二人にも結婚式の招待状が届けられます。
「お客様です、エリアス」
チセの言葉に男は渋い顔をした、といっても頭の部分は骨なので表情は普通の人間にはわからない。
珍しくというか、言われる前に銀の君が台所に姿を消して、お茶の支度をはじめたことにチセは少なからず驚いた。
何の用だいと口を開く前にエリアスの目の前に突き出されたのは手紙だった、おまえのところにも来たんだろう招待状がとレンフレッドに言われてエリアスはいいやと首を振った。
すると、レンフッドはもうすぐ届くはずだと断言するように呟いた。
「行くんだろうな、エアリス・エインズース、彼女も一緒に」
そう言って視線を向けられたチセは内心、ドキリとした。
彼の隣にいるアリスはどことなく気まずそうな表情だが、おずおずと口を開いた、勿論、チセだって行くよ、マスターと。
「彼女にだって送ったって手紙に書いてあったんだ、悪い人じゃないよ、あの人は」
アリスの言葉にレンフレッドは難しい顔をしながらも、ああと頷いた。
「悪意があって、こんなことをするような女じゃない」
話が見えなくてチセは不思議そうな顔をした、すると数日前、二人の元を尋ねてきた古い友人が結婚するから式に出てくれと顔を見せにきたのだという。
「しかも、男の支障では分からないだろうとアリスにドレスを送ってきた、もうすぐ、おまえのところにも来るぞ、何か、聞かれなかったか」
レンフッドはチセを見た。
「好きな色とか、まあ、色々と」
「その手紙が、来ました」
「あの女から手紙だって、チセ、黙ってたのか」
怒ったようにエリアスが叫んだ。
「結婚相手を知っているのか」
「首なしだ」
レンフレッドの言葉に、ほんの一瞬、奇妙な間が開いた。
「首のない男ってことかい、初めて聞いたよ」
自分も今まで知らなかったとレンブレッドは言葉を続けた。
「それだけじゃない、結婚すると言いながら二人は一度も会ったことがないらしい」
運んできたカップに口を付けていたエリアスは、お茶を喉に詰まらせそうになり、チセは唖然とした顔つきになった。
そして、何故か、アリスは気まずい顔になった。
「随分と酔狂なことだ」
「仲介人がいる、灰の目が最初だが、それとヨセフだ、あいつが熱心に勧めているんだ、この結婚を、そして式にも参列する予定らしい」
エリアスのカップを持つ手が震えた。
「首なしは人付き合いが苦手で隠者みたいな生活をしていたが、やはり一人は寂しいとか、いい人はいないかと捜していたら、あの二人が話を持ち込んできたというわけだ」
馬鹿馬鹿しいといわんばかりにエリアスは呟いた、というより、吐き捨てたといったほうがいいだろう。
その様子を連フッドとアリスは何か言いたげな顔で、いや、目つきで眺めていたが。
「彼女を振ったんだって、エインズワース」
昔のことだがと前置きしてと口を開いた相手に、エリアスは無言になった、といっても、ほんの一瞬だ。
「ヨセフは、この話には乗り気らしい、あの骨頭にはいい薬だとアリスに散々、愚痴を言ったらしい」
暗い、眼球のない目、視線がアリスに向けられた。
「あの化け物と話したのか、何もされなかったのか」
「俺やアリスは関係ないらしい、ただ、おまえに対して、そのことで恨みがあるようだ、かなり」
最後の言葉に何故か力がこもっていると感じてエリアスは、どうしてと問い返した。
「あんたが、彼女に対してひどい大変ひどいことをしたって、昔」
「馬鹿な、昔だって」
「覚えがないのか、あいつはいけすかない、問題アリの奴かもしれない、だが、このことに関しては首なしの話を持ち込んだ時も、聞いているとすごくまともに話を進めているんだ、なあ、アリス」
「は、はい、先生」
「エリアス」
チセは何か言いたげに視線を向けたが、無言だった代わりに。
「この結婚、あの人は喜んでいるけど、本当にいいんだろうかと」
アリスの言葉に二人の視線がエリアスに向けられた。
「本人が喜んでいるんならいいだろう、周りがとやかくいうことじゃない」
「確かに、それは一理ある、だが、エインズワース、おまえは何をやったんだ」
まるで犯罪者を問いつめるような視線に、エリアスは思わず席を立った。
そのとき、郵便が来ましたとシルキーが荷物を抱えてやってきた。
宛名はチセ様へとなっている。
中を開けると、ドレスが入っていた。
それは普段着ではなく明らかに特別な場に出る為のものだ。
その場にいた全員、チセとアリスはため息を漏らした。
そして、二人の男はまんじりともしない視線で互いを見つめ合った。
「よくないと思います、エリアス、このまま、あの人が結婚するのは」
チセの言葉にエリアスは首を振っただけだった、まるで自分には関係ないといわんばかりに。