タイトル通りです。
正直やっちまった感が半端ない内容となっております。
『そんな一家』
――――意識が浮上する。
目蓋を僅かに開けると、朝の光が痛かった。
正直、眠い。
まだ眠っていたい。
幸い今日は休日、お昼まで惰眠を貪っても問題ない。
そう結論付けて、布団をかぶりなおした。
と、
「――――あーあ、案の定」
聞こえた声。
燻っていた昔の癖で、一瞬警戒しそうになるが。
すぐに知っている声だと頭が理解したため、ただちにリラックス。
何せ激務が当たり前の中の、久しぶりの休日。
もうちょっとくらい許して欲しいものだ。
「おとーさんおきないね」
「てか起きんの?これ」
「ぐっすりだねぇ」
他の声も知っているものなので、スルー。
とにかく眠ることに集中する。
(――――あれ?)
ここまで考えたところで、ふと何かを思い出しかけた。
確か、そう。
ベッドのすぐ傍にいる彼らと、何か会話した記憶が・・・・。
寝ぼけた頭をどうにか動かして、記憶をまさぐって。
(いつだっけ、次帰ってきたときに・・・・ええっと、そう、みんなで・・・・)
頭に蘇った光景。
幼い小指とした、指きりげんまんを想起して、
(っそーだ、今日!!)
しかし、気付いたときにはもう遅く。
「
「げうぅっ!?」
起き上がろうと仰向けになった胴体に、衝撃。
目から星が飛んで、頭がくらくらする。
「二番
「さんばん
「ごふっ!ぐえっ!」
続いて、二つ、三つとのしかかってくる重み。
「とどめの四番おかーさーん♪」
「んにゃああああああ!起きる!起きるからっ!四人いっぺんは重いってええええええ!」
最後に『伴侶』にまでのしかかられたとあっては、起床せざるを得なかった。
どうにかどいてもらい、タックルをかまされた腹をさすりつつ起きれば。
にこにこ顔で見てくる三人の子ども達と、長年連れ添った『伴侶』。
「父さんおはよー」
「さすがに起きたね」
「おとーさん、おでかけ!すいぞくかん!」
「あー、はいはい・・・・そうだったねぇ」
やや興奮気味な末っ子の頭を撫でてから、『着替えるから』と早々に追い出す。
「響」
「んー?」
やや静かになった部屋で、名前を呼ぶ声。
まだ何か用があるのか、『伴侶』が居残っていた。
『どうしたの?』と聞く前に、頬へ唇を寄せられる。
「おはよう」
「・・・・おはよ、未来」
お返しに、額へキスを送った。
『立花
立花家の第一子にして長女。
容姿は母に似たが、中身は天真爛漫。
立花家のみならず、装者達の次世代の中でも『お姉さん』的立ち位置にいるしっかりものだ。
そんな彼女は、夕食後の団欒タイムにて。
ふと思い立ったように口を開いたのだった。
「そういえば、あたしの名前ってどっちがつけたの?」
「どうしたの?急に」
紅茶を飲みながら雑誌を読んでいた母が、首を傾げて問いかければ。
奏幸はちょっと行儀悪く、座っていたソファに寝転がる形で振り向いた。
「いやぁ、友達に言われたんだけど、字が変わってるねって」
それでふと気になったのだろう。
動機に納得した母は、一度雑誌を読む手を止めた。
「で、どっちのセンス?」
「ううん、わたしでもお父さんでもなくて、翼さんだよ」
「え、翼さん!?」
その名前を聞いた瞬間、奏幸はがばっと身を起こした。
無理も無い。
将来歌手を志している身としては、真っ先に目標として上がる名前なのだから。
「ほら、ルナアタックのすぐ後にあなたが生まれた話はしたじゃない?」
「うん、てんてこまいだったって聞いた」
寝物語に何度か聞かされた話だったので、知ってはいる。
ルナアタック直後の謹慎期間中、母の陣痛が始まって大騒ぎして。
無事産まれたときは、その場の全員が感極まって万歳三唱したとか、なんとか。
元々機密保持の為重要な部分はぼかされていたが、概要はそうだったはずだ。
「それで、わたしもお父さんも忙しくて、それまで名前考えるのをすっかり忘れちゃっててね」
「おーい!こらこらこらー!」
「ごめんって」
当時の両親のあんまりな失態へ、ツッコミを入れながらも続きを促す。
「そしたら、翼さんが『つけてもいいだろうか?』って、決めてくれたの」
「へぇ、でも何でそんなタイミング良く?」
「妊娠してたわたしに触発されて、『子どもが産まれたら何てつけようかな』って考えてたみたい」
感嘆の声をあげた奏幸は、またふと気付いた。
「それじゃあ、『奏』って入っているのは・・・・?」
「多分、考えているとおりでいいんじゃないかな」
名付け親たる翼にとって、『奏』という文字に思い入れがあるのは容易に想像がつく。
そして、その字が入っている自らの名前にも。
「なんだか大層な名前もらっちゃったなぁ」
「もっと頑張らなきゃいけなくなったね」
「あはは、うん」
将来へ向け気合を入れ直す娘を、母はただ優しく見守っていた。
『立花
立花家第二子で長男、愛称は『ミツ』。
どちらかというと母似の大人しい性格だが、時折父を髣髴させるやんちゃを発揮することがある。
「とーさんの仕事って、結局何?」
ある日の午後。
宿題らしきプリントを手に、至極素朴な疑問を父にぶつけたのだった。
珍しく起きていた父は、読んでいた本から目を離してきょとんとする。
「急にどうしたのさ?宿題?」
「うん、親の仕事を調べろって」
「んー、そっかぁ」
てけてけ歩いて隣に座り、鉛筆を構えて父を見上げる。
「で、何なの?国連の、『ソング』の人って以外何も知らないから」
じっと見上げてくる息子の視線に、少し難しい顔をして考える父。
母から『秘密にしなきゃいけないことが多い』とは聞いていたものの、やはり人に聞かれてはっきり答えられないもやもやはあった。
それが解消されるかもしれない期待を込めて、見つめ続ける。
やがて、父はゆっくり口を開いた。
「端的に言うなら、『インディ・ジョーンズ』かなぁ」
「いんでぃ・・・・?」
「うわ古っ、何十年前の映画?」
父の答えに首をかしげていると、聞き耳を立てていたらしい奏幸が身を乗り出してきた。
道則にはとんと心当たりが無い名前は、どうやら映画のタイトルらしい。
「えーっと、まずね。S.O.N.G.は公表されているとおり、聖遺物なんかを始めとした、異端技術を扱ってるんだけど」
「うん」
「その中に、なんていうか、人に持たせたらやばいやつとかあるわけよ」
「やばいって、例えば?」
『例えば・・・・』と、父はまた考えて、
「例えば、そうだね・・・・無限にお金が出るお財布があったとするでしょ?それ聞いて、ミツはどう思う?」
「んー、やっぱり欲しいとか思う」
「でしょ?ミツが思ったことを、たくさんの人が思うわけ。で、その人達がそれを手に入れようと、一斉にあれこれ争い始めたら?」
「・・・・戦争、とか」
単純かと思って口にした言葉は、あっていたようだ。
言葉のこともあってか、父は少し困った笑顔で頷く。
「まあ、例えに出したお財布に限らず、異端技術って危ないものが多いからね。普通の人ならともかく、悪い奴なんかに渡ったら大変なんだよ」
「それをムービースターよろしく掻っ攫うのが、父さんの仕事と」
「大雑把にいうとねー」
奏幸も初めて聞く話だったのか、興味津々だったらしい。
聞いた話では、『インディ・ジョーンズ』とは映画のタイトルであり。
考古学者の主人公がオーパーツなどを求めて、原住民と追いかけっこしたり、悪人と対決したりする冒険活劇らしい。
父の仕事に関する説明を聞いた今では、納得の行く例えだった。
「おれも、次から『いんでぃ・じょーんず』って答えていい?」
「いいよー」
見上げてくる息子の頭を、父はやや乱暴に撫で回した。
『立花
立花家の末っ子で次男。
引っ込み思案で人見知り気味、出かけるときは大抵家族や友人の後ろに隠れている。
両親共通の友人をして、『あのバカからこいつが生まれたとは思えない、いい意味で』と言わしめる。
そんな彼の、最近のマイブームは。
「・・・・」
こそこそっと、二階へ上がって。
目的地である奥から一つ手前の部屋へ。
音に気をつけながらドアを開けると、薄暗い部屋が出迎える。
時計の音が筋かに響く中、カーテンから差し込む光がぼんやり中を照らしていて。
その中ほどに目をやれば、案の定膨らんだベッド。
足音を忍ばせながら覗き込んでみると、つい先日外国から帰ってきた父が。
枕に顔を半分埋めて、ぐっすり眠っていた。
「ょ、っと・・・・」
さて、ここからが本番。
寝ている父を起こさないように、極力気をつけながらベッドへよじ登る。
登りきったところで、一旦起こしていないか確かめてから。
ゆっくり毛布を捲って、潜り込んだ。
「んー・・・・」
「ゎわ・・・・!」
ここで唸り声を上げた父がもぞもぞ動き、一瞬起こしてしまったかと身を強張らせた。
幸い起きたわけではなかったが、代わりに腕が回ってきて、しっかり抱きとめられてしまう。
これでは動けなくなってしまうものの、鼓助本人からすればむしろ役得だった。
最近のマイブームとは、父のベッドに潜り込むこと。
基本海外を飛び回っている父は、帰ってきても寝ていることが多い。
それだけ仕事が大変なんだと、母や姉、兄は言っていたが、それでも物足りない部分があって。
だからその寂しさを紛らわせるために、たまにこうやって寝ている父の懐へ入るのだった。
もっとも、何だか恥ずかしいので公然と言えない楽しみではあるのだが。
「えへへ・・・・」
母とはまた違った、頼れる温もり。
起きているときは一緒に本を読んでくれる優しい父が、大好きだった。
父の呼吸を頭上に感じながら、やってきた眠気に身を任せる。
「――――鼓助?」
それから少しして、姿の見えない末っ子を探す母が部屋を訪れた。
そっとベッドを覗き込むと、起きていた父と目が合う。
母を見上げた父は、口元に指を当てた。
「あら」
控えめにまくられた毛布を覗き込んでみれば、すやすや眠る末っ子が。
父のパジャマを握る手は、簡単に離れそうにない。
「もーちょっとだけ」
「ふふ、そうね」
両親ともに、深く寝入る我が子を見守って。
起こさないよう、小さく笑いあった。
というわけで、所詮後日談のようなものでした。
もろもろのツッコミは勘弁してつかぁさい・・・・!(