※この作品はR-18です。

美女と狼の奇妙な恋愛事情   作:氷野心雫

3 / 43
 作者の暴走により、絵里のキャラ崩壊がある……かも


絵里の大失態

 夜、いつもの居酒屋に向かう希。昨日の今日で、同じ居酒屋に行くのは、別に何とも思わない。それもその筈だ。だって、ほぼ毎日飲みに行っているんだから。今日のお昼、絵里からメールが来ていた。

 

『話があるから、いつもの居酒屋で。角場、空いてると良いけど』

 

 角場とは、いつも座っている場所の事。店内の一番奥のテーブルに、絵里と希は座っている。大体、この角場は、絵里と希の予約席みたいなものだ。希は店名が書かれた暖簾を潜り、店内へ。店内は今日も大勢の客で賑わっている。絵里は、いつもの角場に座って、すでにビールを飲んでいた。時折、溜め息を溢し、虚ろな眼差しでビールジョッキを傾ける。希は苦笑しながら、テーブルに向かった。

「絵里ち、お待たせ」

 希の声に気付く絵里。希の顔を見ると半泣きになった。

「希ぃ~、私……」

「どしたん?何かあったん?」

 希が向かい側に座り、絵里の顔を覗き込む。絵里は無言で鼻を啜った。

「……希、昨日の事。覚えてる?」

「昨日の事?」

「ほら、昨日。ここでお酒を飲んでて、男の人二人と相席になったでしょ?」

 絵里はそう言って、ビールジョッキを置く。そして、溜め息をついた。

「ああ、その事?それがどしたん?」

 希の問いに、絵里は顔を伏せる。首を傾げる希。

「……ないのよ」

「っえ?なんて?」

「覚えてないのよ。私」

 絵里の言葉に、怪訝な表情の希。そこに、一人の店員が近付き。テーブルの上に枝豆とビールジョッキを二つ置く。希と絵里はそちらに視線を向けた。そこにいたのは、着物に割烹着姿の花陽。

「希ちゃん、いらっしゃい」

「花陽ちゃん、うちまだ頼んでないよ」

「うん、入ってきたの見たから、いつもの持ってきたんだ。希ちゃん、最初は大体これだから」

「おぉ~、さすが店長!気が利くねぇ~」

 希の言葉に、花陽は照れた。花陽はこの居酒屋の店長をしている。毎日通う二人の為に、この角場は他のお客は座らせない。

「昨日はごめんね。絵里ちゃんと希ちゃんに相席頼んで」

「ええよ。気にせんで、あんなにお客おったらそうなるやん。」

 昨日のお客の多さは尋常じゃなく、ほとんどの席が客で溢れ、どこもかしこも相席だらけだった。勿論、絵里達の席も相席になるのは仕方なく、絵里達も快く了承したのだ。そして、その相席の相手が、あの男性二人。最初、お互い話す事もなく、絵里と希も二人だけの会話をしていたのだが。絵里達が注文した品物を、彼らが代わりに受け取ったりと色々動いてくれて、そこから話すようになった。絵里はその辺りの記憶はあるらしい。別の客から呼ばれた花陽。

「またあとでね」

 そう言って、呼ばれたテーブルに向かう。その後ろ姿を見つめながら、希は口を開く。

「絵里ち、上機嫌だったやん。そのまま彼と家に行ったんやろ?それは覚えているん?」

「う~ん、微妙ね。はっきりと覚えている訳じゃないし」

「その後の記憶がないん?」

「そうなのよ。気が付いたら朝だったの……」

「もしかして、しちゃったん?」

 希の発言に、噎せる絵里。

「……何聞くのよ!」

 絵里の反応にニヤニヤする希。

「その反応。確実にしたね。」

「…………多分。したけど、覚えてない。それで」

「それで?」

 顔を赤く染める絵里。

「朝、その事言ったの」

「彼に言ったん?それから?」

「身体は覚えてんのにって、襲われた」

 呆然とする希。絵里は顔を両手で隠す。頭から蒸気が出そうだ。希は溜め息をつく。

「……はぁ、絵里ち。処女喪失の瞬間を覚えてないとか」

「生徒会長してたとは思えない程、ポンコツになったわね。」

 希の言葉に続き、誰かが言う。絵里と希は顔をその誰かに向けた。黒髪を二つに束ね、強気な表情の女性。旧姓、矢澤にこ。今は、桂木にことなった元μ,sのメンバーがそこにいた。

「にこ!?」

「にこっち!?」

「久しぶりね。二人共」

 そう言いながら、希の横の席に手に持っていた大きなビジネスバッグを置く。そして、絵里の横の席についた。反対の手には書類。それはテーブルの隅に置く。

「にこ、仕事忙しそうね」

「お陰様でね。」

「にこっちの天職やね」

「ふふん、そう思うでしょ。やっぱり、私天才なんだわ」

 恍惚とした表情でにこが言う。そんなにこを絵里達は苦笑しながら見つめる。にこの仕事は、桂木プロダクションの社長兼マネージャー。つまり、芸能関係の仕事なのだ。元々、アイドルに対しての姿勢は、人一倍凄かった。それを今度はアイドル育成に向けたのだ。にこがプロデュースしたグループは人気が上がり、テレビで観ない日はない。

「でもね。問題のあるグループもいるのよ。かなりの素材を持っているのに、なかなか人気が出なくて。ほら、このグループ」

 にこが隅に置いた書類を二人に見せる。男性五人組のイケメングループ。グループ名は『ラブウルフ』と書かれている。その一人の顔を見て、絵里は息を飲む。そこにいたのは、あの男性だった。その横には、希と一緒にいたもう一人の男性の姿。絵里は希を見る。希の表情に変化はない。その視線に希は気付く。

「……希、もしかして知っていたの?」

「……いいや、知らんやったよ。」

「あまり驚いていないから」

「うち、占いが趣味やん。彼、占ってええって言ったんや。そん時に何となくね」

 希の言葉に、絵里は納得する。一方、にこは二人を交互に見つめた。

「何の話?」

 絵里と希は、互いに頷き合い、昨日の出来事を話したのだった。




 絵里と希を書いてると、必然的にμ,sのメンバーが出ますね。前作より、大分絡みが多いと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。