---司波和也---
生徒会室を後にして、正門へと向かうと、エリカ達が誰かと揉めていた。
「だから、彼氏募集なんかしていないんだよ!」
声を荒上げるエリカと泣きそうな表情の美月に、群がる男性達。
「おっ、これは美形だな。ねぇ、君。二科生のクソといないで、俺と付き合ってくれないか」
群れの中の一人が、深雪の前に立ち、言葉を掛けてきた。そして、深雪が抱きついている腕の持ち主である僕に、
「おい!二科生のクソは、失せろよ!彼女は俺の女にする」
意味がわからない。深雪は女なんだけどなぁ。こういう時はスルーが一番だな。なので、スルーすると、
「無視?あぁ、耳が聞こえないのか?おい、クソ二科生!」
僕の肩を思い切り握り締めて、僕の腕から深雪を引きはがそうとした。僕から何かを感じとった深雪は、咄嗟に僕から離れる。次の瞬間、彼が保有しているサイオンを無いことにした。
「おい!貴様、何をした?!」
身体の中の異変に気づいた彼が、僕の胸倉を掴もうとしたので、彼の顎の先端に掌底を叩き込んだ。その結果、後方へと吹き飛ぶ彼。
「二科生のくせに生意気なヤツだな。おい、ヤキをいれてやろうぜ!」
「「おぉ!」」
誰かの呼び掛けに反応する群れの男性。しかし、それっきり動かなくなった。深雪が魔法を叩きこんだようだ。群れの男性達の瞳は濁っている。
「深雪…やりすぎじゃなない?」
確認した。これ、死んでいるのかな?マズいよな?
「兄さんに、集団で襲い掛かるなんて…許せないです」
僕に泣きすがる深雪。
「和也、これはマズいなぁ。無かった事にしてくれ」
兄ちゃんに言われた。そうだよね。マズいよね?なので、深雪の魔法攻撃を無かったことにした上で、全員の保有サイオンを無かったことにした。
息を吹き返した群れが、僕に迫る。咄嗟に『スリープ シープ』という魔法を群れに掛けた。これは羊を100匹数えるまで眠らせる魔法である。まぁ、5分程度で目覚めるはずだ。
「何をしたんだ?」
兄ちゃんに訊かれた。
「5分ほど立ち寝をしてもらう魔法だよ♪」
「兄さんらしいなぁ♪」
半べそだった深雪が笑顔を見せ、再び僕の腕に抱きついて来た。
「お前ら…何者だ…」
蒼い顔のエリカが僕達を指差してきた。
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エリカ達と喫茶店へ…
「深雪…プリンだ…僕、プリン食べたいよ~」
「はいはい♪兄さんの好みですものね」
「で、お前達、何者だ?ガラの悪そうな一科生を容易く無力って…なんで、二科生なんだよ?」
「二科生である理由?和也だよ」
僕を優しい眼差しでみる兄ちゃん。
「一人にして置けないからな。かと言って、深雪一人では負担も多いし。俺も加われば、大丈夫かと思ってね」
深雪がオーダーをとりまとめて、注文をしている間に、兄ちゃんがエリカに説明をしてくれた。
「あぁ、そういうことか…って、なんで、コイツ、こうなんだ?」
興味深そうに僕を見るエリカ。
「家の事情だ。理由は…和也の前では言いづらいな。だけど、和也のお陰で、家族が救われたんだ」
「救われた?」
「そう、色々な呪縛からね。和也が総て背負ってくれたんだ。だから、俺達は和也をサポートしたいんだよ」
「はぁ~い、あ~んして♪」
エリカと兄ちゃんが真面目に話している隣で、深雪がプリンをスプーンで掬い、僕の口に入れようとしていた。
「美味しい♪これは焼きプリンだぁ♪」
難しい話は、僕には無理。だから、兄ちゃんに、おまかせだな。
「高校生にしては、無邪気すぎるだろ?アイツ…」
「見た目は高校生だけど、中身は幼稚園児だから…それが、二科生にいる理由だ」
「中身…幼稚園児…それって…事故かなんかで、最近目覚めたのか?」
「エリカ、正解だ。だから、文字が書けないんだよ。学校に通ったことが無いから」
「そんな…」
エリカの視線が興味本位から、心配そうになってきた。どうしたんだ?
「エリカ達も協力してくれないか?和也のサポートを。言い聞かせれば、理解する素直さは持っている。ただ、知らないだけなんだ」
「あぁ、できる限りだけどな」
「俺も協力するぞ」
兄ちゃんの提案に、みんな協力するらしい。まぁ、平和が一番だな♪
---七草真由美---
恐れていた事態は、起きて仕舞った。一科生が彼らに襲い掛かり、返り討ちに遭ったようだ。怪我人は1名で、残りはスリープ系の魔法で眠らせたようだった。
「今後も起きるでしょうね?彼らは一科生にとって、目の上のたんこぶだろうし」
はんぞー君の言うことは正しい。また、起きると思う。何か対策を練らないと。
「対策…風紀委員で、彼らと一科生が接触しないように、ガードするしか無いかな」
風紀委員長の摩利の提案。それしか無いか…十文字君がやられたことで、部活連の動きも封じないとダメだろうな。
コンコン!
ドアがノックされて、応対すると、新入生代表になった北山雫さんがいた。部屋へ招き入れると、
「二科生による一科生狩りが起きたそうですね」
う~ん…風評被害もあるのか…
「起きていませんよ。あれは、一科生が二科生を見下して、手を出したそうですよ」
「それは間違いです。被害にあった者から聞きました。そのような横暴な二科生は退学にするべきだと思います」
う~ん…違うのになぁ…
「新入生代表として、生徒会の皆さんに、直訴をしに来ました。一科生になれないのは、素質が無いのに、一科生を襲うなんて、逆恨みもいいところですよ」
「う~ん…言いにくいんだけど…」
本当の事を伝えるか、ギリギリまで悩んだ。でも、間違いを正すには…
「北山さん、あなたは首席で合格では無いんですよ」
「えっ?新入生代表は首席合格者がする習わしですよね?」
驚いた顔を一瞬見せたが、また、冷静に話しだした。
「辞退したのよ。総合成績、1位の方と2位の方がね…」
「辞退…なんで?名誉なことなのに…なんでですか?」
「で、あなたは総合3位で、筆記は4位なのよ…」
「え…嘘でしょ?なぜ、嘘を言うのですか?」
嘘では無いんだけど…校長に渡されていた極秘資料のうち、順位表だけを見せた。
「え…司波和也…司波深雪…なんで?辞退…」
資料に目を落とす、資料を持つ手が震えだした彼女。
「こちらで収集した情報では、一科生達が、二科生である司波深雪さんに付き合いを強要し、兄である同じく二科生である司波和也君に襲い掛かって、返り討ちに遭ったそうなのよ」
「私より優秀な方々が…二科生?なんでですか!」
涙目で私に詰め寄ってきた彼女。
「兄の和也君は帰国子女でね、言葉が不自由なの。スピーチが出来る状況では無くて、妹の深雪さんは和也君が辞退した役は受けられないって…」
「言葉が不自由?」
「それでね、一科生だと言葉の壁が有るから、二人は二科生を希望したのよ」
「言葉の壁…」
「いい?あの兄妹に関わらないように、一科生全員に伝えてください。ソレが新入生代表である、あなたの務めよ。例え、一科生が束になっても、彼らには叶わないから」
「束になっても?」
「そう…束になっても。彼らからは手は出さない。だから、ケンカを売らなければ安全よ」
「手を出さないって、言い切れますか?」
食い下がる彼女。
「言い切れるわ。彼らの攻撃力は危険なレベルなの。彼ら自身が分かっているから、手は先に出さないわよ」
「危険なレベル?」
しつこく食い下がる彼女。
「そうよ!」
苛ついてきた私は、つい声を荒上げてしまった。
「俺もそう思う。ただ、対戦した俺の感想だけど、制圧すれば、何もしない。手を出さなければ、きっと何もしないと思う」
はんぞー君が経験談を話してくれた。
「制圧だけ。攻撃はしないわよ。私も意識を刈り取られただけだし…」
摩利も経験談を話した。
「その二人のボスである私には何もしなかったのよ。私は攻撃を仕掛けていなかったから。きっと、正当防衛時にしか、制圧はしないんだと思う」
「そうですか…」
意気消沈して部屋を出て行く北山さん。
---黒羽亜夜子---
「なんだと!アイツが生きていただとぉぉぉぉ~!」
応接間から父の驚いたような声が聞こえてきた。気になって、会話の盗み聞きを始めた。
「えぇ、真夜様が一高の入学式に行かれると聞き、こっそりと監視をしていたら、達也と深雪と一緒にいました。間違いは無いです。達也と顔が一緒でしたから」
相手の声は父の側近の者だ。達也さんと顔が一緒?それって…遠い昔、神隠しに遭って消えてしまった彼かな…見付かったのかな?
「有り得ない。首を絞め上げた後、確実を期して、銀のナイフで心臓を突き刺したんだ。脈も呼吸も停止していたんだ。それなのにか?!」
父のドロップアウト…それは私にとって許せる事では無い。和也君を父が殺したって…
「なんで!和也君を殺したのよ!」
怒りが暴走して、応接間に踏み込んだ私。
「亜夜子…聞いていたのか…」
私を見て驚く父。まさか、自分の父親が、和也君を…
「なんで!殺したのよ!」
「アイツは四葉の失敗作だ。能力も無いくせに、真夜様に取り入るなんて、許せる訳無いだろ?あんなゴミを次期当主指名されたら、四葉の恥だぞ!そうは思わないのか?」
「思わない…和也君は、私にも文弥にも…使用人だった水波ちゃんにも、分け隔て無く接してくれた。優しい気配りもしてくれた。なのに…そんな理由で…殺すのよ!」
次の瞬間、首に衝撃が…
---黒羽文弥---
当主より命が下った。次期当主として、成果を出して来いと…ターゲットは、司波和也を名乗る人物を消すことだ。今は亡き和也さんになりすまし、深雪さん達と暮らしているそうだ。許せない!
姉の亜夜子は、ソイツの攻撃で、負傷したそうで、緊急入院したそうだ。なんてヤツだ。黒羽家に手を出すなんて…
夜分ではあったが、司波邸を訪れた。
「文弥君、どうしたの?」
えっ…水波ちゃんが応対に出て来た。
「なんで、水波ちゃんがいるの?」
和也さんが生きていた頃、一緒に遊んだ仲間である。
「奥様からの命で、今は和也君のガーディアンをしているの♪」
え?水波さん、真夜様まで騙しているのか。ますます許せない。
「ちょっといいですか?達也さんにお話があります」
達也さんなら味方になってくれると思う。達也さんの許可を貰いに、水波ちゃんが奥に下がった。
「どうしたんだ?こんな夜遅くに…」
しばらく、待っていると達也さんが出て来てくれた。
「内密にお話したいことが…」
「まぁ、入ってくれ」
家の中に潜入できた。リビングでは深雪さんと、謎の敵が仲良くしていた。
「和也、文弥君は覚えているか?」
謎の敵は首を傾け、思い出している振りをしている。
「あぁ、亜夜子ちゃんの弟の…昔、水波とよく遊んでいた…」
僕と目が合うと、僕に抱きついて来た。チャンスだ。銀のナイフを心臓に突き刺した。
「えっ?なんで…あの時と一緒だ…」
あの時?そういえば、以前にも同じことを…デジャブ感がある…
ゴトン!
アイツは左胸から出血して床に倒れた。これで任務は終了したが…
ドン!
壁に叩き付けられた。水波ちゃんの障壁魔法で、弾かれたようだ。
「なんで…なんでよ!文弥…なんで、和也君を…ねぇ、和也君!起きてよ~」
アイツに泣きすがる水波ちゃん。
「どういうことだ?なぁ、文弥君」
「ソイツは、死んだ和也さんに、化けたニセモノですよ!達也さん達は騙されていたんです!」
「ふふふ、騙されているのは、あなたですよ、文弥さん♪」
深雪さんの表情は危険だった。あんな冷たい視線を放つ深雪さんは、初めてみる。
「そうか…和也が死んだことを知っているのは、俺達、家族と実行犯グループだけだ。文弥、以前もお前が和也を殺したんだな?」
達也さんの表情が恐い…え?今何て言った?和也さんが、死んだことを知っているって?どういうことだ?
「あぁ、驚いた♪あの時と同じなんだもの」
水波ちゃんに抱かれて、息を吹き返したアイツ…なんで?左胸をナイフで貫通したはず…いや、服の左胸部分は、ナイフで刺した部分は斬れており、そこを中心に真っ赤に染まっている。
「実行犯グループの敗因は、和也の能力を知らなかったことだ」
え?和也さんって能力無しだったんじゃ…
「能力ですか?無かった筈では?」
「兄さんの能力は『不死身』『身体再生』なの♪知らなかったの?ふふふ♪」
無表情な深雪さん…楽しそうに能力を教えてくれた。不死身?死なないのか…身体再生?死なないで欠損部分を修復しちゃうんだ…
「兄ちゃん、僕の頭に黒い袋を被せたのは、亜夜子ちゃんパパだよ。首を絞めたのは亜夜子ちゃんパパで、ナイフを突き刺したのは、文弥君だったよ。今、思い出した♪」
デジャブ…そうだ…以前も僕が和也さんを殺したんだ…二度も殺してしまった後悔から、手にしたナイフで、自分の首を…
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目が覚めると、隣に姉さんがいた。ここはどこだ?知らない部屋にいる。
「文弥…大丈夫?」
姉さんに訊かれた。
「大丈夫だけど…ここはどこ?」
「和也君のベッド。和也君は深雪さんと寝るって…」
「なんで、ここにいるの?」
「思い出さないでいいのよ。私が背負うから…」
意味が分からない。何があったんだ?