我に返る。
周囲はうめき声で溢れている。
足元を見れば、倒れた人々。
・・・・どれもこれも、覚えのある顔ばかりだった。
「響・・・・!」
耳障りな中、聞こえたかすかな声。
弾かれたように振り向けば、苦しそうに呼吸する幼馴染。
――――『逃げなきゃ』。
直感的に結論付けて、手を差し出す。
と、自分の視界に手をいれたことで、気付いた。
倒れている連中の返り血で、真っ赤になっていた。
ためらいが生まれる。
せめて反対側の手を差し出せばよかったと。
だけど、
「・・・・っ」
未来はその手を、何のためらいも無く握ってくれて。
その温もりが、とても嬉しかった。
ツヴァイウィングのライブを切っ掛けに始まった迫害は、とうとうわたしの親友にまでその毒牙を向けた。
『Ω』という社会的に弱い立場なのをいいことに、未来を好き勝手しようとした同級生を見たとき。
頭が爆発したように熱くなって、視界が真っ赤になって。
気がついたら、あの状態だった。
間違いなく、わたしがやったんだろう。
あの場にいたらどうなるか、分かってもいたし、分からないでもいた。
だから、握ってくれた手を引いて、逃げ出した。
お互いの家だと、すぐに捕まってしまう。
学校も当然ダメだ。
動けない未来を背負って、胸に燻る衝動を必死に堪えて。
安心できる場所を、どうにか一息つける場所を探して彷徨う。
アレもダメ、コレもダメと選り好みしていった結果。
結局たどり着いたのは、街の外れの工場跡の一角に作った『秘密基地』。
鉄骨やトタンが入り組んで出来た、六畳くらいの小さなスペース。
「はぁ・・・・はぁ・・・・ふ・・・・」
「未来、しっかり」
使い古されたソファーの上にそっと寝かせると、未来は未だ辛そうに呼吸をしていた。
じっとり浮かんだ汗からは、誘惑するような甘い臭いが漂ってきて・・・・。
「・・・・っ」
くらっと、欲望が鎌首をもたげそうになって、思わず距離を取った。
・・・・・『発情』は。
生理みたいに、人によって始まる時期が違うって習いはした。
早い人では、今ぐらいから始まるとも。
授業で聞いたときは『ふぅーん』くらいだったし、どっかの誰かはそうなってるかもとしか考えなかった。
本当に『まさか』だよ、未来がそうなるなんて。
・・・・・やばい。
このままだと、わたしが未来を襲いかねない。
ああ、もー。
こういうの何ていうんだっけ?『ミイラ取りが』っていうのはちょっと違う気がするけど。
あかん、頭が上手く回らない。
体が動かないように耐えるだけで精一杯だ。
フェロモン恐るべし・・・・!
「・・・・・ひび、き」
名前を呼ばれて、顔を跳ね上げる。
辛いだろうに、わざわざ体を起こしている未来。
「無理、しないで・・・・・いいから寝てなって」
「けど、ひびき・・・・」
「大丈夫だから」
未来を傷つけないように。
それだけを考えていたら、半ば突き放すような口調になってしまった。
ただでさえごちゃごちゃしている胸の中が、罪悪感でさらに散らかって。
また距離を取ろうとしたとき、縋るように手を捕まれた。
「おねがぃ、このまま・・・・!」
強く握られた手は放れそうに無かったし、放そうとも思わなかった。
泣き出しそうな顔を見ていたら、そうしちゃいけない気がした。
だけどさっきより濃いフェロモンにさらされて、いよいよ意識が朦朧としてくる。
ダメだ、ダメだ、ダメだ。
言い聞かせている間にも、未来の上に覆いかぶさっていた。
潤んだ瞳が、まっすぐわたしを見返している。
・・・・・今のわたしは、どんな顔をしているだろう。
「――――未来、ごめん」
理性を保てなくなったわたしには、到底分からないことだった。
「んっ・・・・」
欲望のまま、唇をがっつく。
始めは何度も啄ばむだけだったけど、段々物足りなくなってきて。
「んむぅ!?ぁ、ふ・・・・・!」
薄く開いた唇に、無理やり舌をねじ込む。
頬の裏、歯茎、舌先。
とにかく思いついた場所を触りまくる。
・・・・そうやって加減知らずに好き勝手していたのがいけなかったんだろう。
「っぐ、ぶ、げほっ!」
「んぶっ!?」
舌先がデリケートな部分まで刺激してしまったらしい。
思いっきり咽た未来は、苦しそうに咳き込んだ。
慌てて離れて未来を抱き上げ、背中をぽんぽん叩く。
ひとしきり咳き込み続けた未来は、しばらく笛みたいな呼吸を繰り返した。
「・・・・ごめん、大丈夫?」
「・・・・っ」
背中をさすりながら聞いてみると、こっくり頷く未来。
服を握り締めた手は、徐々に赤みを取り戻していった。
「・・・・脱がしていい?」
耳元で囁いてみると、またこっくり頷く。
抱きしめている状態からちょっと離れて、夏服のボタンに手をかける。
尤もボタンなんて見せ掛けで、本当はホックなんだけど。
ぷちぷち外していくと、まずまっさらな肌着が。
その下に、紫のちょっと大人っぽいブラが見えた。
・・・・思わず生唾飲んだわたし、悪くない。
『見ないで』と弱々しくはたかれたので、『ごめん』と返しておく。
そのまま服も肌着もとっぱらって、ついでに自分の服も脱ぎ捨てる。
ゆっくりゆっくり横たえれば、肌が触れ合って熱かった。
「ひび、き・・・・」
未だ潤んだ目にねだられて、もう一度キス。
今度は唇はほどほどにして、首元にずれる。
舌で首筋を撫でると、未来が嬌声を押し殺しながら何度も跳ねた。
この辺弱いのかな。
未来の反応を十分楽しんだ後、一旦唇を離す。
視線を降ろせば、ちょっと控えめな胸が見えた。
今までの愛撫が効いているのか、先端はすっかりしこり立っている。
下から持ち上げるように触ると、未来が反応した。
そのまま揉み続けたら、小さく震えだす。
・・・・ちょっと楽しい。
「・・・・ッ」
何て考えているのが顔に出ていたのか、視線に気付いて見てみれば。
真っ赤な顔にいっぱい涙を溢れさせて、こっちを睨む未来と目があった。
調子のりました、サーセンっす。
気を取り直して、先端を口に含んだ。
「ふあぁっ・・・・!」
瞬間、今までにないくらい体が跳ね上がる。
手ごたえを感じながら、開いた片手をもう片方の胸に添えた。
吸って、摘んで、舐めて、弾いて。
このままおっぱい出てきそうとか思いながら、目を閉じて未来の声を聞く。
「ゃ、ぁっ・・・・ふぅあっ・・・・んん、ひ・・・・ひびき、ひびき」
熱に浮かされた吐息で名前を呼ばれて、更に衝動が増した。
「は、あっ、ひび、んっ、ひびき、ひびき、ひびき、ひびき、ひびき、ひゃっ・・・・!」
もっと強く、もっと激しく。
未来の口から、わたしの名前しか出てこないくらいにして。
仕上げに、親指で首筋をなぞって不意打ちすれば。
また未来の体が大きく跳ねた。
改めて未来を見下ろしてみれば。
肌と言う肌を汗ばませて、肩で息をしている。
ふと、視線が降りた。
お腹の下、へそよりももっと下。
望みどおりの変化が起きているだろう、股座へ。
ちょうど割り込んでいた自分の太股をずらすと、濡れているのが見えた。
「――――ッ」
口の中によだれが溢れて、零れそうになったのを何とか飲み込む。
恥ずかしさからか、咄嗟に閉じようとした足を。
左手と右ひざで押さえ込んで、押し広げる。
さらされて見えるようになったそこは、思ったとおりしとどに濡れていた。
――――入れたい。
そんな願望が胸に沸きあがった。
普通の女の子なら泣く泣く指で済ませるだろうけど、わたしはα。
思い出して、目を自分の股に向けて。
「――――!?」
・・・・情けないのは自覚しているんだけど。
でも驚く他無かった。
いや、だって、こんな。
えぇ・・・・(困惑)
こ、こんな大きくなるもんなん?
ぶっちゃけ、えっぐい。
・・・・えっぐい、けど。
これを奥までぶち込んで、中をぐちゃぐちゃにしたなら。
未来は、わたしのことしか考えられなくなるのかな、なんて。
「ひっ、や、ゃだ、待・・・・!」
考えるよりも先に、体が動いてしまっていた。
気付けばその先端を宛がって、腰を落とし始めていて。
「~~~~~ッ!!?」
感じたことの無い感触が、背筋を一気に駆け上がる。
熱くて、柔らかくて、気持ちよくて。
「ぃ、っ、あ・・・・はぁぐ、ううぅぅ・・・・!」
一方で。
どうにか残っている冷静な部分が、歯を食いしばっている未来に気付く。
やっぱり痛いのかな、怖いのかな。
優しくしなきゃ、痛くならないようにしなきゃ。
頭ではいくらでも思うことが出来るのに、体が言うことを聞いてくれない。
わたしの心と裏腹に、ぐいぐい進んでいく。
熱さと柔らかさが更に刺激してきて、背筋の電流が激しくなる。
結局、終盤には我慢できなくなって。
思い切り、突き入れて。
「ふゎああああああ!」
「ああああっはあああああ!」
――――一瞬、トんだ。
何が起こったと混乱する頭で感じるのは、未来の中にぶちまけた感覚。
あまりの気持ちよさに、またトびそうになる意識を何とか繋ぎとめながら。
未来を見てみる。
「あっ・・・・ぁ・・・・っ・・・・ぅぁ・・・・!」
わずかに体を反らしたまま、びくびく震えていた。
・・・・これ、あれか。
もしかしなくても暴発か。
うわ、うっわ。
わああああー・・・・。
何か、あれだね。
敗北感半端ないね・・・・!
「みく、だいじょうぶ?」
自分への情けなさのお陰で、少し冷静になれた。
頭を撫でながら聞いてみると、何度も繰り返して頷く未来。
わたしの首に縋りついた未来は、しばらく震えていた。
けど、呼吸が落ち着いてきた頃、変化が起きる。
未来の中が蠢いて、刺激を与えてきた。
まるで催促されているみたいだ。
顔を上げると、涙を浮かべた瞳と視線がかち合う。
「・・・・うごいても、いい?」
一応確認を取ってみる。
いよいよもってとろけてきた頭で出来る気遣いなんて、それくらいが限界で。
それに対して、未来は、
「・・・・ん」
強く目を瞑った上で、またはっきり頷いて。
・・・・・最後のタガが、外れる音がした。
未来の腰を掴んで、抜ける寸前まで思い切り引き抜く。
そしてすぐさま、腰を打ちつけた。
先端の『返し』に『中』が纏わりついて、生じた強い快感がまた背筋をなぞる。
さっきほどじゃないけれど、数を重ねる分どんどん大きくなっていく。
遠慮なんて最初っからかなぐり捨ててしまった。
今はもう、未来のことしか考えられない。
「っぁ、は、ん、ああっ、ふあ、ゃあっ・・・・!」
未来もそれは同じらしい。
体を仰け反らせて、両手の指先が真っ白になるほどソファの生地を握り締めて。
それでも目線は、わたしに釘付けで。
わたししか、見ていなくて。
「ぐうぅ・・・・!」
「ああああああ!」
それがまた、ピストンを加速させた。
・・・・ああ。
未来、未来、未来、未来。
痛いだろうに、怖いだろうに。
強く拒絶しないのは、信頼してくれているだからだろうかと。
都合よく解釈してしまうことに。
「ぐ、っぁ、はあ・・・・は・・・・!」
「あ、あ、あ、あ、あっ、ん、っく、ふあ・・・・!」
また一段階加速する。
視界が何度も白く点滅する。
『結合部』の重たい水音はいやらしさを増して、間隔が短くなる。
気持ちいい、気持ちいい。
わたしは今、他でもない未来を。
この子の全てを、抱いている。
「ぁ、くる、またくる、きちゃう、でちゃう、みく、みく、みく、みく、みく」
「っは、あ、んぁ、ふああ!ぁ、あ、あ、ひぃう、っん、ふ、ひび、き、ぁ、ひびき、ひびき」
もう何も見えない。
他の音は聞こえない。
未来の温もりと音しか、感じない。
あ、また。
また、トぶ。
「「あああああああああああああっ!!!!」」
今度は、はっきり感じた。
わたしの『種』が、あったかい未来の中へ、節操なしに吐き出される。
「ふううううううう・・・・!」
全部受け取って欲しくて、全部受け止めて欲しくて。
また何度か打ち付けて、最後の一滴まで搾り出す。
根元までがっつり入れ込んで、吐き出した精子が漏れないようにしたけれども。
やっぱり入りきらなかった分は、結合部からいくらか垂れていた。
「っぶ、は・・・・!」
「あっ、はあ、はあ、はあ、は・・・・ん、ぐ・・・・はああああ・・・・!」
いつの間にか止めていた息を再開する。
未来もまた、短く呼吸を繰り返して、最後に大きく吐き出していた。
「み、く・・・・」
「ぅん、ひびき」
名前を呼び合う。
自然と唇同士を重ねていた。
また舌を絡めあう。
今度はさっきみたいな失敗はしなかった。
銀の糸を紡いで、しばらく互いを見詰め合って。
「――――すきよ」
ふと、未来は。
そんな言葉を、ぽつっと漏らした。
「αだとか、『こういうこと』とか、関係ないの」
腕が首元に回ってきて、強く抱きつかれる。
「優しくて、あったかくて、かっこよくて、ちょっと臆病なとこがある。
腕はそのまま、顔だけが離れて。
未来に見つめられる。
「響は?響は、どうなの?」
潤んだ瞳に問いかけられて、少し悩んでしまったけれども。
「・・・・わたしも、好きだよ」
わたしの答えは、分かりきっていて。
「こうやって抱き合ってくれて、一緒にいるとほっとする。
体を起こして、未来を抱き上げる。
宝物を守るように、抱きしめる。
「・・・・両想いだね」
「うん、そうだね」
何だかおかしくて、だけど嬉しくて。
どちらともなく、笑い始める。
追われる身であることを忘れて、幸せを噛み締める。
人間性とか、恋した相手とか、色々突っ込みどころ満載な、『まとも』じゃない関係だけど。
愛されるということが、大好きな人に『大好き』って言ってもらえることが。
今はただただ、嬉しくて。
◆ ◆ ◆
時間は流れる。
月日は過ぎる。
流れる年月は、少女達を大人へと成長させた。
「――――おお、まだ残ってるよ」
「ほんとだ、すごい」
重ねた月日により、さらに廃れた工場跡。
鉄骨やトタンを潜り抜けた彼女達は、十年ぶりの『秘密基地』に感嘆の声を上げる。
「懐かしいなぁ、ここでよく天体観測してたよね」
「うん、それでそのまま寝ちゃって、お父さん達に怒られたり」
「ああ、あったあった」
思い出を語り合い、二人はくすくす笑う。
「・・・・いやぁ、本当に」
ふと、一方が視線を滑らせた。
その先には、あの古ぼけたソファ。
「懐かし、っだ!」
何やら意味ありげに語りかけた頭を、相方は思いっきりはたいた。
「・・・・何思い出してるの、ばか」
「あはは、ゴメンって」
「もう」
言葉では呆れているものの、本気で怒っているわけではないらしい。
改めて見渡してみる。
記憶にあるよりも、錆や埃は多いものの。
二人を感傷に浸らせるには、十分すぎる保存状態だった。
「もう十年かぁ・・・・色々あったね」
「うん、色々あった」
本当に『色々』なことが、彼女達の周囲で起こった。
出来事の一つ一つに笑ったり泣いたり、怒ったり驚いたり。
それでも繋いだ手は決して放さなかった。
その手をしっかり握り合って、乗り越えてきた。
『遠く』までやってきた二人にとって。
『出発点』であるここには、人一倍の思い入れがある。
「――――未来」
「うん?」
だからこそ、彼女は『それ』を伝える場所に選んだ。
「――――わたし、立花響は、これからもあなたの傍にいます」
「・・・・うん」
少し改まってみれば、こっくり頷かれる。
「危なっかしくて、はらはらさせちゃうこともあるけれど」
右手を取って、薬指にはまっていた指輪を抜き取る。
かつて、『ロシアでは右につけるらしいよ?』とのたまって渡したそれを。
今度こそ、左手へ。
「必ず、あなたを守ります」
「・・・・はい」
ちょっと気取って、指輪にキスを送れば。
相方は顔を赤らめて、照れくさそうにはにかんでくれた。
束の間笑いあった後、目が閉じられる。
その意味を読み取った彼女は、同じように目を閉じて。
唇を、重ね合わせた。
「・・・・ふふ」
「えへへ」
額同士を重ねて、また笑いあう。
吹き抜ける風は、まるで祝福してくれているようだった。
これで一区切りです。
打ち止めったら、打ち止めッ!!!(