しかし、ふとしたきっかけでアストルフォに押し倒される藤丸。今まで半ば女友達として見てきた彼の意外とたくましい体に藤丸はなすがままにされてしまう・・・。
【内容】
・処女
・アストルフォ×藤丸(♀)
・アストルフォ
・藤丸視点
・1人称
・アストルフォが攻め
・別に乙女ゲーっぽいことはしようと思ってなかったんだけどなぁ
―上―(エッチなし回)
「マスター、おいしいね。この肉まん」
そう言って、アストルフォは手に持った包みの中身を頬張りながら笑った。肉まんの湯気がアストルフォの口から漏れ出て、香ばしい匂いを周囲に振りまいている。
私も、アストルフォとおそろいの包みを頬張る。口の中に、芳醇な肉の香りと、熱い肉汁が流れ出る。まるで口の中をやけどしそうな熱を感じるが、幸いなことに餡を包む皮が、その肉汁を吸うために口の中身を吐き出さずに済む。そして、何より肉汁を吸収した皮の柔らかさが脂の旨味を引き立てる。
「お、マスター、いい笑顔だね!」
アストルフォに言われて、私は自分の顔が綻んでいることに気が付いた。
確かに人理焼却の戦いを終えるまで、このような気の利いたものは食べていなかった。いや、我がカルデアを誇る料理人たち―――エミヤ、ブーティカ、タマモキャット、その他もろもろ―――の作る料理は、そこいらのレストランとは比べ物にならないくらいに美味だったのだが、やはり物資不足は避けられなかったのだ。
例えば、パンを捏ねる職人がいた。パンを焼く機器があった。パンとなる素材もあった。しかし、パンを彩る材料がなかった。パンをよりよく発酵させる機械がなかった。
何よりこのような外食の機会なぞなかったのであった。カルデアに服飾や食べ物だけを目的とした余計なレイシフトをする余裕なぞあるはずもなく、ゲーティア撃破までついぞ買い物などできなかった。
ゆえに、今アストルフォと二人で買い物に出ていることが私にとっては何よりも楽しかった。
「うん、おいしいよ」
アストルフォの言葉に私は笑顔で返す。
「アストルフォと二人で一緒に食べてるから、なおさらね」
「うれしいこといってくれるな~、マスターは」
私とアストルフォの間に車の駆動音が通りぬけ、残響する。
「それにしても何回見ても見飽きないなぁ。マスターの生きている時代は」
「そう?私からしたら見慣れたつまらない風景だけど」
「いやいや、僕たちからしたら一国のお城がこんなに立っているし、鉄の馬は走っているしで興味がつきないよ」
二人がいるは新宿。亜種特異点から解放された、そこは普段の喧騒を取り戻していた。
「うわぁ!これ可愛い!」
私は目の前のふわふわした、腰ぐらいまである兎の人形を見て、声を上げた。私たちは新宿の駅に近い、ビルで買い物をしていた。
フワフワの素材、現在にいる動物をモデルにした造形。椅子にもなりそうな大きさ。これこそカルデアにないものだ!
「へー、兎の縫いぐるみかぁ。僕のヒッポといい友達になれるかなぁ」
「ぼくのひっぽ、っていうとあの縫いぐるみの?」
「そうそう!マスターが手入れをしてくれている、あの子」
アストルフォがヒッポというのは、彼の宝具『ヒポグリフ』か、彼が自身の宝具を真似て作った人形を指す。戦闘や特異点探索でヒッポというのは前者であるが、それ以外では後者を指すことが多い。しかし、アストルフォは理性蒸発をしているため、きちんと確認を取らなければどちらであるかわからないことがある。
縫いぐるみのヒッポくんは私がアストルフォにバレンタインデーのお返しにもらったものであり、あまりにも大きいそれは、我が物顔で私の部屋を占拠している。そして、アストルフォはその子に会うという口実で無断で私の部屋に出入りしているのであった。
「そうかぁ、そうだね。あの子の友達が必要だよね!」
そう言って、私は兎の人形をレジへと抱えていった。
その途中である。
「あっ」
私は軽く叫び、
「ちょっとこれ持ってて」
アストルフォに兎の人形を押し付け、棚にあった商品を手に取った。
「うわっ、とマスター、どしたの?」
驚いたアストルフォに私はそれを被せた。
「きゃっ、可愛い」
私がアストルフォに被せたのは、猫耳フードであった。しかも、感情を読み取ってぴくぴく動く機能付き。これもカルデアにはない。
「すごーい!これならカルデアミスコンでもいいところいけるよ!」
そう言われたアストルフォの猫耳はぴくぴく動いていた。
「ちょ、ちょっとマスター、恥ずかしいこと言わないでよ!僕だって男の子なんだよ」
私がアストルフォの顔を見ると、少しだけ赤くなっていた。
私はそのアストルフォの態度に微笑んだ。
「いい景色だねー」
アストルフォは目の前に広がる夜景を見て、呟いた。私たちは新宿の中心、ひときわ高いホテルの一室にいた。確かにここから見る景色は格別なものだ。現代に呼び出されたサーヴァントにとっては。
私にとっては、それはアストルフォがいなければ何の感慨もない見慣れた景色であっただろう。ただ、間接照明だけをつけた薄暗い部屋の中で、猫耳をつけてはしゃぐアストルフォを映えさせる夜景はなんとも甘美に見えた。
「そうだね。まるで」
「まるで宝石箱みたいだ!」
と、アストルフォは月並みな表現をした。確かに深夜には程遠い時間であり、頭上には星の光も見えない闇の帳が下ろされ、眼下には幾千万の灯りが付いている。ひときわ高いこの部屋か見る新宿の景色は、現代文明を知らぬ初めて見る者からは宝石箱のようなものだろう。
すでにシャワーを浴びてバスローブを羽織る、アストルフォは宝石箱に目を輝かせるお姫様みたいだった。
「それじゃあ、私、お風呂入ってくるね」
と、外の景色に夢中なアストルフォに声をかけ、部屋に備え付けられたバスルームへと向かった。何かに夢中なアストルフォの気を引くのは難しいし(いや、意外と簡単にこっちを向いてくれるかもしれない)、現世の風景に夢中なのを邪魔するのも悪いと思った。
流れるお湯の音。湯煙が視界を覆う中で、私は一人たたずんでいた。
瑞々しい肌、張りのある胸、大きな瞳。
おそらく女性として一番ある時期であることを私は実感していた。
特異点探索の中で女性としての努力を精一杯してきたはずだ。
しかし、アストルフォは私のことをどう感じているのだろうか。
私にとって、アストルフォは特異点Fにて初めて召喚したサーヴァントだ。私とマシュと、それからアストルフォは7つの特異点と、玉座、そして新宿を駆け巡った、いわば相棒だ。
マシュは私の信頼できる後輩だ。
だが、アストルフォはどうであろう。
私は、アストルフォのことを最初、女の子の英霊だと考えていた。マシュも初めはそう考えていたらしい。しかし、微妙な生活習慣の違いや彼自身の言動から、段々と彼の性別がわかってきた。
私はいつしか、アストルフォを一人の男性として意識していたらしい。といっても、普段の彼は勇ましい騎士というより可愛らしい姫騎士だった。それゆえに、私はアストルフォの時折見せる雄々しさに胸を高鳴らせながらも、彼のことで今一歩踏み出せなかった。
「あっ」
私はバスルームから出ようとして、私の分のバスローブがないことに気が付いた。いや、一応このホテルはそれなりに格式のあるもので、バスローブの設置を忘れるはずはない。となる―――。
「アストルフォ!」
私はバスルームの扉を叩きあけるなり、まっすぐに彼に向っていった。もちろんバスタオルを胸に巻いて、だ。
「私のバスローブ、使ったでしょ!?」
私の怒った表情を見て、アストルフォははっと気づいたらしい。
「ああ、ごめんごめん。ちょっと湯冷めしそうだったから、マスターの分も使っちゃった」
彼は悪気なくいうと、二重に羽織っていたらしき一枚を私に手渡した。確かに今の時期の新宿はかなり冷え込んでいる。いくら暖房をつけているとはいえ、部屋の空気はひんやりとしていた。
「それじゃあ、私が湯冷めするのはかまわない、と?」
私はアストルフォに顔を近づけて詰問した。彼の温かな吐息が私の顔に吹きかかるくらいに。私は右腕をアストルフォの後ろの窓に突き出す、いわば壁ドンのかたちだ。
「まあまあ、確かに僕がマスターの健康に気を遣えなかったことは悪いと思うけどさ」
そう言ってアストルフォは私の右腕をとり、自身の顔へと寄せた。
「マスターは、少しはボクが男の子だってことを認識してほしいな」
「な、なによ」
私は突然のアストルフォのしぐさに少し気圧されてしまった。
「マスターが壁ドンなんてしたら、バスタオルがはだけちゃうだろ」
「あっ」
確かにアストルフォの言う通り、壁ドンの姿勢でやや前かがみになった私の体から、バスタオルが、ゆらりとほどけかかっていた。
「さすがに男の子のボクには刺激が強いよ」
私は思わず、アストルフォの腕を振りほどき急いでバスタオルを整えようとした。
と、その時であった。
アストルフォが不意に私の体を、後ろへと押したのだ。
「ひゃっ」
浮遊感とともに私は、窓の近くに設置されているベッドへと落ちていった。そこそこ高級なマットが私の体を柔らかく受け止める。今の衝撃で私が体に巻いていたバスタオルは完全にほどけてしまった。
「ちょ、ちょっと何をするの!?アストルフォ」
私は突然のアストルフォの行動に抗議の声を上げた。しかし、アストルフォは平然と、いやむしろ愉しそうに微笑みながら、私にこう告げた。
「それとも、マスター、もしかして僕のこと誘っている?」
倒れた私の視界から、バスローブが少しはだけたアストルフォの体が垣間見えた。滑らかでありながら、筋肉質の体。それでいて少女の柔肌のようなアストルフォの肢体は、女性の私でさえ、嫉妬、いや欲情を感じさせるものである。
今度はアストルフォが私の顔のすぐ横、ベッドに手のひらを沈ませ、私に覆いかぶさるよう、こちらを見た。
「どうなの?マスター」
そう言ったアストルフォが身に着けている猫耳がぴくぴくと動いた。私の鼓動も一段と早くなっていった。