土曜の夜。夕方には帰ってきた小町と彩加も加えて4人で夕飯を食べた後、各々で風呂に入り、今八幡と彩加は授業で使う資料の作成中のようで仕事部屋に籠っていた。
リビングのソファーでは小町とめぐりがゆったりとお茶を飲みながらテレビを見ていた。
いや、若干1名ソワソワしているのだが。
「……あのぉ、お義姉ちゃん? 何かソワソワしてるけど、何かあった?」
自分の横で落ち着きのないめぐりに小町が耐えきれずに聞く。
「え、えと、実は小町ちゃんに聞きにくいことを聞きたくて……」
「何ですか聞きにくいことって。それはお義姉ちゃんにとって厄介なのか、小町にとって厄介なことなのか、どっちですか?」
「……両方かな。で、でも、同じ女の子として聞きやすくもあるし、同じ女の子だから聞きにくいことでもあるというか……」
「あー、もうそこまで言ったなら何でも聞いてください。お義姉ちゃんのためなら、協力できることなら何でも協力するんで」
小町は姿勢を正して、めぐりに向き合う。
小町のその態度を見て決心したのか、めぐりは1つ頷くと、話し始める。
「う、うん。ちょうど男子たちもいないし思い切って聞くけど…………こ、小町ちゃんって、その、ああいうのってどうしてる?」
「ああいうの?」
めぐりの言う『ああいうの』が理解できない小町は素直に首を傾げる。
「そ、その、1人でする、アレ、とか」
「……もしかして、オから始まるやつですか?」
「……う、うん」
小町の言葉に顔を赤らめながら僅かに頷くめぐり。
「それは、頻度とか、そういう話でしょうか?」
「あ、いや、えと、それも聞けるなら聞きたいんだけど、その、やり方というか、道具は使うのか、とか」
「……あー、えっと、これは小町だけが話すのでしょうか? それとも小町が言ったらお義姉ちゃんのも代わりに教えてもらえるのでしょうか?」
「そ、それが交換条件なら、言います」
この2人はリビングでいったい何という話をしているのだろうか。だが、めぐりにはそれなりの訳があった。
「お義姉ちゃんがどういった理由でそんなことを聞くのか知りませんけど、まぁ別にいいですよ? 実は小町そういった話をするの初めてなんで、他の人のとかちょっと興味ありますし」
小町はお茶をグイッと飲み干すと、さぁ来いと言わんばかりに両腕を広げる。
「そ、それじゃあ、ちょっと質問するね? えっとまずはそういうことってする?」
「高2辺りはほぼ毎日してました。兄が家からいなくなったんで少し声を出してもいいと思うと、歯止めが効かなくなったというか。大学卒業してからは本当にたまにしかしなくなりましたね。平日は仕事でそれどころじゃなかったですし、休日もほとんど寝て過ごしてましたし。彩加と暫くしてないときとかにちょっと寂しくなってしてたくらいですね。結婚してからはまだしてません」
「う、うん。そっか。随分としっかりと教えてくれるんだね……」
「まぁ女の子同士ですし、小町がちゃんと言えばお義姉ちゃんも言わざるを得ないでしょ?」
ニヒヒと意地悪な笑みを浮かべる小町。
めぐりは少したじろぎながらも、気を取り直して次の質問に入る。
「じゃあ、やり方とかは?」
「基本指ですよ? たまにピンローとかも使いますけど、何だかんだで指が1番自由自在に操れますので」
「じ、自由自在に……」
「はい。自由自在に」
本当に何を聞いているのだろうと我に返りそうになるめぐりだが、まだ1番聞きたいことは聞けていない。
「これが1番聞きたいんだけど、道具とかは、どこにしまってるの?」
「小町は道具はピンローしか持ってないので、化粧箱に入れてますね」
「それがバレたことってある?」
「ないですよ? だいたい人の化粧箱を勝手に開ける人なんていませんし、誰にも見つかったことないと思います。…………え、もしかして、お兄ちゃんにそういう道具が見つかったんですか?」
「う……」
「マジですか! え、どんな風に見つかったんですか? ていうか何が見つかったんですか? ねえねえ!」
「小町ちゃんノリノリだね!?」
めぐりの自慰用の道具が八幡に見つかったと知った途端目をキラキラとさせる小町。自分じゃない人のこういった話は大好物なようだ。
「ていうか、お義姉ちゃんもオナニーするんですね。もしかして、あまりお兄ちゃんとHなことできてないんですか?」
「はっきり言わないでよぉ、それに、その、できてないわけじゃないんだけど、お昼とか家に1人でいると何て言うか、ちょっとだけそういう気分になっちゃって……」
「あー、なるほど、確かに開放的になっちゃいますよね。この家結構広いし。あ、もしかしてお昼は大胆にリビングや廊下とかでやっちゃってるんですか?」
「ちゃんと寝室でやってるよ!? って、何言わせるの!!」
うぅ~と両手で顔を覆い、俯くめぐり。
だが、小町からの質問は続く。
「それで、兄の反応はどうだったんですか?」
「あ、それなんだけど、多分八幡はあれがそういう道具だって気付かずに拾ったんだよね」
「気付いてない? あ、もしかしてirohaですか?」
「何ですぐわかるの!?」
「それも気付かなかったということは、あの口紅型のやつですね!」
ビシィ! と指をさし、探偵顔負けの推理をしてやったとドヤ顔をする小町。
「そっかー、お義姉ちゃんはあれでズポズポしてるんだー」
「ちょおおーー!! ズポズポとか言わないで!」
「ああ、クリ派ですか?」
「いや
「あのぉ、さっきからお義姉ちゃんが勝手に自爆してるだけですからね?」
めぐりもそれは自覚があるのか、顔を真っ赤にして肩を落とす。
「それでどこに隠してたんですか?」
「……ベッドの下」
「え、そのままの状態で?」
「う、うん。ベッドの下ならすぐに使いやすいし、袋とかに入れておくと、もし見つかったとき言い訳が面倒だけど、裸の状態で置いておけば見つかっても口紅が落とした拍子に転がってベッドの下に入り込んだって言い訳になるでしょ? そして今まさにその状況」
「というと?」
「今朝、八幡がベッドの下で口紅を見つけたからドレッサーの上に置いておいたって言ってきて、案の定ドレッサーの上にそのまま置いてあって……」
「うわー、キツー。それって最後に使ったのっていつなんですか?」
「…………」
「……? お義姉ちゃん?」
「…………今朝」
「……はい?」
「その、えと、今朝、八幡が起きる前にちょっとだけ……」
「…………」
「…………」
「えーと、今朝小町と彩加を見送ってくれましたよね? その後?」
「……その前」
「……小町たちってお義姉ちゃんが作ってくれた朝食を食べたよね? その後?」
「…………その前」
「…………小町たちって朝の7時くらいに起きたよね? その時にはお義姉ちゃんはもう朝食の準備をしてたハズ。因みにお義姉ちゃんは何時くらいに起きたの?」
「…………6時くらい?」
「そこだな?」
「…………はい」
小町はまるで雪ノ下雪乃のようにこめかみに手を添えながら溜め息をつく。
「……つまり、お義姉ちゃんは朝の6時に目を覚まし、起きたばかりだというのに盛って、兄が横で寝ているのもお構い無しに1人自慰に耽っていたと。さっきの平日の昼間っていうのはどこいったんですか」
「う、うぅ~。その、必ずしもその時ではだけではないと言いますか……」
「ここまで来たらぶっちゃけて聞きます。お義姉ちゃんは結婚してから兄とHするのと1人で自慰行為をするの、どっちの方が多いんですか?」
「……えと、その……」
「…………」
「…………自慰行為です、はい」
沈黙が痛い。
「そんなに欲求不満なら兄にもっと甘えればいいのに」
「で、でも、そういうのってそこまで行くのが結構大変じゃない? すごく恥ずかしいし、何か淫乱とか思われそうだし……」
「お義姉ちゃんは馬鹿ですか?」
「ええ!?」
「お義姉ちゃんと兄は既に夫婦。そして子作りは夫婦の仕事です。ゴムを着けるか着けないかは当然ご自由ですが、行為自体が少ないというのは職務放棄です!」
「そこまでなの!?」
「と、いうわけで、小町がそういう雰囲気になるテクニックをお教えしましょう。ちょうど明日は日曜ですし、早速今夜試してください」
「ええ!? こ、今夜!?」
「ふふっ、善は急げですよ」
そこには昔と何ら変わらない小町の悪い笑みが浮かんでいた。
次回、かなり直接的な描写になります。
感想、評価、お待ちしております