40歳を間近にして思う。やはりすべてはクソだ。
みんながクソだクソだと言っていてクソという言葉の持つインパクトが飽和しちゃってる現状もクソだ。
クソ日本国のクソ首都とされるこのクソ都市にはクソみたいな人間が増えてく一方だ。それはゴミが増えるということで、それがまたこのクソみたいな状況を加速させている。
かといってクソ郊外やクソ田舎にはまた別のクソがあって、どちらもクソであることには変わりない。
クソがクソを生み、クソみたいなことをして最終的にクソになってクソ土にクソ還る。
そしてそんなクソループを前にしてクソみたいな悪態をつくことしかできないクソヤローのこのおれは、自分のクソ命すら自分で捨てられないようなクソ弱虫のクソ反吐ナッツキ×ガイだ。
こんなクソループに、お前ももう耐えられないだろ?
「
「キモ……また一人でブチギレてんじゃね?」
「
こいつらマジで聞こえてないとでも思ってんのか? そのイカれた認知機能こそ戦車に轢いてもらえよとりあえず。30cm定規でお前らとおれのデスクの距離を測ってみろいっぺん。いや、そんなクソみたいなことしなくていいからお前らまずカフカと手塚と小栗に謝れ。それとクローネンバーグ。あとデル・トロ。ついでに乱歩も。っていうかお前らは『スターシップ・トゥルーパーズ』も観てないキチ×イなのか? 虫をナメんなって、マジで。
「もう19時じゃね? 帰ろーぜー」
「きょうカラオケ行かない?」
「お、いーねー」
「五味さ~ん、お先失礼しや~す」
帰りの電車で誰かにホームに突き落とされて死ね。
「……なにあいつ、挨拶もしないの? 虫だけに、無視……?」
「きゃははっ、それウケる~!」
ちょっと待てよお前ら、脳にウジ湧いてんのはそっちだろ常識的に考えて。そんなネタで笑ってられんのはお前らが寝てるあいだにそのクソ鼻とクソ口とクソ耳から入ったクソゴ××リジュニアがクソ脳みそをしゃぶしゃぶしてるからだろーが。尿道口にも卵植え付けられてるからしっかり洗っとけボケ。
っていうか仕事終わってなくね? お前らがホワイトでいられるのはその影を俺が綺麗にブラックに塗ってやってるからってこと忘れんなって。お前らほんとに大卒かよ。大学もなんであんなクソたちに単位やったのか理解できん。大学もクソだな。
おれは結局そっから5時間の残業をして、会社を出た。終電だよバカヤロー。
え? おれの仕事? そんなんどーでもいーだろーが。
「おにーさんっ」
は? キャバクラの客引きってやつは人の肌の枯れ具合と髪の薄さにも気づかないよーな節穴ヤローなのか? どこをどー見たらおれがおにーさんになるんだアホか。ひょっとして透視能力があっておれの精巣でくすぶっているパワフルパワーの精子ちゃんたちでも見たのか?
「ねーねー、おに~さ~ん」
どうせおれのことをバカにすんだろわかってんだよ。そんな見え透いた嘘をつくやつも、見え透いた嘘とわかったうえで楽しむのがイキなんだよとか言ってアイロニカルに没入してるクソオヤジも、等しくおれの前から消えてくれ。めんどーならおれが消えるからもう声かけないでくれ。
いや、嘘ですごめんなさい、たまにお世話になってます。でもね、おじさんやっぱみんな素直になるのが一番だと思うの。嘘つくのも、下心などないかのように必死に見栄はるのも、クソしんどいよ?
「ニャンニャンできるよ~」
なんだよやっぱおれの年齢わかってんじゃん。っていうかこのアニメチックな声、メイド喫茶か? あんなん、いまや実在しない存在に人生を捧げることの崇高さをわかってないようなエセ三次元パワーに汚されてしまった世界じゃないか。昔が懐かしいぜ……。
「この話、聞いて損はないと思うんだけどな」
この話? 損はない? シ×クス×リーンでも押し売りされるのか?
「こっから人生逆転できるかもよ~」
ヤバいやつだ。
四十路間近のワープアクソヤローからクソ金をむしり取ろうとしてるクソ巨悪のクソ権化がおれにクソ毒牙を向けている……都会はこえーなーおい。
「『
「それはお兄ちゃんキャラなの!? それともお姉ちゃんキャラ!?」
いかん、ついヒートアップしすぎて声に出してしまった……。
「にはは~、やっと反応してくれたねっ! もしかしてもうこのおち×ぽもぴくぴくしてくれてるのかな?」
「やっぱただの風俗じゃねーか」
「ち、違うよ! もっとスーパーはちゃめちゃぶっちぎりですごいやつだよ!」
こいつの語彙はだいじょーぶなのか。おれも相当ヤバいが。
「まずは自己紹介させてよっ」
そう言うと、ずっと後ろから聞こえていたアニメ声のあるじがおれの目の前にふわふわ浮かんでる状態で現れた。綺麗なシルバーヘアのショートボブで、中性的な可憐さを備えた顔立ちをしている。正直かわいい。胸がぺったんこなのもそそられる。おれのペニスはすでに勃起しかけてるぞ、責任とってくれ!
ん? ちょっと待った。浮かんでる……だと……?
それだけじゃない。この女の子、なんか身長が会社で使ってる21インチモニタの縦幅くらいしかないんですけど……。しかもなぜかメイド服――くるぶし丈のロングスカートというとこは評価しよう――着てるし。
そうかーとうとう現れたかーユーレイ。おれホラー好きだけど苦手なんだよなー怖くないといいなー。
「せいせいせい、落ち着いてくれたまえ童貞くん」
握り殺すか。
「わたくし、こういうものです」
ユーレイはどっから出したのかわからない名刺――なぜか名刺は通常サイズだ。よく持てるなその身体で――をおれに差し出した。
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セーエキのチカラ☆
お借りします
ガケツ プチコ
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「おいおいおいおいだいじょーぶかよこれ! おれは知らねーからな! 訴えられてもおまえのせーだかんな! ブ×××リーのほうはスルーしてくれるかもしれないけど××・×・×××が来たらおれマジで逃げるからね! っていうか『お借りします』とか言ってるけど頭イっちゃってない!? セールスマンじゃないの!? ヤバいやつ!? 預けると倍になって戻ってくるとか!? 精液増えても嬉しくねー」
「日ごろ全然しゃべってないくせによく口がまわるな~虫太郎くんは」
「なにゆえおれの名前を……」
「フニャニャは天使なんだお」
「悔しいけどかわいい……なんでおれの名前を知ってるのかという質問に対する答えになってないけどかわいい……」
「天使はなんでも知ってるのです、たぶん」
「っていうかフニャニャってなに」
「自主規制の結果たったいま生み出された新たな名前」
「もとの名前に全然かすってないけど」
「夢野久作の本名は杉山直樹だし、それくらいは許してちょ」
「こっちが頭おかしくなるわ……」
「すでに周りからはそー思われてるっぽいよー」
おれははっとする。終電間近、駅につづく繁華街にはまだまだクソ酔っぱらいヤローたちがうじゃうじゃいて、そいつらの目線はおれに集中していた。
「フニャニャ、他ノ人カラ見エナイ。虫太郎、一人デシャベッテル変ナ奴」
おれは恥ずかしさのあまり走り出した。このていどで逃げ出すようなヘタレマインドはマジでクソだったが、いまさら暴れてどうにかなるものでもなく、おれはただただ走った。
そうして人けのない場所を探して無我夢中で走った結果、おれは小学生ですらもうこんなとこじゃ遊ばねーんじゃないかってくらいさびれた公園にいた。
むろん終電は逃した。
「フニャニャ、悪くない」
「うわっ!」
心臓に悪いから、できればおれの視界に現れてから声かけてくれ……。
っていうか心、読まれてる?
「本題入ってもいい?」
「……わかったよ……なんかこの世のルールで動いてるやつじゃなさそうだし、話は聞いてやる。どーせこれ夢かもしんないし」
「フニャニャは、天使です」
「それは聞いた」
「心が澄んでる人にしか、見えません」
「自分で言うのもなんだけどそれはダウト」
「そんなフニャニャは、ご主人しゃまのセーエキをごっくんすることで、ご主人しゃまにアビリティをプレゼントすゆことができるのれす」
「やっぱ夢だったかー」
「でも、フニャニャはご主人しゃまとは生きてる世界が違うので、直接はごっくんもくぱぁ~もできないのれす。ご主人しゃまが他の人に中出ししたとき、それが次元を超えてフニャニャに届きまふ」
「雲行き怪しくなってきたなー」
「アビリティはいろいろありまふ。たいていのものならプレゼントできまふ。ただ、メタアビリティは絶対だめれす。たとえばフニャニャにセーエキを届けなくてもフニャニャからアビリティをもらえるようになる能力とか、そーゆーのは禁止されてまふ」
「夢にしては妙にロジックしっかりしてるなおい」
「また、セーエキをもらえるかぎりプレゼントは続きます。アビリティを組み合わせていけばセカイセーフクやインクレディブルなハーレムも夢じゃないのれすっ☆」
「……ん? 終わった?」
「もうっ! ちゃんと聞け~! っていうかもう『見るまえに跳べ』! 初回限定無償キャンペーンとして、アビリティ1つあげるから!」
「フニャニャのキャラぶれを直せるアビリティ」
「らじゃっ――」
「待った待った! 冗談! 嘘だから! っていうかそれはできるのか」
「フニャニャは天使ですから」
「いや、キャラぶれのこともそうなんだけど、本当に世界を支配したり、ハーレム作ったりできるの?」
「使いようによっては」
マジか?
まあ普通に考えてこれは夢か幻覚症状か心霊現象か実はサイバースペースにジャックインしてたかのどれかだろうけど、夢にしてはメタ認知がしっかり働いているし場面も飛んでないし、おれはドラッグはおろかタバコすらやったことはないし、心霊現象だとしたら考えたところでなにもわからんし、仮想現実のなかなら39年も苦しみ続けてるのはおかしい! それとも『ファイト・クラブ』のパターンか?
一つたしかなことは、おれはこの数分間で近年稀に見る昂揚感を感じているということだった。
貯金をはたいて買ったオ×エ×ト工業のラブドールに初めて挿入したとき以来だ、たぶん。
どーせこの世界はクソなんだ。夢だったとして、乗らないでクソみたいに死んでいくか乗ってクソみたいに死んでいくかの二択なら、後者でしょ、むろん。
なにより、少なくともおれが認識しているかぎり、ここが異世界でもサイバースペースでもなく、おれがいつもクソ憎んでるクソ世界であるということがよかった。異世界に行こうが仮想現実に行こうが、結局「いまここ」にいる/いた自分の無念それ自体がダイレクトに報われることはない。逃避にすぎないという事実からは逃れられない。そして逃避でいいという及び腰の理屈ではおれの魂はもう救済されない。
けれどフニャニャが言っていることが本当ならば、おれはまさにこのクソみたいな現実にいながらにして王になることができるらしい。そこがいい。
逃避でもなんでもない、おれが苦しんできたこのクソったれな世界で、クソなおれのままで王になれる。
そのためにはまず失敗してもやり直せるようにしておいたほうがいいな。
「ループしたい」
「よかろう」
「いや、それじゃ身動きとれなくなるな。いつでもやり直せるように、『任意の過去の時間に記憶だけで飛ぶ』って感じの能力がいいね。未来には飛びたくない。未来見るのは怖い」
「よかろうよかろう」
「タイムパラドックスが起きないようなやつね。あとハインラインの『All You Zombies』みたいになってもしんどそうだし、『バタフライ・エフェクト』みたいに跳躍に代償が伴うのもつらい。『恋はデジャ・ブ』みたいに軽いのがいいね」
「あのウッドチャックかぁ~い~よね~」
「あれは天使」
「天使はフニャニャだよー」
「あ、過去に戻ったときにまた最新の時間まで戻るのめんどいときもあるかもしれないし、飛ぶ前のタイミングにも記憶をもって戻れる感じで」
「それはまた別の能力だから欲しかったら次に言ってちょ」
「ぶぅー」
「よっし、固まったみたいだね。じゃあフニャニャのおしっこ、飲んでね」
「は?」
「あれ? 言ってなかったっけ? アビリティはフニャニャのおしっこを虫太郎くんがごっくんすることで装填されるんだよ」
「マジかよ……………………最高じゃねーかっ!!」
おれの精液は直接あげられないのにフニャニャのおしっこは直接飲んでOKというルールはよくわからなかったが、おれは美少女のおしっこを飲むチャンスを逃すつもりなどない。絶対突っ込まないからな。
それにしても、苦節39年、小太りキモ面のおれにも美少女のおしっこイベントが訪れる日が来るとは……。
「もー虫太郎くんは変態だな~。じゃあ……行くよ?」
そう言うと、フニャニャは白のドロワーズとパンティを脱ぎ、おれの口のまえにふわふわ~っと寄ってきた。
「最初にちょっとだけなめてほしいの、フニャニャのおま×こ。そしたら、でてくるから」
だいじょーぶなのかこの変態的なシチュエーションは! っていうかおれの頭はだいじょーぶなのか! だいじょーぶではありません。いろいろと蕩けちゃってます。修復不可能。あーオナニーしたい!! いまならクソにまみれたこのクソ世界もクソ愛せるような気がしてきた。
「な、なめるよ……?」
「うん……」
おれはロングスカートをまくり上げ、毛が1本も生えていないつるつるの白い淫裂に舌を這わせた。
「ぁ……ん……ん、ん……っ……ん、で、でちゃうよぉ……ふぇぇ~~っ」
セイクリッドゴールデンシャワーがおれの口内に注ぎ込まれていく。
天使のおしっこもアンモニアの匂いがするんだなー……なんか感動してきた。
早くオナニーしたい! っていうかおち×ぽ入れさせて!
「さ、はじめてのアビリティ、試してみなはれ」
「クールな天使さんだぜ……」
「ちなみに、念じるだけでいいからね。時間とか場所とか、なるべく具体的にイメージしてね」
「飛んだあとおれの身体はどうなるの?」
「気にすんなー」
「はいー」
飛んだらまた同じ時間を過ごさなければいけない。
とりあえず最初はお試しで飛ぶのがいいな、これは。
「フニャニャ……おれ、かならずおまえを見つけるから。走って追いかけるから」
「いーから飛べっ!」
†
「もう19時じゃね? 帰ろーぜー」
「きょうカラオケ行かない?」
「お、いーねー」
「五味さ~ん、お先失礼しや~す」
寝不足で一瞬だけ意識が飛んでたような感覚だった。
「……なにあいつ、挨拶もしないの? 虫だけに、無視……?」
「きゃははっ、それウケる~!」
いかん、残業が終わって会社を出てるとこを想像したのに、怒りの記憶に引っ張られたのかこんな最悪な場面に飛んでしまった。
ただ、どうやら過去に飛べたのは本当らしい。いや待てよ。おれ、やっぱ寝てただけなんじゃねーか?
でもフニャニャの尿の味は鮮明に思い出すことができるぞ?
まー、もう1回試せばわかることか。
†
「……なにあいつ、挨拶もしないの? 虫だけに、無視……?」
「きゃははっ、それウケる~!」
なんだよ、いけるじゃん!
いやいや、待て待て、もう一度フニャニャに会うまでは浮かれるまい。もうね、この年になるとちょっとやそっとのことじゃ期待なんてしないんですよ。どうせここまで含めて全部夢なんでしょ? 『マトリックス』なんでしょ?
っていうかオナニーして~。
しよう。それから残業しよう。
おれはそうして、フニャニャがオナニーをしているところを想像しながら女子トイレの個室で一発出した。壁につかないようにちゃんとティッシュに放った。
残業を終え、会社を出る。
このままフニャニャに会えずに、過去に飛べなくなってももう悔いはないなー。このクソな世界にはほんとうんざりだけど、フニャニャの尿の風味を思い出すだけでなんとか生きていけそうな気がするよ。ありがとう、フニャニャ。
「おにーさんっ」
後ろから聞き覚えのあるアニメ声が聞こえた。
振り向くと、つい数時間前に出会ったときと変わらぬメイド服姿のフニャニャがいた。
「……これ……マジ……?」
「天使は嘘つかないよ。マジマジ」
マジで、マジ?