「わ、私は・・・」
私はアストルフォの蠱惑的な囁きに言葉を失くした。いや、私はこの言葉を待っていたような気さえする。
アストルフォの目を私はじぃっと見つめた。その瞳には私が映っていた。そして、瞳はまっすぐに私を捉えている。そこには、普段見せる愛らしさなどなく、彼の中の雄を感じさせた。
「うーん」
アストルフォを黙って見つめている私を見て、彼は何かを諦めたように、口をへの字に曲げて、私の上から退いた。
「ごめん、マスターにその気がないのに、失礼なことをしちゃったみたい」
とアストルフォは、私の上半身をベッドから引き起こし、バスローブをかけてくれた。
そして、私の目の前で一礼をすると
「本当に申し訳なかった。マスター。
このようなことは二度としない」
と謝罪の言葉を述べ、私に背を向け、また眼下のほうに目をやった。
沈黙が部屋を支配する。
―――本当に、これでいいのだろうか。
私は自問する。
もし、この機会を逃せば、アストルフォと二人きりになる機会などないだろう。そうすれば、この胸の高鳴りの正体も永久的にわからなくってしまうのではないか。
私は、震える右手でアストルフォのバスローブの袖を摘まんだ。
「うん?どうしたんだい、マスター」
バスローブが摘ままれていることに気が付いたアストルフォが私の方を見る。
「あの、ごめんなさい。アストルフォ」
「マスター、君が謝ることはないよ?」
「違うの。
私、さっきのあなたの問いにちゃんと答えられなかった。
本当は、私―――」
胸の高鳴りが激しくなる。
あぁ、この一年で何度となく強敵に立ち向かい、胸が震えたことか。だけど、これは私を殺そうとする者との対峙とは別の恐怖だ。
私は震える声を、振り絞った。
「私、あなたが好きなの」
アストルフォは一瞬(女の子を思わせる)きょとんとした顔をした。
「ほんと?マスター」
「うん」
「ボクでいいのかな」
「うん」
「理性蒸発しているけど」
「うん」
「女装とかしちゃうけど」
「―――まず、あなたが誘ってきたんじゃない!」
あまりの聞き返しのしつこさに思わず、私は声を出してしまった。アストルフォはそんな私の様子を見て、けらけらと笑った。
「マスターが、黙っちゃったから、てっきり嫌われたかと思ってね」
そして、いつものどこか力の抜けた姿勢から、背筋を伸ばし、恭しく跪いた。
「マスター。ボクからも頼む。
ボクも聖杯探索を続ける旅の中で君のことが好きになった。
だから、君のサーヴァントとして、相棒として、そして恋人として傍に仕えることを許してくれないか」
その声は、まったく騎士らしく、いつも何かに上の空である彼の面影すらない。アストルフォはかつて月に旅立ち、自身の理性を詰めた瓶の中身を飲み干したらしい。おそらく、その時の理性を取りも出したアストルフォはこんな感じだったのだろうか。
私は跪くアストルフォに右手の甲を差し出した。
「ええ、私はあなたを、サーヴァントとして、相棒として、そして恋人として認めます」
アストルフォは私の手をとると、軽く接吻をした。彼の唇の湿りが私の肌に伝わる。それだけで、軽い陶酔すら感じた。
「ありがとう、マスター。そして、これからもよろしく」
アストルフォは立ち上がった。ちょうど160㎝そこそこのアストルフォの目線は私のそれを重なった。
「それじゃ、マスター。続きを」
と、私を抱き寄せる。アストルフォの顔が私に近づいてくる。私は反射的に目をつぶった。
暗闇の中で、唇に濡れた感触を感じた。しばらく、その圧を感じたあとに、またもやゆっくりとベッドに私は押し倒された。
「え?」
一瞬、アストルフォの意図が理解できず、茫然としてしまった。
「続き、しようっていったよね」
アストルフォはにこりと笑い、またもや私にキスをした。
「ん・・・ぅふ」
アストルフォのキスは(私は他の人のキスを知らないのだが)痛くてない程度に強く、私に押し付けられた。そのため、私の喉から呻き声のような音が漏れた。
アストルフォの唇はわずかに湿っていた。そして、下あごと舌が独立した軟体生物のように動いているのが唇の上からでもわかった。それは私の唇に吸盤のように絡みついた。
「んん・・・」
アストルフォのキスはしばらく続いた。やっと唇を放してくれたのはたっぷり3分たったころだ。
「ぷはぁ」
アストルフォの唇から解放された私は思わず、大きく息をした。
「ちょっと、驚くじゃない」
アストルフォに対して、私は抗議の声を上げた。それは先ほどバスローブのやりとりよりもかなり穏当な言い方だったと思う。
「いっただろ?続きをしようって」
「でも・・・続きって言ったって、私たち今恋人になったんだし、手順とかがあるんじゃない?」
「ああ、確かに僕だって、本来なら手順を踏んだお付き合いをしただろうサ!
だけどおあいにく様。こっちはもう一年以上お預けをされていてね。
だいたい、恋人関係で行うようなことはだいたいしてきたじゃないか」
確かにめちゃくちゃな理屈ではあるが、アストルフォの言うことももっともだ。この1年以上の冒険で寝食を共にしてきた。買い物だって何度もいった。彼が怪我をしたとき夜を通して看病したし、私が何らかの原因で昏睡していたときは彼が私の面倒を見てくれたという。
世間一般でいう恋人関係、いや実績でいったら恋人関係以上だろう。それにアストルフォは気になることを言っていた。
「一年って・・・」
「もちろん、キミと出会ってから、数か月のことだよ。
ボクはね、ずっとキミが好きだったんだ」
「え」
「キミは、ボク達みたいな英雄としての運命を持って生まれなかった。おそらく魔術王の策略がなければ、普通の人と変わらない一生を過ごしたんだろうね。
だけど、キミはこの冒険が始まってから、常に人々のために誠意を尽くした。ついには英雄王を肩を並べるくらいにね。ボクは、英霊アストルフォとしての記憶にキミみたいな人がいたのを知っている」
英霊アストルフォとしての記憶。それは以前聖杯戦争に呼ばれた時の記憶であろうか。
「彼も、元々は短命の運命であり、そのまま使いつぶされるはずだった。だけど、彼は数奇な運命と、そして彼自身の意思で道を切り開いた。ボクは彼をマスターとして、肩を並べて戦い抜いた。ボクは、彼のことが好きだったけど」
そこでアストルフォは私の、瞳の向こうにかつての戦友を見ているようだった。
「キミを見ていると、彼を見ているようだった。だから、かな?キミを好きになっちゃったのは」
そう言って、アストルフォは私に抱き着いた。私にかかっていたバスローブは完全に脱げ、素肌にアストルフォのバスローブが覆いかぶさる。
「そうして、キミを好きになったのはいいけど、言い出せずにいたんだ。だって、ボク達は人理焼却を防ぐ旅の真っ最中だったからね。キミに余計な負担はかけられない。
だからキミが今日、こうして二人きりで一緒にいることがたまらく嬉しかった」
アストルフォの手が私の腹の上を優しく撫でた。触れるか触れないかの擽ったい感触に私はアストルフォの体の下で小さく身悶えした。猫が腹を触られて転がるような、私のその様をアストルフォは愛おし気に見ている。
「そして、今日、こうしてボクはマスターの恋人となった。
こんなにうれしいことは、今回の召喚でもうないだろうね。
マスターはどう?」
「わ、わたしも聖杯探索の旅でこんなにうれしいことはなかった」
私の答えにアストルフォは満足げにうなずいた。その手は私のお腹から登っていき、私の胸の南半球を優しくなぞっていた。
アストルフォの攻めは決して激しいものではなかった。私が想像する愛撫は、餅やパン生地を捏ねるような荒々しいものだった。今、目の前で受けているそれは、ろくろを回す職人のように、私の体の形や張りにあわせるような穏やかなものであった。
私の体の上で、毛筆が文字を書くように、アストルフォの十本の指が舞った。私の肩を抱く右手は首筋や頬、胸元を撫でた。左手は私の腹や胸をキャンパスに縦横無尽に動き回る。
私が愛撫の気持ちよさから苦しそうに湿った息を吐き出す。そのたびにアストルフォはその吐息を吸おうとするかのように私に口づけをした。アストルフォの舌が私の口内に入ってくる。私は一瞬驚いたが、それを受け入れ、彼の舌に私のそれを絡めた。
彼の舌は暖かく、どろりとした唾液を流し込んだ。
それはなんとも甘美なことか。
私はもっとと訴えるように彼の舌により強く私の舌を絡ませた。彼もそれを受け入れ、私たちの舌は絡まり合う蛇のように蠢いていた。
「マスターも、結構好きなんだね」
先に唇を放したのは、今度はアストロフォであった。彼の口回りには私の涎がべっとりとついている。
「あなたに言われたくないなぁ。
あなたが気持ちよくするから夢中になっちゃうんじゃない」
私は笑いながら言って、体を上げ、アストルフォにキスをした。
「それじゃ、もっと気持ちよくしてあげるよ、マスター」
そういうと、アストロフォは頭の位置を下げた。首筋に温かい湿った感触を受ける。それはそのまま、私の胸元まで移動する。そして、また首筋まで戻る。フルートを拭くような往復運動。それはアストルフォが私の首筋にキスをしているのだ。
ただ、それだけなのに冷や水をかけられたような、刺激が背筋を走っていく。
そして、その運動は段々と胸へと移動していった。アストルフォの左手の指は私の右胸の頂点、乳首に触れていた。それは腫れ物に触るような、やわらかい触れ方である。ついに、アストルフォの唇も左側の山頂に到達した。
漫画で、そういうシーンを何回か見た。ベッドの中で想像したりもした。だが、それはそのいずれとも違い、乙女が恋人の前でソフトクリームを舐めるように、柔くゆっくりとしたものだった。
「ひぅ・・・!」
初めて乳首を舐められる、感覚というより驚きに近い感情で私は声を上げてしまった。それにアストルフォは反応して、頭を上げた。
「大丈夫?マスター。
ここって敏感な部分だから、痛かったらいってね」
「う、うん。大丈夫、驚いただけだから」
「わかった。じゃあ続けるね」
そう言って、アストルフォは愛撫の続きをした。
私だって自慰はしたことはあるし、その時に乳首をいじったりもした。だが、私以外の人が乳首を触り、ましてや舐めるなど初めてだ。
まったく自分の意思の介在しない動きに私の神経は戸惑っていた。
最初は、擽ったいと感じた。だけど、そこはアストルフォに舐められ、指先に摺られるたびに、熱を持ち、だんだんと凝り固まっていった。
「ふふ、マスターのここ、かたくなってるね」
アストルフォは、私のかたくなった乳首を見て、それを口に含んだ。口に含んだといっても、唇の隙間にそれを挟んだくらいだが。だが、口笛を吹くように、アストルフォの濡れそぼった唇は、変幻自在に動き、そして舌が私の乳首をつっつく。
「うひゃ・・・っ、ん」
堅くなったソコに快感を感じた私は、思わず声を上げてしまった。アストルフォにそこに嬌声を聞いたのだろう。
「もしかして、マスターはここが弱いのかな?」
そう言って、優しいけれど容赦のない攻めを私に浴びせかけた。
「ふぅ・・・はぁ・・・いやっ・・・」
まさしく、そこは私の弱点で、アストルフォが唇を動かすたびに、乳首が吸われるような感覚に私は湿った声を上げざる負えなかった。
アストルフォの左手もそれに合わせて、指の動きが激しくなってきた。なぞるような動きがピアノの打鍵のようになり、私の乳首を刺激する。気持ちよさ、体の火照りでアストルフォが私の弱点を突くたびに、私は身をよじらせ反応してしまった。
「くぁ・・・あふ・・・あっ・・・」
「うん!マスターの上の弱点はわかったぞ。
じゃあ、下はどうかな」
「え、ちょっと待ってッ・・・あっ
アストルフォの左腕は、私のお腹の上を蛇のように動き、私のまだ開いていなかった足の間に滑り込んだ。
「うんうん、いい具合に濡れているね」
アストルフォの言う通り、そこはじっとりと湿っていた。
「でも、挿れるにはまだ早いかな。マスターも初めてだろうし」
と、アストルフォは指を私の割れ目に沿って、動かした。
「はぁぅん」
私は、その動作だけで嘆息してしまった。
「もっとマスターの、大事なところ見てみたいな」
アストルフォは上体を起こし、私の左足に手をかけた。
「だ、だめ・・・!恥ずかしい!!」
覚悟を決めたとは言え、さすがに私も恥ずかしかったので抵抗の言葉を発してしまった。
「ふーん、そのわりには、いい反応したのに」
「で、でも・・・あぁ!」
アストルフォは差し入れた左手で私の陰唇を素早くなぞったため、私の全身の力が抜けてしまった。そのすきにアストルフォは私の左足を持ち上げてしまった。
「マスターって結構毛深いんだね」
「は、恥ずかしいから、あんまり見ないで」
「いやいや、すごい綺麗でかわいいよ」
アストルフォは私の秘所をゆっくり見て、感想を述べた。私はその言葉に赤面してしまった。何せ、こんなことになるは知らず、手入れができていなかったからだ。そのため、私の秘所は燃えるような赤色の陰毛に覆われていた。
アストルフォはそんな私の様子を気にすることなく、陰唇に添える手を左手から右手に変えた。
「マスター、こっちも、というかこっちのほうが女の子の敏感な部分だからね。
なんせ、内臓を触るわけなんだし、嫌だったら無理しないでいいよ」
とアストルフォは言う。
「うん」
赤面する私の返事を皮切りに、アストルフォは私への攻めを再開した。アストルフォの攻めは先ほどと同じくゆったりしたものから始まっていた。直接陰唇の隙間を弄るのではなく、陰唇のちょうど唇に当たる部分をやさしくなぞっていた。それでも、アストルフォの攻めで火照った私の体には十分な刺激であった。
「はぁ・・・ぁぁあ・・・ううん」
その動きも徐々に早まり、陰唇のなかの肉ひだにまで指が侵入した。そこもすでに涎のような愛液で満たされており、水が弾ける音が部屋に響いている。
「ふあ、マスターの、すごい量だね」
アストルフォの言葉に私はより恥ずかしくなり、体が火照っていく。
アストルフォの指はすでに私のクリトリスを人差し指と中指で挟み、そのまま指が私の肉ひだへとスライドする。
「あぁ・・・っっ、もう、だめ!」
私は初めて受ける性器の攻めに、もはや絶頂を迎えそうだった。
「いいよ、マスター。
一回いっちゃったほうが、後が楽だから」
アストルフォは私の声を聞いて、ラストスパートに入った。アストルフォの指が私の愛液とひだとクリトリスにからまり、激しく動く。私も、もう限界だった。
「くぅっ・・・ふぅぅう!!!」
私は歯を噛み締め、絶頂を迎えてしまった。体が大きく弓なりにしなり、痙攣する。
「大丈夫かい?マスター」
アストルフォがそう聞いたのは、私が一通り、呼吸を整えたあとであった。
「うん、どうにか」
「まだ続けられる?」
「うん」
私は頷いた。私はアストルフォに気持ちよくしてもらった。だから、アストルフォにもお返しが必要だと思ったのだ。
「いいよ、アストルフォ。きて」
そう言って、私は自ら、足を開いた。そこから、先ほどの愛撫が名残惜しいのか愛液がどろり溢れ出した。
「それじゃ、マスター。痛かったら、言ってね」
そう言って、アストルフォはバスローブを脱いだ。
「あぁ・・・」
これが私に入るのか。
露わになった、アストルフォのそれは、華奢な肉体からは想像できないくらい、大きく、硬く滾っていた。
その先端からは、まだ、なんの攻めも受けていないのに、透明な粘りのある汁が溢れていた。これが我慢汁というやつなのだろうか。
「いい?入れるよ」
アストルフォは、その凶暴な槍を、私の秘所に宛がった。
「うん」
アストルフォは私の返事を待ってから、それを押し入れた。
「ううぅ」
その大きなモノが私の膣を押し広げ、入ってくる。口を開けたときに唇が切れるような痛みとお腹の中を押し上げるような圧を感じた。
だが、ここで悲鳴を上げたらアストルフォに余計な心配をさせてしまう。私は痛みを喉の奥に押し込め、痛みをやり過ごそうとした。
「全部っ・・・入ったよっ・・・!」
アストルフォがそう言ったのは、挿入してから何分かたったと感じたときだった。おそらく、時間にして30秒くらいだったかもしれないが、とにかく私は痛みからそのくらい時間がたったと錯覚していた。
「痛くない?マスター」
アストルフォが心配の声をかけてきてくれた。実際、内臓の中で何かが切れたような痛みと内臓を圧迫される不快感はあったのだが、アストルフォを心配させまいと私は笑顔を作った。
「大っ丈夫よ」
その声はわずかに震えたようだったが、アストルフォには気取れなかったか。
アストルフォは上体を起こしたまま、少し私をじっと見、そして視線を落とした。それから、彼は指を私と彼の接合点に持っていき、何かに触れた。
彼はその指を私に向けた。赤い血が付いている。私の純潔の証、だったものだ。
「へへ、マスターの処女、ボクがもらっちゃったぞ」
そう悪戯っぽく笑ったアストルフォは、蛇のような赤い舌で、指に滴る私の破瓜の血をなめとった。
それは果たしてアストルフォ流のおどけだったのだろうか。
次回更新は11月1日(水)を予定しております。