※この作品はR-18です。

美女と狼の奇妙な恋愛事情   作:氷野心雫

27 / 43
 第二章のスタートです。


出逢いは必然

 ある日の夕方。大量の買い物袋を道端に置き、花陽は途方に暮れていた。買い物袋の中身は、花陽が切り盛りする居酒屋『花陽の食卓』で使う食材だ。いつもなら配達業者の人が配達してくれるのだが、ここのところ来客が増えて、仕入れ数が足りなくなったのだ。しかも、今日に限って、配達業者が忙しく食材の在庫が無くなっていた。花陽は近くのスーパーに走り、大量の食材を買う。ここでタクシーを使えば良かったのだが、花陽はうっかりしていた。

「……うぅ、携帯持ってくれば良かった」

 半泣きで一人立ち尽くす。肩を落とし、しゃがみ込む花陽の背後に、人の気配がした。花陽は振り返る。夕日の明かりで、その人物がよく見えない。ただ、とても身長の高い男性だという事だけは分かった。男性の手が買い物袋に伸びる。花陽は咄嗟にその男性の腕を掴む。

「…………」

「……あの…困ります。これは私の」

「……持つの手伝う」

「……っえ?」

 男性は一言言うと、ほとんどの買い物袋を拾い上げた。花陽は驚いた表情で男性を見る。男性の眼差しは優しい。花陽は掴んでいた手を放し、立ち尽くす。

「………どこに運べば良い?」

 無表情の男性が言う。我に帰る花陽。

「……っあ、ごめんなさい。本当に良いんですか?」

「……嫌なら手を出していない」

 男性は視線を反らした。花陽は残り一つの買い物袋を持つと、ゆっくりと歩き出す。男性は花陽と同じ歩幅で歩き出した。花陽は横目で男性を見る。男性の身長は、花陽より明らかに高く、頭一つ以上差があり、体格も服を着ていても分かるくらいがっしりしていた。体育会系だろう。その男性の視線が花陽に向けられる。花陽は瞬時に視線を反らす。

「………あんた」

「っえ?」

「μ,sのメンバーだろ?」

 男性がそう言って、花陽を見つめる。花陽の足が止まった。同じ様に男性の足も止まる。

「どうして知っているの?」

「……この間、ライヴ見た」

 男性は歩き出す。花陽は男性の後を追うように歩き出した。

 

 

 

 

 『花陽の食卓』に着く。花陽は男性と共に店内に入った。相変わらず賑わっている店内。男性は無言でキッチンの厨房に入り、買い物袋を台の上に置いた。

「ありがとうございます。助かりました」

 丁寧に頭を下げる花陽。男性は無言でキッチンを出る。花陽は男性の腕を掴む。花陽に視線を向ける男性。一瞬、花陽は怯んだが、男性の目を真っ直ぐ見つめ。

「運んでくれたお礼がしたいです。」

「………別にお礼はいらない」

「そうはいきません。お礼、させて下さい」

 潤んだ瞳で花陽は言う。男性は始めて表情を変えた。それは困惑の表情。そして、小さく溜め息をつく。

「……分かった」

 そして、席を案内されたのは、絵里達がよく座る角場。母親として、妻として忙しい絵里達は、最近お昼時に来る。夜、この席を使うお客はいない。花陽も何度か他のお客に勧めたが、誰一人使うお客はいない。お客曰く。『あの席は特別だから俺達には勿体ない』っとの事。男性がその席に座る。一瞬、店内のお客の視線が男性に注がれた。男性は気付いていない。それは、他のお客に背を向けていたからだ。勿論、花陽もそれには、気付いていない。

「あの、どれでも好きな品を選んで下さい。」

 そう言って、男性にメニュー表を差し出す。男性は無言でそれを受け取った。そして、無言で『さばの味噌煮定食』を指が示す。花陽の表情は明るかった。

「急いで作ってきますね」

 足取り軽くキッチンに向かう花陽。男性は横目で花陽がキッチンに立つ姿を見つめた。

 

 

 

 

 次の日

 

 

 

 

 花陽は大きなお重箱を両手に抱え、桂木プロダクションの事務室の前で立ち往生する。花陽がここにいる理由、それはこの桂木プロダクションの社長であるにこから、昼食を頼まれたからだ。いつも、小さなお弁当を頼むにこだが、今回は特別らしい。

「どうしよう。両手が塞がって、何も出来ないよ。」

 ずっしりと重みのあるお重箱。次第に腕が疲れてきた。

「……誰か、助けてぇ」

 半泣きで言ってみる。すると、両手の重みが軽くなった。花陽は目を見開く。目の前に立って、お重箱を持ってくれたのは、昨日の男性だった。

「……昨日の」

「あんた、いつも半泣きだな」

 無表情の男性。花陽の手からお重箱を取り上げると、かなり重い筈のお重箱を片手で持ち上げ、事務室の扉を開ける。花陽は呆然としていた。事務室からにこの声がする。

「晃太郎、ありがとう。そこに置いてくれる?花陽、どうしたの?早く中に入って」

 晃太郎と呼ばれた男性は、大きなテーブルの上にお重箱を置いた。花陽はにこに促されるまま部屋に入る。そして、男性と向かい合った。

「花陽、紹介するわ。彼は土井晃太郎、ラブウルフのメンバーよ。それと、そこにいるのは新田紡と小林絆。二人もラブウルフのメンバー。慎と聖は知ってるわよね?絵里と希の旦那」

 事務室の中にいたのはラブウルフのメンバーとにこ夫妻、真姫、海未と凛だった。

「この集まりは一体」

 ?マークを頭に浮かべ花陽は言う。

「この間のμ,sのライヴの打ち上げよ。」

 ウィンクしながらにこが言う。花陽は呆けている。そんな花陽を見つめる晃太郎。花陽はそれに気付かない。そこに絵里と希が入ってきた。勿論、穂乃果とことりも入ってくる。広い事務室で行われる打ち上げ。花陽は飲み慣れないビールをちびりちびりと飲む。メンバーと楽しく談笑。少し暑くなった身体を冷ます為、部屋の隅に移動した。ちょうどパイプ椅子があり、そこに腰掛ける。花陽の横に晃太郎が立っていた。

「……わぁ、いつからそこに」

「…………俺はずっとここにいた」

「……」

 晃太郎の存在に気付かなかった花陽は、頬を染める。

「ラブウルフのメンバーだったんですね」

「…………まぁ、一応」

「μ,sのライヴ、どうでした?」

 恐る恐る晃太郎に尋ねる花陽。晃太郎は視線を花陽に向け、すぐに反らす。

「……良かったと思う。あんた、普段の時とステージに立つ時、全然違うな」

 視線を前にむけたまま晃太郎は言う。花陽はそんな晃太郎を無言で見つめた。




 始まりはこんな感じですね。話が進むにつれて、面白くなると、良いなぁ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。