ある晴れた日の午後
穏やかな風が吹く昼過ぎ。聖は白い袴を着ていた。今日は待ちに待った希との結婚式。聖は神妙な面持ちで、生涯の伴侶となる希を待つ。
「……聖、花嫁の準備が出来たぞ」
ゆっくりと襖を開け、そう言って部屋に入ってきたのは慎である。聖は振り返った。お腹が大きくなった絵里の手に引かれ、白い花嫁衣装に身を包んだ希が部屋に入る。聖と希はお互いを無言で見つめた。
「……聖、カッコええよ」
「希もな」
お互い、頬を染めながらそんな事を言う。そんな二人を絵里も微笑んで見ていた。
二人の結婚の儀は晴れやかに行われ、その後の結婚披露宴は、盛大だった。招待客に呼ばれたのは、ラブウルフのメンバー。μ,sのメンバー、両家の親族。そして、学生時代の友人達だ。二人の門出をみんなが祝福する中、当の聖は少し表情が固い。その理由は、一週間前に遡る。
『聖、ウチ達は夫婦になるんよ?聖は一家の大黒柱になるんよ。この意味分かる?』
何気ない会話の中で、投げ掛けられた希の言葉。この言葉に、聖はすぐに理解する。希と結婚し、夫婦になるという事は、いずれ二人の間に新しい家族が増えるという事。つまり、守るモノが増えていくという事だ。希は、聖の『女性に対しての不信感を無くしたい』と思っているのだ。当の聖自身も克服したいと思っている。同じ様に女性アレルギーで悩んでいる慎もそれには賛同し、一緒に取り組みだした。しかし、数年間募らせ続けた不信感を数日で改善する事など出来る筈もなく。聖は悩んでいる。
「急に変わる訳ないやん?ウチだってそれなりに分かってるつもりなんよ」
披露宴が終わり、二人は新居にタクシーで向かう。希は聖の手を取り言う。希の温かな手の温もりを感じながら聖は深く溜め息をついた。
一ヶ月後
聖は産婦人科の新生児室の前に立つ。大きなガラス越しに、産まれたばかりの赤ちゃんがスヤスヤ寝てる。聖の目の前で眠っているのは、慎と絵里の愛の結晶。まだ目も開かないその赤ちゃんは、金髪で絵里の遺伝子を受け継いでいる。聖は食い入るようにその赤ちゃんを見つめた。
(俺も早く子供が欲しい。……俺は)
聖は静かに決意する。そして、その決意は聖の精神を強くさせた。月日が経つにつれ、聖を成長させていく。μ,sのメンバーや事務所の女性社員、ファンに囲まれ触れられても、もう吐き気は起きない。それから数日後。聖は希をベッドに押し倒す。
「希、そろそろ新しい家族増やさない?」
「……なんやいきなり」
唐突な聖の言葉に、希は狼狽えた。希の反応に聖は微笑む。
「だって、俺希との愛の結晶欲しいんだ」
そう言って、希の上着に手を掛けた。希は一瞬唖然とするが、クスリと笑い。
「そうやね。」
聖の首に腕を回す。ゆっくりと近付く互いの唇。聖と希は見つめ合いながら唇を重ね、同時に目蓋を閉じた。
二年後
今日は音ノ木坂学院の体育館にて、私服の女性達が談笑しながらステージを見つめる。聖と慎、そしてラブウルフのメンバーは、女性達と同じ様にステージを見つめていた。
「これって、何の集まり?」
「さぁ?」
聖と慎は首を傾げる。
「見てれば分かるよ。」
二人の後ろに宗次郎が立つ。二人は宗次郎を見ると、再びステージを見る。しばらくして、暗転する体育館の中。そして、ステージに灯りが点く。ステージに立っていたのは、μ,sのメンバー。可愛らしい衣装に身を包んだ希と絵里。二人は驚きで言葉も出ない。
「あれが、君達の大切な人のもう一つの姿だよ」
宗次郎が言う。二人が見つめる中始まる、μ,sのライヴ。キラキラした表情の希と絵里。そして、女性達の歓声に、聖と慎、ラブウルフのメンバーは心を打たれたのだった。
今回は短く纏まりましたが、このまま第二章へ続きます。次回はお知らせした様に、第二章のあらすじと出てくる人物の詳細を書きますので、宜しくお願いします。