※この作品はR-18です。

ブラックベリーフィールズ 〜やがて女の子になる君へ〜   作:孤児郎

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前話のあらすじ

ホテルで会った門倉の爺さんは、もともと女の子になりたがっていた俺が樹里亞を好きになるハズがないと言って海外へ。残された俺と樹里亞は高級スイートルームにお泊まり。でも、心配になって自分の股間を確認してたところを樹里亞に見られてしまった。


第五十二話 男子高校生はスイートルームにお泊まりする1

「やっぱりそうだったの?」

 

 寝室のドアのところに立ったまま、樹里亞(じゅりあ)がそう言った。

 見られた……女になってしまった俺の身体の秘密を、最愛の彼女に見られてしまった!

 俺は急いでパンツを引き上げたけど、恐らく間に合わなかっただろう。

 

 ◇◇◇

 

 俺の身体を形作る遺伝子には最初からY染色体がない。つまり俺は生まれる前から女の子だったというわけだ。では、どうして男の子として育てられたのか? 母親の胎内にいる段階から性器の形成が不十分で、男の子のような見た目で産まれてしまったからだ。

 俺の身体を診断した多岐川(たきがわ)医師の話によると、発展途上国などでは珍しくない症例らしい。そしてほとんどの場合は思春期に性ホルモンの分泌によって第二次性徴が起こり、身体は本来の性別へと変化する。

 しかし俺の場合はその第二次性徴が高校生になってやっと始まった。おかげで性を意識する年齢になってから自分の性別が急変するという、とんでもない事態になってしまったのだ。

 もちろん俺は女の子になろうなんて思っていない。いないんだけど、もともと女に生まれるハズだった身体は、ゆっくりと女の子っぽくなっていく。これじゃいけないと医師に相談したら、女の身体を男にするには手術とホルモン治療が必要だとのこと。痛いし辛いし、下手するとこの歳で更年期障害になることもあるらしい。

 そんなことを怖がっているようじゃ男らしくないと言われるかもしれない。だけど、精巣を持ってない俺は男になっても子供が作ることができないんだ。俺は一人っ子だから、子供を残せない決断を安易に選ぶことはできない。そして俺は堂々巡りの思考の渦に落ちて目を回していた。

 思い返してみると、あれからまだ十ヶ月。それが長いことなのか短いことなのかわからないけど、ずいぶん短い期間で俺の体はこんなにも女の子っぽく変化してしまった。

 

「まったく、お爺さまったら余計なことばっかり言って……」

 

 え?

 

「どうせあなたに『女の子みたい』とか『アレが小さい』とか言ったんでしょ? 結婚を諦めさせようとして言ってるだけだから、そんなの気にしちゃダメよ」

 

 ホテルの一室で男のアレのサイズについて語る女子高生というのはとてもシュールだった。けれど、俺は樹里亞がなにを言ってるのかよくわからない。だって俺の身体はもう……って、まさか彼女は俺の股間を見ても気がつかなかったのか?

 

「樹里亞は男のアレ、見たことあるの?」

 

「そんなのインターネットにいくらでも落ちてるわよ。ネットの写真は発情して大きくなってるのばっかりだけど、普段はもっと小さいんでしょ? あたしだってそのくらいは知ってるわよ」

 

 ドヤ顔でそう言い切る樹里亞。

 美人で聡明で頼りになる俺の幼馴染がネットでどんな凶悪な画像を見たのかはわからないけれど、彼女はどうやらボッキしていない状態のアレを見たことがないようだ。

 俺はホッと息を吐く。

 俺の身体の秘密はまだ樹里亞にバレてないらしい。

 でも、俺が彼女を騙してることに違いはない。俺を愛してると……結婚するとまで言ってくれた彼女に、俺が男ではないことを隠しているのは不実というものだ。

 やっぱり俺は男らしく樹里亞に真実を話すべきだ。

 

「爺さんが言ったのは……その、俺が小さい頃に女の子……になりたかったん……だろうって……」

 

 言葉がどんどん小さくなって消えていく。彼女に真実を言わなければならない。しかし、どうやって切り出そうかと逡巡する。

 そんな俺を置き去りにして、樹里亞はトンデモナイことを言い出した。

 

「そうそう、雪緒(ゆきお)。悪いけどあなた、女の子になってもらうわよ」

 

「はいぃ?」

 

 平静を装おうとしても、心は罪悪感に掻き乱されて、『女の子になる』というキーワードに強く反応してしまう。

 

「お爺さまにひと泡吹かせる最高の方法を思いついたのよ。あなたにはちょっと窮屈な思いをしてもらうことになるけど、あたしたちの将来のためなの。やってくれるわよね?」

 

 そう言って樹里亞は微笑んだ。

 こういう時の「……わよね?」という語句は、見た目こそ疑問形ながらも反論や拒否を一切受け付けない命令形の最上級だ。女帝の命令には逆らえない。その上、俺たちの将来のためだなんて言われたら断ることなんかできるハズもない。

 

 樹里亞の作戦はこうだ。

 俺は樹里亞との結婚の約束を守るために男らしくなろうと自分を磨いてきた。ところが爺さんの話を聞いて、女の子になりたかった小さい頃の記憶を取り戻し、女性になるべく性転換の治療をしてしまう。ホルモン治療も性転換手術も不可逆な処置で、もう俺は絶対に男に戻ることはできない。樹里亞はそんな俺に責任を感じて、俺と結婚して企業グループを継ぐ……というものらしい。

 この作戦のキモは、取り返しがつかない事態に陥った原因を暗に爺さんの言動のせいにしているところだ。

 

 ん?

 でもこの作戦、なんかおかしいぞ。

 樹里亞が企業グループを継承するためには結婚することが条件なんだけど、俺が女になったら女同士じゃないか!

 

「それじゃあ俺たち結婚できないよ」

 

「大丈夫。最近は同性婚を認めてる自治体もあるのよ。それにイザとなったらあたしが男になればいいじゃない」

 

 彼女はニッコリと笑いながらそう言った。

 

 ちょっと待て!

 樹里亞はスラっとしたモデル体型の長身美人で、最高に頭が良くて可愛い俺の自慢の幼馴染なんだ。その彼女が男になるだって?

 その細くしまったウエストも、ジャストサイズの美しいバストも、柔らかく張りのあるヒップも全部失って、宏海(ひろみ)みたいなゴツい身体になってしまうって言うのか? それに卵巣と子宮をとったら若くして更年期障害になったり、死ぬまでホルモン注射を射ち続けることになるかもしれないんだぞ!

 

 この先ずっと苦しみ続ける樹里亞の姿が目に浮かぶ。

 肌が荒れて髪のツヤもなくなってしまった樹里亞。

 ゴツゴツと骨ばってなだらかな曲線を失ってしまった樹里亞。

 しわがれた下品な低音で喋る樹里亞。

 薄汚い無精髭を生やしてタバコ臭い息を吐く樹里亞。

 不気味なほどのサイズのアレを股間にぶら下げて好色そうに笑う樹里亞。

 イヤイヤイヤ、俺の樹里亞がそんな汚いオヤジみたいになるハズがない!

 樹里亞ならきっとキッチリとスーツを着こなして颯爽と大股で街を歩くイケメンビジネスマンになるハズ。あ、ちょっと格好良いかも……って違うっ!

 

「そっ! そんなのダメに決まってんだろ!」

 

「なに怒ってるのよ。フリだけよ、男になるフリだけ。あたしたちがどれだけ本気かお爺さまに認めさせればそれでいいのよ。あの人のことだから、覚悟を見せれば結婚のことを許してくれるかもしれないわ」

 

 ホントかよ!

 頭の良い樹里亞のことだから、あの爺さんを言いくるめられるのかも知れない。でも、なんだかイヤな予感がするんだ。それに、フリということは俺も女の子になったフリをするということか。

 え?

 

「学校はどうすんだ? 性同(G)一性(I)障害(D)だと言い張るにしても、診断書とかが要るんじゃないか? それに、水泳とかどうすんだよ。女子に混じって着替えなんてできるわけない」

 

「もちろん学校には女生徒として通うのよ。それについては問題ないわ。実はあなたのことをGIDじゃないかと疑ってる教員もいるのよ。彼女を上手く使えばあなたを一時的に女生徒に仕立て上げて通学させることだってできるわ。それに、なぁに? 着替え? そんなことが気になるなんて男の子ねぇ。夢を壊すようで申し訳ないけれど、今時の女子は着替えの時に同性にだって裸を見せたりしないわよ」

 

 樹里亞はドヤ顔で説明する。

 俺をGIDだと疑ってる教員って、保健医の燐子(りんこ)先生のことだよな。それって元々は俺がとっさについた嘘が情報ソースじゃないか!

 ホントに大丈夫なのか? その作戦……。

 

 でも、女生徒として通学するなら水泳の授業で俺が女子用の水着を着せられることの辻褄は合う。

 それに、身体のことを今ここで正直に話したらどうなる? それこそ問答無用で女生徒にされてしまうだろう。その上、俺は樹里亞の婚約者としての資格を永久に失う。

 選択肢は他に残されていなかった。

 

「準備は来週から始めるとして、せっかくだから今夜はゆっくりして行きましょう。先にお風呂に入ってきて」

 

 俺は言われるままにバスルームの前で服を脱いだ。熱い湯に肩まで浸かると無意識のうちに深いため息が漏れる。

 樹里亞とのホテルのお泊まりは相変わらず絶賛継続中なんだけど、今の俺の立場はとってもビミョウだ。

 

 どうしてこんなことになったんだろう?

 俺の頭はぐるぐると空回りを続けて、思考が一向にまとまらない。

 ふと顔を上げると目の前の壁に鏡が設置されていた。立ったまま全身を正面から映して見ることができる大きな鏡だ。

 そうだ。とりあえず今は実際の性別は置いておこう。俺の股間が男に見えるかどうかが重要なんだ。

 身体を洗い、シャワーで泡を流して脚を大きく開く。浴室の明かりに照らされるように仰け反ったり身体をよじったりして自分の股間を凝視してみた。でも、よくわからない。

 

 もっと良く見なくては。

 できるだけ音を立てないように気をつけてドアを開けると、素早く身体を拭いてバスルームを出た。廊下は途中で曲がっていて、リビングにいる樹里亞からは死角になっているハズ。手前の洗面所で脱いだ服の中からスマホを取り出し、裸のまま今度は隣のドアを開けて滑り込む。こっちはトイレだ。

 スマホのカメラを自撮りモードにすると、液晶画面に全裸の自分の姿が写る。そのまま便座に座って両足を思いっきり開いた。

 

 カメラのレンズ部分を自分の股間に向けると、液晶画面が肌色というか薄桃色というかそんな色でいっぱいになる。シャッターを切ると意外に大きな音が出てビックリしたが、そのまま立て続けに何枚か撮影する。

 撮った写真に顔を近づけて観察する。これなら鏡より良く見えるハズ……なんだけど、やっぱりわからなかった。なんだかピンク色のデコボコがあることしかわからない。

 高校に入学するまで樹里亞と時々一緒に風呂に入っていたけど、女の子の性器っていうのはピッタリと閉じていてどうなってるのかわからない。わざわざジックリと見ようとも思わなかったし。

 

「雪緒? トイレなの? 大丈夫?」

 

 ドアの向こうから樹里亞の心配そうな声がする。

 

「ちょっと調子が悪いみたい……。でも大丈夫だから心配しないで」

 

 俺の股間がどう見えるのか自分では判断できなかった。客観的な意見が聞きたい。できれば多岐川医師に診てもらいたいところだけれど、そんな時間もない。

 こうなったら最後の手段だ。この写真を誰かに送って男に見えるか判断させる!

 

 でも、どうやって聞けばいい?

 

 『これ、俺の股間なんだけど男に見えるよな?』……バカ正直というか露出狂の変態というか、とにかく絶対にムリ。

 

 『友達のなんだけど性別わかる?』……股間の写真撮らせるなんてどんだけビッチな友達だよ!

 

 『ネットで拾ったエロ写真なんだけど、どう思う?』……よし、これならいけそうだ。エロい写真が嫌いな男はいないハズ。反応次第で写真のソレが男に見えるかどうかもわかる。一石二鳥だ。

 

 女の子にそんな写真を送ったら品位を疑われるから相手は男限定だ。それも童貞じゃないヤツに限られる。

 俺は自分の股間のアップ写真にメッセージを付けて友達に送信した。ヤツらはこの時間なにしてるだろう? どのくらいで返事が返ってくるだろうか。

 

 しかし、一分も待たずにスマホが鳴り出した。着信だ。てっきりメッセージがくるものだと思ってたから、驚いて落としそうになる。

 

「雪緒か? お前今、誰といるんだ?」

 

 電話の向こうから慌てた宏海の大声が響く。そのあまりの剣幕に気圧されてつい言ってしまった。

 

「じゅ……樹里亞とだよ」

 

「じゃあお前、門倉(かどくら)のエロ写真を俺に送ってきたって言うのか?」

 

 まさかと思って、送った文面をもう一度読み返す。でも、ちゃんと『ネットで拾った写真』だと書いてある。

 

「そんなこと言ってないだろ? ネットで見つけた写真だよ」

 

「じゃぁなんで撮影日が今日のついさっきなんだよ? しかも場所は空港近くのホテルじゃないか!」

 

「なっ?!」

 

 なんでそんなことが? っと思ったけれど言葉にならない。俺はそんなこと書いてないぞ。

 

「デジカメとか携帯で撮った写真には撮影情報が一緒に記録されるんだよ。撮影日時からカメラの名前、絞りとシャッタースピードまでな。スマホだとGPS機能で撮った場所までわかるんだぜ」

 

 俺の居場所がわかった種明かしを披露する宏海。きっとドヤ顔になってるに違いない。

 

「だからこの写真は、今お前が一緒にいる相手……つまり門倉のってことになる。まぁ、俺としてもお前らに進展があったのは嬉しいけど、彼女のオマ⚪︎⚪︎写真をメールで送るなんてあんまりいい趣味とは言えないぜ。写真を見せなきゃ二人が付き合ってるのを信用しないとでも思ったのか?」

 

「違うんだよ、宏海! これは樹里亞じゃ……」

 

 そこまで言ったところで俺は絶句する。

 樹里亞じゃなければ誰だと言えばいいんだ? 他の女だと言ったら俺が浮気してるみたいに思われる。かと言って自分だなんて絶対に言えない。それじゃぁ自分の股間を撮影して友達に送る変態ビッチじゃないか! いや、たしかにやったことはその通りなんだけどっ!

 撮影情報が記録されるなんて知らなかったんだよ。

 

「じゅ……樹里亞には内緒にしてくれ……頼む」

 

「わかってるよ。でもなぁ、あの女帝。派手な外見のくせにオマ⚪︎⚪︎は随分可愛いじゃねぇか!」

 

 宏海の声がなんだか上ずっているように聞こえる。

 まさかお前、樹里亞のだって聞いて興奮してるんじゃないだろうな? このヤロウ。今度会ったらタダじゃおかないぞ!

 しかし、写真を送ったのはこの俺なので、文句を言うこともできない。

 

 そうだ、大事なことを聞かなくちゃ。

 

「この写真だけで女だってわかるのか?」

 

「ん? そりゃあお前。どっからどう見たって立派な女じゃねぇか。いや、女って言うより女の子……幼女だな。全然生えてないし。うちの妹の幼い頃にソックリだよ」

 

「お前、妹の見てるのかよ。この変態ロリコン野郎!」

 

 なんだか急に腹が立って、スマホに向かって怒鳴ってしまった。

 

「幼い頃だって言ってるだろ! お前こそ去年まで門倉と風呂に入ってたんだろうが!」

 

「彼女と妹を一緒にするな!」

 

 怒りに任せて通話をぶち切る。

 ちくしょう。あんなヤツに写真なんか送るんじゃなかった!

 それにしても……トイレの便座に座ったまま愕然とする。俺の股間はやっぱり男に見えないのか?

 

「雪緒、どうしたの? 大丈夫?」

 

 ドアの向こうから樹里亞の心配そうな声がする。

 

「宏海から電話だった」

 

 このままいつまでもトイレに閉じこもっているわけにもいかない。

 いかないんだけど、俺は再び自分のバカさ加減を思い知らされる。風呂から出て全裸のままトイレに閉じこもってしまったのだ。おまけに身体を拭いたバスタオルは洗面台の上に置いてきていた。

 ドアの前に樹里亞がいたらトイレから出ることができない。

 

「ホントに大丈夫? お腹痛いの? フロントで薬をもらってきてあげようか?」

 

 なんですと?

 お腹は大丈夫なんだけど、樹里亞が薬をもらいに行ってくれたら俺はトイレから脱出できる。

 

「ありがと。腹痛の薬があったら頼むよ」

 

 ギリギリ嘘をついてないよな? 俺。ちょっと苦しいけど……。

 樹里亞が部屋を出て行く音を確認して俺は慎重にドアを開ける。万が一、彼女が部屋を出るフリをして待ち構えていた場合を想定した行動だ。でも、どこにもいない。彼女は純粋に俺を心配してくれているんだ。

 疑ってごめんよ、樹里亞。

 

 洗面所に脱ぎ捨ててあった下着と制服を急いで着ると、何事もなかったような顔をして寝室の大半を占領するでかいベッドの端に座った。

 汗を吸ったまま乾いていないシャツが肌にはりついて気持ち悪い。でも我慢だ。フロントで薬をもらった樹里亞がエレベーターに乗ってすぐに戻って……。

 

 ……こないな。

 

 トイレから出てもう十五分くらい経った気がするけど、彼女が戻ってくる気配はない。

 いったいどうなってるんだ?

 

 そういえば、写真を送ったもう一人から返事がこない。

 宏海の意見では俺の股間はもう男には見えないようだ。ヤツとの怒鳴り合いでちょっと現実逃避しちゃったけれど、これはもう樹里亞の前で裸になるわけにはいかないよなあ。

 彼女には申し訳ないけれど、とりあえず今夜は腹痛のフリをして過ごすしかない。

 でも、これから俺はどうしたらいいんだろう?

 

 その時、部屋のドアが開いて樹里亞が顔を覗かせた。

 

「ちょっと雪緒! これはいったいどういうことか説明してくれる?」

 

 そう言って彼女がドアを開け放つと、背後からTシャツにデニムパンツ姿の二人の若い男が現れた。

 

「東條(とうじょう)! お前こんなところでなにやってんだ?」

 

 宏海の他にもう一人、俺がメッセージを送った相手……早瀬(はやせ) 萌(もえ)が立っていた。ああ、早瀬は男じゃなかったけど、この際そんな細かいことはどうでもいい。

 

「どうして二人ともココにいるんだ?」

 

「それはこっちのセリフだ! だいたいなんだよ、あのメッセージは?」

 

 バカヤロウ! 今、そのことに触れるんじゃない!

 俺の必死のアイコンタクトも虚しく、察しの悪い早瀬には通じない。

 

「フロントでいきなり声をかけられたのよ。この人たちがどうしてここにいるのか、もし知っているなら説明してくれないかしら」

 

 さっきまで優しい微笑みを浮かべていた樹里亞の顔が今はもう能面のようになっていた。

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