絵里と慎が愛を確かめ合っている頃。希と聖は、希の家でのんびりとTVを観ていた。お互いを意識しながらも、肩を並べて紅茶を啜る。聖は横目で希を見る。それに気付く希。
「うちの顔に何かついてるん?」
「……ごめん」
「何で謝るん?聖君、何か悪い事したん?」
「してないけど……」
「なら、謝らんで」
そう言って、真顔で希は聖を見る。聖は希の手を取った。希ももう片方の手を重ね、微笑む。
「うちな、聖君に言わないけん事があるんよ」
「……っえ?何?」
不安そうな瞳で希を見つめる聖。喉元がゴクリと動く。それを見て、微笑みながら目を細める希。
「うちな、聖君の事。好きになってしもうたんよ。聖君、責任取ってくれる?」
希の言葉に、一瞬固まる聖。息をする事さえも忘れている。聖の口が少し開いた。
「……本当に?」
「嘘ついてどうするん?」
聖の反応に、不貞腐れる希。小さく溜め息をついた。
「うちの真剣な告白やに」
「ち、違うよ。ただ、びっくりしたんだ!めちゃくちゃ嬉しいよ!」
オーバーリアクションで聖が言う。そして、希を抱き締めた。希も同じ様に聖を抱き締める。お互いの鼓動が重なり合う。希は聖の胸に頬擦りする。その度に、希の髪から甘く柔らかな香りが聖の鼻腔を擽り、聖の意思とは関係なく身体が反応。希はその事に気付く。
「……聖君、もしかしてシたくなったん?」
「ぃや、まあ。正直言うとシたいけど」
ゆっくりと抱き締めていた腕を緩める聖。希の顔を真っ直ぐ見つめ。
「今、希ちゃんを抱いたら、歯止めが効かなくなりそうだし。ちゃんと付き合いたいから」
真剣な聖の言葉に、希は優しく微笑む。自分から聖の身体を引き寄せ、唇を塞ぐ。
「聖君の気持ちはちゃんとうちに届いとるよ。だからこそ、恋人として愛し合いたいんよ」
呆然とする聖。希は聖の唇に指を這わせた。聖の身体が反応する。ゾクゾクとした痺れが聖の全身を駆け巡り、聖は希を押し倒した。荒い息遣いの聖。その眼差しはアツく希を見つめている。両手を広げ、聖を抱き締める希。
「ずっとうちが側におるよ」
「……うん、希ちゃん。好きだよ」
もう一度、お互い抱き締め合い、二人は愛を深めた。
二週間後
継母と突然の再会をしてから、慎の精神は不安定だった。いつも何かに怯え、挙動不審になったり、一人言を呟いたりしている。にこや凛、聖、ラブウルフのメンバーは慎のその様子に心配そうに見守るだけだった。にこ達には、何も出来ないと分かっていたから。そして、この状況を打破出来るのは絵里だけ。にこ達が、慎の状況を絵里に報告する。絵里は慎に何も聞かない。その代わり、温かく美味しい料理を作り、慎を優しく抱き締める。絵里の側にいる時の慎は、穏やかだ。
「今日も美味しかった」
「そう、良かったわ。」
絵里と慎は、今、半同棲状態だ。慎は、一週間の内、六日間を絵里の家で過ごしている。寝る時もずっと絵里を抱き締め眠る慎。絵里は温かく慎を包み込む。次の日が休みの時は、慎は絵里を何度も抱く。勿論、相変わらず避妊はしていない。
(本当、結婚する前に妊娠しそうね)
そう思いながらも、絵里はそれを受け入れている。絵里自身も、慎と早く一緒になりたい気持ちはあった。だからそこ、継母の事を常に考える。
(どうにかして、この問題を解決しないと)
黒いセミロングの女性の顔が、脳裏に浮かぶ。慎の継母。最初は、本当に我が子の様に思い、愛情を注いでいたのだろう。しかし、どこでその愛情が変わったのか。絵里は深く考える。
(……私、一人の考えだけでは、この問題は解決出来ないわ。やっぱりあの人に協力してもらいましょう)
絵里は一人決意するのだった。
今日は、仕事が夜遅くになると慎から言われていた。絵里は数日振りに、居酒屋に向かう。希も居酒屋にいるようだ。店の暖簾を潜る。いつもの席に、希は座っていた。
「絵里ち、お疲れ」
「希も」
言って座る絵里。希の表情は少し艶っぽさが増している。元々、希は美人。それがさらに磨きが掛かったようだ。同性の絵里ですら、ドキリとする。
「希、なんだか綺麗になったわね」
絵里の言葉に、一瞬目を見開く希。でも、すぐにいつもの悪戯っ子の様な表情に変わり、絵里を見つめる。
「……絵里ちも綺麗になったん。気付いてないん?」
「っえ?」
「自分の事になると、鈍いなぁ。絵里ちは」
「五月蝿いわね」
そう言ったやり取りを希とする。絵里はいつものように店内を駆け回る花陽に手を上げた。
「絵里ちゃん、希ちゃん。久し振りだね」
「ええ、忙しくて」
「慎君の相手は大変そうやもんね」
「ちょっと、希。何を言っているのよ」
「聖君が言ってたんよ。慎君、夜激しいって」
「……夜が…激しい……はわぁ…」
希の発言に、花陽が顔を真っ赤に染め、頭から蒸気が昇る。絵里は狼狽えた。
「慎君が、聖君に話したんやって。絵里ち、避妊させてないん?」
「……そ、そんな事まで言ったの?慎が?」
「ええやん、結婚より早いけど、赤ちゃん出来ても」
「別にそれは良いけど、もう!帰ったら慎、覚えておきなさいよ」
花陽と同じ様に顔を真っ赤に染め、絵里は頭を抱えた。花陽にビールを注文。一気に飲み開ける。
「その前にしないといけない事があるわ」
冷静に戻る絵里。希も真剣な表情に変わった。
「例の継母やろ?」
「ええ、あの人が慎を苦しめている間は、私も慎も幸せになれないわ」
絵里の言葉に、無言で頷く希。絵里は溜め息をついた。
「どうするん?」
「一応、考えが無い訳じゃないけど、協力者が必要ね」
珍しく不敵な笑みの絵里。希はそれを見て、同じ様に笑みを見せる。そして、絵里はスマホを取り出し、ある人に連絡する。
数日後、絵里と希はあるビルの前に立っていた。そのビルは、桂木プロダクション。絵里と希は、顔を見合わせ、頷き合う。そして、力強く歩き、ビルの中へ入ったのだった。
シリアス展開がありつつも、ベッドシーンは作者には必須であります。書いてて萌える。