※この作品はR-18です。

ひびみくドスケベ短編集   作:数多 命

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いわゆるギャラルホルン案件。
内容が内容なので、ほとんど夜中に書いていました。
とどのつまり:深夜テンションということで、多少の突っ込みどころには目を瞑っていただけると・・・・(ガタガタ


チョイワル×オメガバース
αのビッキーとΩの393


――――むせ返る生き物の臭い。

油くさく、甘ったるく、潮っぽい。

部屋には複数人。

その中央では、水音。

『かすか』と表現するには少し大きな音量で、速く断続的に続いていた。

下半身をさらした男達が、その象徴をいきり立たせて、いやらしい笑みで見下ろす先。

猿轡をされたか細い少女が、屈強な腕達に組み伏せられていて。

 

「ふ、ふ、ふ、ふ・・・は・・・んぐッ!」

 

その一番『おいしいところ』を、彼らのリーダーが『いただいている』ところだった。

欲望のままに腰を振り、激しく叩きつける。

少女は涙を浮かべて何度もあえぎ、首を横に振る。

体を捩じらせてどうにか逃れようとする。

ここは南米のとある国、ある犯罪組織の事務所(アジト)。

法律なんてあってないようなこの場所は、即席の風俗サービス店へ変貌していた。

 

「はぁ、は、ッ!あきらめが、悪いな・・・・!」

 

ピストンを一切緩めないまま、リーダーは今もなお抵抗する少女を見下ろす。

光が消えかかった瞳は、それでも『何か』に縋っているらしく。

『諦めの悪いことだ』とリーダーは一度顔をしかめた。

 

「――――殴って黙らせます?」

「ぃ、や、それはっ、ん・・・・それで、つまら、ん」

「あー、まあ、単なる『オナホ』じゃ物足りないっすもんね。分かりました」

 

呟きを拾った男の一人が提案すると、リーダーは首を横に振った。

会話が途切れると、疎かになった分を取り戻すように更に激しくなる。

快楽に頭がぼやける中で、再び少女を見下ろす。

ここらにしては身奇麗な肌、ほどよく脂がのって瑞々しい肢体。

そしてまるで絹のような、黒い髪。

 

「『ファフニールの宝物』、なるほど・・・・ふぅッん!」

 

彼らは、この少女が何者か把握した上で『こう』していた。

それに付随する結果も聞いていたが、『どうせ噂だ』と、半ば人事のように考えている。

金を与え、食事を与え、寝床を提供しているのだ。

不自由なんてさせていないし、これくらいなら『あいつ』も目を瞑るだろうと。

そう、楽観視していた。

 

「――――だいじょーぶなんです?」

 

ふいに、声。

部屋の入り口から、話しかけられる。

 

「それってあの『ファフニール』のでしょ?」

「っああ!そうだ、なッ!」

「手ェ出していいんですかね?呪われるって話ですけど」

「はッ!」

 

どこか臆病な意見を、鼻で嗤い飛ばす。

 

「噂は、所詮、噂、だ。あの餓鬼、上手く、利用するっ知恵は、あった、みたい、だが、それだけだ」

 

腰を更に激しく打ち付ける。

聞こえる水音も、猿轡越しに聞こえる嬌声も。

更に大きくなる。

 

「だいたい、この世は、勝った者勝ち・・・・ふっ・・・・盗られた、者のっ、負けだ」

 

限界は、近かった。

・・・・ここで。

『情事』に気をとられていたことが仇になる。

 

「―――――それじゃあ」

 

気配が変わる。

熱った背筋が急激に冷える。

首筋に刃を当てられているような感覚。

言うまでも無く、殺意。

 

「わたしが皆さんを殺して、その子を取り戻すのもアリですよね?勝ったもん勝ちなんですから」

 

振り向けば、狙いを定める銃口が見えて。

まずは一発。

 

「――――ぉ」

 

傍に控えていた者が倒れる。

入り口の『敵』はもう一丁銃を取り出し、続けざまに発砲。

ずんずん前進しながら、少女を取り押さえる男達を次々ヘッドショットしていく。

 

「ま、待て、おい・・・・・!」

「はい、邪魔」

「ぼっが!」

 

一人残ったリーダーを、横から殴りつけて引き剥がすと。

解放された少女の顔を隠すように抱きすくめ、狙いを定める。

 

「――――ッ!!!!」

 

銃声は五つ。

股を執拗に狙撃した後でヘッドショット。

部屋の中にはあっという間に、飛び散った『柘榴』が散乱した。

束の間銃口を向け続け、気配を研ぎ澄ませる。

やがて制圧を確信した彼女は、ふっと息を吐いた。

 

「ひ、ひび・・・・んっ・・・・」

 

すぐに抱き寄せていた少女の猿轡に手をかけ、外す。

何か言いかけた泣きそうな顔の唇を、遠慮なく塞ぐ。

 

「ん、むっ・・・・ふぁ、ぁ・・・・・ちゅ・・・・」

 

唇をはみ、舌先を啄ばむ。

時に歯茎を撫でて、絡めあう。

深い深い口付けを、気がすむまで交わしたら。

そっと唇を離して、銀の糸を紡いだ。

儚く途切れそうになった糸を、もう一度浅くキスして絡めとる。

 

「・・・・ひび、き」

「ごめんね未来、怖かったね」

 

震える瞳に微笑みかけて、また柔く抱き寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

(どうにか逃げられた)

 

こっそり乗り込んだ貨物列車。

扉の隙間から離れていく街並みを見ながら、一息つく。

――――どういうわけだか。

『戦姫絶唱シンフォギア』の世界に、よりにもよって『立花響(しゅじんこう)』として生まれてしまったわたし。

前世の記憶やら原作ビッキーへのコンプレックスやらで色々悩んでいたら、うっかりツヴァイウィングのライブに行ってしまい。

まんまとあの迫害に合ってしまった。

『立花響(げんさく)』よりもはるかにメンタルの弱いわたしが『へいき、へっちゃら』程度で乗り越えられるわけも無く。

もういっそ遠くへ逃げてしまえと、お隣の半島へ密航したのが一年ほど前の話だ。

 

「未来、怪我はない?」

「ん・・・・大丈夫」

 

隣に居るこの『小日向未来』もついてきてしまうという誤算はあったけれども。

まあ、それなりの旅路を送れていると思う。

・・・・・いや。

さっきのを考えるなら、むしろドロっとしてるというか。

某『黒い干潟』もひっくり返るような展開も多々あったわけなんだけどもね?

 

「・・・・出されては、いないよね」

「・・・・うん、響のお陰」

 

・・・・・不躾とは思ったけど、さっきのことが気になったので聞いてみると。

未来は躊躇いがちながらも、しっかり頷いて身を摺り寄せてきた。

 

「まったく、『オメガ』だからって、女の子に手ぇ出すなんて・・・・」

「ふふ」

 

密着したから感じる、体の震え。

きっと、ワイシャツにコートを着ただけっていう、見るからに寒い格好をしているだけじゃないはずだ。

わたしのおどけに笑ってはいるものの、よっぽど堪えているのが手に取るように分かって。

だからもっと抱き寄せて、わたしの温もりで包むようにする。

――――この世界には、男女以外の『第二の性』と呼ばれるものがある。

それはほぼ体質のようなものだけれど、社会を構成する上で重要なファクターであることに間違いは無い。

まずは『α(アルファ)』。

所謂エリートというもので、特に裕福な家庭に生まれることが多い。

基礎能力も高く、カリスマ性も抜群。

世の中の要職は大抵このαがついていることがある為、世界を動かしているのはαと言ってもいいかもしれない。

さらに、男女関係無く相手を孕ませることが出来る。

次に『β(ベータ)』。

特に特徴が無い、所謂一般的な男女。

基本β同士で子作りしても、βの子どもしか生まれないけど。

先祖にαや後述のΩなんかがいると、稀に先祖がえりすることがあるらしい。

最後に『Ω(オメガ)』。

こちらもαと同じく希少な性別で、男女関係無く孕むことができるけど、社会的地位はむしろ低い方に位置する。

理由としては、三ヶ月に一度訪れる『ある症状』の所為で、一週間ほどの長期休暇をとる必要があるからだ。

その所為でちょっと差別的な対応を取られてしまうのが問題になっていたりするんだけど、今は置いておこう。

で、その『ある症状』って言うのが――――

 

「――――未来?」

 

急に鼻をくすぐった甘い匂い。

びっくりして見下ろすと、未来の呼吸が荒い。

一瞬病気かと思ったけれど違う。

何より、わたしの体が段々熱くなってきていて。

これは、もしかしなくても・・・・。

 

「『発情』?なんで、周期はまだ先じゃ・・・・?」

 

『発情』。

Ωにのみ見られる症状。

生殖能力の低さを補うため、早くて十代半ばから、三ヶ月に一度の周期で起こる。

発情している間は身動きが取れなくなってしまうため、この所為で会社なんかを一週間ほど休まなければならなくなる。

更に厄介なのは、この時に発するフェロモンだ。

生殖能力の強いαを無差別に誘惑してしまうため、強姦事件なんかの被害者は大抵Ωであることが多い。

っていうか、呑気に解説しとる場合やないで・・・・。

 

「・・・・ッ」

 

前述の第二の性に当てはめるなら、わたしは『α』。

両親は共にβなので、先祖返りというやつになる。

そして、未来は同じく先祖返りの『Ω』。

例に漏れず、三ヶ月周期でフェロモンを発するようになった。

で、当然αであるわたしは、がっつり影響を受けてしまうわけでして。

うん、やばい。

っていうか、何で今になって・・・・!?

前回のからそろそろ三ヶ月に届きそうだけど、記憶が正しければまだ一週間ほど先だったはず。

でも今現実に未来の体は発情しているわけで・・・・。

あっ!いや!あれか!!

さっきあのおっさん達にされたのが原因かッ!?

やっばい、そうとしか思えなくなってきた。

おのれあいつら余計なことしやがって・・・・!

 

「・・・・ご、め」

 

今にも飛び掛りそうな体を必死で抑えていると、そんな声が聞こえた。

見れば、いつの間にか離れている未来が。

わたしと同じか、それ以上に必死な様子で体をちぢ込めて。

十中八九、自分の中の熱に抗っていて。

 

「ごめん、なさ・・・・ご、めんなさぃ・・・・!」

 

爪が食い込むほど自分を抱きしめた未来は、涙をボロボロ零していた。

・・・・・悔しいんだろう。

自分の体なのに、自分の思うとおりに出来ないことが。

 

「――――」

 

多分、それがスイッチ。

ふっと軽くなった体は、気付けば未来を抱き寄せていた。

震える唇へキスを送って、耳たぶをはむ。

 

「どうしようもないのは、お互い様だよ」

 

ゆっくりゆっくり横たえさせて、その上に覆いかぶさる。

 

「みく、だいすき」

 

耳元で囁けば、未来の体が嬉しそうに震えた。

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

まずはやはりキスから。

荒い呼吸を繰り返す唇へ、何度も自分の唇を落とす。

しかし程なくキスを止めると、そっと唇を下へ這わせた。

舌先を肌に当てながら、首筋へ。

湿り気と温もりが刺激を生み出し、未来の体が震える。

確かな手ごたえを感じた響は、さらに鎖骨周囲をそっと舐めて、吸い付いた。

 

「――――ぁ」

 

ちりっとした痛みを感じた未来が視線を降ろせば、小さな鬱血が。

響に目を向ければ、どこかしてやったりと言いたげだった。

恥じらいを感じながらも、これからされることを思うと何だか嬉しくなって。

未来は困ったように笑うだけに留めた。

響の手が胸元に擦り寄ってくる。

お互い特に抵抗することも、されることもなく、シャツのボタンを外す。

形を確かめる様に、響の手が淡く胸に触れた。

指先で撫でられれば、痺れが背筋を駆け上がる。

全体を揉まれ、先端を弾かれる。

片手はしっかり動かす一方で、もう片方に吸い付かれる。

舌先で啄ばまれたと思えば、強く口付けられた。

くぐもった嬌声が喉から漏れて、未来は堪えるために抱きついた。

・・・・先の男達に『致されて』いたからか、体の疼きが止まらない。

自分を思ってのことであろうこの愛撫も、未来からすればじれったくてしょうがなくて。

 

「・・・・ん、ぁ・・・・ひび、き」

 

思ったよりも甘ったるい声は、何だか催促しているようになってしまったけれど。

その願いを汲み取ってくれた響は、どこか意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「腰、あげられそう?」

「・・・・ぅん」

 

未来が上手く力が入らない腰をどうにか上げると、響の手がショーツを掴んでさっと抜き取る。

空気に触れて、かすかに冷たさを覚える秘所。

確かめなくても、割れ目がしとどに濡れていることが分かった。

 

「ふあ・・・・!」

 

指で触れると、未来の反応が目に見えて著しくなる。

体を跳ね上げ、羞恥で目を強く瞑る未来。

恐る恐る開いた瞳には、未だ熱が灯っていた。

未来の様子を伺っていた響は、またにんまり笑う。

広げた足の合間に体を割り込ませると、ズボンに手をかけた。

ベルトを外して下げれば、一般の女性にはありえない生殖器。

αの女性が、Ωを孕ませる時のみに見せる器官だった。

 

「いれるよ?」

 

一応の問いかけ、言葉は無い。

代わりに未来は、かすかながらもしっかり頷いた。

合意と都合よく受け取った響は、先端を割れ目に宛がって。

ゆっくりゆっくり、腰を沈めていく。

 

「ぁ・・・・ふっ、ん・・・・ひあ・・・・!」

 

じゅぶ、と。

股座からいやらしい音。

背筋を駆け上がる快感と羞恥で、元から赤い顔がさらに紅を注す。

 

「みく、だいじょうぶ?」

「・・・・ん・・・・ぅん・・・・!」

 

その様子を見かねた響は、一度動きを止めて問いかける。

対する未来は、また言葉はないまま、何度も頷いた。

痛みもある、だがそれを上回る心地よさ。

やめてほしいとは、露とも感じていなかった。

なお心配そうながらも微笑んだ響は、未来の頬にそっと手を添えた。

未来もまた、その手を握り返して幸せそうにはにかむ。

汗ばんでひんやりした手のひらは、熱った頬にちょうどよい気持ちよさをくれた。

そんなやり取りをしている間に挿入は再開され、はじけるような水音と共に二人の距離はゼロになった。

性器はもちろん、体も顔も、心すら密着して、寄り添っているような感覚。

この身の全てで相手を感じられるこの瞬間は、お互いにとって何よりも幸せな時間だった。

 

「・・・・うごくよ?」

 

未来の呼吸に混じって漏れていた、苦悶の声が和らいだのを確信して。

響が耳元で囁けば、未来はまたこっくり頷く。

響は頬に手を添えたまま、上体を起こして。

三分の一ほど引き抜いて。

思い切り、打ち付ける。

 

「――――ッ!」

 

先ほどの男達とは、比べ物にならない快感。

手を握り締め、背中を引っ掻きながら、未来は体を跳ね上げる。

当然だろう。

今未来の体を好き勝手しているのは、他でもない響。

このほの暗い旅路に、躊躇い無く付き合えるくらい恋い慕っている相手だ。

好きでもない有象無象如きと違うのは、当たり前の事実だった。

男達に致された『穢れ』を塗り潰すように、響は最初から強めに腰を振る。

抜くときはややゆっくりと、入れるときは力強く。

腰と腰、肌と肌を何度も打ち付けて、未来の秘所を、自分にのみ許された場所を思うが侭に貪る。

 

「ふあっ、ぁ・・・・はあッ・・・・んん・・・・!」

 

一方の未来は、もはやされるがまま。

響の、そして自分の思うがままに体を捩じらせて、全身で感じ入る。

未来が感じるたび中が蠢き、響の快感へアクセントを加える。

それがまた燃料となって、ピストンを加速させた。

 

「は、は・・・・みくっ・・・・ん、ぐ・・・・!」

「ひび、ひゃっ・・・・!」

 

未来の視界が、ぐるんと反転する。

後ろからまぐわう、獣のような状態になったと気付くのに時間はかからない。

どこか背徳感漂う体勢に、よりいっそう響は加速する。

声を抑えることなんてとっくに忘れた未来は、途切れることなく喘ぎ声を上げる。

響の顔が見えないのは少し不安だったが、同時に安堵もしていた。

だって今の顔は、汗と涙とよだれで、みっともないくらいにぐしゃぐしゃになっているだろうから。

 

「ぁ・・・・あ、でる、でちゃう、みく、みく、みく」

「ひび、ひびっ、ひっ、ぁ、ひびき、ひびき――――」

 

響の性器が、一層の熱を持ったように思う。

中全体を刺激する先ほどまでとは違う、子宮を直接抉られるような感覚。

『発情』する度、まぐわう度に感じた。

ぶちまけられる直前の感覚。

もう見えているのかいないのか、起きているのかいないのか分からなくなった中。

呼吸を繰り返してもなお足りない酸素を求めながら、未来はうわごとのようにねだる。

 

「――――ひびき、かんで?」

 

それが、合図。

今までと打って変わって、思い切り引き抜かれて。

最後の一突きを見舞われる刹那。

振り向いた未来の視界に、大きく口を開けて迫る響が見えて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠くに聞こえる、自分の嬌声。

脳まで満たされたと錯覚するほど白く塗り潰された視界の中。

感じる首筋の痛みには、ただただ幸せを覚えるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車は未だ走り続けている。

物陰から盗み聞きした情報によれば、あと少しで睡眠休憩のために停車するらしい。

降りるタイミングはそこだろうと、腕の中の未来を見下ろしながら考える。

ぐっすり寝入っているのは、わたしに抱きしめられているからかもしれないと、ちょっと自意識過剰なことも考えちゃう。

・・・・・『スケベ』したお陰か、未来のフェロモンは治まったように思う。

匂いを嗅いでみても、何ともならないしね。

なお、当たり前だけど服はちゃんと着せた。

いや、あんなすっぽんぽんのまま寝ちゃったら、風邪引くに決まってるじゃないの。

どっちにしろ未来の格好が薄着であるのに変わりはないから、まずは服を調達しないと。

と、そんな感じで、降りた後の行動計画を練っているところへ、揺れ。

線路にズレか何かがあったのか、一際大きく車両が跳ねた。

 

「――――ん」

 

まあ、起きてしまうのはしょうがないことですよね。

音と揺れに起こされてしまった未来が、うすーく目を開ける。

しばらくそのままぼんやりしていたけど、やがてへにゃっと笑ってくれた。

 

「ひびき」

「おはよ、未来」

 

おでこにちゅーしてあげれば、未来はくすぐったそうに、それでいて嬉しそうにした。

 

「そろそろ止まるみたい、見つからないうちに降りちゃおう」

「うん」

 

ふと、一緒に起き上がった未来は、徐にうなじを触った。

何かを確かめるように撫でると、幸せそうにはにかむ。

・・・・そこって、確か。

 

「夢みたい、『番』になれるなんて」

「・・・・別に。珍しいけど、いないわけじゃないじゃん?」

 

何だか照れくさくなって、思わずそっぽをむいちゃったけど。

未来は特に気にした風もなく、甘えるように抱きついてくるだけだった。

――――『番』。

αとΩの間にのみ生まれる関係性。

性交の最中に、αがΩのうなじを噛む事で成立する。

『番』になるとΩは相手であるαにしか発情しなくなり、無差別にフェロモンを撒き散らすこともなくなる。

今の未来のうなじには、その証である淡いピンク色の、楕円型のアザがあることだろう。

・・・・やばい、照れくさくて直視する度胸がねーや。

けど、まあ。

 

「えへへー、ひーびきー」

 

未来が幸せそうだから、何か、もう。

いいかなって(諦観)

何て現実逃避している間に、聞こえるブレーキの音。

ほどなくして、風を切る音も車輪の音も止まって、当たりが静まり返る。

 

「・・・・止まった、ね」

「そうだね」

 

貨物の状態を確かめるために、乗組員が回ってくることだろう。

その前に離れなきゃいけない。

 

「未来」

「うん」

 

手を差し出して、握り締めて。

周囲を警戒しながら外へ。

森の中だったけど、道路はすぐ目の前にある。

未来の手を引いて、木立に隠れながら町を目指す。

 

「次はどんなところかな」

「雨風凌げてご飯がおいしかったら、何もいらないよ」

「もう、響ったら」

 

小声でそんな他愛の無い話をしながら、夜道を二人きりで走り抜けていく。

・・・・出来ることなら、この手を離したくない。

汚れていると、他より劣っていると知りながら、それでも『番』になって喜んでくれるこの子を。

何に変えても、守って見せるから。

だから、この温もりを握り続けることだけは、どうか。




拙作における、オメガバース関係の独自設定
・α女性の生殖器
Ωを孕ませるときにのみ出現する。
クリトリスが肥大化することで陰茎を形成し、相手に精子を送り込む。
精巣は卵巣の下に位置。
また、男性のそれと違い適正温度は36度前後のため、体内に収まっている。
・『番』の証
αにかまれたΩにのみ現れる。
淡いピンク色をした、楕円形のアザ。
ちなみに日本の法律では、成人を迎えるまで『番』となるのを禁止されている。
そのため、未成年のΩは勝手に『番』にならいよう、また『番』関係を強制されないようにするため、首輪型のコルセットをつけることが推奨されている。
なお、『義務付ける』のではなく『推奨』であるのは、一目でΩと分かってしまうので、差別的扱いを避けるため。



以下、この短編におけるひびみく概要。
立花響
・先祖返りのα。
『チョイワル』本編時空と違って、感覚異常は特に起こっていない。
強いて言うなら、痛覚がちょっと鈍いくらい。
理由としては、中に溜まった聖遺物エネルギーの発散方法があるため。
・エロはビッキーを救う(爆)
・小学生の頃、未来に「『番』になって、他のαから守ってあげる」というプロポーズじみた宣言をしているが。
『よくある子供の世迷言だよね』ということで、本人はすっかり忘れている。

小日向未来
・先祖返りのΩ。
日本を発った日に初めての『発情』を向かえ、同級生に襲われかけたところを響に救われる。
以来『発情』の度に抱かれているため、知らず知らずのうちに響に起こりうる感覚障害を防いでいた。
・包容力+エロでビッキーを救う(爆)
・小学生の頃の響の宣言はしっかり覚えているので、今回『番』になれて嬉しくてたまらない様子。



こんなんでも、暇つぶし程度になればこれ幸い。
ではでは。
お目汚し失礼しましたー。
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