※この作品はR-18です。

美女と狼の奇妙な恋愛事情   作:氷野心雫

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 希と聖の関係は、変わるんでしょうか?


美女と狼の駆け引き?~希編~

 希の部屋に入ると、勢い良くソファーに飛び込み寝転がる聖。その行動を呆れた表情で希は見ていた。

「希ちゃん、一緒に寝よ?」

「いや、うちは遠慮するわ」

 希の冷たい視線に、聖は姿勢を正す。そして、希を真っ直ぐ見据えた。

「……急に来て悪かった。希ちゃんの言う通り、他に女の子達はいるし、多分声を掛ければ、泊めてくれる。だけど」

 一度、言葉を止める聖。悲しげな表情になり、視線落とした。ゆっくりと口を開く。

「信用出来ないんだ」

 そう呟く聖。希は無言で聖の話に耳を傾けた。そして、小さく溜め息をつく。

「うちも他の女の子達と大して変わらんよ?」

「……いいや、希ちゃんは他の女の子達とは違う。俺の勘だけどな」

 小さく微笑む聖。希は無言でキッチンに立つ。

「……ご飯、まだ食べてないんやないの?」

「……あ、ああ」

「お茶漬けくらいなら出せるよ」

「お願いします」

 丁寧に頭を下げる聖。希はお茶漬けを聖の前に置いた。ゆるりと湯気が立ち上る。聖は無言でそれを食べ始めた。希はその様子をじっと見つめ、聖を観察。

「……ご馳走さまでした」

 聖が言う。希は空になったお茶碗を流し台に下げる。

「お風呂入ってええで、その間にお布団持ってくるから」

 言いながら立ち上る希。聖は希の腕を掴んだ。

「何?」

「……い…一緒に寝たい」

 訴えるような眼差しで聖は言う。互いの視線が交わる。希が溜め息をついた。

「……今回だけや。それから、寝てる間に変な事せんでな。それが条件や」

「分かった。」

 小さく頷く。聖は掴んだ手を離し、お風呂場へ向かう。希はその後ろ姿を見つめた。聖が浴室に入るのを確認して、溜め息を溢す。

 

(過去のトラウマか……)

 

「ほんと、しゃあないなぁ」

 溜め息混じりに言う。そして、聖がお風呂から上がってくるまで、ハーブティーを飲みながら待った。

 

 

 

 

 聖がお風呂から上がる。脱衣場に置いておいた服を着ている聖。その服は、希の父の服だ。ほとんどサイズはピッタリのようで、特に違和感はない。

「上がったよ」

「……うん」

 分厚い本に視線を向けたまま、希が返事をした。聖はその本の表紙を見る。どうやら、心理学の本の様だ。

「そんな本を読んでると、心理カウンセラーって感じがするな」

「感じやなくて、心理カウンセラーや」

 言いながら視線を聖に向ける希。聖は目を丸くし、笑う。希は静かに本を閉じる。

「なら、寝よか。うち、明日は早いんよ」

 時計を見ると、すでに日付が代わっていた。希が寝室に向かう。希の後ろに聖も続き、一緒に部屋に入ると、ベッドに腰掛けた。

「ほんと、何もせんでな。お休み」

 布団に入りながら希は言った。

「……お休み」

 聖も同じ様に布団に入る。背中合わせの二人。しばらくして、希は寝息をたて始めた。聖は抱き締めようと振り返る。じっと希のうなじを見つめ、希の髪に顔を埋めた。そして、そのまま眠りにつく。その事に希は気付いたが、再び目蓋を閉じた。

 

 

 

 

 朝、希は目を覚ます。振り返ると聖が希を抱き締めたま寝ていた。

 

(……これくらいは許してあげんといけんかな)

 

 そう思った。ゆっくりと身体を起こして、静かに部屋から出る。仕事の準備をし、お昼のお弁当を作っていた時、聖がトボトボと部屋から出てくる。

「おはよう。よう寝てたね」

「……ん、おはよう…」

 まだ眠そうに目蓋を擦る聖。希の格好に気付く。希の今の姿は、スーツ姿。聖はマジマジと見つめる。

「悪いんやけど、うち。もう行かんといけんのよ。とりあえず、スペアキー置いていくよ。鍵は、玄関のポストに入れといてな」

 言って、テーブルに鍵を置く。

「……それから、朝ごはん。キッチンに置いてるから、チンして食べてな。あと、食べ終わったら流し台に置いといて」

 それだけ言うと、聖の返事も聞かずに部屋を出ていった。

 

 

 

 

 その日の夜。いつもの居酒屋に絵里といた。絵里の所にも、慎が来たと聞く。どうやら、ご飯だけ食べて帰ったらしい。希の方も聖が来て、泊まった話はした。

「……大丈夫なの?スペアキー、ちゃんと返してくれるかしら」

 そんな心配をしている。希は苦笑した。絵里は、自分の事より、他の人を心配する癖がある。

「大丈夫やない?うちに嫌われたら困るのは、聖君やろうし」

「どういう事?」

 希の言葉に、怪訝な表情の絵里。希は枝豆を頬張り、ビールで流し込む。

「聖君。女性関係でトラウマあるんよ」

「っえ?」

「まぁ、慎君も似たようなトラウマあるんやけど」

 エビチリを一つ口に入れる希。絵里は希の言葉を待った。

「慎君の場合は、いずれ本人が話してくれるまで待った方がええよ」

「……希」

「絵里ち、心配せんでええよ」

 そう言って、微笑む希。絵里は小さく溜め息をつくと同じ様に微笑んだ。

 

 

 

 

 絵里と別れてから、希は玄関の鍵穴に鍵を入れる。一瞬、違和感を覚えた。鍵が解除されている。希は恐る恐る中に入っていく。部屋の中は灯りが点いていた。ゆっくりと部屋の中を覗き見る。そこにいたのは聖だった。

「不法侵入やで、警察呼ぼうか?」

 怒りを露にする希。聖は希に近寄った。後ずさる希。

「お帰り、希ちゃん」

 希とは対称的な聖の態度。

「何でおるん?」

「……俺、希ちゃんの事、もっと知りたくなって。嫌だって思われるの分かってたけど、どうしても逢いたくなったから」

 その言葉に、希の表情が固まる。聖が希の腕を掴む。希は振り払おうとはしない。

「そんなん言われても困るんよ。うち、聖君の事、異性として見てないんよ?」

 本心ではない。希は聖の反応を見る。聖は掴んだ手を離さず、希を見つめた。

「それでも良いよ。俺、希ちゃんを絶対俺に振り向かせるから」

 

(……それ、告白やん)

 

 頬を染める希。聖は気付いていない。ずっと希の腕を掴み、真っ直ぐ見つめる。希は小さく溜め息をつく。

「今日も泊まって良い?勿論、何もしないから」

 まるで囁くように聖は言う。希はクスリと笑い。

「……しゃあないなぁ。ええよ」

 そう言って、聖の腕に触れた。




 二人の関係性は、絵里と慎よりは遅いようですが、変化しつつあります。

 次回は、男性側の視点で書こうと思います。
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