※この作品はR-18です。

ベル・クラネルがモテ過ぎるのは間違っているだろうか   作:ぽちょむきん

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お久しぶりです。

短い上に、ほぼ原作通りですが宜しければどうぞ


6章「理由(リリルカ・アーデ)」
交錯する疑心


********とある教会~『ヘスティア・ファミリア』ホーム~********

 

 

 

「うぅっぐす、ぅううう、また、また逃げちゃった……」

 

 

 

朝の日差しと、ベル君のすすり泣く声で目が覚めた。

 

身体を起こして、彼の寝床であるソファを見ると、布団に包まって丸くなっているベル君が居た。

 

 

 

「はぁふ、……」

 

「僕の、ぼくの馬鹿ばがぁああああ……」

 

 

 

朝っぱらからベル君が泣きじゃくっている。

 

ボクはやれやれとベッドから起き上がり、目をこすりながら彼の元へ歩み寄った。

 

 

 

「なんだい、ベル君……悪い夢でも見たのかい?」

 

 

 

子兎のように震えて泣いているベル君を怪訝に思い、ふとテーブルを見ると見覚えのある物があった。

 

それは、昨日ベル君が寝落ちしてしまうまで読み耽っていたという本だ。

 

 

 

「昨日読んでたこの本のせいじゃないか?……――っ!?」

 

 

 

だがその本を手に取った瞬間、ボクは驚愕してしまう。

 

それはベル君がおいそれと持ち込めるような品物では無かったからだ。

 

まさかと思い中身をパラパラと捲るが、ボクの嫌な予感は的中していた。

 

 

 

間違いない、これは魔導書(グリモア)だ。

 

 

 

読むだけで魔法が発現する超一級品で、下手するとヘファイストスのところの装備以上の値が付くだろう。

 

どこで手に入れたのか聞いたら、酒場にあった誰かの忘れ物なのだそうだ。

 

ボクはその話に思わず天を仰いだ。

 

そのようなことが、ある筈がない。

 

 

 

魔導書は高級品で、一度読むと白紙となって効果を無くす。その事実を伝えたら、ベル君はようやく事の重大さに気付き、慌てふためいた。

 

真っ青を通り越して真っ白だ。ボクは彼を安心させるために、一肌脱ぐことにする。

 

 

 

「良いかい、ベル君。キミはこの本を読んでいない。そういう事にするんだ」

 

 

 

そう、これは不幸な事故。

 

巻き込まれたベル君も、忘れたとかいう『誰か』も、アンラッキーな事故ということにしようじゃないか。

 

 

 

「後はボクがなんとかする。任せておきたまえっ」

 

 

 

親指を立てて彼にニカッと笑う。さて、この紙束はどこぞの湖にでも捨ててこよう。

 

 

 

「……っ、だ、駄目ですってば神様!!」

 

「止めるな、ベル君!」

 

 

 

階段を上がる所で、後ろから再起動したベル君から物理的に引き留められる。

 

ベル君は素直で優しい子だから、罪悪感で潰されそうなのだろう。

 

 

 

「下界には、綺麗事では済まない事が沢山あるんだ!」

 

「こんな時に名言生まないで下さいい!!」

 

 

 

結局ベル君が使ってしまった魔導書については、素直にお店の女主人とやらに謝罪するのだそうだ。

 

まったく、ベル君のそういうところが大好きだぞ!

 

 

 

 

 

 

********迷宮都市オラリオ~西メインストリート『豊穣の女主人』~********

 

 

 

 

 

 

「すいません、すいませんっすいません!すいません!!!」

 

 

 

あの後【豊穣の女主人】の店主であるミアさんに、白紙の本となった魔導書を持って謝罪に来た。

 

とてもじゃないが僕の稼ぎでは全額弁償は難しい。

 

何の文字も書いていない、役目を終えた魔導書をミアさんは険しい目で手に持ち眺めている。

 

故意ではない事だけでも伝えたく、ひたすら頭を繰り返し下げた。

 

 

 

「それは大変な事をしてしまいましたね……ベルさん」

 

「ちょ、シルさん!?なにさも他人事みたいに言ってるんですか!」

 

 

 

特に彼女を責めるつもりは無いけど、僕の単独行為と思われかねないので抗議しておいた。

 

するとシルさんは一瞬で目をウルウルとさせて、懇願するような表情でこちらを見つめる。

 

 

 

「やっぱり駄目……ですか?」

 

「すっごく可愛いけど、駄目です」

 

「てへ♪」

 

 

 

すぐに悪戯好きな顔をして、舌をぺろっと出すシルさん。

 

最近気づいたのだが、彼女の表情は変幻自在なのかもしれない。つい何でも許しそうになる。

 

そんな事を考えていたら、ミアさんはため息一つつくとゴミ箱に魔導書を投げ捨てた。

 

 

 

「み、ミアさん……?」

 

「忘れな」

 

 

 

つまり弁償や持ち主への謝罪も不要という事なのか。

 

それでは罪悪感に耐えられないので、何かしらの償いをしたくて謝罪に来たのに。

 

 

 

「で、でも……」

 

「読んじまったもんは仕方ないだろう。こんな代物、置いてく奴が悪いのさ」

 

「し、しかしですね……」

 

「、――――」

 

 

 

文句があるのか、とミアさんの視線から伝わる威圧が僕の体を硬直させた。

 

何を考えているんだ僕は。

 

顔も見たことのない忘れ物をした人より、目の前の女性の方がずっと怖い。

 

 

 

「だ、ダンジョン行ってきます!!」

 

 

 

その視線から逃げるために、僕は一目散にその場から走り去る。

 

シルさんとあまり話せなかったけど、あんな空気の中で話しかける勇気なんて無い。

 

お店から出てリリとの待ち合わせ場所に向かおうとした時、後ろから声をかけられた。

 

 

「待つにゃ、少年♪」

 

「あ、えっと……なんですか、クロエさん?」

 

 

 

振り返った先に居たのは、黒髪に黒い耳を生やした猫人(キャット・ピープル)のクロエさんだ。

 

僕はこの人にされた、その……アレな出来事を思い出してつい身構えてしまう。

 

された事もそうなのだが、この人見かけによらず強い腕力や身のこなしが備わっているので、一度捕まると抵抗できる自身が無い。

 

 

 

「んー……そこまで警戒されると、傷ついちゃうにゃあ」

 

「す、すみません……」

 

「まあ、仕方にゃいかもにゃ。シルが弁当を渡し忘れてたみたいにゃん。相変わらず少し抜けてるんにゃよねぇ」

 

 

 

そういうクロエさんの手には、小さい包み。

 

いつもの布巾に入った小箱ではなく、梱包に使う南方の樹の葉で包んであるみたいだ。

 

急いで用意してくれたのかもしれない。

 

 

 

「わざわざすみません、シルさんにもお礼を……」

 

「シルは店の準備でもう忙しいにゃ。このポーチに入れれば良いにゃ?」

 

「あ、はい。上の所が開くと思います」

 

「これにゃ?あ、あとこれの包みは捨てておいて構わにゃいってさ。シルはお店の洗い物で手一杯にゃ」

 

 

 

確かに、これから仕込みとかがあるならきっと僕の相手してる暇なんて無いのだろう。

 

クロエさんは素早く僕の後ろに回り込み、ポーチを開けて中に包みを入れてくれる。

 

 

 

「ありがとうございま……って、どこ触ってるんですか!」

 

 

 

なんだかんだこの人も、優しい人なんだなぁ……と思っていると、急に臀部をゆっくり撫で回された。

 

 

 

「いやぁ、いいお尻だからついつい……。じゃ、ダンジョン気をつけるにゃよ少年」

 

 

 

満足そうに目を閉じ微笑んだ彼女は、手を数回振った後お店の中へ消えていった。

 

お尻を触られた事への抗議をしたかったけど、もうそこに黒髪の猫人は居ない。

 

獲物を狙う獣の様な目をしていたかと思っていたら、軽いお調子者の様なテンションにコロコロと雰囲気を変える。

 

 

 

「掴めない人だなぁ……」

 

 

 

年上の女性は、みんな考えている事がわからない。

 

神様も、エイナさんも、そして……あの人も。

 

ひとまずは、僕を待っているだろうサポーターの娘の元へ向かおう。

 

彼女は小さい女の子なんだから、僕が頼りになる様にならないといけないんだ。

 

 

 

 

 

 

********迷宮都市オラリオ~中央広場~********

 

 

 

 

 

 

いつもの待ち合わせ場所まで来たのだが、あの大きいバックパックを背負った女の子の姿は無かった。

 

 

 

「あれ、リリまだ来てないのかな」

 

 

 

周囲を見回していると、林の中にリリを見つけた。

 

良く見ると、あまりガラの良くない人達に絡まれているようだった。

 

もしかしたら相方が居ないと思って、サポーターを強要されていたりしているのか……?

 

 

 

「――、リリ!」

 

「――おい」

 

 

 

リリの元へ駆け寄ろうとした時、突然冒険者の人が視界を遮るように道を塞いだ。

 

髪を後ろに括り、軽装の戦士の様な格好をしたその姿には見覚えがあった。

 

あの路地裏で、口論の末に剣を向けてきた人だ。

 

不敵な笑みを浮かべている彼に、僕は警戒心を高める。

 

 

 

「あ、貴方はあの時の……」

 

「お前あのガキとつるんでるのか。となると、何も知らないって訳じゃあるまいな」

 

「な、何がです?」

 

「惚けんな。お前俺に協力しろ……一緒にアイツを嵌めるぜ」

 

「なっ……!?」

 

 

 

つまり、僕がリリを裏切る。――その誘いをしに来たという話だった。

 

とんでもない提案をしてきた彼に、僕は信じられない気持ちで目を見開く。

 

 

 

「そんな顔すんなって。お前だってアイツが溜め込んだ金、狙ってんだろ」

 

 

 

ニヤニヤと、いい拾い物をしたというような顔をして至近距離まで近づいてくる。

 

 

 

「冒険者同士、協力して役立たずの荷物持ちからたんまり巻き上げようぜ……なぁ?」

 

 

 

その瞬間、リリが彼に乱暴されて身ぐるみを剥がされる映像が脳裏に浮かんだ。

 

そしてそのおぞましい行為に加わる、僕……

 

 

 

「――、嫌だ」

 

 

 

そんなことは、絶対にしないし、させない。

 

彼女は守るべき仲間であり、か弱い女の子なんだ。

 

僕は絶対的な拒絶を瞳に込めて、彼を睨みつける。

 

 

 

「絶対に、嫌だ!」

 

「チッ、この糞ガキ……」

 

 

 

舌打ちと共に、彼はあっさりと引き下がって去っていった。

 

あれではもしかしたら僕だけでなく、他の人にも声をかけているのかもしれない。

 

もし僕たち二人だけの所を多数で襲われたら……。

 

そうなったら、せめてリリだけでも逃してあげないと。

 

それとも誰かに相談を――と僕が思考を巡らせていた時、

 

 

 

「――ベル様」

 

 

 

僕を呼ぶその声で、意識を引き戻された。

 

 

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

 

ベル様は、待ち合わせ場所であの男と何やら会話をしていた。

 

あの男が去ったのを見計らって、ベル様に声をかける。

 

 

 

「……ベル様」

 

 

 

会話の内容はおおよそ察しがついている。

 

ですが私はベル様の考えを見抜くために、探りを入れてみた。

 

 

 

「あの冒険者様と、何を話してらっしゃったのですか?」

 

「えっ!?えっと、いや、大した事じゃないよ!世間話とか……そ、それよりリリは?絡まれてたみたいだけど……」

 

 

 

……明らかな動揺。

 

聞かれたらマズい話をしていました、と自ら暴露しているようなものだ。

 

この人は嘘を平気で付ける人ではない。

 

リリのような者にも一切の裏を感じさせない……純朴で、無垢で、愚直な少年。

 

そんな人だから、リリは……。

 

 

 

「大丈夫だった?」

 

「……はい」

 

 

 

でも、それも最早どうでも良いことだ。

 

何度も繰り返してきた事。

 

奪い、奪われ、騙し、騙される。

 

 

 

「大したことありませんよ。さっさと行きましょ」

 

 

 

裏切られる事はあっても、この経験だけは裏切ってこない事だった。

 

信じられる、少ないもの。

 

信じたくは、無かった。

 

 

 

「もう……潮時かぁ」

 

 

 

自分でも意外な事に、

 

私は彼を、信じていたかったらしい。

 

 

 

 

 

 

********とある教会~『ヘスティア・ファミリア』ホーム~********

 

 

 

 

 

 

「――成る程……。例のサポーター君をねぇ」

 

ダンジョンから戻ってきたベル君から相談があると持ちかけられ、話を聞いてみたらどうやらこの子が最近雇ったというサポーターの話だった。

 

その子っておそらくこの前イチャイチャしていた子供の事じゃないのか?と問い糾したかったが、ベル君の真剣な眼差し、一旦置いておく事にした。

 

 

 

「はい……。リリはどうも、悪い冒険者に狙われているみたいなんです」

 

 

 

どうにもガラの悪い子供達に絡まれて、サポーター君を騙してしまおうという話を持ちかけられたらしい。

 

もちろん、ボクのベル君がそんな真似をするとは微塵も思ってないけど、なんてけしからん事をするんだ。

 

今度その子を見かけたら、ボクが直々にお説教をしてやらねばならない

 

そんな事よりも、ボクが今一番気にしているのは……

 

 

 

「少しの間でも、匿ってあげられれば……」

 

「――ベル君」

 

「……はい?」

 

「君のそのサポーター君は、本当に信用に足る人物なのかい?」

 

 

 

ベル君は、とても素直な子だ。

 

そこが彼の良い所だし、愛しいとも思う。

 

だが、ベル君が見て感じたことが真実とは限らない。

 

むしろ……子供達から見えている世界というのは、思った以上に裏がある。

 

 

 

「――、え……?」

 

「ごめんよ、敢えて嫌なことを言っている。今までのキミの話を聞く限り、彼女はどうもきな臭いんだ」

 

 

 

親として、ベル君には目を背けるべきではない事を教えてあげなければ。

 

 

 

「…考えてみてくれ。キミは本当にナイフを失くしたのかい?」

 

「――、」

 

「冒険者に絡まれていた件についてもそうだ……彼女はキミに、何かを隠している」

 

 

 

ベル君だってもう赤ん坊ではない。

 

出来る限り、サポーター君の行動を好意的に捉えて、後ろめたい情報には目を瞑ったのだろう。

 

話を聞いただけのボクなんかより、ずっとベル君のほうがサポーター君の真(・)実(・)が視えている筈だ。

 

視えていたけど、見ないようにしていた。

 

 

 

「……っ、……」

 

 

 

俯くベル君は葛藤しているのか、口を小さく開いては閉じてを繰り返している。

 

今の彼は現実を突きつけられた。後はどうするかを決めるだけ……

 

顔を上げたベル君の瞳に、迷いは消えていた。

 

そして、ボクがすることは――

 

 

 

「神様――」

 

 

 

もう、決まっているんだ。

 

 

 




いつも読んでくださっていた方々。ご無沙汰しております。

色々ありすぎて物書きしてられる状況じゃありませんでしたが、今回より復帰出来そうです。

更新を待ってくださっているという沢山のコメント、拝見しました。

これからの更新も不定期ではございますが、なんとかやっていこうと思います。



今回は原作(というよりはアニメ)そのまま過ぎて全部端折ってしまおうかと思った部分ですが、ひとまず更新だけでもしたかったので多少改変して投稿した次第です。

次で5章完結です。
濡れ場の推敲に時間がかかりそうですが、頑張って書きます。


それでは、次回もまた是非宜しくお願い致します。
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