沖縄でのPV撮影から、忙しい一週間が過ぎた。朝から夜遅くまで、連日のように新しいアルバムのジャケット撮影やレコーディング。雑誌のインタビュー。地方営業も欠かさない。慎と聖は、疲労困憊でぐったりとしている。
「なぁ、慎」
「……何だよ」
聖の言葉に、不機嫌な表情で慎が反応する。
「そろそろ癒しが欲しいよな」
「……お前の言いたい事は分かる。俺だって、早く絵里の手料理食べたい」
ようやく、事務所に帰れた二人。動く気力はなく、ソファーに身体をだらりと預けている。
「お疲れのところ悪いけど、これから新しい曲の振り付けがあるんだから、休まないでよね」
「そうだにゃ、凛だって早く帰って、かよちんに会いたいけど、我慢してるのにゃ」
にこと凛が仁王立ちで二人の側に立っている。慎と聖は、ほぼ同時に大きな溜め息をついた。
「あとどのくらいで休めるんだ?」
「……二人次第だけど、頑張ればあと二日くらいかな?新しい曲の振り付けを覚えたら、すぐにレコーディングとTVの収録。それが終わったら、少しは休めるわよ」
にこの言葉に、再び溜め息をつく二人。
「……仕方ない」
「ああ、そうだな」
二人は腹をくくり、立ち上がる。
「「もう一頑張りしますか」」
言って、事務所を出た。
二人の鬼気迫る頑張りのお陰か、その後の仕事は思いの外早く終わり、二人はヘロヘロの身体を引き摺っていた。事務所のあるビルの出入り口に、一人の女性が立っている。黒いセミロングの女性。慎はその女性を見た途端に、全身から脂汗を吹き出していた。ガタガタと身体を震わせ、今来た道を後退りする慎。その様子を、聖はすぐに気付く。
「……おい、慎。どうした」
「………あの…女が来てる……」
慎の顔面は蒼白。唇は青紫へ変色。聖が慎の腕を掴んだ。そこに、その女性がこちらに気付く。慎の姿を捉えると、駆け寄る。
「……慎、捜してたのよ。ほら、私よ?貴方のお母さん(継母)よ」
慎の背筋が凍る。目の前の女性の顔が歪む。気持ち悪い程の笑顔。慎の身体に異変が起きた。蕁麻疹だ。頭のてっぺんから、足の先まで赤く小さなボツボツが浮き出る。聖も吐き気に襲われた。聖も希以外の女性に、拒絶反応を起こす。掴んでいた慎の腕を放し、その場に崩れ口元に手を当てる。
「ほら、慎。私と一緒に帰りましょ?また仲良くしましょうよ」
継母が慎の腕を掴んだ。心臓が止まるほどの拒絶。手に力が入らず、その手を払えない。
(絵里、助けて)
慎は心の中で叫んだ。意識が遠退いていく。バタバタと走る音が近付いてきた。そして。
「彼に触らないで!」
今すぐ逢いたかった人物の声。慎はぼやける視界を声の方へ向ける。絵里だった。絵里の後ろには希の姿もある。希もすぐに聖の側へ駆け寄った。絵里は、継母の腕を掴み、慎から引き剥がす。
「聖君、大丈夫?うちが来たからもう安心して」
聖の背中を擦りながら、希が言う。絵里を睨み付ける継母。絵里も同じ様に睨む。
「勘違いしてません?私は、慎の母親よ」
継母の言葉を聞いて、絵里は一瞬怯む。しかし。
「例え、貴女が彼の母親であっても、彼に触れる事は許せないわ」
「……貴女、何の権限があってそんな事が言えるの?」
「…それは……私が彼を愛してるからよ!」
絵里の言葉に、継母の表情が歪んだ。奥歯を噛み、目は怒りに満ちている。それでも、絵里の目は真っ直ぐ継母を見つめ、強い意思を感じさせた。その気迫は圧させるように継母が後退する。
「……今日のところは帰ります。また、会いに来ますから」
それだけ言うと、踵を返し継母は去っていった。絵里は安堵の溜め息をつく。振り向く絵里。慎と視線が交わる。その横では、聖と希が抱き締め合っていた。
「慎、帰りましょ」
絵里が手を差し出す。慎はそれを見つめ。
(初めて名前呼んでくれた)
その手を取る。希達も立ち上がり、お互い手を繋ぎながら家路に着いた。
絵里のマンション
部屋に入ると、絵里は慎を一旦ソファーに座らせる。沸かしていたお湯を急須に入れ、お茶を慎に渡す。慎はそれをゆっくり飲んだ。絵里はその様子を優しい眼差しで見つめる。
「……絵里、話があるんだ。」
「うん」
「俺、本当は女性アレルギーで、その原因を作ったのがさっきの女なんだ。」
慎の話に黙って耳を傾ける絵里。そして、慎は自分の過去と何故アイドルをしているのかを話す。一通り話終えると、絵里は小さく溜め息をついた。
「そうだったの。」
「……何か、言う事はないか?」
「……私が何を言うの?」
慎は問いを、問いで返され一瞬固まる。
「ぃや、ほら。気になる事とかないのか?」
「そうね。無い訳じゃないけど、今の話とは関係ないから」
「何でもいい。話してくれ」
絵里はしばらく慎の顔を見つめる。慎は緊張しているのか、生唾を飲み込んだ。
「この前の事、覚えている?」
「……この前?」
「私に、俺の子供産んでって話」
「……ああ、確かに言ったな」
絵里は慎の目を真っ直ぐ見つめ。
「あれって、プロポーズなのかしら?」
真剣な表情の絵里。慎は間抜けな表情。そして、吹き出す。
「聞きたい事が色々ある中で、気になるのはそこか!俺の過去とか、あの女の事とかあるだろ?」
「別に気にならないわ。最初はびっくりしたわよ?でも、それよりその話の方が、私には気になるのよ」
「意外と、絵里は大物だな」
絵里の言葉に、慎の表情がようやく、和らいだ。
「絵里は、俺になんて言って欲しい?」
「……慎って意地悪よね」
「プロポーズだよ。出逢って、まだ一ヶ月過ぎた位だけど。一目惚れなんだ。」
「やっぱり、プロポーズだったのね。」
溜め息をつきながら、絵里はソファーにもたれ掛かる。
「俺は、絵里以外の女性とは付き合えないよ。だって、ただ一人だけだったんだ。アレルギーが出なかったの」
慎が絵里の手に触れる。手の甲を撫で回す慎。それだけで、絵里の身体に変化が現れる。頬を染め、身体をモジモジさせる絵里。
「それに、プロポーズの返事、聞かなくてももう分かったし」
「…………」
「俺の事、愛してるんだろ?」
「……そんな事、私言ったかしら?」
染めた頬を横に向け、絵里は視線を泳がせる。慎が絵里を抱き締めた。固まる絵里。
「ごめん、しばらく触れてなかったから、我慢出来ない。返事は、後でゆっくり聞くから、今は俺を感じて」
そう言って、慎は絵里の唇を塞ぐ。舌を絡め合い、性急に絵里の服を脱がしていく慎。絵里も慎の服を脱がしていく。素肌を重ね、互いの体温が上昇していき、慎が絵里の乳房を揉みし抱く。絵里の口から甘い溜め息が零れる。固くそそり立つ分身。絵里の身体はソレを求め、まだ触れてもいない秘所から愛液が溢れ出る。慎がソコを指で責めた。
「……ぃや、それじゃない……の」
絵里が珍しく自分から慎のソレを掴む。そして、秘所へと導く。
「いつも、避妊してって言うよな。良いのか?」
「……うん、良いの。お願い」
潤んだ瞳で慎を見つめる絵里。慎はゆっくりと腰を進め、絵里を深く貫いた。身体を仰け反らせる絵里。そして、そのまま二人は疲れて眠るまで、愛し合った。
やっと、想いが通じ合えました。希の方は、まだ告白の返事が返せていませんが。次回で書きます。