---司波和也---
放課後…真由美さんがやって来た。また、生徒会室に連行らしい。深雪の肩を借りて、生徒会室へと向かった。
「それで、今日はどういう用件ですか?」
兄ちゃんが、司波家代表として質問をした。
「七草から事情は聞いた」
十文字先輩がいた。いつの間に退院したんだ?最近、欠席の多い僕が知らなかっただけかな?
「事情とは?」
「四葉和也の抱える事情だ」
「和也は、司波和也です。十文字先輩、そこを間違わないようにしてください」
「あぁ、すまん。正体は秘匿だったな」
「で、事情を聞いて、どうされるのですか?」
「生徒会として、学内での安全は確保してあげたい」
「それは、学内で何かあると、ガーディアンである、七草先輩の責任問題になるからですか?」
「それも有る」
十文字先輩は正直者のようだ。
「そうですか。わかりました。では、用件が終わったようなので、帰ります」
「ちょっと待って!」
真由美先輩から声が掛かった。
「それでね、あなた達3名には、生徒会の役員になって欲しいの」
「何故ですか?」
「あなた達の能力は抑止力になる。だから…」
兄ちゃんを見る真由美さんの目は、違う理由も孕んでいるようだ。
「俺だけでいいのでは?深雪と和也の能力は、抑止力にならない。死者の出るレベルですから」
「深雪さんには事務をお願いしたいです。和也君は…生徒会室でお留守番…」
僕は役立たずのようだ。兄ちゃんは頷いている。真由美さんと一緒に居られるのが嬉しいのか?
「和也、勘ぐり過ぎだ」
あぁ、心が読まれていた。全身が痛くて、心にバリアが張れていなかったようだ。
「じゃ、達也君は風紀委員をお願いします。あーちゃん、深雪さんに書類関係を教えてあげてね」
あーちゃんと呼ばれた中条あずさ先輩が、書類の束を深雪に手渡して、説明をし始めた。
「さてと…和也君」
真由美さんは兄ちゃんでは無く、僕の傍に来た。身構える僕。
「そんなに身構えなくても…私って恐い?」
首を横に振る。
「じゃ、どうして…」
「何かを疑われているんじゃないのか?」
十文字先輩が割り込んできた。
「疑われる?なんだろう…」
僕が視線で兄ちゃんを指した。その途端、耳まで真っ赤に染まっていく。
「どうしたんだ?七草…」
怪訝な表情の十文字先輩。
「何でも無い…誤解を解かないと…どうするかな…」
誤解?アレは誤解しようが無い行為である。男と女の行為…双方合意の上での行為、誤解のしようが無いと思う。
「帰っていいですか?いえ、帰ります。さようなら」
僕は一人で生徒会室を出た。格好良く出たつもりであったが、直ぐに後悔した。身体中が痛かったんだ…生徒会室では気が張っていたので、そうでも無かったけど、気が緩んだ途端、痛みがぶり返して来ているし…
「和也、大丈夫か?」
エリカの声…エリカの肩で支えられた僕。
「どうして?」
「全身が痛いんだろ?心配で待っていたんだ。深雪だと負担が多いだろうし。帰ろうよ。迎えは呼んである♪」
校門まで行くと、寿和さんが車で迎えに来てくれていた。
「よっ、和也!久しぶりだな。まぁ、乗れよ。覆面パトに乗る機会って、滅多に無いからな」
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で、何故か、千葉家へお持ち帰りされた僕。はて?
「心配するな。俺が責任を持って、送り届けるからさぁ」
広めの部屋に通された。そこには修次さんが書物と格闘していた。
「エリカに言われて調べてはいるんだけど、まだ見付からない」
「何を調べているんですか?」
「賢者様のことだ。和也を叩きのめしたって聞いて、興味が湧いたというかな」
いや、たぶん…人間では勝て無いって…うん?背中にエリカの胸の感触が…僕の後ろから抱きついているエリカ。
「背もたれにしてもいいよ。身体が痛いんだろ?楽な姿勢になっていいから」
なんで?エリカは兄ちゃんのことを…
「達也君のことを気にしているのか?気の迷いだよ…気にするなよ、男のくせに!」
いや、気にするでしょ?僕よりも男らしいエリカ…
「これかな?永遠の17歳…聖域の者が全員で挑んでも勝て無い…って、なんだ、コイツ…」
修次さんは『聖域日記』を見ていたようだ。たぶん、聖域の者でも勝てないだろうな…
「ラスボスだな。コイツは…並行世界に置いて、天界、冥府を殲滅だそうだ」
ミカエルさんの処と、ハーデスさんの処を殲滅…属性が真逆なのに…賢者様は何属性なんだ?
「結界無効、封印無効、無価値持ち、透過、吸収、反射など攻撃する手立て無しだって…」
あぁ、その方だと思う…僕の拳攻撃は透過されたもの…
「弱点は?」
エリカが訊いた。
「かわいい女性の笑顔…それを見ると戦意が霧散するそうだ。大魔神様か?」
「兄上様、大魔神様は、乙女の涙で無力化ですよ」
「大魔神様って?」
エリカに訊いた。
「古い映画に出てくる神様だよ。今度見せて上げるよ♪」
ふ~ん、賢者様は、映画に出てくる神様レベルなのか…
「和也、エリカの部屋で休んで行けよ」
「アニキ!なんで、私の部屋なんだよ?」
「あれ?見られて困る物でもあるのかなぁ♪」
寿和さんの指摘は図星だったのか、エリカの耳が赤く染まっていく。
「ビンゴかよ…おいおい…」
「アニキ…後で、手合わせしよう。拒否は無効だぞ」
エリカの身体はワナワナ震えている。
「あぁ、俺は今日、夜勤だ。また、今度な♪」
エリカの怒りが頂点に…
「ダメ!エリカ!」
僕は咄嗟にエリカに抱きつき、怒りを鎮めていく。
「えっ…和也…」
徐々に怒りが収まるエリカ。
「あれが『癒やし』の能力か…」
修次さん達が僕達を見ているのか、視線を感じた。
「和也…大丈夫か?」
エリカの声が遠くから聞こえる。しまった…エネ切れによるマインドロストだ。
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「和也…大丈夫か?」
隣に涙目のエリカがいた。何故か僕もエリカも全裸で交わっているんですが…エリカの部屋のベッドの上のようだ。
「うん?あぁ、これか?全裸で交われば、ここに帰って来てくれるかなって♪」
「どこから?」
「聖域って場所から…和也の帰る場所にしてもいいから。だから、心配を掛けすぎるな。少し位は心配したいから、残しておいても良いけど」
「だって、兄ちゃんと…」
「達也君か…一生の想い出にするよ。次は無いから…」
次は無い?
「なんで?兄ちゃんは行為の責任を放棄したのか?!」
「おい、お前が怒りを纏うなよ」
エリカは乳房を僕の胸に押し付けてきた。
「達也君とあぁいう行為が出来たことは、嬉しかったよ。それは本当にね。でも…和也との行為には愛しさを感じるんだ」
愛しさ?深雪と水波も口にしていたような…
「それは本当に、愛しさかって問われると曖昧だけど…でも、今こうして居るのは、全然嫌じゃない。なんか自然な振る舞いって感じなんだよ」
良くわからない。僕が持っていない物だから、良く分からないのかな?
「和也、いなくなるなよ。寂しいから…」
いないと寂しいのかな?愛しい者って…僕にとっては…う~ん…
回復してきたので、着衣をしていく。
「和也、下着をありがとうな♪」
僕のプレゼントした下着を着衣していくエリカ。何か、嬉しそうだ。服を着終わると、夕食をご馳走になり、出勤する寿和さんの車で、家まで送って貰った。
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今夜は水波に責められなかった。
「で、エリカさんとは、どのようなことを、されたのですか?」
その代わりなのだろうか、深雪が僕を尋問してきた。
「いや、マインドロストして、一眠りする間、添い寝をしてくれただけだよ」
「本当に、それだけですか?」
頷く僕。埒が明かない気がしたのだろうか、深雪は尋問を諦めたようだ。で、僕は兄ちゃんの部屋へ向かった。
「どうしたんだ、和也?」
僕が兄ちゃんの部屋へ行くのは珍しいので、話掛ける前に訊かれた。エリカの家で手に入れた情報を兄ちゃんに話した。
「そうか…たぶん、俺の見たのも、同じような書物だな…」
それは四葉家の者の誰かが、過去に聖域を訪れたことがあったってことかな?
「冥府と天界を殲滅か…聖と闇の遣い手だろうな」
死神は聖属性攻撃に弱い。天使は闇属性攻撃に弱い。兄ちゃんは、それを知っているようだ。
「まぁ、その人物なら、問題は無いだろう」
「なんで?」
「ガーディアンだからだ。何かを護る為に戦うだけで、破壊目的とかでは無いからだ」
何かを護る為に戦う…そうか、戦うだけではダメってそういうことか…賢者様への疑問の1つが解決した気がした。だから、当主様は僕に、戦う術と護る術を叩き込んでくれたんだ。両方を使えるように…次のステップは、護る対象だな。愛しい者で無いとダメって…
「兄ちゃんにとって、愛しい者って?」
「母さん、深雪、穂波さんかな…」
だから、あの局面だったのか…兄ちゃんは護る術を持っていなかったから…穂波さんは戦う術が無かったから…だから、僕はあの場に転移されたのだろう。
「和也の愛しい者は誰だ?」
「分からない…それが僕に欠けている物らしい…僕には愛という物、愛しいという物がわからないんだよ」
「そうか…だから…お前は、みんなを俺に…」
「うん?どういうこと?」
「お前に無い物は俺が補填をする。俺に無い物はお前が補填するんだ。1つの細胞が分裂して双子になったんだから、二人で一人を分け合ったってことだ」
なるほど…僕は兄ちゃんに融合すれば良いのかな?
「和也、禄でも無い考えはするな!一人で総ては持てない。だから、二人になったと考えろ」
一人の人間としてのキャパシティでは、持ちきれなかったってことかな?それだけ、真夜さんの闇は巨大だったのだろう。
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翌朝…柔らかい物に挟まれている感覚で目覚める。僕の右半分に水波が、左半分に深雪が乗かっていた。気持ち良いのだが重い。脱出を試みていると、二人が目覚めた。
「兄さん、おはようございます♪」
「和也君、おっは~♪」
「うん、おはよう…重い…」
「ねぇ、水波ちゃんと私、どっちが気持ち良いですか?」
深雪が訊いてきた。この状況下で、どちらかを選択しても地獄な気がする。朝から何かをされる予感がするのだ。
「胸は深雪…下腹部は水波…」
複雑な表情になる二人。
「う~ん…嬉しいやら悲しいやら」
「嬉しいやら、恥ずかしいやら」
「あの、降りて貰えないでしょうか…」
暫く長考して二人は降りてくれた。水波は朝ご飯の支度へ、深雪はお洗濯へと向かった。これからは、こんな朝になるのか…兄ちゃんが入れ知恵したかな?
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週末、何故か学校にいる…生徒会主催の行事があるとかで、僕達も手伝わないと行けないらしい。と、いっても、僕は生徒会室でお留守番である。真由美さんは、僕の為に、香澄ちゃんと泉美ちゃんを連れて来てくれた。二人から、アヤトリと折り紙を習うことにした僕。
外から爆音が聞こえて来た。敵襲か?僕達は急いで外へ出ると、武装した集団が、学校に攻め込んできていた。
「和也さん、逃げてください。ここは私達で」
そうもいかない。ここで、逃げてはダメだと思う。二人を護らないと…装甲車から放たれて来た銃弾、総て無かったことにした。いや、装甲車自体が無かったことに…
「凄い…無かったことに…」
香澄ちゃんが驚いている。しかし、次から次に正門から入って来る武装車両。
『ダークミスト』
正門に向けて、闇属性の霧を発生させていく。闇属性は光を吸収する。火薬が点火出来ずに不発になっていく武装車両。
「魔術…」
泉美ちゃんの驚いたような声が聞こえた。
「二人共、背後を頼む」
「「了解です」」
不発になった武装車両達が、僕を狙って突っ込んできた。しかし、途中で蛇行運転になっていく。文弥君の『ダイレクトペイン』かな?相手の感覚にダイレクトに痛みを与える戦闘魔法である。
『メテオフォール』
星霊系の魔術で、隕石群を武装車両に向けて落としていく。
「ちょっと、威力でかすぎますよ」
って、亜夜子ちゃん。確かに、地面まで抉れているというか、クレーター状に抉れている。隕石自体は小さいので、半径5メートルくらいの穴がボコボコと…
「いやっ!」
香澄ちゃんの声へ振り向くと、狙撃されていた。どこから?
「亜夜子ちゃん、狙撃手の位置を探して!」
「分かった」
香澄ちゃんに駆け寄り、無かった事にした。
「え?撃たれた痕が無い…」
「30メートルくらい先のビルの屋上よ!」
『エアーブロック』
空気をブロック状に固めて、周囲の空気抵抗を上げて行く。撃ち込まれた弾丸は、失速して、僕達に届かずに落ちていく。
「香澄ちゃん、泉美ちゃん、倒せるかな?」
「「やってみます!」」
二人の放った魔法は、狙撃手を撃ち抜いた。これで終わりか?いや、ヘリの音が近づいてきている。
「校舎に逃げ込め!ヘリだ!」
5人で近くの校舎へと逃げ込んだ。そんな僕達を狙うかの如く、対地ミサイルが撃ち込まれてきた。
『エアスタンプ』
圧縮空気で、ミサイルを到達前に叩き落としていく。付近に迷惑を掛けるのはアレなので、学校の敷地内に落としている。先程のクレーター部分が更に掘り起こされていく。ヘリも叩き落としたいが、市街地に落とそうだし…兄ちゃんの能力なら、安全かな?
ヘリは僕達を諦めて、講堂の方に狙いを買えた。アレってイベント会場だよな。4基の対地ミサイルが放たれた。どうする?う~ん…おや?斬り落すとどうなるんだ?
考えていても始まらないので、僕は窓から飛び出し、僕に宿る天使の力を借りて、翼を展開し空に舞い上がっていく。手に異次元空間に仕舞っておいた剣を握りしめ、ミサイルを切り刻んでいく。無数の爆発…欠損していく僕の身体。そこは、再生能力を上げて、総てを切り刻む…
『ミスト・ディスパージョン』
兄ちゃんの声が聞こえた。それと共に、ヘリが消えていく…僕の意識も消えていく…
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目を開くと心配そうにエリカが僕を見つめていた。
「和也…大丈夫か?」
僕の頬を手の平で撫でてくれた。抱きつかないって、そういうことだよな。僕の身体は、再生途中のようだった。身体中に赤く染まった包帯が巻かれている。
「みんなは?」
「無事だよ♪今、達也達が黒幕にヤキを入れに行っているよ」
「僕…役立てたのかな?」
「当たり前だろ?お前が、ミサイルを破壊してくれたおかげで、みんな助かったんだ」
「香澄ちゃん達は?」
「無事だよ。重傷者はお前だけだ…和也」
エリカの柔らかい唇が僕の額に…
「ご褒美だよ♪いつも口だから、たまには額にもな♪」
え?普通、逆で無いのか?
肉体の再生は順調では有るが、血液の増産が追い付かない。そうか、出血多量でマインドロストしたのか…僕の能力は身体の再生なので、失った血液は再生できない。厄介なのは、僕の身体は輸血を拒否するらしい。まぁ、2日くらいで、血液量はいつも確保出来ているらしいけど。