---司波和也---
あの時、翼を展開したはずなのだが、人間の目には見えなかったようで、僕が浮遊術を使った事になっていた。なによりも問題視されたのは、再生能力の方だった。首を切られても再生する能力…まぁ、化け物で間違いは無い。
「そうは言うけど、和也君がいなければ、講堂にいたみんなは、ただで済まなかったわ」
真由美さん達、生徒会が僕を援護、守護してくれていた。
「化け物は退学にするべし!」
まぁ、退学でもいいけど…高校って、ランドセル背負えないしなぁ。そんな退学で揺れる僕の処に、真夜さんから、指示が届いた。
「何か良いことをすれば、化け物でも大丈夫じゃないかしら?」
と、前置きをして、
「虚弱体質な子がいるんだけど、改善出来無いかしらねぇ?」
と、言う。丁度、化け物疑惑で停学中で暇なので、診察に行ってみることにした。
対象者は五輪澪さん26歳。20歳を越えてから電動車椅子の愛用者になられたようだった。
「君が術者かい?」
澪さんの弟さんの洋史さんに訊かれた。
「まぁ、そういうことです」
僕を不審そうに見ている彼に、真夜さんからの紹介状を手渡した。
「四葉家の当主の紹介かい…まぁ、誰がやっても、無理だと思うけど…」
澪さんの部屋に案内された。彼女はベッドで横になっていた。
「あの…二人っきりにしてもらえませんか?」
「姉さんに妙なマネをするのか?」
相変わらず不審者扱いだ。まぁ、化け物だしな…
「精神干渉術を使います。余計な精神波はジャミングと同じです。なので…」
「わかった…妙なマネをしたら、タダでは済まないからな」
弟さんは部屋を出て行った。では…部屋の四隅に魔法陣を発現させて、部屋を結界で護る。これで乱入者はいないはずだ。
「澪さん…胸に手を置きます」
小さく頷く彼女。僕を怖がっているようだ。寝間着の隙間から右手を入れて、彼女の左胸の上に翳した。まず、心臓周りから探査をする。血管、毛細血管の経路、血管内部、血管の質などを探査して、その結果を診断書に書き入れた。
「血管系は問題ないです。次に頭頂部に手を置きます」
彼女の寝間着から手を取りだして、今度は彼女の頭頂部に手を当て、神経系統を探査する。これも問題は無い…
「次は…イヤかもしれませんが、身体を合わせて、同化して探査をします。イヤであれば、この探査は飛ばします」
「いえ…やってください。真夜様の紹介ですよね?真夜様がいい加減な者を寄こすとは思えませんから」
真夜さんはそれなりにネームバリューがあるようだ。彼女を全裸にして、僕も全裸になり、彼女の身体と僕の身体をコネクトする。僕の身体の一部が、彼女の中に入り、彼女と同化をする。
彼女と同化をすることで、精神領域内を探査出来るようになる。う~ん…どこだ?精神的に問題は無い…そうなると脳かな?脳の各領域を探査していく。
すると、身体の機能を司る領域が、違う物に占有されていた。これか…膨大な魔法演算領域だ。違う場所に置き換えるか…確か、兄ちゃんは感情を司る領域に展開させていたなぁ。
いや、ダメだ。兄ちゃんみたいに感情機能障害になっちゃうか…
どこか無いかな?あっ…未使用領域はどうだろうか?人間の脳みそは、97%くらい未使用なはず…計測すると置き換えは可能である。但し、燃費は悪くなるかもだ。未使用だった物を使うから、使い始めは機能しづらいかもな。でも、他に置き換えられる場所は見付からなかったので、置き換え作業を開始した。
---五輪澪---
暖かなベールが徐々に剥がれていき、意識が覚醒していった。私の上には彼が載っている。彼はマインドロストして、意識が無いようだ。誰か、呼ばないと…彼を横にずらして、ごく自然にベッドの上から降り、ドアの方へ歩いて行った…えっ?自力で歩ける…部屋を出て、弟を呼びに行った。
ベッドの上には、私の代わりに彼が横たわっていた。マインドロストするまで、私の為に能力を使い切ってくれたようだった。
「姉さん…」
「彼にお礼を…そうでしょ?」
「そうだね。どんなお礼が良いかな?」
「彼の望む物…何を望むかしらね?」
---司波和也---
また、外泊…深夜3時頃、家へ転移した。リビングには深雪はいない。水波もいない。真夜さんが、口添えをしてくれたのだろうな。安心して部屋に戻ると…
「兄さん…外泊ってどういうこと?」
「和也君…また、マインドロストしたの?」
う~ん…二人の声から冷たさを感じる。
「ほら、真夜さんからの指示だし…」
二人は無言で僕の服を脱がしていく。無言は恐いって…そして二人の協力プレイにより、僕をベッドへと放り投げた。う~ん…たぶん、抵抗したら負けだろうな。無抵抗で二人のしたいようにさせた。
生きて朝を迎えた…朝日がオレンジ色に見える…精力はゼロだと思う。二人は無言のまま、朝の日課へと部屋を出て行った。無言の刑は嫌いだよ~。
朝食時も無言…そして、無言のまま、深雪は兄ちゃんと学校へ…僕は一人部屋に残された。暇なので水波の元へと行く。
「水波…なんで、無言なんだよ~」
僕を睨む水波、その眼光の力に後ずさりする僕。
「五輪澪様は美人でしたか?」
「水波の方がかわいい…」
「私は、五輪澪様は美人でしたかと訊きました」
「水波の方が好きだよ…」
水波に甘えるように抱きつく。
「ズルい…そんなことで…」
お互いの頬を擦り合わせる。
「心が折れそう…」
水波の衣服をなかったことにして、水波の乳首を口に含む…
「ダメだぁ…和也君はズルいよ!」
水波は心の扉を開いて、僕に開放してくれた。
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「どうして、あんなことしたのさぁ?」
水波の部屋の水波のベッドで添い寝…無言の刑の理由を訊いた。
「たぶん、和也君がマインドロスト中だと思うんだけど、奥様から通信があって、和也君が望むなら、五輪澪さんと祝言も有りかなって…」
うん?
「ねぇ、祝言って?」
「婚礼のことよ!」
「婚礼って?」
「結婚ってことよ!私と深雪様は、てっきり和也君が、澪さんに…」
「彼女に?何?」
「彼女に…心を開いたのかなって…」
「心を開くとなぁに?」
「惚れたのかなって…だって、そうでしょ?深雪様を正室に、私を側室にしてくれるはずだったよね?」
水波が激しい剣幕で、僕に襲い掛かってきた。
「そうだったはずだよね。僕は深雪と水波とエリカとずっといたいよ♪」
「えっ?エリカさん…なんで?」
「なんでかな?あれ?」
「エリカさんには渡しません」
僕の顔を胸の谷間に押し込んだ水波…息苦しい…
---七草真由美---
和也君は来週から復学となった。七草家、四葉家、五輪家の各当主から、和也君の身元引き受け人になると通達があったからだ。この場合、五輪家の存在はデカかった。うちも四葉家も、良いイメージが無く、ダーティー系な家系であったが、五輪家は、国家公認戦略級魔法師『十三使徒』の一人を擁する家系であり、魔法科高校としては、無視できない存在であるから。和也君はいつの間に、五輪家と関係を持ったのだろうか?ガーディアンである私に何を言わないし…
「七草は知らなかったのか?」
十文字君に訊かれた。
「知らなかったわ」
達也君も深雪さんも口を挟んで来ない。彼らすら知らなかったのかも知れない。
---司波和也---
金曜の夜、茜ちゃんから連絡が来た。
「来週からのGWは、和也君と東京で過ごしたいんだけど…」
GWは小淵沢だったよな…
「ごめん…来週はダメ。そうだ。今からおいでよ♪」
「えっ?!」
一条家へ転移した僕。
「え?!マジですか?」
固まっている茜ちゃん。うん?家族団らんの場から、連絡をしたようで…茜ちゃんの家族が勢揃いしていた。
「和也…お前なぁ…」
将輝が苦笑いしている。
「だって、来週は予定があるから。今週は予定があったけど、無くなったから♪」
「茜、準備をしていきなさい」
美登里さんが茜ちゃんに命じた。急いで準備をしに行く茜ちゃん。あぁ、美登里さんとは、一条家のお母さんだ。名前呼びするように言われている。
「すまないな、和也君。茜を頼むよ」
茜ちゃんパパに言われた。
「はい」
そして、準備の出来た茜ちゃんと自宅へ転移した。
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今度は僕の家のみんなが固まっている。
「一条家の娘さんを預かった?誘拐でもしたの、和也君…」
水波が誤解をしている。
「違うって…だって、茜ちゃんと将輝さんは友人だよ。誘拐なんか意味をなさないし」
「兄さん…五輪家だけでなく、一条家も知り合いなの?」
何故か、深雪が驚いている。
「まったく、和也と来たら…」
兄ちゃんは苦笑いしているし。
「そうだ、茜ちゃんに紹介するね。兄ちゃんの達也、僕の双子の兄だよ。で、こっちは妹の深雪、で、幼なじみでメイドの水波。後、二人いるんだけど、今日はいないから、紹介はまた今度ね♪」
「すごい…きれい人…」
茜ちゃんが深雪に見とれていた。兄ちゃんに対しては恐怖心を持ったようだ。兄ちゃんの放つオーラを感じたのかもしれない。兄ちゃんは茜ちゃんに対して、警戒しているようだった。
「部屋は、客間でいいかな?」
茜ちゃんに訊いた。
「和也君と一緒がいいけど…」
「ごめん…僕は深雪の部屋に居候なんだよ」
「えっ?妹さんと同じ部屋?まさか、ベッドは別ですよね?」
「いや…ベッドも同じだよ。2つも置いたら部屋が狭くなるし…」
何かに絶句している茜ちゃん。
「行きたい場所を書いておいてね。明日とあさってで案内するから。帰りは僕は送るから、時間は気にしないでいいからね」
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茜ちゃんが来ているのに、相変わらずの深雪と水波…眩しい朝日が懐かしい…オレンジ色に見える朝日を拝んでいる僕…
茜ちゃんの望む場所へ案内しきったと思う。日曜の夜に、茜ちゃんを茜ちゃんの家に送り届けて、翌日の授業の勉強を深雪に習う。今週1週間、停学してしまったので、勉強がよくわからないから。
「えっ?兄さん、授業に出ていても、わからないですよね?ふふふ」
深雪にからかわれる僕。確かに、出ていても、わからない。なら、問題はないかな?
朝の通学路…途中でエリカが合流してきた。
「かずやぁぁぁぁ~!」
僕に抱きつき、頬を重ねてきた。そんな風景を、深雪と兄ちゃんが苦笑いして見ている。
「エリカは、兄さん中毒で禁断症状が出始めていたんですよ」
って、深雪。あれ?いつの間にか、さん付けがなくなっている。
「深雪…それは言うな!」
久しぶりの学校…正門前の地面は、埋め戻したようだが、ボコボコ感はまだまだある。
そして、教室…僕を見ないようにしているクラスメイト達。美月、幹比古、レオは僕を歓迎してくれたけど…
「なぁなぁ、あの浮遊術はどうやったんだ?」
昼休み、レオに訊かれた。浮遊術でなくて、翼を展開したんだけど…そんなことを言ったら、化け物感に箔が付きそうで、迂闊に出さない雰囲気である。
「内緒だよ。タネ明かしをすると、僕の優位性が減るから」
深雪とエリカが僕の肩を枕に、リラックスしているようだ。
「そうだ、エリカ、今週末は、一緒に来てくれよ」
って、兄ちゃん。
「なんだっけ?」
「呼ばれているだろ?」
「呼ばれている?なんだっけ?ええ~っと…あぁ、和也のガードだな。わかったよ」
あれ?エリカって、僕のガーディアンだっけ?
「私も行きます!」
雫さんが名乗りをあげた。
「そうだな…和也に誠心誠意尽くさないと、ダメだもんだ」
って、兄ちゃん。
「…」
無言を返す雫さん。
「能力が戻ったら、和也の元を去るのか?それとも、和也を襲うのか?」
「襲いません。完全ロストされても困りますから」
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放課後…生徒会室へ…そうだ♪
「真由美さん、退学になったら、三高へ転入します♪」
真由美さんの顔が強張っていく。
「ど、どういうことよ、和也君…」
「三高の知り合いに、話をしたら、いつでも転入して来いって。歓迎してくれるそうですよ」
「え?三高に知り合いがいるの?」
「うん♪一条将輝さんだよ」
「おい…」
克人先輩が言葉を失っている。
「和也君の人脈って…その場合、達也君と深雪さんは?」
「私は兄さんと一緒に行きま~す♪あんな小娘には渡せないもの」
小娘?あぁ、茜ちゃんのことかな?美登里さんってことは無いよな。面識は無いだろうし。
「和也と深雪だけだと不安です。俺も行きますよ」
「そう…ならば、絶対に和也君は退学にはさせません!」
兄ちゃんがいなくなるのを、阻止したいような真由美さん。一気に纏うオーラの量が増えているし…
「七草…お前なぁ…」
真由美さんを窘めようとする克人先輩。あぁ言うのが愛情なのかな?情愛なのかな?良くわからない。