【R18】レズビアンの私が異世界転生したから学園百合をしようと思う 作:碧風樹
私の名前はリリィ・マンダリン(10)。マンダリン王国の第二王女だ。その実本体は橘百合という地球からの転生者である。
つい先日、ハーゼ辺境伯の騎士団で、訓練中に重症を負った騎士を現代知識の一端を利用して治療してからというもの、天使やら聖女やらという扱いを受け、更にはハーゼ家から治療法についての技術を教えて欲しいなどという依頼が舞い込んだのであった。
「さて、どうしたものかしら……」
怪我の治療や病気の治療。クリミアの天使ことナイチンゲールの例を考えても、一に清潔二に清潔である。掃除を行い、消毒し、換気をして新鮮な空気を取り入れ、寝具や衣類、包帯やガーゼを、医療器具を清潔に保つ。この世界の技術レベル的にワクチンや血清には手を出せない以上、できるのは清潔を保ち、殺菌・消毒し、感染を防ぐこと。
幸いなことにこの世界には木炭の灰汁から作られた石鹸がある。ローマ的風呂文化のおかげである。上下水道も整備され、文明が後退した中世暗黒ヨーロッパに比べればマシな方だと思う。
「まずはアレね。手洗い、うがい、消毒」
はじめの一歩。何をするにも大事な基本。とりあえず口伝だと面倒なので、書いて記すことにした。羊皮紙と羽ペンで、うがいをし、石鹸で手を洗ったあと、アルコールで消毒するように。と書いた。
そして、清潔を保つこと。アルコール消毒と煮沸消毒。手袋とマスクを図で描き示し、着用と使用後の焼却処分を徹底させる。鎧の籠手と甲の口当て部分を例とし、参考になるようにした。
と、ここまでで集中力が途切れてしまう。女の子が欲しい。そこで私は割り当てられた客間に備え付けられている鈴を鳴らしてメイドを呼ぶと、辺境伯爵家令嬢のアンリエッタを呼んでくるように命令した。
「お茶の用意もお願いね。アンリエッタ様にはお茶がしたいとお伝えして」
「はい、かしこまりました」
アンリエッタは同い年で、私より数ヶ月年下の貴族令嬢だ。ブルネットの髪と黒曜石のような瞳を持ち、辺境伯という武門の家の出身なのに、儚げな印象を持つお姫様だった。
「リリィ様、お呼びですか?」
そう言って入ってきたのは一人の天使。アンリエッタ・ハーゼ辺境伯令嬢だった。
「お待ちしておりましたわ、アンリエッタ様。何しろこうして机に向かい合うのは家庭教師の先生以来なのです。しばらくは離れられるかと思いましたのに……」
「申し訳ありませんわリリィ様。何しろうちの騎士がリリィ様の手当のお陰で腕を失わなくてすみましたものですから」
「そうよね。私が悪いのよね」
「いえ、リリィ様が悪いなんてありえませんわ! あれからもリリィ様のおかげでどれほどの騎士が助かったか……!」
アンリエッタが目を輝かせながら言う。なんとアンリエッタは私の両手をガシィッと握ってきた。
「そ、そうかしら。でも酒で消毒することくらいしか教えていないわよ?」
「それでも! 騎士が腕を切断することがなくなったのですから奇跡のようなものですわ!!」
目を輝かせながらアンリエッタが言う。ちょっと……怖いわ。
「そ、そう……それよりアンリエッタ、私、疲れたの。あなたの膝を貸してくださらないかしら?」
「え、ええ。よろしいですけれど」
同意を得た途端、私はアンリエッタの膝に頭を横たえた。いわゆる膝枕だ。
「リ、リリィ様?」
「なに?」
「これは、一体……」
「あなたのお父様のお依頼ごとで疲れたので、あなたに癒やしてもらおうと思ってこうしたの。気に食わないかしら?」
「い、いえ、むしろ光栄な事です。でも、このようなことでよろしいのでしょうか?」
「私が良いと言っているのだから良いのよ。少し、このまま膝を貸してちょうだい」
「はい、リリィ様」
アンリエッタは頷くと、なんだか落ち着いたような返事をした。
「ねえ、アンリエッタ」
「なんですか? リリィ様」
「私あなたのことをよく知らないのよ。王家と比較的仲が良い家だからと娘のあなたを学校に呼んだけど、あなた自身のことはよく知らないのよね」
「それならば私もですわ、リリィ様。何やら学校にと呼ばれましたけど、リリィ様のことも他のお嬢様のこともよく存じているわけではありません」
「そうよね。そうなのよね。だからアンリエッタ、貴女のことを教えてくださらないかしら?」
「わ、私のことをですか?」
「ええ、そうよ。私、貴女のことをもっとよく知りたいの」
「わかりました……」
アンリエッタは教えてくれた。上に三人兄がいて、三人とも騎士になっていること。アンリエッタは末っ子として愛され、甘やかされて育ってきたこと。それぞれの兄を
ふと気がつけば、アンリエッタが私の頭を撫でている。
「アンリエッタ……」
「何でしょう、リリィ様?」
「私の頭はそんなに気持ちいかしら?」
「あっ! 私としたことが、つい無意識に。申し訳ありません、リリィ様!」
そう言って謝るアンリエッタがなんだかおかしくて、私はすべてを許してしまった。
「良いのよ、アンリエッタ。もっと続けてちょうだい? 私も気持ち良いわ」
「はい、リリィ様」
こうして、私はアンリエッタの膝に頭をあずけながら、撫でられることを続けるのだった。
そしてふと、私は自分が書いたものをアンリエッタに見せることにした。
「ええと、リリィ様……要するに強いお酒や熱湯で、病を介するものを除けばよいということなのでしょうか?」
「そう! その通りよアンリエッタ!! あなたの理解が早くて助かるわ! あとは換気と日光を入れること! あとは徹底的に掃除をして部屋を綺麗にすること! それが大事なのよ!!」
思わず私はアンリエッタの膝から飛び起きて、彼女に身を寄せて熱弁していた。
「わかりましたリリィ様! それと、その……近いです……」
ふと気がつくと私と彼女は口づけができそうなほどに近づいていた。
「そうね、ごめんなさい」
だから私は彼女のほっぺにチューをして、それから離れたのだ。
とは言え、アンリエッタはそれだけで全身を真っ赤にしていた。
(まあ、こういった戯れも、女児ゆえの醍醐味よね)
私はそう考えながら、アンリエッタに次は何を言おうかと考えるのだった。