、そっちの気あるわけ?」
「馬鹿ね、私じゃなくて、それは弟」
「……お前の弟さん、変態だな」
「そうね、私にとっては愛おしい変態さん、かな」
笑って、軽口が叩ける。
いつもどおり、恵美と接せられる。
罪を告白することで、なにか壁ができてしまうかと思ったけれども、杞憂みたいだ。
「ありがとな、ちゃんと話してくれて」
「こっちこそ、聞いてくれてありがとう。苛立っても、問い詰めてこなかったから、素直に言えた」
「まぁ、それに関しては、めっちゃ我慢したからな」
「恵美らしくないわね、我慢だなんて」
「うっせーアタシだって、たまにはそういうことすんだよ。デリカシーぐらい持っとるわ」
「あら、縁遠い言葉が出てきたわね」
「まぁ、そう言うなって。これでも真面目に考えてたんだからよ」
「そうなの?」
「まぁね、色々考えて、悩みもして……」
恵美も、同じような傷を負っていて。
友達だからこそ、共有してくれて……なんだか、心が軽くなった気がし――。
「今聞いてハッキリしたけど、アタシはあんたたちのこと、祝福はできない」
胸の奥に、ピシリと亀裂が入った音が聞こえた気がした。