【R18】レズビアンの私が異世界転生したから学園百合をしようと思う 作:碧風樹
王女として転生してきて不満なことが一つだけある。それは、食事が美味しくないことだ。
まず第一に食材が少ない。農業が未発達なせいで、農民も自分たちが食べる食物しか作れない。つまり商品食物となるような農産物はほとんど存在しない。
第二に、同様の理由から油の取れる菜種や、砂糖が取れる甜菜がない。したがって揚げ物料理や甘い料理が極端なほどにない。ケーキやお菓子は王侯貴族だからこそ許される贅沢品だ。ついでに言えば香辛料も極端に少ないので味の幅も狭い。
第三に、王族なので、暗殺防止上の理由から毒味をされて冷えた料理しか出てこない。
それでも庶民に比べればマシな方なのだけども、食事に楽しみが見いだせない。前世で盲腸になって入院していた頃の病院の食事のほうが美味しかったように思える。
更に問題なのは、私に農業の知識がないから農業改革ができないことだ。何かWikipediaのようなチート能力でもあればよかったのに。
【食事はどうか? といえば、私が王族だけあって、日本食に飢えるほどには不自由していない】などと設定には書いたが、それも庶民に比べれば、というレベルでしか無いのだ。大事なことなので二度書きました。
愚痴終了。
東方の方は辺境伯がうまく凌いでくれたようで、東方の騎馬王国は奇襲に失敗して手酷くやられたようである。辺境伯の娘アンリエッタは、学校が始まると私の銀牙騎士団とともにやってきた。アンリエッタは辺境伯からの書状を携えていて、そこには私への感謝の言葉と、幾人かの銀牙騎士団の騎士を引き抜きたい旨の頼みごとが書かれてあった。
私はリストアップされていた騎士当人たちを呼びつけて意向を問うと、皆が引き抜きに応じたいとのことだった。なので手ずから書状をしたため、辺境伯への返事として持たせて東方に送り出した。
教会学園が始まる前の夜会。私は一つのワガママを言った。
「温かいスープが飲みたいわ!」
と。
「肉と野菜をたくさん入れて、トロトロになるまで煮込んだ、温かいスープが飲みたいの。毎日とは言わないわ。せめて夜会のときだけでもなんとかならないかしら」
家令と料理長を呼びつけて命ずる。流石に難色を示したものの、二人に一ヶ月分の俸給に相当する金貨を与え、重ねて
「わたくしの私的な部下に監視と毒味をさせるわ。料理長を信頼していないわけじゃないけど一応ね。あと、他の料理人にもちゃんとご褒美をあげるから、美味しいスープと焼きたてのパンを私達に食べさせてね」
こうして買収された料理人たちは、いつにもない高いモチベーションで見事なスープを作ってくれた。
「まあ、暖かなスープなんて素敵!」
パラディース侯爵家のマリアが、出されたスープを見て感激する。
「そうだね、温かい料理をたべられるなんて、素晴らしいですリリィ様」
「特別に無理を言って作ってもらったのよ。皆様もいつも冷たい食事ばかりで辟易していたでしょうから」
スティーグリッツ侯爵家のカサンドラの言葉に、私はそう返す。すると、ハーゼ辺境伯家のアンリエッタがこう言った。
「私は騎士の野営訓練のときに何度かご相伴に預かりましたけど、やはり普段は冷めた料理ばかりですわね」
「あら、羨ましいですわアンリエッタ様。わたくしも真似をしてみましょうかしら」
正直その手があったかと、感心してしまった。騎士団の訓練を見るときに食べれないか試してみよう。
「ローヴァイン家では街の視察の折に、引退した元料理長が趣味で開いているお店で時々食べるくらいだけど、今日のはそちらのよりも美味しそうだわ、リリィ」
「まあ、ヘレン姉さまったら羨ましいですわ。残念ながらそちらの方法は真似できませんわね」
「冷めないうちに、食べましょう……」
おしゃべりを楽しんでいたら、ルナリア姉さまがツッコミを入れてきた。たしかにそうだ。ということで食前の祈りを捧げたあと、早速料理に手を付ける。
おいしい。という言葉が皆の口から溢れる。肉も野菜もとろけるまで長時間煮込んだだけあって、素材の味がしっかりとスープに溶け込んでいて、この世界に転生して以来一番の美味しさだった。
「これは、料理人をしっかりと褒めてあげないとダメですわね」
「では姫様、私が後で厨房に託けておきましょうか?」
私の言葉に、アメリアがスープを飲む手を止めて尋ねてくる。
「いえ、私が直々に褒めるわ。感謝の言葉も送らないといけないもの」
「申し訳ありません、出過ぎた真似を致しました」
アメリアが謝罪するが、ここは飴を与えておくべきだろう。そう判断して言葉を選ぶ。
「いいえ、謝る必要など無いわ。わたくしの気持ちを汲んでくれたのでしょう? ありがとう、アメリア」
御礼の言葉とともに、笑顔を送る。
「は、はい。ありがとうございます、姫様」
アメリアは耳まで真っ赤にして頭を下げた。可愛いったらありゃしない。
「そういえばアメリア様も侯爵家の令嬢ですのに、なぜ侍女をなさっておいでなのですか?」
そうアメリアに尋ねたのはマリア。
「私は六人兄弟の末っ子ですので、嫁ぎ先が決まるまで奉公に出よと父に命じられたのです」
「なるほど、そうでしたのね」
素直に感心するマリアだが、正直それだけではなく人質の意味もあるのだろう。 アメリアの実家であるレルゲン侯爵家は王家との仲が正直よろしくない。だから失っても一番惜しくない末っ子を、保険のために人質として王宮で働かせているのだろう。スパイの線は、おそらくない。が、王宮雀共の囀りは何かと騒がしいので、噂の中から情報をつかむことはあるかもしれない。
そんなことより百合がしたい。この美少女たちと百合百合したい。何か良い話題はないものだろうか。と思って脳内検索していたら出てきたのは三国志の桃園の誓いだった。あの有名な義兄弟の誓い。そしてここは、寺子屋レベルとは言え女学園。
女学園と言えば姉妹制度。つまりここで義姉妹の誓いをすれば良いのではないだろうか?
すいません、百合成分に植えててこの時は暴走してたんです。だから私は素直に口走ってしまいました。
「皆様、一つ提案があるのですがよろしいでしょうか?」
食事中の皆に尋ねると好奇心に満ちた視線と返事が帰ってくる。
「こうして集ったのも
「素敵ですわ!」
「いいね!」
「とても良いと思います」
「リリィったら、面白いことを考えるのね」
「素晴らしいお考えです、姫様」
「おもし、ろい……」
それぞれマリア、カサンドラ、アンリエッタ、ヘレン、アメリア、ルナリア姉さまの答えだ。
「お茶を持ってきて。なるべくぬるい物を」
使用人に命令し、お茶を持ってこさせる。桃園の誓いなら酒を酌み交わす所だけど、私達はまだ未成年。したがって代用品としての温めのお茶である。
「では皆様、わたくしが『この絆は永遠に断たれることなし』と申しましたならば、永遠に断たれることなしとご唱和いただき、このお茶を飲み干してくださいな。それを誓いの儀式としましょう」
了解の返事が帰ってきたので、私は早速口上を述べる。
「我等、生まれや姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは、心を同じくして助け合い、たとえ死が我等を別つとも、この絆は永遠に断たれることなし」
『永遠に断たれることなし!!』
全員で唱和してお茶を飲み干す。それだけでテンションが上って、みんながキャーキャー騒ぎ出す。
こうして、私たちは姉妹の誓いを交わした。これで百合百合する下準備が一つ整ったわけである。後は地道に好感度を上げていってフラグを立ててイベントを起こすだけだ。
ちなみに、姉さまがこの学園の影のボスとして君臨し、マリア、カサンドラ、アンリエッタ、ヘレン、アメリアの5人が将来の腹心の友となるのだった。
異世界転生だけどチートはない