エリアスが直前にいろいろとやらかしてくれます。
そして周りが巻き込まれるという展開です。
支度はできたかい、いつもとは違う自分の姿にエリアスは似合っているね、その服と言ったのでチセは驚いた。
「彼女にも、そう言うべきなんだろうね」
まるで独り言のように呟くので、正直、返事に困ったのも無理はない。
一般的な世間話というもの、いや、世辞や誉め言葉というものが、彼に結びつかなかったからだ。
自分が日頃、魔法使いになる為の勉強をしている時でもだ、注意や警告はするが、誉め言葉というものを、あまり聞いたことがないのだ。
よくできたねという言葉を聞いても、本当にそうだろうかと不安になってしまう。
エリアスは根本的に言葉が少ない、足りなさすぎるということは以前、アンジェリカから聞かされていた。
一人暮らしが長かったせいで、だから時として予想外の行動をすることがある、それに対して周りや他人が驚いても本人は少しも気にせずに無頓着なのだと聞かされたときも納得した。
そして今回のこともだ。
「やあ、来てくれたんだね、夜の愛し子、チセ、今日は素晴らしい日、式になりそうだよ、何故なら、君に祝福されるんだからね」
ヨセフの言葉にチセは、正直あっけにとられた。
彼とは初対面ではない、だが、最初の出会いから印象が良いとはいえなかったのだ、なのに、屈託のない笑顔を向けられて唖然としてたのは無理もない。
正直、何かあるのではないかと疑っててしまうのも無理もない。
そして、自分の背後に立っているエリアスを見ると少年はにっこりと笑った。
「エインズワース、厚顔無恥って言葉を知ってるかい、もっとも君の顔は肉なんてない、骨だけだから、面の皮が厚いなんて言葉は意味なんてないだろうけど」
まるで、喧嘩を仕掛けて、わざと怒らせているのではないかと思ったのも無理はない。
だが、そんな言葉を聞きながらもエリアスは無言だった。
「もう彼女とは会う事もないだろうね、永遠に」
「どういうことです」
この言葉に驚いたのはチセだった。
「夫となる彼はイングランドには住んでいないんだ、彼女には是非とも自分の領地に来てほしいと言ってるから、向こうに行けば、もうこちらに来ることもないと思うよ」
その言葉にチセの視線はエリアスに向けられた、だが、それでもエリアスは無言だった。
「式の前に彼女に会ってほしいんだ、勿論、君もだよ」
室内に入ると見たことない妖精や人ではない生き物がいた、森や川、いろいろな場所にいる妖精を今まで見たことのあるチセだったので驚きはしなかった。
だが、今まで見たことのない生き物ばかりだ、どこか禍々しい感じかするのだ。
細い枝や手を伸ばして女のベールや衣装に飾り付けをするものたちは部屋の中入ってきたチセを見ると驚いたように目を見開いたり、声を上げる者もいた。
「夜ノ子供ダ」
「スレイ・ベガだよ」
「祝福に来てくれたのカイ」
だが、エリアスを見ると、視線と空気が変わった、明らかなに歓迎していないという空気が伝わってくる。
そのときドアが開き、小さな妖精が入ってきた。
「ヨーセフ、灰の目が呼んでる」
「なんだい」
「急いで、なんだか、驚いているみたい」
その言葉にヨセフは慌てて、部屋の中にいる者たちに視線を向けた、すると、皆が一斉に姿を消した。
部屋の中が急に静かになったが、ヨセフと人ならぬものたちが出て行くと同時に入って来たのはレンフレッドとアリスの二人だった。
「何かあったのかしら」
女の不安そうな台詞に、誰も何も言わなかったが最初に口を開いたのはエリアスだった。
「昔、僕は君に求婚した、君は忘れたみたいだけどね」
「おい、エインズワース」
何を言い出すんだとレンフレッドは驚きの顔になったのは無理もない。
「だから、忘れることにした、そして今、改めて申し込む、僕は」
言葉の意味がわからず、三人は互いに顔を見合わせた。
「エリアス・エインズワース、何を、い、言って」
花嫁衣装を着た女は意味がわからないと言いたげに困惑気味の顔になったが、それは周りにいたチセ、レンフレッド、アリスも同じだった。
「求婚すると言ったんだ、そして、君の返事は一つ、それ以外は聞かない」
「何を言ってるんです、エリアス」
驚いてチセが叫んだとき、部屋の中が急に暗くなった。
聞き覚えのある声だとチセは思った、
「リンデル、どうして」
裂けた空間から顔を現したのは竜の国の管理者だった。
何故、この人がと思ったとき、空間の向こうから叫びが聞こえた、それはドラゴンの咆哮だった。
「この借りは高くつくぞ、師匠の儂を脅しおって」
「わかってる」
そう言って、エリアスは花嫁に近づくと腕を取り、抱き上げた。
「ち、ちょっと」
慌てる女の声に返事もせずエリアスは空間の裂け目に向かって歩き出した。
「エ、エリアス」
「エインズワース」
「おいっ、骨頭」
三人は慌てて後を追いかけた。