※この作品はR-18です。

美女と狼の奇妙な恋愛事情   作:氷野心雫

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 今回は、慎と聖が絵里と希に出逢う前から始まります。


美女との出逢い~慎視点~

『女なんて糞だ』

 

 彼女に出逢うまで、俺はそう思っていた。一週間前まで遡る。事務所の一室で、俺と聖の二人は、桂木プロダクションの社長兼マネージャーの桂木にこに呼ばれていた。

「どうして呼ばれたか分かる?」

 仁王立ちして俺達を見上げる社長。俺と聖は、身長180㎝以上ある為、必然的に見下ろす形になる。

「そろそろ危機感もってくれないと、グループ自体解散になるわよ?」

 その言葉に、俺と聖の表情が強張った。俺と聖は『ラブウルフ』というアイドルグループに所属している。数年前から全国的に広まったアイドル全盛期。俺達もその波に乗って、アイドルグループを結成。デビュー当時は、そこそこの人気はあった。しかし、それを維持するには、時間と努力が必要だ。だが、俺と聖はある共通の悩みでアイドルをする事に抵抗を感じていた。その悩みとは女性である。何故、女性で悩んでいるのか。それは複雑過ぎて、一言では言い表せない。ただ、言える事は、女性に対して不快感を感じている。それだけだ。それなら、アイドルなんてしなければ良い。だけど、そんな簡単な話だったら、こんなに悩んでいない。

「……まぁ、あんた達の事情も分かっているから、強くは言いたくないけど」

 桂木社長は、俺達の事情を知っている。俺達だって、社長には恩を感じているし、どうにかしてその恩を返したい。俺達は同時に溜め息をついた。

「……とりあえず、たまには息抜きして来なさい。そうだ。私の友人が経営している居酒屋に行ってみたら良いわ」

 そう言って、俺達にその居酒屋の店名と場所を書いたメモを渡し、にこやかに手を振ったのだった。

 

 

 

 

 『花陽の食卓』と書かれた暖簾。俺達は暖簾を潜り、店内へ。店内は客で溢れていた。出入り口で立ち往生する俺達。そこに一人の店員がパタパタと近付いてきた。

「お二人様ですか?」

 ほんわかと微笑む女性店員。俺達は、無表情で頷く。

「今、座る席が空いていなくて、相席でも構いませんか?」

 そう言われた。俺達はとりあえず頷く。極力、女性とは会話しない俺達。女性店員は、相席出来る席がないか、店内を見渡す。店内の一番奥の席に、二人座れる席があった。その席には、すでに女性が二人座っている。顔はよく見えないが、紫色の髪の女性と金髪の女性が座っていた。

「ごめんなさい。今、空いている席がないみたいです」

 女性店員はそう言った。俺達は顔を見合わせる。

「あそこの席、座れないのか?」

 一応、そう言ってみる俺。女性は指された席を見る。そして、俺達を見た。

「……あそこの席は」

 困り顔の女性店員。聖が俺の肩を叩く。

「今日は帰ろう。また、今度来れば良いじゃん」

 そう言った。俺は何となく聖がそう言った理由が分かる。出来れば、女性の横なんて座りたくない。俺は頷いた。

「花陽、ちょっと良いかしら?」

 女性店員を呼ぶ、金髪の女性。女性店員はパタパタと金髪の女性に近寄った。俺達は踵を返し、店の外へ向かう。

「あ、ちょっと待って下さい」

 女性店員が俺達を呼び止める。

「相席、出来ます。」

 そう言って、その席へ促す。俺達は内心。

 

(別に相席出来なくて良かったのに)

 

 しかし、女性店員が今にも泣きそうな表情で俺達を見ているから、仕方なくついて行く。奥の席に向かう途中、周りの席に座っている男達から睨まれる。

 

(何で睨まれないといけないんだ?)

 

 心の中で言う。それは、聖も思った様だ。俺と同じ様に複雑な表情をしている。そして、女性二人が座る席に着く。女性二人は、一瞬だけ俺達を見たが、視線を戻し、談笑を再開する。俺達は見惚れていた。離れた場所からは分からなかったが、女性二人は物凄く美人だった。それも、タイプが異なる美人。

「何してるん?座ってええよ」

 立ち尽くしている俺達に、紫色の髪の女性が言う。関西方言の女性は、微笑む。一方、金髪の女性も、少し椅子をずらし、座れる場所を広くしてくれている。俺達はとりあえず会釈すると、無言で席に着く。

「なぁ、横の二人相当な美人だよな」

 騒がしい店内で、聖は声を潜めてそう言う。俺は横目で二人を見ると、頷いた。

「さっき、周りの男連中が睨んだ理由が分かった。俺達が羨ましいんだよ」

「だろうな。女性店員が、相席しないようにしていたのも頷ける」

 俺の言葉に頷く聖。しばらく俺達は談笑しながら、ビールを飲んでいた。目の前に置かれる唐揚げ。俺達は首を傾げた。

「っあ、ごめんなさい。それ、私達が頼んだの」

 金髪の女性が、申し訳なさそうな表情でこちらを見ている。無言でそれを金髪の女性に渡す。女性は微笑んで受け取った。ほんの少し指が触れた。女性は気に止める様子もない。一方、俺の方は心臓が早鐘を打っている。理由は簡単だ。女性アレルギー。俺は女性に触れられると蕁麻疹が出る。触れた指を見た。蕁麻疹は出ていない。

 

(……蕁麻疹が出てない。何でだ?)

 

 不思議に感じ、女性を見る。女性達は楽しそうに唐揚げを頬張りながら、爪楊枝を並べていく。

 

(何してんだ?)

 

 お互い、目の前に五本ずつ爪楊枝を並べ、女性達はいきなりじゃんけんを始めた。聖も同じ様にそれを見ている。爪楊枝が女性二人の間を行き来していく。そして、金髪の女性の爪楊枝がなくなった。

「嘘、また負けたわ。もう希。たまには勝たせてくれない?」

 金髪の女性が悔しそうにそう言う。希と呼ばれた女性は、にやけている。

「絵里ち、弱すぎやわ。うちが手加減しても勝ててないやん」

 その言葉に絵里と呼ばれた女性は、渋々財布を出す。

「希の方が稼ぎが良いのに。……ごめんなさい。そこの領収書取ってもらえるかしら?」

 金髪の女性が、テーブルの下に備え付けられている領収書受けを指差す。

「……なぁ、奢るから。もうちょっといてくれないか?」

 俺は咄嗟にそう言った。女性二人は顔を見合わせる。

「ナンパ?」

 紫色の髪の女性が言う。その表情は悪戯っ子。

「ははっ!綺麗なお姉さん達の横に座って。声掛けない男はいないよ」

 女性の言葉に、聖がそう返す。女性達は楽しそうに笑う。

「綺麗なお姉さん達が帰ったら、男二人で飲む酒は美味しくないだろうな」

 俺はそう言った。

 

(それに、もう一回。触れてみたい)

 

 俺は金髪の女性を見る。女性が俺の視線に気付いた。じっと俺を見つめる女性。そして、優しく微笑む。

「なぁに?私の顔に何かついているかしら?」

 わざとらしく自分の頬を触る女性。俺はそんな女性の仕草をずっと見つめていたのだった。




 という事で、慎の視点での話でした。次回は、その続きです。勿論、ベッドシーンあります!
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