※この作品はR-18です。

罪ノ光ランデヴー 風香アフター   作:伝野てつ

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エピローグ
春のうた


――あれから、何度目の春を迎えただろうか。

 

冬を過ぎ、桜が舞い散る季節になると、いつも俺は手紙を出す。

送り先は異国の地にいる、仲間の家だ。

拙い英語で文字を綴り、最後には絵を添えて。

 

あのときの約束を違えたことない。

届いているのかもわからないけど、送り続けると決めたから。

また笑顔で会えるよな、カフビさん。

 

「おとーさん!」

 

自室で手紙を書き終えると、外から小さい女の子の声が聞こえてくる。

愛しい人と育んだ、俺たちの娘の声だ。

 

「はやくー! 今日は遊んでくれるってやくそくしたー!」

 

風香に似た、元気のある女の子だ。

苦笑いを浮かべながらも、約束を守りに、部屋を出る。

 

あの長屋生活もなかなか楽しかったけど、風香が働いて、俺も仕事を始めたらすぐに同棲生活が始まった。

未だに、俺たちの関係がばれずにやってこれているのが、信じられないぐらいだ。

 

「ほーらパパだぞー! 待たせたなー!」

「もぅ、嘘つき、嘘つきぃ! すぐ来るって言ったのに!」

「ははは、ごめんな。その代わりに、なんでも言うこと聞くから!」

「ほんと! なら、えーっと、パパ、ちゅー!」

「えぇ、そんなことするのかぁ?」

「幼稚園ではみんなしてるよ!」

「うむ、なんとも危ない幼稚園児たちだな」

 

愛娘の要望に苦笑しつつも、しっかり応えてやる。

すると、奥からあの声が聞こえてきた。

 

「あらぁ~ん? 浮気なのかしら、お父さん?」

「あ、あはは、そんなわけないじゃないか」

「あっ、ママー!」

「はーい、三人で遊ぶ約束だったもんねー!」

 

休日、桜が舞い散る中で、俺たち三人は笑いあう。

俺がいて、風香がいて、娘がいて。

ただ、そんな穏やかな日々がずっと続いている。

 

「ちょっと、お父さん! なにニヤニヤしてるのよ」

「いや、別にしてないって」

「まさか、本気で娘に浮気?」

「お前なぁ、なに言って……」

「パパ、だーすきだよ!」

「はっはぁん、パパも大好きだぞ!」

「ほれ見たことか」

「あぁもう、ああいえばこういう!」

 

俺たちの関係を容認してくれる人はいない。

あの冬空の下で、それでも探し続けようと決意したはいいものの、やっぱりそう上手くはいかないみたいだ。

それでも、俺たちは生きている。

故郷でも見ていた光景の前で、生きているんだ。

 

桜の花びらがヒラヒラと落ちていく。

美しくも見えるし、はかなくも見えるそれを、ジッと見つめる。

 

「おとーさん!」

「ん、なんだ?」

「おかーさん!」

「なぁに?」

 

愛娘が俺たちに微笑みかける。

 

「大好き!」

 

セカイから認められないかもしれない。

共有できる家族もいないかもしれない。

それでも、俺たちは歩いて行かなきゃいけないんだ。

暗闇の中を歩き続けていけば、いつか必ず。

光があるんだと……。

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