翌朝は、ズーンと頭と躰が重かった。
・・・良かった、今日が休みで
朝風呂に入り、身支度をしていたら、処方箋が無い事に気づき沙樰は、顔が真っ青になった。どこで、失くしたのかと考えたが、病院を出た所までは、あった事を覚えていたが、その後の記憶は曖昧で・・・
ヤベぇ・・・。仕方ない・・・今日、また京楽先生に、お願いして処方箋を書いて貰おう
身支度を整え、沙樰は病院に向かった。病院に入って行くと既に、待合はいっぱいだった。受付に顔を出すと
「この間、診察券置いていったでしょ」
あっ
「まぁいいけど・・・今日は、逃げちゃダメよ」
はい??
「何でもない」
受付の人が、意味深な言葉を残し沙樰のカルテを探している。沙樰は診察が回ってくるのを待っていた。
「若桜さん、診察室にどうぞ」
名前を呼ばれ、診察室の中に入ると、即座に帰り・・・否、即刻帰りたくなった。
「おはようさん。沙樰」
私は、いつぞやのデジャブを見てるのでしょうか。だとしたら、直ぐに醒めて欲しいです。
すると、市丸はベストのポケットから白い紙を出し
「昨日の忘れもんや」
・・・ありがとうございます。で、何で今回もいるんですか?
すると、看護師がニコやかに笑みを浮かべ
「京楽先生は大学の特別講義の為、不在なので、代わりに市丸先生に来てもらったのよ・・・前回、患者さんに評判良かったし」
うわぁ・・・悪魔の宣言聞いた気がする。これが、夢だったら、どんなにいいか・・・と言うか、大学病院の方の外科外来は担当しないんかい・・・この人は
「ボクは、外科外来の担当せんんやで・・一応、偉い人やから」
・・・でも、たまに愛染先生も外来に入っておられるようですけど?外科部長なのに
「あぁ・・あの人は、餌探しに外来に入ってるだけや」
・・・うわぁ・・・最低。
(・・・看護士仲間にバラしたろ)
「で、今日はどないするん?この間みたいに突っぱねて帰りはるか、大人しくボクの診察を受けはるか・・・どっちがえぇ?沙樰。ふふふっ」
肘をついて、楽しげに聞いて来る。見ていてムカツク。今日の私は最初から選べる道なんて無かった。
・・・受けます
「聞えへんなぁ?」
市丸先生の診察、受けます
「ほうか」
「じゃ、沙樰ちゃん・・・こっちね」
看護士の後をついて沙樰は、足取りが鉛の様に重く内診室の中に入った
「下着は、籠に入れてね」
こんな日が来るとはなぁ・・・ヤダヤダ
沙樰が、ブツブツ嘆いていると看護士がカーテンの向こうで
「嘆かない、嘆かない」
沙樰は、渋々と下着を脱ぎ内診台に乗ると看護士は、タオルを脚にかけ、スイッチを押す。内診台は動きながら体勢を変え下半身がカーテンの中に吸い込まれ診察体位になり何度、経験しても嫌だと沙樰は思った。
「消毒するよ」
性器の周りを綺麗に消毒の下処理を終えた看護士は市丸を呼んだ
「先生、お願いします」
「今、行きますわ」
市丸がカーテンの向こうにやって来た。沙樰は、目を閉じ自己暗示をする
(カーテンの向こうに居るのは、奴じゃない、奴じゃない)
パチンと何かを嵌める音
「ほな、診察始めるで・・・力抜きィ」
市丸は、沙樰の膣に指を入れ腹を押しながら念入りに子宮と卵巣の状態を確かめる。沙樰は、膣に市丸の指が入って来る瞬間から痛みが走り続けていた。とうとう我慢できなくなった沙樰は、自己暗示の処では無くなり、腹を押す市丸の手を掴み
いっ市丸先生っ!!痛いっ!!!
市丸は、沙樰が掴んでいる手を離し
「そらそうやわ。卵巣と子宮が腫れてはるからな。ほな、機械入れるで・・・」
機械が入って来る感触。モニターに映し出された沙樰の内部の状態を見た市丸
「思った通りやわ・・・カルテに明記されているのよりステージ上がってはるし。良く、こないな状態で、勤務してはったわ」
・・・市丸先生も、同じ事おっしゃるんですね
「その口調からやと、京楽先生にも言われたん?」
…内膜症を甘く見ているとしっぺ返しくるからねって
「そうやろ?京楽先生にも、言われたやろ?無理はあかんやて」
・・・えぇ・・まぁ
「なぁ・・・月経が近いんか、もそやけどもて?」
・・・えぇ
「・・・ほうか。・・・そうなるとあの検査は、出来ひんのやろか・・・でも・・・早い方がえぇと思うしなぁ・・・う~ん」
あの・・・市丸先生??
「あっ!!ゴメンな。内診はしまいや。ほな、着替え終えたら、診察室入ってなぁ」
市丸は、診察室に戻って行き、後処理が終わり内診台のスイッチを押す。内診台は動き続けながらカーテンの中に吸い込まれていた下半身が出て来て体勢を元に戻した
「お疲れ様。じゃあ着替えをして診察室に行ってね」
着替えを終え診察室に戻り、椅子に座ると市丸は、沙樰のカルテを書いていたが、顔を上げ沙樰の方を向き
「沙樰、ほな、処置室で点滴な」
は?
「えぇから、黙って言う事聞きィ。指示は、この通りにな・・」
「はい」
今まで、治療の際に点滴を受ける処置をされた事のない沙樰は、反論する事をわすれ
「沙樰ちゃん、こっちに来てね」
診察室の裏側が、処置室だった。沙樰はベットに寝かされ
「チクッとしますよ」
点滴が始まった。規則正しい速度で、薬液が降り体内に吸収されて逝く。ボーっと眺めていると
「市丸先生、これで午前の診察は終わりです。ご苦労様でした」
「ほな、ボクちょい席外れるさかい、お昼入ってえぇですよ」
「はい・・でも、沙樰ちゃんは・・」
「それ、ボクが処置して置きますよって・・・気にせんとって下さい」
ワラワラと昼に入って行く看護士と受付の人達の声。人気の無い処置室で、ポツンとしていた。点滴の残りが半分くらいになった頃、市丸は沙樰の居る処置室にやって来た。市丸は、点滴の中に薬液を注入すると横の椅子に座り
「今な、京楽先生と話をしたんやけど・・なぁ、沙樰、午後から内視鏡入れて検査してみよな」
沙樰は、ベットから躰を起し市丸を見据え
は?検査??てか、市丸先生は専門外じゃないですか
「せやから、京楽先生に許可を貰いに行ったんよ」
許可って・・・。第一、その検査の経験は?市丸先生・・ホントにちゃんと出来るんですか?
「ふふっ。任してや!!ボク、検査得意なんよ」
玩具を与えられて喜ぶ子供みたいに答える市丸が可笑しくて、顔を横に反らし
プッ・・・ふふふっ
「何が可笑しいん??」
だってぇ・・・市丸先生が、子供みたい・・・ふふっ
「その笑顔、ボク好きやわぁ・・・」
何とも言えない空気が流れ市丸が沙樰に顔を近づけて来た。後少しで、唇が当たる所で、沙樰は顔を引いて目を細め
そんな手に、私は引っ掛かりませんよ、市丸先生
「チッ・・・後、少しやったのに」
で、検査の事ですけど・・・予約もなしに出来るんですか?
「切り替え早いわぁ・・沙樰、ムードないって彼氏に言われた事ない?」
余計なお世話です。で、他の検査予定だった人がキャンセルになったとか???
「緊急扱いや」
えっ!?そんな横暴な…
「横暴やないだろ。沙樰も看護士なら分かるやろ?この検査は必要やこと。それに外科やったら、こんなもんやないで?検査、検査、検査やし」
そりゃ手術がメインの科ですから検査は重要でしょ・・・だって、斬った、縫った、貼ったが大好きな・・・サドの集団ですもん
「サドは、否定せんけど、必要やから斬って、縫ってるんやで・・そないに思われとったやなんて・・・ボク、ショックやわ・・・・・あっ。点滴、しまいやね・・・」
あっ・・・ホントだ。
「ほな、麻酔入れるで。気分悪うなったら言うってな」
はい
市丸は、点滴管を外し、そこに薬液の入った注射器を繋ぎ薬液を注入し針を抜きパッチを貼った
「ちょっと待っててな」
・・・はい
市丸は、席を立ち診察室に行き沙樰のカルテを持ち戻って来た
「ほな、行こか沙樰」
・・・どこに?
「お昼に決まってるやろ。」
・・・市丸先生と一緒の所を見られるのは勘弁して下さい
「何でやの?」
考えてみて下さいよ・・患者と医者が親しげに話をしていたら可笑しいでしょう?第一今の私は、白衣を着ているワケでもないんですよ。
「別に、いいやろ」
お昼に行くなら、市丸先生だけでどうぞ。私は、食欲ないので
「そうなん??ほな、検査室の方に行こか。ココでは、検査出来ひんのや」
えっ!?そうなんですか?
「そうなんよ」
沙樰は、ベットから降りると市丸が手を差し出し
「途中で、倒れてしまうかも知れへんから手繋いで行こか」
・・・ただ、単に、市丸先生が繋ぎたいだけでしょう?
「そっそんな事、あらへんよ」
・・・まぁ、市丸先生の厚意だと思って、繋いで行きます
「えぇの?」
嫌なら、止めますけど?
「沙樰って、ツンデレ属やったんやね」
なんですか?ソレは・・・クスクス
沙樰は、市丸と手を繋ぎ検査室の方に歩いて逝く。沙樰が検査を受ける為の部屋に、まるで分娩台の様なベットが置いてあった。
「ほな、ベットに居ってな」
はい
市丸は、カルテを棚に入れ部屋を出て行った。沙樰は、ベットに上がり横になっていると看護士が入って来た
「こんにちは、若桜 沙樰さんですか?」
はい。よろしくお願いします
「宜しくお願いします。じゃあ早速ですが、下着を脱ぎコレを履いて下さい」
手渡されたのは、股が丸く刳り抜かれた短パンみたいなモノだった。
「では、外に出てますので・・」
看護士が部屋の外に出て行った。沙樰は、下着を脱ぎ股が丸く刳り抜かれた短パンみたいなモノを履きベットに上がる。暫くして再び中に入って来た看護士
「では、誘引剤の座薬を膣に入れますね」
・・・はい
沙樰は膝を曲げ足を開く。看護士は、手早く膣に座薬を入れ
「足、閉じていいですよ。横になってましょうね」
暫く、横になっていると下腹部に重い痛みが出てきた。それは、月経の痛みに似ていた。次第に脈打つ痛みに変化し下へ下へと落ちて来る。沙樰は、堪らず握り棒を掴み
ゔゔゔゔん
「我慢しなくて良いのよ。腰を摩りましょうね」
ゔゔゔ・・・ん
「ちょっと、ゴメンなさいね」
看護士は、沙樰に膝を曲げさせ足を開き膣に指を入れ経血が始まった事を確認すると
「若桜さん、ちょっと器具を入れさせて貰いますね」
看護士は、陰部と膣内部を消毒すると突起のあるモノを膣に挿入しナプキンを充て
「子宮の中モノを出してしまいましょうね」
ゔゔゔ・・・
「もう少しですからね」
暫く、すると下腹部の脈打つ痛みが嘘の様に落ち着いた
・・・あっ・・・ホントだ
「大分、治まって来たみたいだから、器具を取らせてもらいますね」
はい
看護士が再び沙樰に膝を曲げさせ足を開き膣に入れていた突起のあるモノを抜き膣を洗浄すると性器を綺麗に拭きタオルをかけ
「次は検査ですよ。ちょっと足を持ちあげますね」
はい
看護士は、沙樰の足を持ち上げ固定し検査の準備を始めた。そして、準備が終わり沙樰の足元の方に検査器具が揃えられて逝く。
はぁ・・・怖いなぁ
呟いた沙樰の不安を和らげる様に
「大丈夫ですよ。すぐ検査なんて終わりますから」
まさか、自分がこの検査を受ける事になろうとは
「ふふふ」
看護士は、内線をかけた。暫く、すると市丸が部屋に入って来た
「ほな、検査しよな」
「始めますよ、若桜さん」
・・・はい
「ほな、内視鏡入れていくよって」
グイッと開かれた感触の後、無理矢理グググッと押し開かれた鈍い痛みが走り沙樰は息を詰める。
いった・・ゔゔゔゔゔゔんんん
沙樰の子宮の映像を見ながら内視鏡を奥へと進め
「もうすぐ、終わるよって頑張ってな」
ゔゔゔん・・・ぃ
「この、検査と映像のデーターを京楽先生に送信しておいてな」
「はい。分かりました」
検査が終わり、子宮から内視鏡が抜かれ鈍い痛みが軽減され、グイッと開かれた感触も消えた。
「検査終わったで・・・暫く、躰休めとってな」
・・・ありがとうございました
「後、頼むよって」
「はい、市丸先生」
市丸は、部屋を出て逝った。看護士が沙樰の性器を綺麗に拭き、膣にタンポンを入れ持ち上げ固定していた足を下ろし
「では、暫く、横になってましょうね」
・・・はい
看護士が検査器具の片付けを始めた。それを沙樰はボーっと見ていたが、その内ウトウトして眠りに落ちた。どれくらい時間が過ぎたのか、目が覚めると看護士が沙樰の脈を取っていたが、沙樰が目を覚ました事に気づき
「どうですか?気持ち悪いとか無いですか?」
・・・はい、ありません
「そうですか。今日の夜、膣のタンポンを必ず抜いて、ナプキンを充てて寝て下さいね。後、少なくとも数日間は、絶対に躰を酷使させる事は控えて下さい」
はい
沙樰が、躰を起そうとすると手を添え手伝ってくれた。
「では、外に出てますので準備ができたら、呼んで下さい」
はい・・・。
沙樰は、股が丸く刳り抜かれた短パンみたいなモノを脱ぎ下着を履き部屋の外に出た。
「呼んで下さって大丈夫ですよ?」
いえ・・・躰も休めましたので、そろそろ帰ろうと思います
「そうですか・・では、外来の方まで一緒に行きましょうね」
看護士は、中に戻り沙樰のカルテを持って来ると沙樰を支える様に検査室から外来の方に歩きだした。外来には、疎らに人が居た。看護士は、空いている席に沙樰を座らせると
「検査、お疲れ様でした」
ありがとうございました
看護士が戻って行った。暫く、すると受付から名前が呼ばれた。
「いつもの薬と抗菌剤が出てますので薬局で貰って下さいね・・・って、沙樰ちゃん・・死相が出てるわよ」
死相も出ますって・・あんな体験をすれば。
「ふふふっ・・・お大事に」
沙樰は、病院の隣にある処方箋薬局に行き薬を貰い外に出て来ると、見覚えのある車が止まっていた
「ほな、帰ろか沙樰」
・・・市丸先生
もはや、言い返し反応する事も嫌になった。市丸は、沙樰を助手席に乗せ車を走り出させた。
「なぁ、部署移動せぇへんか?」
・・・嫌です
「せやけど・・・ホンマに、躰、大変な事になるで」
今の部署に異動願いを何度も出して、やっと叶ったんです。そう易々と躰に不具合があるから異動なんて出来ません
「ボクかて、キミの器具出しだと手術がやり易くてえぇけど・・・正直言うて、このまんま無理を続けはると・・・子供出来へんようになるで」
とても重たい一言だった。沙樰が考え込んでいると、いつの間にか知らない場所にいた
えっ!?ココどこ??
「ボクの家や」
はぁ?
「もし夜、具合が悪うなっても、安心やろ?」
ニコっと笑う市丸の顔に沙樰は、ムカついた。車を降りた沙樰は、ケータイを取り出しタクシーを呼ぶ為ボタンを押した。すると、背後からケータイを奪われ
返して下さい!!私は、家に帰ります。
「ダメや。そんなん許さへん」
じゃ、いいです。歩いて帰りますから。
強引に市丸からケータイを奪い返し、沙樰は方向も分からず歩いて行く姿を見て
「ふふっ。どこから、あないな力出るんやろか・・・興味あるわぁ」
道の大通りまで来るとタクシーが偶々止まっていた。行先を告げ家に帰りベットに躰を横たえた。夜中を過ぎた頃、タンポンを抜くのを忘れていた事に気づき急いでトイレでタンポンを抜いた。空腹では、抗菌剤は飲めないので食欲は無かったが、買い置きのパンを食べ抗菌剤を飲み、いつもの薬も飲んだ。そして、シャワーを浴びナプキンを充て、再びベットに躰を横たえ眠った。