なかなか書けない状況がしばらく続きそうです。けど、頑張って書きます!
桂木プロダクションの事務所内~社長室~
革製の高価な椅子に、不釣り合いなにこが、足をブラブラさせて絵里と希を見ている。絵里と希は、にこが座っている場所の反対側。デスクを挟んで立っていた。
「話って何?」
にこの表情は、少し怒っているような、不安を隠しているような。『今の感情をどう表して良いのか分からない』っといった表情。そんなにこを真っ直ぐ見据え、絵里が口を開く。
「にこ、慎の事なの」
「……それで?」
「慎の実家の住所、教えて欲しいの」
「どうして?」
「慎のお父様に会って、話がしたいから」
絵里の言葉に、にこの表情が曇る。絵里は瞬時に気付いた。
「……にこ、貴女。何か知っているのね?」
希もそう思った様だ。絵里と同じ様に、にこを見ている。二人の視線に、にこが溜め息で答えた。
「そう簡単に教えられないわよ。これでも、この桂木プロダクションの社長よ。」
「この間は教えてくれたやん?」
「あれは、絵里達が興味ありそうだったし。慎達の将来を考えての事だもん。今回は、慎の過去も関係するし。実家の住所までは教えられない……でも」
含みを持たせるにこ。絵里達の表情が緩む。
「身内同士の話なら別だけどね」
にこがウインクする。すると、扉がゆっくりと開く。そこには、紺色のスーツに身を纏った男性が立っていた。絵里と希は疑問の表情。男性は、部屋の中に入り、にこの横に立つ。
「二人は初めて会うわね?主人よ」
にこやかな表情のにこ。その男性は、絵里達より少し年上だろう。絵里達を優しく微笑んで見ていた。二人は驚く。
「初めまして、にこがいつもお世話になっております。桂木宗次郎と申します。」
そう言って、深々と頭を下げるにこの旦那。絵里達もつられて頭を下げた。
「絢瀬絵里です」
「東條希です」
「お二人のお話は、にこから良く聞いていましたよ。アイドルもされていたそうで」
穏やかな表情で話す宗次郎。そんな宗次郎ににこは鋭く睨む。
「宗君、その話はまた今度にしてよ。今は」
「まぁまぁ、別に良いじゃないか。にこの高校時代のお友達と、一度話がしてみたかったんだよ。慎君の話もちゃんとするから、ね?」
宗次郎がにこの頭を撫でる。にこは膨れっ面をしながらも、黙り込んだ。
(さすが、ご主人だわ。にこを手懐けているわね)
感心する絵里。宗次郎は笑顔を崩さず、絵里達に視線を戻す。
「さてさて、折角来ていただいたので、お茶でも飲みながら、ゆっくりお話しませんか?勿論、慎君の事もお話ししますから」
「はい」
絵里達は社長室から出ると、応接室に場所を移す。にこ夫婦と向かい合う形で座り、すでに頼んでいたのだろう。事務所のスタッフが、すぐにお茶を持ってくる。絵里達はそれを啜りながら、談笑した。
「……それで、桂木さんの一目惚れだったんですか?」
「そうなんですよ。にこのアイドルに対しての真っ直ぐな姿勢に、僕は惚れましてね。告白したんです。まぁ、親戚からはロリコンか?っと、疑われましたが」
「にこっち、愛されてるやん」
「五月蝿いわね!それより、慎の話をするんじゃなかったの?」
顔を真っ赤に染めたにこが言う。その言葉に絵里の表情が変化する。希も同様だ。
「照れ隠しかい?まぁ、そうだな。そろそろ本題を話さないといけないね」
姿勢を正す宗次郎。一つ咳払いをし、口を開いた。
「うむ、本来なら、他人には話せない事情が慎にはある。絢瀬さんは、慎から過去の話を聞いた事は?」
「……あります。全てではありませんが、女性アレルギーの事やその原因が継母だと言うこと。そして、アイドルをしている事」
「では、この事務所に連れて来られた理由は?」
絵里は無言で首を横に振った。
「そうだろうね。慎自身も、どうしてにこがこの事務所に連れて来たのか。本当の理由を知らないからね。」
「それって、どういう意味ですか?」
絵里の問いに、宗次郎は柔らかく微笑み、目を伏せる。
「僕の姉さんは、慎の産みの親。慎は、僕の甥になるんだ。」
絵里と希は驚く。にこは知っていたのだ。いつもあまり見ない真剣な表情で二人を見ている。
「慎をここへ連れてくる様に頼んだのは、僕の義理の兄。つまり慎の父親」
「……それじゃあ、慎のお父さんは、知っているんやね?」
希の言葉に、頷く宗次郎とにこ。絵里は深く溜め息をついた。
「なら、どうして?慎のお父様は」
「言えなかったんだ。いつも仕事ばかりで。家庭の事は姉さんに押し付けて、挙げ句、浮気してた。その相手が今の継母だ。その上、その継母が今度は慎を」
宗次郎の表情が悲しみに変わる。
「せめてもの罪滅ぼしなのかも知れない。家出した慎を捜して、継母から遠ざけた」
宗次郎の言葉に、絵里の目は潤んでいる。
「……協力してくれませんか?」
絵里が頭を下げる。希も頭を下げた。
「宗君、私からもお願い。二人に協力して欲しい。それに」
「分かっているよ。僕だって、大事な姉さんの忘れ形見。慎の幸せを他の誰よりも願っているんだ」
にこの頭を優しく撫でる宗次郎。
「絢瀬さん、慎の事。宜しくお願いします」
「はい」
絵里は涙を溢しながら微笑んで答えた。
今回は短めです。次回は、慎のお父さんも出てきます。さて、継母はどう動くのか?お楽しみに!