---七草真由美---
入試開催日の前日、校長に呼び出された、生徒会会長である私。
帰国子女が通うことになるから、生徒会でフォローしてくれという。まだ、入試前なのに、合格らしい。
「一応、国立ですよ。入試前に合格って、どういうことですか?」
前例が無い処置に、質問をしていく。
「推薦があったのだよ。師族からな。もし、入学させなかったら、後悔するぞってな」
それは推薦では無く、脅しでは無いのか?どこの家だ?
「脅してきたのは、どこの家ですか?」
「脅しでは無い。推薦だ。滅多な事を言うんじゃない」
相当な力の有る家のようだ。そうなると、1か4か9か10かな。
「その子女の情報は見られますか?」
資料を手渡された。その特別待遇者の名前は、司波和也。司波?4か?四葉家の分家か?資料に目を通していくと、他に2名が受験するようである。司波達也、司波深雪…三つ子か?
「後、他言はするな。特別扱いをしたと思われるな。いいな、七草君」
そう言われても…
「他2名は、テストの成績に関わらず、彼と同じクラスにする。相手の希望は二科生だ」
え?二科生?一科生でなくて?二科生は、一科生に比べて保有サイオン量の少ない者がいくクラスである。それ故、一科生の中には二科生を差別し、バカにする者が少なくない。二科生の中にも優秀な者はいるのだが…二科生を希望?有り得ない。
「どういうことですか?」
「彼は10年ほど、この国では無い場所で生活をしてきたそうだ。なので、この国の義務教育を受けていない。一科生の授業についていけない可能性があるそうだ。他の2名の兄妹は、そんな彼をサポートする為に同じクラスにして欲しいそうだよ」
どこの国で生活をしていたんだ?
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入試が終わり、再び校長に呼び出された。
「テスト結果なんだが…」
校長の声は震えていた。結果の資料を手渡されたので、目を通していく。息を飲む私…何?この点数は…
長男 達也 筆記100 実技△
次男 和也 筆記100 実技○
長女 深雪 筆記 99 実技○
と…長男以外、一科生でもやっていけるようだ。筆記テストの1位は長男と次男で、3位は長女…筆記テストの上位3名は、この兄妹だった。
次に実技…次男と長女の保有サイオン量は、現役魔法師の中でもトップクラスであり、長女の2倍以上の値を次男が叩きだしていた。何…このレベルの高さは…なのに、二科生って…波乱が勃発しそうだ。問題有る兄妹なのか?
「なんで、二科生なんですか?」
「次男なんだが…彼が帰国子女にあたるのだ。で、筆記テストでは無かったから。特別に対話形式でのテストにしたのだよ。彼は文字の書き取りが苦手だそうで…」
文字は読めるらしいが、文字が書けない…これが彼らが二科生に行きたい理由らしい。
「後から、見直しが出来無い、対話式のテストで満点なんだよ。これはこれで凄いことではあるが、筆記出来無いのは大きい。なので、3名とも二科生に決定した。だから、生徒会で見守って欲しい」
問題が大きすぎる。
「しかし…」
「決定事項だ。相手様にはもうお伝えしている。頼むよ、七草君」
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生徒会室に戻り、居残って貰った風紀委員長の渡辺摩利、部活連会頭の十文字克人、生徒会副委員長の服部 刑部少丞 範蔵に伝えた。
「何だ?その特別待遇は…」
十文字君ですら、驚いている。
「えっ?そんな成績で二科生?有り得ない…」
摩利も私と同じ感想であった。
「特殊な能力持ちなんですかね?」
はんぞー君に訊かれた。
「普通はアピールポイントとして、自慢げに書くはずなのに、3名とも秘匿だそうよ」
「何か、有るな。うぅ~」
十文字君が唸っている。
「探ってみますか?」
はんぞー君が提案してきた。
「四葉家の推薦らしい。だから、止めた方がいいわ。危険過ぎるわ」
『四葉』の名前を聞いて、顔から血の気を失せていく皆。師族の中でも武闘派で知られている四葉家。ある事件の時、1つの巨大国家を崩壊させた過去があるそうで、『アンタッチャブル』と呼ばれている家系である。
「四葉の秘匿戦力か…本人達と逢って、訊き出した方が安全だな」
十文字君の案に、恐怖を抱いていた皆が頷いた。
---司波和也---
そして入学式の朝を迎えた。今日は朝の鍛錬を中止して、真新しい制服を着ての朝食である。
「和也君、馬子にも衣装だね♪」
水波に誉められた。
「新入生代表の挨拶を、なんで断ったのかな?」
水波に訊かれた。
「そういうのをしたことが無いから」
「深雪さんは?」
「え?兄さんの方が得点が高いのに、私が出来る訳ないじゃないですか。ねぇ、兄さん♪」
「和也君、問題を起こさないでくださいよ。達也さん、深雪さんに迷惑ですから」
水波に釘を刺された。うん、注意しようっと。
「私は迷惑と思いません」
深雪が笑顔で僕を見た。
「俺も思わない。和也の生きたいようにサポートする」
うっすらとした笑顔で、兄ちゃんが僕を見つめてくれている。
「まったく、何て兄妹なんですかね?私は心配ですよ~」
「水波は心配症すぎるよ」
「はぁ?和也君に言われたくないです!」
そして、学校へと向かう時間。水波は家に留守番するそうだ。
「水波も来れば良いのに」
「はぁ?使用人が保護者席に座れないでしょ?和也君、いい加減、私の立場を考えてください。家族同然に扱ってくれるのは嬉しいですが、奥様の前ではやめてください!」
半べそをかき始めた水波を、優しく抱き締めて、あやす♪
「私は和也君のようなお子ちゃまでは無いんですよ。まったく、もぅ~」
水波の怒りを無かったことにして、家を出た。
玄関前にはリムジンが止まっており、中には真夜さん、深夜さん、穂波さん、葉山さんがいた。
「和也!」
真夜さんと深夜さんが僕達をカメラで撮していく。
「では、若様、達也様、深雪様、学校へ送ります」
僕達も車に乗り込むと、車が走り出した。
---七草真由美---
入学式の日…学校で準備をしていると、大きな黒いリムジンが駐車場に入って来た。ナンバー確認をすると、四葉家の車両のようだ。中から、我が校の制服を着た3名と、その保護者らしき者達が降りて来た。リムジンで登校とは…
テスト成績1位の司波和也、2位の司波深雪の2名は、新入生代表としての挨拶を辞退した。成績トップの者が挨拶をする仕来りだったのだが、それを無視したようだ。
「七草、気を付けろよ。能力が分からない内は、無理はするなよ」
と、十文字君がアドバイスをくれた。
「そうね」
入学式は予定通り終わった。新入生代表は3位になった北山雫さんになってもらった。成績の順位を伝えずに…彼女は成績トップだと思っているようだ。これはこれで酷だったかな?
---司波和也---
入学式が終わり、配属されたクラスの教室という部屋に入った。黒板には席が指定されていた。僕の左隣は兄さん、右隣は深雪だ。指定された席に座った。
「おい、名前はなんて言うんだ?私は千葉エリカだ」
赤毛の女性が訊いてきた。
「僕は司波和也で、こっちが妹の深雪で、アッチは兄ちゃんの達也です」
「三つ子か?あぁ、俺は西城レオンハルトだ。レオと呼んでくれ」
大きな男性に訊かれた。
「俺と和也は双子で、深雪は妹だ」
兄ちゃんが答えた。
「遅生まれの妹さんですか?あ、僕は吉田幹比古です。エリカとは幼なじみなんですよ」
「えぇ、そうです。お兄様と兄さんは早生まれですから」
深雪が答えた。
「その呼び方の違いは、何ですか?私は柴田美月です。よろしくお願いします」
「お兄様は敬愛していますから。兄さんは大好きですから♪」
嬉しそうに答える深雪。
「ブラコンか?」
エリカが呟いた。
「うん?ブラコンって何?」
知らない言葉を耳にすると、つい質問してしまう。
「ブラザーコンプレックスだよ。兄に対して強い愛着とか執着を持つ妹の事だ!」
エリカが答えてくれた。
「詳しいけど、エリカもブラコンなの?」
僕の質問に耳を紅く染めるエリカ。ビンゴなんだな。
「そ、そ、そんなこと…無いよ~」
「エリカは否定しているけど、和也、正解だよ」
「おい、幹比古のくせに、生意気だぞ!」
幹比古にじゃれつくエリカ。仲が良さそうだ。
その後、担任の先生が来て、注意事項や、学校内の施設の紹介をして、高校生活1日目は無事に終了。帰り支度をしていると、
「生徒会会長の七草真由美です。司波達也君、司波和也君、司波深雪さん、一緒に生徒会室に来てださい。ちょっと、訊きたいことが有りますので、よろしくね♪」
訊きたい事?
「なんか、やらかしたのか?」
エリカが心配そうに訊いてきた。今日は問題を起こしていないはずだけど…
「行かないと問題になる。行くぞ、和也、深雪」
兄ちゃんに言われて、兄ちゃんの後に続く僕と深雪。深雪は僕の腕に抱きついているんだけど、これがブラコンってことなのかな?
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そして、生徒会室…4人の男女が、僕達を睨んでいる。何か、やらかしたかな?
「それで、どう言ったお話でしょうか?」
兄ちゃんが切り出した。こういう場合は、兄ちゃんに任せると問題が少ない。
「どうして、二科生で甘んじているの?」
会長の真由美さんが、訊いてきた。
「甘んじていません。それに一科生も二科生も同じ学校の生徒です。生徒会が差別発言とは、驚きました」
はっとした真由美さん。この勝負、兄ちゃんの勝ちだな♪
「では、何故能力を秘匿しているんだ?」
「所持能力の開示は、強制では無いですよね?」
「しかし、学校としても生徒会としても、把握はしておきたい。問題が起きてからでは遅いんだ」
大きな男性が兄ちゃんに喰い付いている。
「問題?こちらからは起こしませんよ。なので、問題は無いと思います」
「何故、言い切れるのだ?」
「簡単に人間を殺せる能力だからです。だから、滅多なことでは使いません」
「お前達はマーダーなのか?」
小柄な男性が訊いてきた。うん?
「ねぇ、マーダーって何?」
深雪に訊いた。
「殺人者とか暗殺者って感じかな」
笑顔で答えてくれる深雪。
「なるほど…言葉に不自由って情報は確かなようだな」
大きな男性が、僕を見下ろしている。
「俺達はマーダーでは無いですよ。個人相手はハンデが有りすぎます」
「ハンデ?お前達は何様だ!」
小柄な男性が兄ちゃんに喰い付いた。兄ちゃんになんてことをしているんだ?少し怒りのオーラを纏う僕。すると、すかさず、
「ダメだよ、兄さん」
僕に縋り付く深雪。怒りのオーラを霧散させていく僕。
「なるほど、妹さんが、彼のブレーキ役なのね」
真由美では無い女性が呟いた。
「あまり、和也を怒らせないことだ。アイツを確実に止められるのは、深雪と和也のガーディアンだけだ」
水波のことだな。いや、兄ちゃんでも止められるよ♪
「怒らせると、どうなるんだ?」
小柄な男性が執拗に兄ちゃんに、食らいついている。
「ダメだって、兄さん」
強く抱きついてきた深雪。
「俺達の能力を知りたいんですね。はっきり言って、あなた達相手では、能力は使わないでも制圧できそうですが」
兄ちゃんが煽り始めた。兄ちゃんも、いらつき始めたようだ。深雪は兄ちゃんをスルーしている。僕だけで手一杯らしい。
「おいおい、俺達を甘く見過ぎていないか?」
小柄の男が動いた。兄ちゃんが反応して、頸動脈を突いて意識を狩った。それを見た大きな男性が兄ちゃんに…深雪を振り払い、僕が応戦した。男性が何かの術を発動したので、それを無かったことにして、男性の腹部に拳を撃ち込んだ。壁まで吹き飛ぶ男性。
僕と兄ちゃんは深雪を護るように、残りの二人に対して身構えた。
「はんぞー君…十文字君…」
真由美さんが、床に寝ている二人の名前を…もう一人の女性が剣らしき物を抜いて、僕達に襲い掛かって来た。兄ちゃんは相手の得物を消滅させて、僕は相手の意識を無かったことにした。意識を刈り取られ、その場に倒れた女性。
「摩利…」
真由美さんの顔から血の気が引いていく。
「まだ、やりますか?」
僕と兄ちゃんは臨戦態勢を解いていない。こういう局面での油断は、危険であるから。
「それが、あなた達の能力?」
「さぁ、どうでしょうか?」
僕達は真由美さんを警戒しながら、部屋を出た。
---七草真由美---
まさかの展開である。はんぞー君、十文字君、そして摩利が何も出来ずに、床に横たわっている。はんぞー君と摩利は、カツを入れて、意識を呼び覚ました。しかし、打撃攻撃を受けた十文字君は病院送りになってしまった。何と言う破壊的な打撃なんだ?
「十文字先輩を病院送り…有り得ない」
はんぞー君の顔には血の気が全くない。もしかすると、私もかもしれない。『鉄壁』という二つ名を持つ十文字君の防御力は、前線でも通用する程の堅固な物なのに…まるで彼には効かなかった。彼の攻撃を防御出来ずに、真面に打撃を入れられてしまった。
「会長、十文字先輩はアレを使わなかったんですか」
アレとは、十文字君の代名詞の『ファランクス』という攻防一体の術である。戦車の砲撃にも耐える術…しかし…
「使ったわ…その結果があれなのよ…」
彼の打撃は戦車の砲撃以上って事になる。
「私のCADが消えている…」
何かの術で消された摩利のCAD。何者なんだ?あの新入生トリオは…前線に駆り出されても、おかしくない戦力だが…四葉家は彼らを秘匿していた。何の為に?
「会長…まさか、沖縄の件って、アイツらがやったんでは無いですか?」
沖縄の件とは、数年前、大亜連合の艦隊が沖縄に侵攻してきた。それを一瞬で殲滅した者がいたそうだ。国防軍は誰がやったのかを知っているらしいが、その存在は秘匿されている。
「あの三人が『沖縄の悪魔』なのかしら…」
背筋に冷たい物が走り抜けて行く。
「可能性は有りますね。どうする、真由美?」
摩利に訊かれた。
「どうにも出来無いわ。彼らに勝てる者は、この学校にはいないんだから」
十文字君が退院したら、相談するしか無いか。問題が起きる前に…