※この作品はR-18です。

ベル・クラネルがモテ過ぎるのは間違っているだろうか   作:ぽちょむきん

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7章「剣姫(アイズ・ヴァレンシュタイン)」
和解


********迷宮都市オラリオ~西メインストリート~********

 

 

 

僕とリリが、改めてパーティとしてやっていく事を決めた後の事。

 

その日は探索を中止して、僕たちはホームへ帰ることに。

 

 

 

「――……」

 

「……♪」

 

 

 

隣を歩くリリの頭の上では、機嫌が良さそうにパタパタと耳が動いている。

 

つい気になって、指でつついてみた。

 

 

 

「ぁっ、ふゃん!……ベル様ぁ♪」

 

「うあっ、ごっごめん!つい……」

 

 

 

無意識にやってしまった。

 

思ってみれば、リリがサポーターとして僕にパーティの話を持ちかけた時も、つい本物か気になって触ってしまったのを思い出す。

 

リリの本来の種族は小人族(パルゥム)なのだが、彼女の耳と尻尾にはしっかり感覚も体温もある。

 

……しかもちょっと敏感らしい。

 

顔を赤くして、尻尾を嬉しそうに振る今の彼女はどこから見ても犬人(シアン・スロープ)にしか見えない。

 

 

 

「驚いたよ……。まさか、変身できる魔法があるなんて」

 

「ええ。ですので、この能力さえ知らなければ誰も今のリリをリリだと解りません。暫く姿を見せなければ、ダンジョンで死んだと思われるでしょう」

 

「なるほど……でも、リリはそれで良いの?」

 

「ええ。ベル様のお側に置いてくださるのであれば……リリはそれだけで、満足です」

 

 

 

トロンとした目で僕を見つめるリリ。

 

その瞳には情欲と、僕への親愛が籠められていた。

 

ダンジョンでの出来事を思い出して顔が熱くなる。

 

 

 

 

リリを助けた後……その場の雰囲気だったり、僕も戦闘で気分が昂ぶっていたのもあって、彼女と……シてしまった。

 

嫌なんかじゃないし、とても嬉しかったけど……。

 

彼女の体格が小さくてあまりにも締め付けるからあっという間に達してしまったとか、顔に殴られた痕を付けた彼女を抱くのは暴漢になった気分で背徳感が……って何を考えてるんだ僕は!?

 

最近、性欲がどんどんマズい方向に向かっている気がする……。

 

 

 

「―― それより、ベル様はこのままで良いんですか?」

 

「……え?」

 

 

 

急にリリは不安そうな顔になり、機嫌を窺う声色になる。

 

 

 

「リリは、ベル様を騙していたんですよ?ベル様の好意につけ込んで、裏切ったんですよ?」

 

「――、」

 

「このまま許されてしまったら、リリは……」

 

「……大丈夫だよ。さ、行こ!」

 

 

 

リリは真面目な子だから、きっと不安なんだろう。

 

でも、大丈夫。

 

これから会う神様は、そんな気持ちも晴らしてくれる方なんだ。

 

 

 

 

 

 

********とある教会~『ヘスティア・ファミリア』ホーム~********

 

 

 

 

 

 

「リリルカ・アーデです。初めまして」

 

「キミが噂のサポーター君かぁ……ベル君から話は聞いてるよ」

 

 

 

ホームの廃教会で、待っていた神様がリリと対面した。

 

リリはどこか緊張した面持ちで、伏し目がちに名乗っている。

 

二人だけのお話をする必要があるだろうし、僕は一度席を外す事にした。

 

 

 

「僕、下でお茶でも淹れてきます。ああ、でもコップが2つしかないです……」

 

「なぁに、気にすることはないさ!僕とベル君が一緒に使えば良い!」

 

「神様も、そんな冗談言うんですねっ」

 

 

 

僕が神様と食器を使い回すなんて畏れ多い事する訳がない。

 

珍しい冗談に笑いつつ、僕は地下の部屋に行く。

 

……リリ、神様と仲良くなってくれると良いなぁ、

 

 

 

「あれ……あのお茶っ葉、どこに置いたかな……」

 

 

 

以前リューさんに頂いた茶葉を、棚の中に見つけた。

 

せっかくだし美味しいのを飲んで貰おう。

 

お湯が入ったヤカンから、ポットに注ぐと良い匂いが漂う。

 

 

 

「お待たせしましたー」

 

 

 

お茶の入ったコップを、神様が腰掛けている横に並べる。

 

何やらヒソヒソとリリに耳打ちしている所から、だいぶ距離が縮まっているように見える。

 

 

 

「遅くなって、すみませっ!?っ、か、神様?」

 

「――!!」

 

「――さて、改めまして……初めまして、サポーター君。」

 

 

 

急に顔が柔らかい物体に包まれた。

 

どうやら僕は神様に抱きしめられているらしい。

 

豊かな乳房に挟まれて、女性特有の匂いにクラクラする。

 

 

 

「ボ・ク・の、ベル君が世話になったねぇ……」

 

「かかかっか神様ぁぁ」

 

「……っ、――!」

 

 

 

リリの前でじゃれつかれてしまうのは、とても恥ずかしい。

 

きっとリリは呆れている事だろうけど、ガッチリ頭をホールドされてしまって身動きが取れない。

 

というか、マズい……股間がムズムズしてきてしまった。

 

神様にバレたら折檻なんてレベルじゃない!

 

 

 

「――いえいえ、こちらこそ~ベル様はいつもリ(・)リ(・)に(・)ぃ、お優しくして貰っていますから♪」

 

「ぅうあ!!リリ、何シてるの!?」

 

 

 

どうやって神様の抱擁から抜けようと思っていたら、腰にリリが抱きついてきた。

 

そして、硬くなった僕の股間に頬ずりされてしまう。

 

――そんな事されたら、収まらなくなっちゃうよ!

 

 

 

「ななんあななんあぁ!?サポーター君!!いきなりソコを責めるのはズルいぞ!!」

 

「え~?だってぇ、リリってばもう身も心もベル様の物ですからぁ、ご奉仕させて頂かないとぉ」

 

「にしたって昼間に神の御前でなんたる破廉恥な!!そんなことしたら天罰が下るんだぞ!」

 

 

 

神様、すみません……一番破廉恥なのは僕だと思います。

 

 

 

「すん、すん……はぁ、素敵な香りですベル様……。早速あの時の再開を……」

 

「ボクの話を聞けぇえええ!!えぇい、こうなったらベル君をこの場でボクの虜に、」

 

「か、神様?リリ……?」

 

 

 

話の流れが不穏になってきた。

 

神様の目の前で致(・)す(・)なんて、不敬なんてもんじゃない。

 

睨み合う二人の注意が僕からそれたのを見計らって、拘束から抜けて一気に走り抜ける。

 

 

 

「そ、そうだ!!エイナさんにギルドへ行って会わないと!!!!」

 

「ベルくぅうん!」「ベル様!」

 

 

 

僕を引き留める声が聞こえるけど、応えるわけにはいかない。

 

既に僕の股間は痛いくらい膨らんでいる。

 

どこか物陰で、収まるのを待たないと……。

 

 

 

だけど、さっきの二人にはイヤなわだかまりを感じなかった。

 

リリはもう、僕達の新しい家族みたいなものだ。

 

――良かった……。

 

 

 

 

 

 

********オラリオ・冒険者ギルド~エントランス~********

 

 

 

 

 

 

来週から、【ロキ・ファミリア】は大規模遠征を行う。

 

目標は未到達領域、59階層――。

 

この遠征で、私は更に強くなりたい……。

 

 

 

――でもその前に、謝らなきゃ……。

 

 

 

手に持つのは【グリーン・サポータ】。

 

彼が、10階層で落とした装備。

 

私のせいで傷ついた、白髪の少年。

 

 

 

――これを返して、今度こそ。

 

 

 

彼に謝罪する、きっかけになれば良い。

 

 

 

 

 

 

「――まったくっ、礼も言わずに叫んで逃げてくなんて。ベル君ったら失礼な!」

 

 

 

あの子の専属アドバイザーをやっているという、エイナ・チュールさんに事情を説明したら、彼に怒り出してしまった。

 

きっと姉のような存在なのだろう。

 

彼は悪くないのだけれど、そこに彼女とあの子の関係からくる感情もあるだろうから黙っていた。

 

 

 

「……それで、直接返したくて」

 

「――、わかりました!では私も協力します。彼が逃げ出さない様……いえ、逃げ出せない様作戦を立てましょう!……そうですねぇ、面談用の個室に閉じ込めるとかっ」

 

 

 

……どうしよう、勝手に話が進んでいく。

 

普通に彼に謝罪する機会さえあれば良いのだが。

 

すると見覚えのある姿が、ギルドにやってきた。

 

 

 

「えっと、エイナさんは……」

 

「――ベル君?」

 

「――、?」

 

 

 

彼がこちらへ振り返っている。

 

エイナさんの方を見た後、すぐに目が合った。

 

 

 

「!!?、――!」

 

「ちょ、ベル君!?」

 

 

 

彼は私を認識すると、そのまま来た道を走って戻っていく。

 

まずい、また逃げちゃう……。

 

私は咄嗟に跳躍して、宙に舞った。

 

 

 

「っあ!」

 

「……っオゥ、なんでぇ」

 

「、あっすいませ……」

 

 

 

歩いていた冒険者にぶつかって転んだあの子の目の前に私は着地した。

 

彼が起き上がる拍子に私のお尻に顔をぶつけたけど、特に怪我はしてないと思う。

 

私に敵意はない、と彼の瞳を見つめる。

 

 

 

「……」

 

「あ、剣姫だ」

 

「――――、っっっっ!!!!!」

 

 

 

顔を真っ赤にしながら、ギルドに彼の絶叫が響き渡る。

 

……どうして?

 

 

 

 

 

 

++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

 

 

 

 

 

 

「この前、ダンジョンでオークに襲われたよね?」

 

 

 

混乱する彼にエイナさんが事情を話して、なんとか二人きりにしてもらった。

 

今は席について、10階層での時の話をしていた。

 

私は預かっていたグリーン・サポータを彼に手渡す。

 

 

 

「これ、キミが居なくなった後で落ちてたから……返そうと思って」

 

「――、!それじゃあ、あの時助けてくれたのは?」

 

 

 

やはり、あの時は私だと思ってなかったみたいだ。

 

……今なら、伝えられる。

 

 

 

「――、ずっと謝りたくて……」

 

「っ、え?」

 

 

 

彼は困惑していた。

 

急な話で戸惑っているのかもしれない。

 

ちゃんと、説明しなきゃ。

 

 

 

「……私が逃したミノタウロスのせいで、キミの事をいっぱい傷つけたから」

 

 

 

駆け出しの彼が死ぬ寸前まで追い詰められて、

 

ベートさんがその事で謗ってしまい、笑い者にさせてしまった。

 

償って……彼に、許して欲しかった。

 

私は、誠意を込め頭を下げる。

 

 

 

「――ごめんなさい」

 

「!、ち、違います!!ヴァレンシュタインさんは全然悪くなくて、むしろ助けて貰った命の恩人で……というか、謝らなきゃいけないのはお礼も言わずに散々逃げ回った僕の方で……ごめんなさい!」

 

「――、……」

 

 

 

彼は頭を振り、私は悪くないと一生懸命話してくれている。

 

そこに、あの酒場から走り去った時に感じた悲しみは無い。

 

――良かった……。やっと謝れた。

 

 

 

 

 

 

「――こんな短期間で10階層に辿り着いて、凄いね」

 

「い、いえっそんな事ないです!もっと強くならなくちゃいけないのに、まだまだで……戦い方も素人同然ですし……あと、ぇっと……」

 

 

 

ギルドの出口を彼と出る時に、気になっていた話題を振った。

 

すると、意外なことが発覚する。

 

 

 

「……戦い方を教えてくれる人、居ないの?」

 

「は、はい……」

 

「――、……」

 

 

 

まさか、あの成長速度で誰にも師事をしていない……?

 

つまり彼がここ最近で急激に伸びているのは、あくまで独力。

 

……秘訣が、あるのかもしれない。

 

そして私は一つの手段を思いついた。

 

 

 

「じゃあ――私が教えてあげようか?」

 

「…………っえ?」

 

 

 

―― 知りたい……。なんであんなに速く成長出来るのか。

 

 

 

 

 

 

********迷宮都市オラリオ~北の路地~********

 

 

 

 

 

 

時刻は日も昇っていない夜明け前。

 

私こと【レフィーヤ・ウィリディス】は、敬愛するアイズ・ヴァレンシュタインさんに訓練をご一緒するために彼女を追っていた。

 

どうにか偶然を装って彼女の訓練に混ざろうと思ったのだけど、今朝は誰にも言わずにホームの塀を飛び越えてどこかに消えてしまった。

 

方向からして、この路地に通った筈なのだけど……。

 

 

 

「ぅわぁ!」「っ、きゃあ!」

 

 

 

路地の曲がり角で、誰かにぶつかってしまった。

 

声からして男性……少年かな?

 

こんな時間に会うってことは探索前の冒険者の可能性が高い。

 

私は衝撃で体勢が崩れたまま、痛みでクラクラしつつもなんとか謝罪する。

 

 

 

「あぐっ、ご、ごめんなさい……」

 

「す、すいません!大丈夫ですか?……、あっ」

 

 

 

ぶつかった人族(ヒューマン)の少年は、すぐさま謝り返してこちらに手を差し伸べてくれている。

 

男性は苦手なのだけれど……少年からは男臭さを感じないし、好意を無駄にする訳にいかない。

 

なんかこの子顔が赤いけど、もしかしてどこかにぶつけてしまったのかな。

 

心配に思いつつ、彼(・)の(・)手(・)を(・)取(・)る(・)。

 

 

 

「――っ、ありがとうございます。それと、ごめんなさい」

 

「い、いえ……こちらこそ。……あ、あの」

 

「――……」

 

 

 

――なんだろう。

 

彼の手から感じる、このポカポカとした感覚。

 

胸が早鐘を打ち、じんわりとお腹の奥が暖かい。

 

まるで始めてアイズさんに出会った時の様に、顔がカァっと熱い。

 

触れ合う指が、重なる手のひらが気持ちいい……このままずっと触れ合って、

 

 

 

「――す、すみません。え、えっと」

 

「……、ふぁあ!?ご、ごめんなさい!私ったらはしたない。うぅ……」

 

 

 

――な、ななな何をしているの、私ったら!?

 

アイズさんへの妄想だけじゃなくて、こんな出会ったばかりの少年になんてどうかしちゃったのかな……。

 

少年も赤くなって目を逸らしてるし、きっと変な子だって思わてる……!

 

は、早くと話題を変えなきゃ……。

 

 

 

「――そうだ!この辺りで【剣姫】、アイズ・ヴァレンシュタインさんを見ませんでしたか?」

 

「!?」

 

 

 

すると、なぜか少年の様子がおかしい。

 

明らかに狼狽して、汗をかき始める。

 

 

 

「……もしかして、貴女はロキ・ファミリアの?」

 

「そうですけど……もしかして、なにか知ってるんですか?」

 

「えっと、僕はその、急いでるのでこれで……」

 

「そんな!ちょっと待ってくださ――っ!?」

 

「うわ、危ない!?」

 

 

 

逃げようとする少年の手を掴むが、予想よりも動きが速くてつまずいてしまう。

 

すると彼が咄嗟に私を受け止めてくれた。

 

――その瞬間、私の身体を衝撃が貫く。

 

 

 

「だ、大丈夫です」「ふぁあああ!!?」「!?」

 

 

 

感じたことの無い快楽という名の毒が全身を駆け巡る。

 

しかしそこに不快さは無く、むしろもっと感じたいと本能が叫んでいる。

 

腰が抜けて、その場にへたりこんでしまった。

 

まるで長時間走り続けたみたいに、息が荒い。

 

 

 

「あ、あの……」

 

「はぁ、はぁ、な……何ですか今の……貴方一体……」

 

「い、いや僕は何も」

 

「はぁ、はぁ……怪しい」

 

「――!」

 

 

――この子に何かされた?

 

そう疑った瞬間、彼の動揺も頂点に達してしまった。

 

 

 

「ご、ごめんなさぁあああああああいい――!!!!」

 

「ちょっ!?」

 

 

 

遂に彼は、絶叫しながら逃げ出した。

 

アイズさんの事といい、今の現象といい……。

 

――絶対なにかある!

 

 

 

「――待ちなさぁあああああああい!!」

 

 

 

気合を入れて立ち上がり、すぐさま彼が走っていった方向へ追いかける。

 

絶対捕まえて、洗いざらい吐いて貰うんだから!

 

 

 

 

 

 

********迷宮都市オラリオ~北部市壁上部~********

 

 

 

 

 

 

私は、彼に伝えていた場所で先に待っていた。

 

他のファミリアと表立って訓練するのは問題があるから、人気のない場所でする必要がある。

 

朝日はまだ登っておらず、少し空が白んでいる頃だった。

 

 

 

この訓練には、私にも大きな理由がある。

 

あの子の成長の秘密が解れば、もっと強くなれるかも知れない。

 

でもそれは、あの子を利用するって事で……。

 

 

 

「……」

 

 

 

すごく罪悪感を感じる。

 

あの無垢な少年を騙しているようでとても辛い。

 

でも、この事情を彼に伝えても困らせてしまうだけだろう。

 

――返さなきゃ。せめて精一杯

 

しっかり彼の手伝いをする決意をしていた時、息を見出しながらこちらに近づいてくる彼の姿が見えた。

 

 

 

「――はぁ、はぁ……お、おはよっござ、ます……」

 

「……何かあったの?」

 

「い、いえ……ちょっと、森の妖精に追いかけられて……」

 

 

 

……この子、天然?

 

 

 

「えっと、それで……ヴァレンシュタインさん」

 

「……アイズ」

 

「はい?」

 

「アイズで良いよ。みんな私の事をそう呼ぶから。……嫌?」

 

「い、嫌じゃないです!!」

 

 

 

余所余所しさを感じたのでなんとなくそんな事を提案したら、許諾してもらえた。

 

彼は顔を赤くしながら、うつむきがちに呟く。

 

 

 

「あ、アイズ!……さん」

 

 

 

その姿には、どこかファミリアの照れ屋なエルフの少女を思い出した。

 

彼女と彼はもしかしたら気が合うかもしれない。

 

 

 

「と、ところで!訓練って僕は何をすれば……?」

 

「……何をしようか?」

 

「――え?」

 

 

 

彼に問われて、私も少し悩んだ。

 

実は、この訓練の具体的な方針が決まっていない。

 

 

 

「昨日からずっと、何をしたら良いか考えてたんだけど……」

 

「……」

 

 

 

彼も見た所、近接職だ。

 

それなら、私にも教えられることはあると思う。

 

 

 

「キミの武器はナイフなんだよね?蹴りや体術は使うの?」

 

「い、いえ……」

 

「……ナイフを貸して」

 

 

 

私は受け取ったナイフを手に取り、色んな構えを取ってみた。

 

だが、どれもしっくりと来ない。

 

 

 

「……こう?、……こう。……こう?」

 

「……」

 

 

 

実際、私は獲物である剣以外は扱ったことが無い。

 

鍛えた剣技、魔法、そして体術が私の全てだった。

 

 

 

「……あ、あの。一度整理したほうが」

 

「――、!」

 

「良いんじゃなカぐぅふ!!」

 

 

 

構えた所に、彼が手を伸ばして近づいてきたので、反射的に顔を蹴ってしまった。

 

回し蹴りが思い切り決まってしまい、スピンしながら吹き飛ぶ。

 

私は彼の所に駆け寄り、すぐに謝った。

 

 

 

「……ごめん」

 

「そ、そんな……アイズさんは悪くなくて、ゲホっ」

 

「………………」

 

 

 

彼は大の字になりながら、苦笑いしている。

 

……これでは駄目だ。

 

しっかり、彼のためになる事をしよう。

 

そのためには、一番手慣れた手段が良い。

 

 

 

「――やっぱり闘おう」

 

「ぇ?……!」

 

 

 

私は腰に挿した剣を抜き、鞘を外す。

 

抜き身の剣を壁に立てかけ、残った鞘を彼に向けた。

 

 

 

「――、」

 

「!」

 

「……うん、それで良いよ」

 

 

 

攻撃の意思を感じたのか、彼は咄嗟に構えた。

 

戦いのカンはあるようだった。

 

暫く打ち合い、彼の力量を測る。

 

その愚直なまでに真っ直ぐな打ち筋に、未熟な点は確かに多かった。

 

 

 

「……技とか駆け引きとか、キミにはそれが少し足りない。……立てる?」

 

「お、お願いします!」

 

 

 

すぐに立ち上がり、強い意思が瞳に宿る。

 

――この真っ直ぐな所が、秘訣でもあるのかもしれない。

 

 

 

「――、!」

 

 

 

彼の動きが良くなってきた所で、わざとスキを作る。

 

素直な少年はそこに飛びつき、反撃のチャンスを私に与える。

 

教訓も込めて、彼の頭に鞘を振り下ろした。

 

 

 

「……」

 

 

 

思った以上に強い一撃が入ってしまい、彼はそのまま崩れ落ちてしまった。

 

さっき蹴り倒してしまった時といい、私は加減が下手らしい。

 

――また、やってしまった……。

 

 

 

気絶した彼は、そのまま起き上がれない。

 

……彼との特訓は、とても手強いという事がわかった。




という事でアイズ、レフィーヤとの絡みが始まりました。

基本的には原作通りの流れにするつもりですが、R-18作品なのでそういう展開も期待して下さい。

7章は8章への繋ぎな部分なので、頑張ってオリジナルの動きを作ってみたいですね。



なるべく早めに次も投稿できそうです。

それでは、次回もまた是非宜しくお願い致します。
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