※この作品はR-18です。

美女と狼の奇妙な恋愛事情   作:氷野心雫

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 今回は、聖のお話です。希と聖の話は、絵里達に比べると、少し暗いですね。


本心は?~聖編~

 希の家に初めてお泊まりしてから、聖の心は完全に希で一杯になっていた。慎同様、女性に対して不信感を募らせている聖。その原因は、やはり女性だった。元々は、どこにでもいる普通の少年時代を過ごしていた聖。慎の生い立ちに比べると、特に波乱に満ちていない。寧ろ、少年時代から、身長も今と変わらず高く、整った顔立ちでモテていた。聖が行く場所には常に大勢の女性達が取り囲み、その頃からアイドルの様な扱いだった。

 聖自身もそれが当たり前で、当然だった。毎日、どこかで誰かに告白され、それを断る日々。だが、それも終わりが近くなる。聖はある女性の告白を受け、交際することになった。告白した女性は、特に可愛い訳でもなく、綺麗でもなく、どこにでもいる普通の女性。聖は、その女性が好きでもなかった。ただ、女性に囲まれる事に飽きていたからだ。

 ある日、デートをする事になった。聖は乗り気ではなかったが、女性があまりにも懇願するので、渋々了承。初デートの場所は遊園地。彼女は楽しそうに聖の手を取り、アトラクションを回った。しかし、聖の心は冷めている。元々、好きで付き合った訳ではない。聖は無表情で過ごした。デートが終わり帰り道の途中。

「ごめん、私から告白したけど、別れて」

 彼女はそう言った。聖は呆然としている。

「聖君。私の事、好きじゃないでしょ?だって、全然楽しそうじゃないもん」

 それだけ言って、彼女は去っていった。聖の別れ話は瞬く間に広まり、女性達の囲みは酷くなる。聖は誰でも良い訳ではなかったが、女性達の数人と交際した。しかし、いずれも数日で告白した側の女性達から振られている。振られる理由はほぼ同じ内容だ。

「聖君って、格好いいけど。それだけなんだよね。面白くもないし。デートするのは一回で良いや」

 その言葉に聖の心は傷付いた。その後も、女性達から告白され、そして振られる。それが数年間続き、聖は思った。

「誰も俺の心を見てくれないくせに」

 荒む心。聖は誰も信用出来なくなった。自分の外見だけを見て、理想を押し付け、女性達は勝手に幻滅し去っていく。いつしか、聖は女性を避けるようになる。それでも、言い寄る女性達は後をたたない。次第に俺の身体は、女性を拒絶し、身体に触れられると吐き気が起きるように。聖は引きこもり、全ての情報を遮断。それから数年が経過していた。

 

『聖、貴方に会いたいって方がいるの。会うだけでも良いかな?』

 

 母がそう言った。聖は数年部屋から出ていない。その為、外見は当時の面影はなく、髪はボサボサになり、筋肉質の身体は、元の体型が分からなくなるほど太っていた。聖は久しぶりに外に出る。太った聖を見る者はいない。聖に会いたいと言った人物がいる場所に両親と向かう。その場所は『桂木プロダクション』と書かれた看板が目印の大きなビル。聖は緊張しながらビルの中に入った。ビルの中の事務所に入り、一室に通される。そこで桂木社長と出会った。桂木社長は女性。一瞬、吐き気が起こる。それを見て社長は。

「和久井聖、貴方を私の事務所で雇うわ」

 一言だった。聖の見た目ではなく、目を見て、そう言ったのだ。当然、聖は困惑する。しかし、桂木社長は聖の身の回りを世話した。体力を付ける為、ダイエットし、何故かボイストレーニングをさせられる。聖はただがむしゃらにそれを続けていく。そして。

 数年後『ラブウルフ』と言うアイドルグループに所属した聖は、似た様な悩みを持つ慎と出会った。慎と仲良くなるのは早かった。境遇は違えど、悩みは同じ女性がらみ。気が付けば、常に一緒に行動し、桂木社長の指導の元、忙がしい日々を過ごした。そんな時だ。桂木社長の薦めで行った居酒屋で彼女と出逢ったのは。

 

 

 

 

 彼女とその友人の女性は綺麗だった。慎も彼女の友人に見惚れている。たまたま相席になった彼女達。聖は『吐き気が起きるかも知れない』という不安で一杯なる。ところが、彼女の横に座って全く吐き気が起きない。慎も同様で、たまたま触れた指先に慎は不安の表情だったのだが、その表情は驚きの表情へ変化。慎は女性アレルギーを持っている。女性に触れると蕁麻疹が出るのだ。しかし、その蕁麻疹が出ない。その事に驚いている。聖もそれには驚いた。桂木社長に対しても出る蕁麻疹。それがその女性に対しては出ていない。聖自身も、吐き気が出ない事に驚いた。元が狭いテーブル。どんなに端に座っていても、少し肩が触れる。いつもなら、すぐに吐き気が起こるが、やはり彼女にはその症状は皆無。慎と聖はお互いの変化に困惑しながらビールを飲んでいた。しばらくして、彼女達は帰るのようだった。咄嗟に引き留める慎。聖も同じ気持ちだ。

 四人は談笑しながらビールを飲む。友人の女性が眠気で持ちそうにない事に気付き、彼女は椅子から立ち上がった。店の出入り口まで見送る。すると、彼女の友人は眠りながら、慎の腕を掴み放す様子もない。彼女は慎の荷物を乗せ、友人を慎に任せた。

 

 

 

 

 慎がいなくなり、聖は彼女と二人でビールを飲み直す。彼女は俺の目を見て言った。

「なぁ聖君。うちの家に来ん?」

 聖は無意識に頷いた。そして、彼女と談笑しながら、彼女の住むマンションにたどり着く。彼女は俺に処女を捧げた。彼女に深い理由はない。彼女曰く。

「特に理由はないんよ。ただ、君ならええかなって。……」

 夢見る乙女じゃないなんて、そんな事言われて、胸が締め付けられた。聖は生まれて初めて女性を抱いた。彼女は聖の腕の中で乱れ、眠りにつく。

 朝、目を覚ますと彼女がいない。聖は驚いて飛び起きた。部屋を探し回り、浴室から音がして気付く。聖はとにかく彼女の顔が見たくて浴室に入った。安堵する聖。その後は、二人で部屋を出た。

 

 

 

 

 事務所に入ると、社長に呼び出された。聖は慎と共に社長のいる部屋に入る。

「話は聞いたわよ。あんた達、私の友達と一緒に飲んだそうね。」

「俺もびっくりした。社長と絵里が友人だったなんてな」

 社長の問いに慎が答える。社長の表情は固い。

「絵里と希の処女貰ったんだって?」

 目が少し怒っている。慎と聖は動けない。

「……まぁ良いわ。本人達も別に怒ってないし。それにその事は本人同士の話だから」

 机に置いてある書類を手に取る社長。

「絵里の方は、元が真面目だから良いとして。問題は希ね。聖、もし本気なら、一つだけ言っておくわ。希はなかなか本心を話さないから、気持ちが知りたい時は真っ正面からぶつかりなさい」

 

 

 

 

 その話を聞いて、無意識に彼女の家に向かった。時刻は深夜近く。インターホンを鳴らすと、パジャマ姿の彼女が困惑しながら聖を見つめる。聖は泊めて欲しいと告げた。彼女の表情が明らかに怒っている。『身体の関係は確かに持ったけど』と、彼女の言葉。聖は女性に対しての気持ちを話した。彼女も『うちも大して変わらんよ』と言う。それでも、聖は彼女の側にいたかった。何も食べていない聖に、彼女はお茶漬けを出す。聖は彼女の表情を見た。少し微笑んでいる彼女。そして、何もしない事を条件に、一緒のベッドで背中合わせで寝る。聖は振り向いた。後ろ姿の彼女。聖は抱き締めたい衝動に刈られる。その衝動を圧し殺し、彼女の髪に鼻を近付けた。甘く爽やかな匂い。聖はその匂いを嗅ぎながらいつしか眠りについた。




 慎程ではないですが、聖も色々とあります。まだ、表現力が乏しいので、上手く書き表せないのが、もどかしいところ。
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