世界にも自分にも絶望している短気な中年童貞「五味虫太郎」のもとに全長40cmの自称天使「ピーニャ」が現れ、精液をくれたら好きなアビリティをプレゼントしてくれると言ってきた。
初回限定無償キャンペーンで獲得した「記憶だけ過去に飛ぶ」アビリティ「ダイヴ」を駆使し、飛び降り自殺をした幼馴染「七実みさき」に中出しをする虫太郎。
さらに、屍姦の精神的後遺症をパワープレイで振り切った虫太郎は、獲得したばかりの「任意の対象を自分に惚れさせる」アビリティを出社前にさっそく使うべく、いつもよりも早く家を出たのだった。
ぃ、ぃぃょ……虫太郎くんの、快気祝いに……ッ……んっ……ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
へ、変態っ……だよ……虫太郎くんっ……ぃ……ぁぁ、ぁ、ぁ……。
んんっ……だって、虫太郎くんに……元気になって、ほしいからっ……んんっ!
んっ……ぁ、ぁ、ぁ……ん、ん……虫太郎くんっ……ピーニャのおしっこで、イっちゃうん?
っ……ぁ、ぁ、ぁぁ……んっ、ん……。
ぃ、ぃぃょ……虫太郎くんの、快気祝いに……ッ……んっ……ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
へ、変態っ……だよ……虫太郎くんっ……ぃ……ぁぁ、ぁ、ぁ……。
んんっ……だって、虫太郎くんに……元気になって、ほしいからっ……んんっ!
んっ……ぁ、ぁ、ぁ……ん、ん……虫太郎くんっ……ピーニャのおしっこで、イっちゃうん?
っ……ぁ、ぁ、ぁぁ……んっ、ん……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
「頭のなかで人のあえぎ声をループさせないように」
「いやーピーニャがかわいくてさ……おれもうあと1年もしないうちに40になるのにさ……ピーニャがかわいすぎてかわいいとしか言えないくらいかわいいんだよピーニャもうホントにかわいくてかわいくて、かわいいのかわいいによるかわいいのためのかわいいピーニャって感じ、いやむしろおれのピーニャによるおれのためのかわいいピーニャっていう趣でかわいさが10兆億京ポイントをぶっちきりで突破してるよマジで」
「考えることを放棄した小説家みたいになってるね。それともただの病気か?」
「その、おれが本当に傷つくレベルまではいかない甘噛みみたいな毒舌もいいよね。でもやっぱ『ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……』は最高だった。うん、あれには勝てないってどんな文豪も」
「ポルノコンテンツでいくらでもありそうなセリフじゃないかー」
「何度思い返してもそそられるね。IQとか偏差値とかTOEICの点数が低い感じがいいね」
「聞いてないし……っていうか英語全然関係ないよっ!」
「うわっ! えっ! うそ、マジで!? うわうわうわ、ヤバいこと気づいちゃった! おれなんであのとき録音してなかったんだろう!! っていうかなんで録画しなかったの!? ねえ、なんで!? うわーうわーうわー……あ、そうか、ダイヴすりゃいいんじゃ――」
「アビリティはダイヴした先でも残ってたでしょ? だから戻ってももう飲めないよ。中出ししないと」
「そんなこと言わんといて~!」
「関西弁で言ってもだめだから。イントネーションは関東のままだし、雑」
「ある種のストーリーパターンでは、序盤はいい夢見させてくれるじゃん。んで調子乗った代償が後半にどかんって来るじゃん。いまのおれは序盤のいい夢を強制的に早送りされて、一気にツケだけ回ってきちゃったという、なかなかしんどい状況に追い込まれてますよ」
「おしっこひとつでそこまで騒がなくても……」
「お願い! もう誰にも中出しできなくていいしハーレムもつくれなくていいから、またピーニャのおしっこ飲ませてっっっ!!」
「健康のためなら死んでもいいみたいな思考回路になってるけど、本末転倒だからね、それ。いや、っていうか、中出すればするだけピーニャのおしっこ飲めるよ? そして飲めば飲むほどハーレムの道に近づいてって、そうなればなるほど中出しもしやすくなるからおしっこを飲む回数も増えるんだよ。すばらしい循環構造がもうあるのだよ。だから焦らなくていいんだよー?」
「なんと! じゃあおれ、ピーニャのおしっこ飲むためにがんばってハーレムをつくってくよ!」
「だめだー、逆効果だったー」
そうとなったらとにかく中出しだ! いや、そうだよいいんだよ、いままさにおれはそのためにこうしていつもより2時間も早く電車に乗ろうとしてるんじゃないか。惚れアビリティで人妻やOLや女子○生や看護師とグチョグチョなエロプレイができるよう、服装も半袖Tシャツにハーフパンツという夏先取りの若者スタイルで準備万端だ。休日おっさんスタイルとも言う。まあ梅雨も本格的になってじめじめしてるし、ちょうどよかった。
しかしこの格好でビジネスバッグを持っているのは、単なる不審者だな。セックスのことで頭いっぱいでそこ気づかなかった。まあいい、電車来たし、乗るか。
っていうかまだ午前6時ですよ午前6時。こんな時間帯に電車乗るのは高校生のとき以来なんじゃないか……あ、やべ……あー……だめだだめだだめだ、高校時代の陰鬱な記憶が頼んでもいないのに蘇ってきた。わーわーわー。この記憶たちはおれを窒息死させる気か。学生時代なんてマジクソですよホント。いや、そもそもたいていの過去はすべからくクソだな。ん、待てよ、そう思うってことは、おれはつねに成長し続けてるんじゃないか? 過去の栄光にすがるような腐った大人にはなりたくないぜ! なんて青い闘志を絶やさず燃やしているこのおれは、ひょっとして聖者にふさわしいんじゃないか? はい、ないです、そんなことはない。そんな無邪気なルサンチマンはもう抱けないよピーニャ。もうゴールしたいよピーニャ。あー苦しい苦しい。こんなときはピーニャのおしっこセリフをループさせよう。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
ピーニャのおしっこ、いっぱいあげるっ……。
にゃふん……癒されるよピーニャ……。いかん、勃起してきた! これいつもの時間帯に乗ってたら勃起ペニスが前に立ってる女性のお尻に当たって逮捕されるとこだったな、危ない危ない。
ん? あの連結部付近に立ってる背の高い女性、モデルか? きれいすぎやしないか? 脚細すぎでは? ごぼうみたいに細くてもはや拒食症なんじゃないかと心配になるレベルだあれは。けれどそんなときでもおれはキミと連結するとこ想像してもうバッキバキに勃ってますよフハハハ。あんな女性がおれに惚れてくれたらいいなー。
「一人で忙しいなキミは。ちなみにさりげなくアビリティ発動してるよ」
うそんっ! いつの間に!
「自分に惚れてほしいと願いながらセックスしてるとこ想像したでしょ。それでもうOK」
わお。本当に優れたアビリティだな。これ、使いすぎてあとで鼻血出たりしない? あるいは頭痛がしてどんどん酷くなって最後に頭がぼかーんって爆発したりしない?
「そういうペナルティはないから安心してー」
ピーニャ有能だよピーニャ。そんなピーニャの知恵をまたもや借りたい。この惚れアビリティの名前はどうしよう。前みたいにシュピピピピッと決めてくれたまえ。
「きみのこゝろはおれのもの。略してこゝろ」
夏目漱石に祟られたくない。
「死体とヤった男のセリフとは思えないね。じゃあ、おれの瞳に乾杯。略してオレパイ」
「ダイヴ」に比べて一気にカッコよくなくなったけど、語感がいいから採用。アホな10代が考えそうな感じもいいよね。アホな20代とかアホな30代とかアホな40代とか――以下略――が考えそうなアホネームよりもいい。まー自分でもなに言ってるかわかんなくなってきたけどとにかく採用。
「やったー!」
しかしこのあとどうすればいいんだ……? もっと効率のいいアビリティがあったんじゃないか。まーいいか。きっとエロゲとかエロ漫画に登場するようなナチュラルボーン痴女みたいにあの美女がおれを誘ってくるのだろう。いいんだぜおれは、この、人と触れなくて済むくらいいつもより空いてる通勤電車でキミに痴漢されても。
「妄想の瞬発力と飛躍力はあるけど、バラエティには乏しいというか、新鮮味に欠けるよね」
そ、そしたらね、ぼ、ぼく、ピーニャお姉ちゃんにいろいろ教えてほしいのっ! ぼくだって男の子だもん、えっちなことに興味がないと言ったら嘘になるよ……でもこんなこと相談できるのはピーニャお姉ちゃんだけだから……だめかなぁ?
「拝啓 ××ちゃん 人の飽くなき快楽への探求には本当にめまいを覚えるわけで、たとえばそれは39歳童貞がショタを演じることの不可能性に直面したときに容赦なくピーニャを襲ってくるわけで」
元童貞だよ! これ2回目だかんな、たぶん! 5回に到達したらピーニャの前で脱糞します。そしてそれを食べます。すごい勢いですごい量を食べて、大食いのプロみたいに体を上下に振って「まだ入るっ! まだ入るっ!」と苦しさを抑えながらさらなる食糞に努めます。
「それ誰が得するの? ピーニャは痛くもかゆくもないから、虫太郎くん一人がダメージ受けるだけだよ。っていうかどうせそんなことできないでしょこのクソビッグマウスヤローが」
はきゅんっ! ピーニャにここまで罵倒されたのはじめてかも……もっとおれをなじって! おれを壊れた玩具みたいにいいようにしちゃって!
「まあそういう素直なとこはかわいいよね、虫太郎くん」
はきゅきゅんっ! アメとムチ作戦? 恫喝のあとのかつ丼? こっからおれ洗脳されちゃってりして? してして! 洗脳してして~! にゅふふ~ん!
「よくいままで逮捕されなかったなこの男は」
現実と虚構の境界線とその境界線につねにすでに内包されてしまう限界性と多面性について日夜深淵な思弁を欠かさない変態紳士ですから。
「この人、痴漢ですっ!」
お? 痴漢か痴漢か? 朝っぱらから欲望垂れ流しかよマジ勘弁だよクソ迷惑だって。ドン引きですよドン引き。『痴×者ト×マス』という14年前の怪作をいますぐ脳内Am×z×nで買って留置所で脳内プレイしてリアルにアナル掘られなさい。え、待て待て待て、ト×マスってもう14年も前なの!? そりゃおれも年とるわけだ……。
「なにとぼけてんだよ! おまえだよ!」
「澄ました顔して余裕ぶっこいても逃れらんないからな!」
「あのおっさん? 痴漢? マジで? うっわ同じ空気吸っちゃったじゃんマジサイアクー! キショいっ!」
そうか、今度から奇書のことを褒めたたえるときは「××の新作マジ奇書いっ!」と言えばいいのか。そしたら怖いもの見たさでふだん本読まない人が釣られるかもな、グフフフっ、ウケるー!
とか寒い妄想で一人空笑いしてる場合じゃねーー!! おいおいおいおいこれ洒落になんないやつじゃんかっ! おれ? おれなの?
気づけば、あのモデル体型ハイパー美女が「こわいっ……でもここで負けちゃだめっ、ファイトっ! みさきっ!」といった趣の滲む怯えた表情でおれの左腕をつかんでいた。両手でつかんでいた。だめだよみさき、そんなつかみ方されたら、興奮しちゃうじゃないかっ☆
あれ、なんかこの女性の手、震えてない? 本当に泣かせちゃった? おれやっちゃったの? 無意識に?
んぁ? っていうかなんでおれはいま女性の名前をみさきにしたんだ。やっぱ吹っ切れてないかーそうかーそうだよねー……あーだめだ鬱だ死のう……。
「おっさん勃ってない……?」
「朝からグロいの見ちゃったよ……目がつぶれる……おえ……」
「人類のゴミじゃん。っていうかゴ××リ以下だよマジ死ね!」
「お、ちょうど駅着いたじゃん。とっとと締め出そうぜ!」
そ、そそそ、それでもボクはやってない!
この乗車率じゃあそれこそト×マスみたいなウルテクを会得した黒帯の猛者じゃないと無理だって。それ以前にさっきまでおれの近くにいなかったよねこの美女。
「さ、通勤の迷惑になるから。とりあえず事務室行こうか」
「はい……」