---司波深雪---
いつもと違う目覚め…私の下には兄さんでは無く、お兄様がいる。
「お兄様、おはようございます♪」
「深雪…おはよう…」
お兄様は何かを考えているようだった。
「どうかされましたか?」
「和也のことだ…あいつは胸の内を読んでいるぞ」
何のことかわからない。何を言われたいのだろうか?
「どういうことですか?」
「俺はアイツの片割れだ…そのせいなのか、アイツの思うことが、わかることがある」
「あぁ、一卵性双生児ですと、不思議なことがあるそうですよね」
「後、深雪達は勘違いしている。和也の『癒やし』は相手の痛みや苦しみを消し去る能力では無い。相手の代わりに、和也が背負ってくれているんだ」
「背負っている?」
「そう…相手の心と同調して…痛みや苦しみを肩代わりしているんだ。だから、たまに昨日の様に、闇墜ちをすると凶暴性が現れてしまう」
闇墜ち…
「和也は、俺達と違うんだ…怒りの代わりに和也は闇墜ちし、本来の残虐性が顔を出す」
「本来?」
「和也は真夜様と母さん、俺と深雪の闇を肩代わりしてくれているんだ。それぞれ、何かを恨んでいた。それらの恨みは、和也の中で融合し濃縮されている」
「兄さんが優しいのは、演技?」
まさかなぁ…
「演技では無い。あれは和也の素の部分だ。まぁ、和也を刺激するな」
エリカさんを虐めたことが引き金か…
「後、俺を含めたみんなの胸の内も、和也は知っている」
「どういうことですか?」
秘めた思いを知られてしまったのかな…
「深雪、エリカ、七草先輩、水波…和也と一緒になる気は無いだろ?」
「お兄様…」
お兄様にも知られてしまっているのですね。だから、こうして…
「中身が幼稚園児だしな…たぶん、みんな、和也は弟枠だろう」
それは…
「真夜様は勘違いしている。和也は幼稚園児並の知性、道徳観では無いんだ。あいつは、聖域での知性、道徳観がある。もう俺達の想像の域を超えているぞ」
「えっ!」
あなどっていた訳では無かった。でも、言動、行動は幼稚園児そのもので…
「闇墜ちが発現したってことは、昨日までの和也と思うなよ」
お兄様は、何かに気づかれているようだった。
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兄さんに誘われて、屋敷の周囲を散歩している。いつもと変わらない、無邪気な兄さん。そんな兄さんに、油断していたのかもしれない。
屋敷の裏手にある森の中に足を踏み込んでいた。子供の頃、鬼ごっこ、かくれんぼなどした場所である。
「深雪…鬼ごっこしようか…僕が鬼になるよ♪」
兄さんの声がいつもと違った。危険を感じ、兄さんから逃げる。
「そうだ!もっと逃げろよ。僕は鬼だ!捕まえれば、愉しいことを一杯してあげるから」
来た道を戻っているはずだが、景色がまるで変わらない。屋敷が見えても良いはずなのに…
「きゃっ!」
足首を掴まれた。いや、蔦が伸びてきて、私の足首を捕らえたようだ。
『お兄様、助けて~!』
心で叫ぶ私。
「無駄だよ。兄ちゃんには届かない。結界を張ってあるから、結界の外からは見えないし♪」
全裸にされ、背中の後ろで腕と脛が縛られてしまった。
「じゃ、お医者さんごっこをしようか♪」
パチッ!
「痛い!」
乳首とクリを洗濯バサミで挟まれた。
「う~ん…味気ないなぁ…そうだ♪」
手足が解放された。だが、肘から先、膝から先がなくなっていた。
「4本足の生き物だよ、深雪は♪」
首には首輪を嵌められた。
「じゃ、兄ちゃんにしたことを、僕にもして♪」
お兄様との行為を見ていたのか?まさか…
「ほら!」
リードを引っ張られる度に、悶悶としていく。手足が震える。前後の口からヨダレが…お兄様には見られたく無い姿だろうな。
兄さんの肉棒から誘うような香りがする。その香りを嗅ぎたくて、肉棒を舌で舐めていく。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
動く度に洗濯バサミが揺れ、痛さという快感に溺れていく。
「兄ちゃんに後ろからヤラれて、嬉しかったのか?僕の目の前でするとは、深雪、大胆だよな」
見られていたのか?昨日のお兄様と同じように、後ろから差し込み、背中に胸板を…違うのは、乳首に付けている洗濯バサミを指で弾いていることだけだ。
「痛い…兄さん、止めて~!」
「僕の心の痛みは考慮してくれないんだな♪」
兄さんの心の痛み?裏切られたってこと…
「僕は知っている。兄ちゃんは、深雪とも水波とも仲が良いことを。僕は知っている、深雪も水波も兄ちゃんを敬愛し、尊敬し、恋人にしたいことを…僕は知っている…エリカも真由美さんも、兄ちゃんを狙っていることを…僕は…」
何事も無かった…私は洋服を着て、立ち尽くしていた。いや、1つだけ起きた事があった。目の前には兄さんの死体があった…殺したのは、私…兄さんの精神を凍結させたのだ。いつものように無かったことにせず、私の殺意のある攻撃を受け入れていた。
どうしよう…お兄様を呼び出した。数分後に水波ちゃんと共にお兄様が現れた。
「だから、言ってあっただろ…深雪…」
無表情で私を見つめるお兄様。
「なんで、いつものように生き返らないの…ねぇ、和也君!」
水波ちゃんが兄さんの亡骸に泣きすがった。
「和也は死にたがっていた。だから、深雪を挑発して、殺意のある攻撃を待ち続けていたんだ」
えっ!
「なんで、仰ってくれなかったんですか?」
お兄様に訊いた。
「それも言ったはずだぞ、深雪!胸の内は読まれる。だから、察して欲しかったんだ…」
それで、今朝、あのような話をされたのですか。
---桜井水波---
知っていたのね…私と達也様の関係を…
『僕が突然いなくなったから?』
脳裏に和也君の声が聞こえる。そう…和也君と同じ顔の…和也君の代わりだったけど…
『兄ちゃんはクールで格好いいもんね。兄ちゃんなら間違いは無い』
こっちに返ってきて…和也君。
『兄ちゃんのことは認めている。水波も深雪もエリカも兄ちゃんと一緒になれば良い。僕は一人でもいい…ずっと、一人だったし…』
ダメだよ!戻って来て!
『だって、痛いだけの世界なんだもの…僕、痛いのは嫌いだよ♪』
わかった…ケジメを付ける…
---司波深雪---
兄さんに泣きすがっていた水波ちゃんが、小刀で自分の首を…
「水波ちゃぁぁぁぁ~ん!」
私とお兄様が駆け寄る。
「これでいいんです…和也君の元に…」
兄さんを一人にさせない為に?
「お兄様…」
お兄様は水波ちゃんの怪我を、無かったことにしようとした。生きている限り、怪我の無かった状態に戻せるはずだ。でも、死んだはずの兄さんが、起き上がり始めた。
「水波は僕が助ける」
兄さんが、息を吹き返した。
「水波…ねぇ、水波…何もそんなことしなくても…」
「うぅ?あぁ、和也君…戻って来てくれた♪きっと…こうすれば、戻って来てくれる…って…」
「水波…」
兄さんは、水波ちゃんを背負って、屋敷の方へ戻っていく。私とお兄様に何を言わずに…
「和也…」
お兄様は悲しそうに、兄さんの後ろ姿を見ていた。
---司波和也---
香澄ちゃんと泉美ちゃんに、お手玉とかおはじきとかアヤトリを教えて貰う。
「おぉ~!」
輪にしたヒモで、色々な物が出来上がっていく。
「すごい…」
「いや、そんなに感動されると照れるなぁ…」
香澄ちゃんはテレながら、技を披露してくれた。
「でもいいんですか?女の子の遊びで?」
泉美ちゃんに訊かれた。
「うん!色々な遊びを知りたいんだよ」
七草姉妹とは仲良くなっていった。真由美さんは兄ちゃん狙いなので、近寄らないようにした。
「お姉ちゃんは嫌いなんですか?」
泉美ちゃんに訊かれた。
「真由美さんが、兄ちゃん狙いだから…僕なんか、眼中に無いよ。ねぇ、他にどんな遊びがあるの?」
更に二人から遊びの手ほどきを受ける。
---千葉エリカ---
和也が私を避けていた。なんでだ?思い当たるのは、深雪に調教されたからか?う~ん…
「達也君…ちょっといい?」
達也君を見つけたので、声を掛けた。
「和也のことか?」
「察しがいいなあ。なんか、私を避けているんだけど、なんでかな?」
「エリカ、和也のことを愛せるか?」
いきなり、何を言い出すんだ…う~ん、
「弟枠として大好きではあるが…大きな幼稚園児を、愛する自信は無いな。って、いうか、和也に愛を語らせても何も出なそうだけど」
「エリカは正直だな」
「そういう達也君は、私を愛せるの?」
言った後で耳が熱くなっていった。達也君は、何も応えず、私の唇に唇を重ねてきた。彼の太い腕が、背中に回され、私を抱き締めてきた。彼の手の平は、私のお尻をの辺りを弄っている。
「これが返事だ…」
私の目を見つめる達也君。なんか、嬉しい…
「ただ、これだと、俺は深雪を護れない」
彼の目は寂しそうだ。何を思い、何を憂っているのだろうか…
---司波和也---
こっちに来て、兄ちゃんは4人と関係を持った。まぁ、それが自然だよな。僕は僕であり、大きな幼稚園児であり、見た目も中身も格好いい兄ちゃんには敵わない。戦えば、勝つ自信は有るけども、それだと兄ちゃんはいなくなってしまう。僕が僕である為のジレンマだ。
死んでも、当主様の元へ帰れない。課題をクリアしないと、僕の居場所に帰れないのかもしれない。兄ちゃん、深雪、エリカ、水波の愛を理解している。課題をクリアするのに必要な愛…どうすれば、僕は手に入れられるんだろうか?こんな世界にいたくない。当主様の屋敷に戻って、日々の生活に戻りたい…なのに…
森に籠もって、当主様の屋敷でこなしていた日課の鍛錬をしている。嫌な事を考えず、無心になれるので、この時間は好きだ。
「人間は厄介な生き物だよな、和也」
声を掛けられた。魔王ルシファーだ。
「逢いに来てくれたの?」
ルシファーに抱きつく。
「和也が荒んでいるから、見て来いっていわれたよ」
僕は僕に起きたことを話した。
「殺したいほど難いアニキか…難しいな。殺しちゃダメなんだから」
「どうすればいいのかな?地獄でも天国でも冥界でも冥府でもいいから、帰りたいよ~」
ルシファーにおねだりをした。
「課題をクリアしないとダメだぞ、和也」
「無理…僕には魅力が無い。大きな幼稚園児だし…裏返せば凶暴で粗野だし…誰も愛しちゃくれないよ」
「まぁ、そればお前に課せられた試練だ。もっと悩み、もっと苦悩しろよ♪」
「そうそう、こっちの世界で、鍛錬するにはどこがいいの?」
「はぁ?お前、完了しただろ?まだするのか?」
ルシファーが呆れていた。
「だって、発散しないと、兄ちゃんや深雪、水波に牙を向けちゃうよ~」
「耐えろよ!」
「無理♪」
「ったく、お前ってヤツは…」
ルシファーが羊皮紙に描かれた魔法陣を手渡して来た。
「そこへ行け!話は着けておいてやる。行くのは睡眠時だけだぞ」
「ありがとう、ルシファー♪」
「また、来てやるから、この世界を消すなよ」
「うん♪」
---司波深雪---
兄さんは、私を避けてしまった。話掛けようとするが、スルーして通り過ぎてしまう。どう、謝ればいいのだろうか?
「何か用か、深雪?」
あれこれ苦悩していると、兄さんの方から話掛けてきてくれた。
「ごめんなさい」
「深雪が謝ることは無い。僕に魅力が無いんだから、しょうが無いよ」
兄さん…私の前では無邪気さを見せてくれないようだ。
「兄さんの無邪気さは好きです」
正直な気持ちを伝えた。
「でも、兄ちゃんを愛しているんだろ?それで、いいんじゃん。深雪の世間体があるから、僕が婚約者であることにするから、兄ちゃんと愛を深めてください」
兄さんが、去ろうとしたので、後ろから抱きついた。
「これは何のマネだ?抱きつく相手が違うだろ?」
「ごめんなさい…」
「謝られても困る。兄ちゃんに抱きつき、寄り添えばいい。僕は僕の道を行く。深雪の好きなように兄ちゃんに接すれば良い。真夜さんには伝えておくから、心配はしないでいいよ」
「違うの…大好きなのは兄さんなの!」
感情が暴走しそうだ。お兄様の事は敬愛している。確かに、あぁいう関係に成りたいという願望もあった。でも、兄さんが大好きである。二股と言われればそうかもしれない。でも、憧れの相手と現実の相手の区別は付く。付くはずだから…
「大丈夫だよ。僕から離れても、深雪の闇は『癒やし』続ける。兄ちゃん、真夜さん、深夜さん、屋敷の方々みんなを『癒やし』続ける。それは僕の役目だ。この家の当主になる僕の役目だと思う」
そうじゃない…傍にいて欲しいのは兄さんの方なの…
「お兄様は敬愛しています。でも、愛しいのは兄さんなの!」
「ごめん…違いが分からない…う~ん…」
「どう言えばいいかな…お兄様は憧れ、兄さんは大好き♪」
兄さんの背中に、胸を押し当て、肩越しに頬を擦り合わせる。
「僕…深雪に残酷なことをしたよ。いいの?」
された…精神的に苦痛をもらった。挙げ句に、兄さんに殺意を抱き、魔法を行使した。それは、消せない事実である。
「僕は残忍で残酷で…」
兄さんの口を私の口で塞いだ。もう、聞きたく無いから。兄さんの首に腕を回す。徐々に腕を下ろし、兄さんの背中を抱き締めた。
このまま、時が止まっても良い。そんな気で魔法を行使するが、無かったことにされた。
『この世界を消す訳にいかない。もし、消すなら、それは僕の役目だ』
兄さんの言葉が脳裏に響いた。