※この作品はR-18です。

ブラックベリーフィールズ 〜やがて女の子になる君へ〜   作:孤児郎

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前話のあらすじ

海水浴にきて一人だけ浜で荷物番してた俺は、宏海を悩殺しろとランさんたちに無理やり水着を着せられた。それも露出度の高いマイクロビキニ。下半身はパレオで隠してるが、後ろは完全無防備のTバックだ。夕夜がビーチボールで遊ぼうと言い出して、俺はこんな格好で遊ぶことに!


第三十二話 男子高校生は見え過ぎちゃって困るの

「落としたら罰ゲームな」

 

 さんさんと太陽が照りつける砂浜で、ビーチボールを抱えた柘植(つげ)夕夜(ゆうや)がニヤリと笑って宣言する。

 

 ◇◇◇

 

 夏休みにみんなで海に遊びにきた二日目。ヤツのほかには爽やかな短パン水着の松崎(まつざき) 宏海(ひろみ)と、華やかなタンキニの柘植 るちあに、おしゃれなモノキニの門倉(かどくら) 樹里亞(じゅりあ)。

 そして俺、東條(とうじょう) 雪緒(ゆきお)は、と言えば、旅館の露天風呂で知り合った女子大生のお姉さんたちに無理やり着せられた女物の水着だ。それも『マイクロビキニ』とかいう布面積が非常に少ないシロモノで、ボトムスにいたってはTバックである。その上にフレアスカートのようなものを着けてはいるけど実は単なるパレオの短いヤツで、まるでエプロンのように前か後ろどちらかしか覆ってくれないものだった。ブラもTバックも布地部分の幅が極端に狭い。だいたい指ニ本分くらいだろうか。こんな小さな布で覆った下半身を人に見せるわけにはいかない。だからパレオは前を隠すように着けていた。

 仕方ないとはいえ後ろから見ればお尻全開。それを宏海に凝視されてしまった。

 

 ああ、わかってるよ。

 こんな水着を着せられて尻丸出しで歩いてるだなんて、男のくせになんて格好悪いヤツだと思ってるんだろう?

 でも仕方ないじゃないか。一緒に露天風呂に入っちゃった女子大生のお姉さんたちに、今さら『男です』なんて絶対に言えないんだよ。

 

 ◇◇◇

 

「罰ゲームってなんだよ?」

 

 俺が聞くと、夕夜は良からぬことを企んでいるような邪悪な顔で答える。

 

「それはその都度考える」

 

「なんだそりゃ?」

 

 よぉーし。ならお前がボールを落とした時は、全裸で沖までバタフライで往復させてやる! アホな夕夜め。首を洗って待ってろよ!

 

 この時、俺の顔もまた、ヤツのように醜く歪んでいたに違いない。

 

 そして……あっさり負けました。

 

「嫌だぁー! 全裸で沖までバタフライで往復なんて嫌だぁー!」

 

「ちょっ! 人聞きの悪いこと言うなよ東條。そんな酷いことさせるワケないだろ!」

 

 叫んで抵抗する俺を夕夜がなだめる。

 ふっ。小心者め。お前のその甘さが命取りになるのだ。

 

「じゃぁ、どうするんだよ?」

 

 不敵に笑う俺に、顔を近づけて同じように夕夜も笑う。

 

「こうするんだよ」

 

 俺は両手首を夕夜に、両足首を宏海に掴まれるて、ハンモックのように吊り下げられた。そして左右に振って勢いをつけてから海に投げ込まれた。

 仰向けのまま水中に落とされ、塩辛い海水が鼻に入ってツーンとしみる。水中で目を開けてみるけど周りが泡だらけで上下左右もわからない。

 尻が砂地に触れたのを感じて手をついてなんとか体を起こした。

 ちくしょう! 思いっきり投げ飛ばしやがったな。

 フラフラしながら立ち上がると深さは膝丈くらいしかなかった。

 ずぶ濡れの顔を手のひらで拭おうとして、思いとどまる。ミキさんにしてもらったメイクは触っても崩れないだろうか? 海水浴に来てるんだからウォータープルーフだと思うけど、海で女装したことがない俺にはマスカラやアイラインがどのくらい海水に強いのかわからない。仕方がないので顔を擦らないように首をプルプルと振って水気を払った。

 

「ぎゃはははははははははっ!」

 

 目を開けると腹を抱えて下品に笑う夕夜が見えた。心が下品なヤツは笑い声も下品だ。

 覚えてろよ! コノヤロウ。

 

 視線を巡らせると、ポカンと口を開けてこちらを見ている宏海が見えた。

 なにしてるんだ? 宏海。せっかくのイケメンが台無しじゃないか。

 

「ちょっと東條くん! なにしてるのよっ!」

 

 叫ぶるちあに驚いて目を向けると、バチャバチャと海水を蹴立てて彼女が駆けてくる。水の抵抗があって走りづらいのか上下に跳ねるような走り方で、ただでさえ弾みやすい巨乳が水着のカップの中で猛烈に暴れまわってる。

 オイオイ、デカイ胸でそんなに走ったら水着から乳首がポロっと出ちゃうぞ。出てたら見ちゃうぞ。見られても文句言うなよ。

 俺の目は彼女の揺れる胸に釘付けになっていた。

 るちあは目の前までくると俺を突き飛ばすように両手を伸ばした。

 驚いて仰け反る俺の胸に、るちあの両手がタッチする。

 そこで初めて、水着のブラがなくなっているのに気がついた。

 

 は? え? なに? どして?

 一瞬混乱したものの、どうやら水中に投げ飛ばされた衝撃でブラの紐が解けて外れたみたいだ。

 でも、るちあはどうして走ってきたの?

 

「おっぱい出してたらダメじゃない!」

 

 俺の胸を両手で隠しながら文句を言うるちあ。

 まさか俺の秘密を知ってるの?

 そう言えば、ダイエットのために彼女の部屋に泊まることになった晩、俺が入っていた風呂に彼女が勝手に入ってきたことがあった。あの時、どこまで見られたんだろう?

 あの後、るちあの父親にも全裸を見られて大騒ぎになって、彼女には俺がどういう風に見えたのか聞けないままになってた。

 るちあが俺の裸を見てどう解釈したのかずっと気にはなっていたけれど、男だと思っていればそれで良し。あえて俺から話題を振って藪から蛇を出すこともないだろう?

 でも、こんなに焦って俺の胸を隠そうとするってことは……。

 

「ほらっ! 自分で隠しなさいよ!」

 

 そう言われてやっと自分で自分の胸を押さえる。左右の胸をそれぞれの手のひらで隠す、セクシーグラビアなんかでよくある『手ブラ』のポーズだ。

 それからるちあは俺の耳元に顔を近づけると小声になって囁いた。

 

「今は女の子の水着でしょ? 見せっぱなしは絶対にダメよ」

 

 そう言われて辺りを見回すと、いまだに笑い転げる夕夜や固まってる宏海の他にも、なん人もの海水浴客が俺を見ていた。おまけに砂浜のずっと向こうにランさんたち女子大生ズがいて、三人ともなぜか俺にウインクしながらサムズアップしていた。

 いや、それってどういう意味だよ?

 今のは事故で紐が解けたんだよ。無意識に見せたとかそんな高等テクニックじゃねぇよ!

 どうやら、るちあも周りの目を気にしていただけのようだった。ホッとしたような、ちょっと残念だったようなそんな微妙な気分。

 

「雪緒。あったわよ」

 

 後ろから呼びかけられて振り返ると、樹里亞がビキニのブラを手にしている。外れて波に流されてしまったのを泳いで取ってきてくれたらしい。

 

「ありが……」

 

 樹里亞はお礼を言おうとする俺の背中に両腕を回して抱きついてきた。

 え? こんな公衆の面前でいったいなにを? と思ったけれど、単にビキニの紐を結んでくれただけだった。周りに見えないように自分一人で結ぶのは無理だからね。

 

 その後、再開したビーチバレーだったけど……。

 

「それは違うぞ、雪緒。ビーチバレーって言うのはバレーボールとネットを使って浜辺でプレイするスポーツのことだ。ビキニを着た女子選手が二対二で打ち合うのをテレビで見たことくらいあるだろう? つまりは『ビーチバレーボール』だな。それに対して俺たちが使ってるのはビニールでできたビーチボールだから、あえて言うなら『ビーチボールバレー』ってことになる。しかし、ビーチボールバレーという正式なローカル球技が日本には既にあるので、これをそう呼ぶと混同してしまいかねない。だからこれは……」

 

「もぉいいよ!」

 

 宏海がなんだかややこしいことを言い出したけれど、俺にはなにが言いたいのかさっぱりわからない。わざと難しいことを言って何かを誤魔化そうとしてるんじゃないだろうな?

 宏海の戯言はどうでもいいや。俺はとにかくあの野郎に借りを返さなくちゃならねぇんだ。邪魔だけはするなよ!

 

 見てろよ、夕夜! 今度こそお前を地獄に叩き……落とそうと意気込んでました。さっきまでは……。

 またも夕夜の強烈なスパイクが炸裂して、ボールは俺の顔を直撃して波間に落ちた。

 馬鹿野郎。メイクが剥げたらどうすんだ!

 

 そしてまた夕夜と宏海に手足を掴まれて海に投げ込まれる俺。

 でも俺だってバカじゃない。今度は立ち上がる前に腕でしっかりとガードしていた。すると案の定、ブラは流されてはいなかったものの、首の後ろの結び目が解けてカップが胸の下に垂れ下がってしまっていた。

 この罰ゲームは恐ろしすぎる!

 

 じりじりと照りつける真夏の太陽の下。雪辱に燃える俺と夕夜との間で熾烈なアタック合戦が繰り広げられた。長身で運動神経の良い宏海と樹里亞は言うまでもないが、俺よりも体格的に優れる夕夜の牙城を崩すのは困難を極めた。

 長引く死闘の末に疲労して目標を逸れた俺のアタックは、隣のるちあを直撃してしまった。

 

「んぎゃっ!」

 

 そんな悲鳴を発して転んだ彼女を二人の男が取り囲む。

 

「いやぁー! 助けてぇー!」

 

 ふっふっふ。夕夜よ。愛しい彼女が晒し者になる気分はどうだぁ?

 

 るちあに罪はない。だが彼女はお前自身の原罪によって裁かれるのだ。

 暴れるるちあの体が持ち上げられる。

 しかし! るちあの足首は宏海がしっかり掴んではいるが、夕夜は両肩から腕を入れて背中を支えていた。彼女の両手は自分の胸をガッチリとガードしている。

 この扱いの格差はいったいなんだ?

 

「ちょっと待てよ! 俺はトップレス覚悟で投げられたんだぞ。自分の彼女だからって……」

 

「待て待て落ちつけ、東條。るちあは女だぞ。同じにしたらフツーにダメだろう?」

 

 これから投げ込まれる女の子を指差したまま言い淀んで固まってる俺に夕夜が言い返す。

 確かにそうなんだけどさ。なんだか俺ばかり損してるような気がして納得いかなかったんだよ。そういうことって、あるだろう?

 

「きゃぁー!」

 

 るちあが悲鳴を上げながら男たちの手で海に投げ込まれる。

 海から顔を出した彼女は当たり前ながらポロリもしていない。

 ちがう、そうじゃない。

 復讐すべき相手は夕夜本人だ。

 

 次のゲームもトスの直後から俺と夕夜のアタック合戦になっていた。ストイックなラリーの末に、俺はついに最大のチャンスを摑んだ。砂地に足を取られたヤツに隙ができたのだ。

 この機を逃す術はない。

 俺は全身しなやかな鋼になって、バランスを崩した夕夜に全力のアタックを叩き込んでやった。俺のアタックは顔面にクリーンヒットして、ヤツはそのまま後ろ向きに倒れていった。波打ち際で打ち合ってたために、派手な水しぶきが上がる。

 

「わははははははは。 ざまぁ!」

 

 ついにこの手に勝利を摑んだ。

 俺は両手を腰に当て、脚を開き胸を反らして夕夜を睥睨する。

 さぁ、このアホをどう料理してやろうか。やっぱり全裸で沖までバタフライで往復がいいだろうか。それとももっと屈辱的なことをやってもらおうか。

 やっと水面に現れた夕夜は両手で顔を拭っている。

 罰ゲームを決めるのは後回しにして、まずは逃げないように拘束しなければ。

 

「宏海、夕夜を捕まえといて」

 

 呼び掛けるが返事はない。

 

「東條くん!」

 

 今度はるちあが叫んだ。なんとなく見覚えがあるシチュエーションに『デジャヴュ』という言葉が浮かぶ。

 ハッと気づいて恐る恐る自分の胸を見下ろすと、ブラのカップがズリ上がって両方の乳首が完全に露出していた。

 俺は慌てて手ブラで隠す。

 

 ああ、またやってしまった!

 水泳の授業であれほど恥ずかしい思いをしたと言うのに……。

 でも、夕夜は水に潜っていてほとんど目を閉じていたし、ラリーで円陣が崩れていたため宏海は俺の背後にいる。乳首を見られてはいないハズだ。

 

「雪緒。取ってきたわよ」

 

 樹里亞の声に目を向けると、彼女は小さな白い布が縫い付けられた長い紐のようなものを持っていた。ソレには見覚えがあった。

 俺が履いていたTバックじゃねぇか!

 

 ビーチボールで渾身の一撃を打ち込む際に、ブラのカップがズレるとともにTバックの紐が解けてしまったのか! ……ってか、そんな外れやすいシロモノを水着と呼んでいいのかよ?

 しかし、さすがは先人の知恵。俺の下半身は水に濡れてヒラヒラしなくなったパレオにしっかりガードされていた。

 もちろん前だけだが……。

 恐る恐る振り返ると、今度は完全に裸になった俺の尻を宏海が凝視して呆然としていた。

 そしてどういうわけだろうか。宏海のさらに後方、沖に近い辺りに浮かぶ真っ黒いレンタル浮き輪に乗ったランさんたちが、俺に向かってサムズアップとウインクしてるのが見えた。

 

 だから違うんだってば!

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