ソードアート・オンラインはミルフィーユ構造の浮遊城アインクラッドを攻略して行くオンラインゲームである。
VRMMORPGという新しいジャンルを開拓したSAOは完璧ではないが五感で全てを感じ取りながらプレイヤーに一つの大目的を目指して行動させる。つまりはアインクラッドに存在する第100層を目指すというゲームになる。そしてミルフィーユ構造になっている浮遊城アインクラッドはそれぞれの層に繋がる迷宮区と呼ばれる塔型のダンジョンが存在し、これを攻略して行く事で上の階層へと昇って行く事が出来る。逆に言えばアインクラッドにおける攻略行為がこれに当たる。
そして迷宮区の奥にはボスが存在し、これを討伐する事で次の階層への道が開けるのだ―――そうやってひとつひとつ、新たな層を解放して100層へと近づき、それを攻略するゲームである。
こうやって新たな層を攻略する事によって新たなコンテンツが解放されるのもSAOの魅力である。まだ1層段階では多くのシステムに制限がかかっている状態ではあるが、新たに攻略を進める事で少しずつ新しいフィールドなどが出現し、そしてそこで出来る事が増える。ちなみにEXスキルと呼ばれる特殊条件やクエストを完了する事で習得可能になるスキル、その他にも多くの基本スキルが層を攻略する事で解禁となり、基本的な物は第5層に到着する頃にはほとんど解禁されていると言われている。
つまり、SAOというゲームを真面目に遊ぶのであれば、迷宮区とボスの攻略は必須事項でもあるのだ。そもそもボスを殺さずに救助を待ったところで無駄だとモリアーティーは断言している。なぜなら茅場晶彦のVR技術は一種のブラックテクノロジー、或いはオーバーテクノロジーであり、常人でも天才でも把握するのが難しすぎる技術であり、数年先を進んでいる為に今の技術で即座に対応するのは難しいと断言していた。
そして今、現実の体はおそらく昏睡状態で放置されている。自分のリアルボディも長期ダイブ用に最高環境を用意しておいたが、それを加味しつつも、少なくともタイムリミットは衰弱する3年から4年ラインだと思われる。それ以上は目覚めても体がまともに動かなくなりそうだ。
つまり、これがSAOというゲームのタイムリミットである。
本当に異世界に転移してその住人として生きるのであれば大歓迎とも言える状況ではあるのだが、現実が存在するのがゲームであり、真剣に遊ぶのであれば現実の事を考えなくてはならないのだ。つまりは、真面目に攻略の事を考えているか否か、という話でもある。
「即ち時は金なり、という事だネ。ま、今更君に言う必要はないだろう? 私の暴力担当君? もうちょっとペースを落として進撃してくれないかナ!」
「カスが、模倣された動きとパターン化されたAIで俺を楽しませられると思うなよ」
「あぁ、うん。ダメみたいですネー」
木を蹴って上から落下する様に飛び降りる。その動きでモンスターの背後へと落ちながら逆さまに落下し、頭を両手で掴んで倒立、一回転するように背後に着地しながら勢いをつけて頭を引っ張り、後ろから前へと向かって投げる。投擲したモンスターを他のモンスターに連鎖的に衝突させながらその集団へと向かってインベントリから
「弱い、弱すぎる。所詮は雑魚か」
「君が何というか怪物的すぎるんだよ」
「違うな、俺以外の全てが弱すぎるだけだ。せめてハニー並みの意思の強さがあれば少しは慰めにもなるだろうが、やはりNPCじゃこの程度か」
「いやぁ、プレゼントをした張本人としては嬉しい限りだよ。彼女との逢瀬はどうなんだい?」
「既に二度愉しんでいるよ。諦めずに襲い掛かってきてくれて、しかも正面から正々堂々と、一人で。戦う度にレベルだけじゃなくて殺意と憎悪が更に滾るのを感じているのに、それでも純真さを失っていないんだ、素敵なハニーさ……まぁ、どうしても彼女と比べてしまうから周りが多少つまらなく感じてしまうって苦痛があるけど」
「ほうほう、成程成程。これは次に誰かを紹介する時が来たら私のハードルが上がりそうだネー」
迷宮区に出現するコボルド共もそこまで強くはないから、こんな動きをしていれば蹂躙できるのも当然だ。早いところ、更に上の階層へと移動し、プレイヤーに多様性を生み出してほしい。そうすればプレイヤー一人一人の個性とも言えるものが生まれ、動きや戦術に違いが出来る。
そうすれば漸く、本当の意味で愉しめるようになるだろう。
だがその前に、
―――仕事だ。
「やっぱり迷宮区の構造そのものは変化していないか……あ、そこ右抜けたら階段があるよ」
「了解」
木々が生え、半ば迷宮と融合しているのが第一層の迷宮区。だがこれも奥へと進んで行けば行くほど、ファンタジーチックな紋様や石によって構成された綺麗な迷宮へと姿を変えて行く。そうなってくると身を隠すための場所や障害物が減ってくる。それがこの迷宮区での戦闘を行う場合の面倒な部分だった。純粋に戦う場所しか用意されていない為、ギミックを利用した自由戦闘が行えないのだ。
とはいえ、染みついた殺意さえあればそこらへんはどうとでもなる。
この迷宮区に出現するコボルドは対人殺害への嫌悪感を薄めるために比較的に人型に近い形をしており、その上で動きは遅く、パターンも単調だ。
「正面、五体だけど―――」
「問題ない、蹂躙する」
槍を適当に数本纏めて鷲掴みにし、それをSTR任せに全力で投擲する。筋力任せの投擲が風を切りながらコボルドへと降り注げば、それに反応する様にコボルドが即座に防御と回避体勢に入る。だがそれは同時に動きを分散させるという事でもあり、各個撃破の良い的でもある。一瞬で跳躍と共に接近し、目の前に着地したところで体を低くし、コボルドの斬撃を掻い潜って回避する。
「ちょっとぉ!!」
オーディエンスから文句が跳んでくるが、それを無視しながらコボルドの足を掴み、それを引きずりながら倒しつつ、別のコボルドへと向かって鈍器の様に叩きつけつつ足首を捻り、千切る。近寄ってくる別のコボルドに対しても同じようにコボルドを鈍器として使いつつ足首を更に強く握り、
そのまま足首を千切って握り潰す。
「脆い……結構退屈だな、狩りって。やっぱりPKしたほうが経験値効率はいいな」
「こんな悪意と殺意の塊を想定して設計されてないって」
簡単な話だ。刃物を持って盾を持っているなら、それが通用しない距離に接近して握って千切って潰せばいい。それの繰り返しでこの階層のモンスターは封殺できる。そういう動きに対応していないのが一つ、カウンターとして使える噛みつきを使用しないのがもう一つ、
最後に、熱が籠っていない雑魚だから俺に届く訳もないのがもう一つ。固定化されたアルゴリズムであるモンスターに対してダメージを受ける要素なんて存在しない。動き、回避し、コボルドそのものを引っ張って一瞬も動きを止めずに掴んで千切って蹂躙する。これが現実であれば間違いなくスプラッター現場になる様に殺す。残念なのがNPCには恐怖の感情を感じられない事だろうか。
人間の魂のある恐怖と、NPCの演技ではまるで質が違う。恐怖を感じているように見せている、というのがどうしても伝わって萎えてしまう。さんざんコボルドを千切って解体して殺したところで闘志が萎えて溜息を吐く。
「やっぱり気の強い女を相手にして屈服させたい……それか英雄や勇者と呼べそうな才能の持ち主に本気で襲われたい」
「人の趣向にアレコレ言うつもりは私にはないけれど、一応お仕事中だから趣味は程々にネ?」
「解ってるさ。ただな、まだここら付近だと手ごたえがなさ過ぎて暇なんだよ」
呟きながらコボルドのドロップには欠片も興味を抱く事無く再び迷宮区を走り抜けて行く。コボルドからダメージを受ける要素なんて存在しない為、たとえそれが10体囲む様に出現したところで一切焦る事はない。淡々とそれを処理しながら奥へ、奥へと進みながら階段を上って行き、迷宮区の奥へと到達する。
そうやって到達するのは迷宮区の奥に存在する大扉だ。これが所謂ボス部屋への入り口になる。これを開き、向こう側へと抜ける事で挑戦人数に沿った調整が入りつつ、その階層における最強の存在が襲い掛かってくる。
「さてさて、漸く到着出来たね。ここのボスは《Illfang The Kobold Lord》だった筈だね」
「
「片手斧に盾を使っているボスで、戦闘参加人数に合わせて取り巻きであるコボルドを増やして行く統率タイプのボスだよ。無論、ソロでアタックしても取り巻きは存在する。最低ラインは二体だ。それに加え巨体を誇るイルファングの相手もしなくちゃいけないから、基本的にはレイドパーティーでの攻略が推奨されているんだけど―――」
そこでモリアーティーが言葉を区切る。その間に扉を蹴り飛ばして開けて、その向こう側のボス部屋を晒す。インベントリの中から武器を適当に引きずり出し、それをボス部屋の中に散乱させるように投げ捨てた。その状態で両手の指の骨を鳴らす様に、ボス部屋の中に入り込んで行く。
「―――じゃ、適当に弱らせておくれよ、私の手駒クン。殺さないでくれると非常に嬉しい。何せ、倒すのは表の連中の仕事だからネ!」
「あいよ」
モリアーティーを下ろした所でパーカーを被りなおしながら歩いてボス部屋の中に侵入して行く。足元に散らばっている槍を蹴り上げて一回転させながら半身を前に構えた所、上から飛び出してくるように赤い体の巨大なコボルドが飛び出してきた。ライフバーが出現し、威嚇する様に吠えるその顔面へと向かって、既に槍を投擲していた。吠えるその顔面に衝突し、ヒットエフェクトが出現し、それに合わせて鎧を纏うコボルドが二体出現する。
「データごときが、俺に勝てるとでも思ってるのか」
足元の剣を蹴り飛ばして先頭を行くコボルドに衝突させながら前に出る。対応する様に飛び出してくる残されたコボルドが武器を片手に跳びかかってくるが、動きにフェイントもなく、数値頼りの単調な動きでしかない。あっさりと見切って腕を掴みながら一回地面に叩きつけ、頭を床で強打してからそれをイルファングへと投げる。それをイルファングは盾で受け止め、コボルドの姿を弾き飛ばした。
その隙に接近する。両手には斧と槍が握られている。二刀流なんてシステムが存在しない為、装備している訳でもなく、システムエラーによって武器の補正が乗る事はなく、ソードスキルさえ放てない事はデメリットでしかない。だがそもそもソードスキルなんて
道具は道具であればそれで十分。
接近するイルファングに武器を破壊する様に叩きつけて失いながら、ダッキングとスウェイでイルファングの攻撃を回避し、手近な武器を掴んでその体に突き刺して行く。それを引き抜く事もなくイルファングは斧を振るい、此方の迎撃へと入る。
だが当たらない。
「攻撃に熱がない。システム上の演技で、魂すらなく、迎撃のロジックを利用して動いているだけ。なんて薄っぺらでつまらないんだお前は。欠伸が出るぞ」
ユウキと比べるのも失礼なぐらいクソつまんない木偶の棒だ。こんな雑魚に殺される様なクソって存在するのか? 笑みを浮かべ、げらげらと嗤いながらイルファングに武器を突き刺して行く。その肉体は硬いとは言い辛く、あっさりと武器を突き刺す事が出来る。それにより入るダメージは装備していない扱いなので小さく、有効だとは言えない。だがこれは所詮、殺しの為に積み上げているのでしかない。
故に武器が腹、足、肩、腿、胴体と突き刺さって軽くオブジェ化してきたところで、
イルファングの攻撃を接近しながら回避する。懐に飛び込んで、体に突き刺さった武器を掴み、それを利用して
「!?」
「お―――今のはちょっと本気で驚いた感じがあったな」
げらげらと嘲笑しながらイルファングの体に突き刺さった武器をブランコの様に体を回すのに使い、ジャングルジムの様に足場として利用し、回避しながらイルファングの巨体に張り付き組み付き、その体に毒の塗ってあるナイフを少しずつ突き刺しながら移動する、既に復帰しているコボルドがイルファングに組み付く此方へと対応しようとして動くが、その動きも攻撃の流れに利用する。
接近してくる姿を足場にイルファングへと移動し、攻撃する際に武器を握って倒立、回避しながら背中を蹴って攻撃をイルファングに叩き込む。
「悪いな、どちらかというと俺は多対一の方が得意なんだ」
そのまま、イルファングの解体を続行する。イルファングのリーチの内側に常に動きを停止させる事無く組み付いたままその体に触れる度に手と爪を体に突き刺し、その体を構成するポリゴンを血肉を千切る様に引き裂いて投げ捨てる。イルファングが抵抗する為に動きを更に激しくするが、可愛らしい悲鳴でしかない。
武器を持ち換えてソードスキルを繰り出そうとしても、見えているし、ロジックのアルゴリズムに切っ先を感じる。殺意を読んで倒立する様に跳躍して回避しながらイルファングの頭の上に到達し、その目の中に手を叩き込んで目玉を引き抜き、ポリゴンが霧散する前にそれを噛み千切った。
イルファングの悲鳴に近い咆哮がボス部屋に響いて行く。後ろに着地し、落ちていた槍を拾ってそれを尻尾に突き刺しながら引き千切り、側転して巨大な刃を回避すれば、
「あ、もういいよ。見たいものは大体見れたしね」
「あいよ」
モリアーティーの声が聞こえるのと同時に興味を失い、転がって攻撃を回避してから歩いてボス部屋を出て行く。退屈さを体が表す様に欠伸を漏らしつつボス部屋を出た所で、扉を蹴り閉めた。
「あぁ、だるかったな……それで、殺さなくて良かったのか?」
言葉をモリアーティーへと求めれば無論だとも、と言葉を返された。
「何故なら攻略し、開拓して行くというのはこのSAOにおける最高の娯楽にして希望だからね、それが名前も知れない犯罪者がソロによって解放したとなるとゲームの難易度を疑われる場合があるし、楽観したプレイヤーによって犠牲者が爆発的に増加するかもしれないし、必要以上に君の名前を広める必要もない」
なによりもだ、とモリアーティーは言う。
「君を前提にボスの難易度を調整されても困るからネ!!」
「まぁ、それもそうか」
自分がかなりキチガイ染みている戦闘方法を行い、発揮しているのは自覚している所だ。だからこそそれを楽しんでいるのでもあるのだが。だがそれはそれとして、自分の様な存在がそう何人もいるとは思っていない。確かに俺をベースに戦術や戦闘力を構築されたらただの大量虐殺が始まるだろう。
「まぁ、それはそれとして……良くもあんな風に戦えるものだね、一応アレでもボスなんだけど」
「ん? 考え方の前提が違うんだよ。お前らは
俺の戦い方は違う。俺は戦っているのではない。
「俺は
その言葉にモリアーティーが呆れた表情を見せた。
「ま、君が規格外に頭がぶっ飛んでるのはいいさ……というか君、リアルではもしかして殺し屋でもやっていなかったかな?」
「残念、どこにでもいる正義の味方を友人に持つ元大学生です」
「ほう、君がそうなった原因はその人物にありそうだね」
まぁ、確実にそうだろうとは思う。
あれを一言で表現するならそう―――馬鹿。それに尽きる。
これが小学校時代の馬鹿の発言であった。だがそれが原因でお互いにどこか、突き抜けてしまった部分はあるなぁ、というのはある。懐かしい話だ。あいつはそのノリで自衛隊の方に入隊しているから、間違いなくSAOにはいないだろう。安心したような、そうではないような……。
「まぁ、それでも君の動きは
「って言われてもなぁ、SAO始めた当初からこんな感じに動けたし」
そう言うとモリアーティーは腕を組み、考えるように床を足でタップする。二人で進んできた迷宮区の道を戻りつつ、モリアーティーの露払いを行う。見えてくるコボルドの始末を行いながらモリアーティーがぶつぶつと喋っている事に耳を傾ける。
「……やはり心意……だが……実装? ……いや、ベースは……となると……ラースか? 利益―――違う―――実験―――収集……ふむ、まぁ、そうだね、確かに解らないのであれば確かめれば良いというだけの話だね。私もちょっとだけ君の秘密の興味が出て来たヨ」
「止めてくれ、国語の教師に君にはバイの素質がある……先生とどうかな!? って高校の時に誘われたことがあるんだ、止めてくれ」
「意外におぞましい話が聞けたね! ま、今回のお仕事はこれで終わりさ。1層が攻略されるまでは後は好き勝手していればいいよ」
「つってもなー」
コボルドの頭を踏みつけて、その弾力性をブーツの裏で確かめながら悲鳴を上げる生物を無視しながら、これが終わった後の事を考える。犯罪者プレイヤーの娯楽と言えばやはり、殺す事だ。
プレイヤーと命を削りながら甘い汁を啜る事―――それが最大の娯楽になるだろう。
だけど今のこの環境でそれが出来る? と言われたら難しい、プレイヤーを無意味に殺すのはぶっちゃけ、主義に反するというか
だけどプレイヤーをこの時点で殺そうとしてもスキルに装備に環境が制限されているんだからコピーキャラクターを相手している様なだけの状態だし、それを相手にしたって眠くなるだけだ。ユウキとの逢瀬が出来るのも週1だ。それ以上コンタクトしたらそのまま手が滑って殺してしまいそうになる。
じゃあ酒場に行くか? と言ってもオレンジ用の酒場なんてないし、モリアーティーが仕入れてくれる酒はクソが付くほど不味い。じゃあ最後に娯楽ってセックスぐらいじゃね? と思うけどこの階層で娼館を保有している町は始まりの街だけで、その中には犯罪行為を取り締まる為の衛兵の姿もある。つまりオレンジプレイヤーには利用不可であるのだ。
クソが、と悪態しか付けない。やる事がマジで何もない。
「もうこうなったらフィールドボス殺害巡りにでも出るか」
「相当暇をしているみたいだね?」
まあな、と呟く。殺すか犯す以外にやる事はないのに、どっちも出来ないのだ。レベルが上がってスキルの3スロット目も解放されてはいるのだが、ここに投入する予定の《鍛冶》はまだこの階層で入手する事も出来ないのが問題だ。
「そりゃあな」
コボルドに組み付き、首を取って、締め上げながらへし折って殺す。腕を中に突き刺して内臓を引き出そうとしたらポリゴンだけが引きずり出せた。手足を引き千切り、その屍を振り撒き、武器の代わりにしながら蹂躙して歩く。道具なんてものはそもそも何かを殺すのに余分だ。手足と体さえ揃っていればそれで十分に殺せるのだから。だけど硬い相手にはさすがに道具が必要になるし、素手では殺せないゴースト系エネミーも存在する。
それを考えるとやはり、武器とそれのメンテナンスがどこでも行える能力というのは必要だ……困ったものだ。
そう思っていると、モリアーティーが声を向けて来た。
「では私の実験に付き合ってみるかナ?」
「実験?」
「あぁ、そうともさ。そこに特に心配するような要素はないさ。治験の様な人体実験でもないしネ! まぁ、これで測れるのはこのアインクラッドが一体何をベースに稼働しているか、そしてその本質を探りつつ……そうだね……君の精神性がどれだけぶっ飛んでいるのかを再確認できるぐらいかナ!」
滅茶苦茶怪しい言葉に半眼になりながらコボルドの顔面に拳裏を叩き込んで引きはがしつつ、球を引きちぎって転がし、
「場合によっては圏内保護やハラスメントコードを無視できるようになっちゃったりトカ!?」
「実験は俺に任せろ」
「君の欲望への素直さは正直嫌いじゃないよ」
モリアーティーの小難しい話は分からないし、そもそも理解するつもりもないが、それで利益が出るというのであれば話は別だ。仲間である間は普通に利益のおこぼれをくれるし、文句はない。何よりもハラスメントコードや圏内保護を無視して動けるというのであれば、
―――町中に潜んで潜入する楽しみも出てくる。
衛兵にバレずに活動し、罪を犯す。
まるで本当の犯罪の様だ。
「ふっふっふ、いい笑顔じゃないか……でも今にも食い殺しそうな顔だから程々にネ?」
「あぁ、解ってる」
「駄目だ、まるで解ってないや……」
自然と上がってくるテンションにエンジンがかかるのを自覚しつつ、コボルドの屍を築き上げながら迷宮区の外へと向かって行く。
割と色々と混ぜてるし、SAOはUW前提で展開されたゲームならこれ、ラースの実験場でもあったのではないか……? という面白いはなしも構築できるわけで。実際にアニメのSAO最終話では心意らしき現象が確認できたし、やはりSAOサーバーはアレ、どこかでラース経由の技術が使われているんじゃなかと。
という訳で教授の推理フェイズ。そして圏内から絶対的安全が消える日。